喀血の主な原因

喀血の主な原因
原因	示唆する所見	診断アプローチ*
気管気管支由来
気管支炎（急性または慢性）	急性：湿性または乾性咳嗽慢性：COPDの診断歴または喫煙歴のある患者において，咳嗽が1カ月の大半の日，または1年の内3カ月間咳嗽が続く状態が2年連続する	急性：臨床的評価慢性：胸部X線
気管支拡張症	繰り返す感染の病歴を有する患者における慢性咳嗽および粘液産生	胸部高分解能CT 気管支鏡検査
気管支結石症	肉芽腫性疾患の既往がある患者における石灰化リンパ節	胸部CT 気管支鏡検査
異物（典型的には慢性で未診断）	上気道感染症の症状を伴わない慢性咳嗽（典型的には乳児または幼児）ときに発熱	胸部X線ときに気管支鏡検査
腫瘍（肺原発性，転移性；カポジ肉腫）	盗汗体重減少大量喫煙歴カポジ肉腫の危険因子（例，HIV感染）	胸部X線 CT 気管支鏡検査
肺実質由来
活動性の肉芽腫性疾患（結核性，真菌性，寄生虫性，梅毒性）または菌腫（アスペルギローマ，菌球など）	曝露歴のある患者における発熱，咳嗽，盗汗，および体重減少しばしば免疫抑制の病歴	胸部X線胸部CT 喀痰検体または気管支鏡下洗浄液の微生物学的検査
グッドパスチャー症候群	疲労体重減少しばしば血尿ときに浮腫	尿検査クレアチニン値腎生検抗糸球体基底膜抗体の検査 cANCA検査
多発血管炎性肉芽腫症	しばしば慢性の，血性鼻漏および鼻粘膜潰瘍しばしば関節痛および皮膚病変（結節，紫斑）歯肉肥厚およびmulberry gingivitis（桑実状の歯肉炎）鞍鼻および鼻中隔穿孔ときに腎機能不全	侵された領域（例，腎，皮膚）の生検ならびにcANCA検査および小～中サイズの動脈における血管炎の証明気管支鏡検査
肺膿瘍	亜急性の発熱咳嗽盗汗食欲不振体重減少歯列不良	胸部X線またはCTにて鏡面像を伴う不規則な形の空洞がみられる
ループス肺炎	全身性エリテマトーデスの病歴がある患者における発熱，咳嗽，呼吸困難，および胸膜性胸痛	胸部CT（肺胞炎の証明）ときに気管支鏡下洗浄（リンパ球増多または顆粒球増多を証明）
肺炎	発熱，湿性咳嗽，呼吸困難，胸膜性胸痛呼吸音の減弱またはやぎ声白血球数の上昇	胸部X線入院患者では血液および喀痰培養
主に血管由来
肺実質への漏出を伴う大動脈瘤	背部痛	胸部X線で縦隔の拡大胸部CT血管造影
動静脈奇形	粘膜皮膚の毛細血管拡張または末梢性チアノーゼの存在	胸部CT血管造影肺血管造影
肺静脈圧の上昇（特に僧帽弁狭窄，左心不全において）	断続性ラ音中枢または末梢の容量負荷を示唆する徴候（例，頸静脈怒張，末梢浮腫）臥位での呼吸困難（起座呼吸）または入眠から1～2時間後に起こる呼吸困難（発作性夜間呼吸困難）	心電図検査 BNP測定心エコー検査
肺動脈破裂	最近の肺動脈カテーテルの留置または操作	緊急胸部CT血管造影または緊急肺血管造影
肺塞栓症（肺梗塞を引き起こす）	突然発症する鋭い胸痛，呼吸数および心拍数の増加（特に肺塞栓症の危険因子を有する患者にみられる場合）	CT血管造影またはV/Qシンチグラフィー四肢のドプラまたは複式検査によりDVT所見を示す
気管腕頭動脈瘻	過去3日から6週間以内の気管カニューレの留置	臨床状況に一致する気管内チューブからの出血を同定
その他
肺子宮内膜症（月経随伴性喀血）	月経中の繰り返す喀血	ときに経口避妊薬による試験的治療
全身性の凝固障害または抗凝固薬もしくは血栓溶解薬の使用	肺塞栓症，DVT，または心房細動に対し，抗凝固薬による治療を受けている患者脳卒中または心筋梗塞に対し，血栓溶解薬投与による治療を受けている患者ときに家族歴	PT/PTTまたは抗第Xa因子活性の測定凝固異常の是正に伴い喀血が消失
*喀血を認める全ての患者は胸部X線およびパルスオキシメトリーを実施すべきである。
BNP = 脳性（B型）ナトリウム利尿ペプチド；cANCA = 抗好中球細胞質抗体；COPD = 慢性閉塞性肺疾患；DVT = 深部静脈血栓症；PT = プロトロンビン時間；PTT = 部分トロンボプラスチン時間；V/Q = 換気血流比。

*喀血を認める全ての患者は胸部X線およびパルスオキシメトリーを実施すべきである。

BNP = 脳性（B型）ナトリウム利尿ペプチド；cANCA = 抗好中球細胞質抗体；COPD = 慢性閉塞性肺疾患；DVT = 深部静脈血栓症；PT = プロトロンビン時間；PTT = 部分トロンボプラスチン時間；V/Q = 換気血流比。