経口血糖降下薬の特徴

経口血糖降下薬の特徴

一般名

1日投与量

作用持続時間

備考

インスリン分泌促進薬:持効型(スルホニル尿素薬)

膵β細胞のインスリン分泌を増加させる

単剤で,またはインスリンや他の薬剤と組み合わせて使用可能

作用持続時間が長いため,重篤な低血糖を来すことがある(特に高齢患者の場合)

5年目以降,効果が減弱する可能性がある

アセトヘキサミド*

250mg,1日1回~750mg,1日2回

12~24時間

†米国ではもはや入手できない

クロルプロパミド*

100mg,1日1回~750mg,1日1回

24~36時間

クロルプロパミド:アルコール摂取後に低ナトリウム血症および紅潮を引き起こす恐れがある

トラザミド*

100mg,1日1回~500mg,1日2回

14~16時間

†米国ではもはや入手できない

トルブタミド*

250mg,1日1回~1500mg,1日2回

12時間

グリベンクラミド,非徐放性製剤†

1.25mg,1日1回~10mg,1日2回

12~24時間

グリピジドおよびグリベンクラミド:1日10mgを超える用量で有効性が増すことを示すエビデンスはない

グリベンクラミド,微粉化製剤†

0.75mg,1日1回~6mg,1日2回

12~24時間

グリピジド,非徐放性製剤†

2.5mg,1日1回~20mg,1日2回

12~24時間

グリピジド,徐放性製剤†

2.5~20mg,1日1回

24時間

グリメピリド†

1~8mg,1日1回

24時間

インスリン分泌促進薬:速効型(メグリチニド[meglitinides])

膵β細胞のインスリン分泌を増加させる

単剤で,または他の経口薬およびインスリンと組み合わせて使用可能

ナテグリニド

60~120mg,1日3回,食事時

3~4時間

レパグリニド

0.5~4mg,1日3回,食事時

3~4時間

インスリン抵抗性改善薬:ビグアナイド薬

インスリンによる肝臓での糖産生抑制を増強

単剤で,または他の経口薬およびインスリンと組み合わせて使用可能

主な有害作用:乳酸アシドーシス(まれ)

腎機能不全,代謝性アシドーシス,低酸素症,アルコール依存症,または脱水のある患者などリスクの高い患者では禁忌

低血糖は引き起こさない

その他の有害作用:消化管障害(下痢,悪心,腹痛),ビタミンB12吸収不良

体重減少を増強する

造影剤の使用を必要とする放射線学的処置の前には,一時的に中止すべきである

メトホルミン,非徐放性製剤

500mg,1日1回~1250mg,1日2回

6~10時間

メトホルミン,徐放性製剤

500mg~2g,1日1回

24時間

インスリン抵抗性改善薬:チアゾリジン系薬剤

インスリンによる肝臓での糖産生抑制を増強

単剤で,または他の経口薬およびインスリンと組み合わせて使用可能

主な有害作用:体重増加,体液貯留,貧血(軽度)

肝毒性はまれであるが,肝機能のモニタリングが必要

ピオグリタゾン

15~45mg,1日1回

24時間

ピオグリタゾン:膀胱癌,心不全,および骨折のリスクを増大させる可能性がある

ロシグリタゾン

2~8mg,1日1回

24時間

ロシグリタゾン:低比重リポタンパク質コレステロールを増加させる可能性があり,心不全,狭心症,心筋梗塞,脳卒中,および骨折のリスクを増大させうる

α-グルコシダーゼ阻害薬

腸内酵素阻害薬

単剤療法または他の経口薬もしくはインスリンとの併用療法として使用され,食後の血漿血糖値を低下させる

食事の1口目と一緒に内服しなければならない

消化管の有害作用(鼓腸,下痢,腹部膨満)は一般的であるが,時間とともに軽減しうる

低用量(25mg/日)から開始し,数週間かけて用量を調節する

アカルボース

25~100mg,1日3回,食事時

6~10時間

ミグリトール

25~100mg,1日3回,食事時

6~10時間

ジペプチジルペプチダーゼ4(DPP4)阻害薬

アログリプチン

6.25~25mg,1日1回

24時間

インスリン分泌を刺激してグルカゴン分泌を阻害するペプチドであるGLP-1の分解に関与する酵素DPP-4を阻害する

全てのDPP-4阻害薬は中等度から重度の腎機能不全において使用できる。リナグリプチン以外は,全て推算糸球体濾過量に応じて用量調節が必要である。

忍容性は高いが,ヘモグロビンA1Cの改善はわずかである

いくつかの研究で,膵炎リスクのわずかな上昇が認められた

リナグリプチン

5mg,1日1回

24時間

サキサグリプチン

2.5~5mg,1日1回

24時間

シタグリプチン

25~100mg,1日1回

24時間

グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)受容体作動薬‡

グルコース依存性インスリン分泌を促進する,小腸内で産生されるペプチドGLP-1の作用と類似する

セマグルチド

3mg,1日1回,30日後から7mg,1日1回に増量する。必要であれば,さらに30日後から14mg,1日1回に増量する

24時間

低血糖のリスクは低い;軽度の体重増加を促す可能性がある

膵炎のリスク増大

齧歯類で甲状腺C細胞腫瘍(髄様癌)が認められている

週1回の皮下注射製剤は消化管有害作用がより少ない可能性がある。1日1回または1日2回投与する場合は,最低用量で開始することで悪心を最小限に抑えられる可能性がある

経口セマグルチドは心血管疾患リスクが高い患者において心血管死亡を減少させる可能性がある

セマグルチドは糖尿病網膜症の進行の増加と関連する

ナトリウム・グルコース共輸送体2(SGLT2)阻害薬

カナグリフロジン

100または300mg,1日1回

24時間

腎臓の近位尿細管にあるSGLT2を阻害することでブドウ糖の再吸収を阻害し,糖尿を促す

SGLT2阻害薬は,フルニエ壊疽,体重減少,起立性低血圧,酵母感染症,および尿路感染症を引き起こす可能性がある

高齢者および腎障害のある患者では慎重に使用する

正常血糖糖尿病性ケトアシドーシスと関連する。ケトン食療法または低炭水化物食を避け,処置の前数日間または病気で経口摂取に耐えられない間は投与を中止すべきである

カナグリフロジンは四肢切断率の増加と関連する

エンパグリフロジンダパグリフロジン,およびカナグリフロジンは,心血管リスクを有する患者において死亡および心不全による入院を減少させる。カナグリフロジンおよびエンパグリフロジンは慢性腎臓病の進行を抑制する

ダパグリフロジン

5~10mg,1日1回

24時間

エンパグリフロジン

10~25mg,1日1回

24時間

エルツグリフロジン(ertugliflozin)

5~15mg,1日1回

24時間

*第1世代スルホニル尿素薬。

†第2世代スルホニル尿素薬。

‡グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)受容体作動薬の注射製剤については,インスリン以外の注射用血糖降下薬の特徴の表を参照。

*第1世代スルホニル尿素薬。

†第2世代スルホニル尿素薬。

‡グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)受容体作動薬の注射製剤については,インスリン以外の注射用血糖降下薬の特徴の表を参照。

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