5つ以上の関節における痛みの主な原因*

原因

示唆する所見

診断†

急性リウマチ熱

主に下肢の大関節,肘,および手関節に影響する重度の移動性の痛み

腫脹より重度な圧痛

発熱,心機能障害の症状と徴候,舞踏運動,皮下結節,および発疹などの関節外症状

レンサ球菌咽頭炎の既往

特異的な(Jones)臨床基準

A群レンサ球菌感染の検査(例,培養,レンサ球菌迅速検査,抗ストレプトリジンO抗体価および抗DNase-B抗体価)

心電図および心エコー検査

異常ヘモグロビン症(例,鎌状赤血球症または鎌状赤血球形質[sickle cell trait],サラセミア

痛みは通常近傍であるがときに関節内,ときに対称性

通常アフリカ系または地中海系の小児または若年患者で,しばしば既知の診断を伴う

ヘモグロビン電気泳動

過剰運動症候群(例,エーラス-ダンロス症候群マルファン症候群,良性の過剰運動症候群)

多発性関節痛,まれに関節炎を伴う

反復性の関節亜脱臼

ときに皮膚の弛緩が増大

通常,関節過可動性の家族歴

マルファン症候群およびエーラス-ダンロス症候群では,若年期または中年期における大動脈瘤または大動脈解離の家族歴の可能性

臨床的評価

ときに遺伝子検査(関節過可動型エーラス-ダンロス症候群に対する遺伝子検査はない)

細菌性の感染性(化膿性)関節炎(単関節のものがより一般的)

重度の痛みと関節液貯留を伴う急性関節炎

ときに免疫抑制または性感染症の危険因子

関節穿刺

ウイルス性の感染性関節炎(パルボウイルスB19B型肝炎ウイルスC型肝炎ウイルスエンテロウイルス風疹ウイルスムンプスウイルス,およびHIV

急性関節炎

通常は細菌性の感染性関節炎より重症度が低い関節痛および腫脹

ウイルスによって異なるその他の全身症状(例,B型肝炎による黄疸,しばしばHIVによる全身性リンパ節腫脹)

臨床的な適応に応じたウイルス血清学的検査(例,B型肝炎を疑う場合はB型肝炎表面抗原およびB型肝炎ウイルスコアに対するIgM抗体)

若年性特発性関節炎

関節症状の小児期の発症

少関節炎に加えてぶどう膜炎,または全身症状を伴う症状(スチル病―発熱,発疹,リンパ節腫脹,脾腫,胸水および/または心嚢液貯留)

臨床的評価

抗核抗体,リウマトイド因子,およびHLA-B27検査

その他のリウマチ性疾患(例,シェーグレン症候群自己免疫性筋炎リウマチ性多発筋痛症全身性強皮症[強皮症])

特異的な皮膚症状(皮膚筋炎),嚥下困難,重度のレイノー症候群もしくは強指症(全身性強皮症),筋肉痛(リウマチ性多発筋痛症),またはドライアイおよび口腔乾燥(シェーグレン症候群)などの疾患特異的な症状

臨床的評価

ときにX線および/または血清学的検査(例,シェーグレン症候群では抗SSAおよび抗SSB抗体,全身性強皮症では抗Scl-70抗体)

ときに皮膚生検または筋生検

乾癬性関節炎

関節病変の5パターンの1つであり,関節リウマチおよび少関節炎と同様に多関節炎を含む

乾癬,爪異栄養症,ぶどう膜炎,腱炎,および指炎(ソーセージ指)などの関節外症状

臨床的評価

X線

関節リウマチ

小関節および大関節の対称的な関節炎

まれに最初は単関節型または少関節性

若年成人により多いがあらゆる年齢層で生じうる

末期ではときに関節の変形

臨床的評価

リウマトイド因子および抗環状シトルリン化ペプチド抗体検査

X線

血清病

関節痛が関節炎より多い

発熱,リンパ節腫脹,および発疹

症状出現までの21日以内に血液製剤に曝露

臨床的評価

全身性エリテマトーデス

関節痛が関節炎より多い

Jaccoud関節症

発疹(例,頬部発疹),粘膜病変(例,口腔内潰瘍),漿膜炎(例,胸膜炎,心膜炎),糸球体腎炎の症状などの全身症状

女性に多い

臨床的評価

抗核抗体,抗dsDNA抗体,血算(白血球減少症または血小板減少症),尿検査,クレアチニンおよび肝酵素による生化学検査

全身性血管炎(例,IgA血管炎[以前はヘノッホ-シェーンライン紫斑病と呼ばれた],結節性多発動脈炎多発血管炎性肉芽腫症

関節痛が関節炎より多い

しばしば多器官系に影響を与える関節外症状(例,腹痛,腎不全,肺炎の症状,鼻副鼻腔の症状,皮膚病変[発疹,紫斑,小結節,および潰瘍などがある])

臨床的な適応に応じた血清学的検査(例,多発血管炎性肉芽腫症を疑う場合の抗好中球細胞質抗体検査)

適応に応じた生検(例,腎臓,皮膚,または肺)

* これらの疾患は少関節を侵す疾患として発症することもある(4つ以下の関節が侵される)。

†関節液貯留または炎症がある患者には関節穿刺(細胞数測定,グラム染色,培養,および結晶検査とともに),ならびに通常は赤血球沈降速度(赤沈)およびC反応性タンパク(CRP)の検査を行うべきである。X線は不要であることが多い。

dsDNA = 二本鎖DNA。

関連するトピック