医師により患者の医療記録に与えられた蘇生処置拒否(do-not-resuscitate:DNR)指示により,心停止の際に心肺蘇生(CPR)を行うべきでないことが医療スタッフに伝えられる。この指示は,終末期に望まれない不要な侵襲的治療を回避するのに役立てられている。
重篤な病状のケア計画の一環として,医師は,患者の直近の病状に照らして心肺停止の可能性について患者と話し合い,CPR処置および起こりうる結果について説明し,処置に関する患者の希望を尋ねる。患者がCPRに関する意思決定を下すことができない場合は,患者があらかじめ表明した希望に基づいて,または,患者の希望が不明な場合は,患者の利益を最優先して,委任代理人が決定する場合がある。
リビングウィルおよび医療判断代理委任状は,緊急事態では一般的に入手できないため,無効な場合がある。また,有効なDNR指示または携帯医療指示書(しばしばPOLSTフォームといわれる)が出されていない限り,最初の対応者はほぼ常に生命維持措置を開始する必要がある。全ての州には,在宅患者または病院以外の施設にいる患者のために特化したDNRプロトコルまたは携帯医療指示書プログラムがある。一般にDNRプロトコルでは,医師と患者(または患者の委任代理人)の両者による院外DNR指示への署名,および患者が身に付ける,もしくは患者の周辺に保管される本人を確認できる特別な識別物(例,ブレスレットまたは明るい色の用紙)の使用が要求される。緊急時に緊急医療スタッフが招集されDNRを示す完全な識別物を見た場合,安楽ケアのみを提供し,蘇生措置は試みない。
携帯医療指示書
携帯医療指示書は,疾患が進行した患者の終末期ケアに関する意思決定を伝達するものである。米国では,携帯医療指示書プログラムが州レベルで導入されており,一般的には生命維持治療に関する医療提供者からの指示書(Provider Orders for Life-Sustaining Treatment:POLST)と呼ばれている。このようなプログラムの別名として,Medical Orders for Life-Sustaining Treatment(MOLST),Physician Orders for Scope of Treatment(POST),Medical Orders for Scope of Treatment(MOST),Clinical Orders for Life-Sustaining Treatment(COLST),Transportable Physician Orders for Patient Preferences(TPOPP)などもある。これらのプログラムは共通のパラダイムに従っているが,やや異なる形式と方針をもつ。これらのプログラムにおいて進行した疾患とみなされる最も一般的な基準は,患者が1~2年以内に死亡しても医師は驚かないかどうかというものである。
いずれの州においても,手続きは,医療専門職が患者または代理人と患者の現在の状態およびケアの目標について話し合うことから始まる。その結果として,全体的な治療目標(例,緩和ケアのみ,最大限の根治的治療,またはこれらの中間の限定的治療)および通常は人工栄養や水分補給などの他の重要なケアの決定と併せてCPRにも対応した,全ての医療環境に適用可能な医療上の指示が決定される。このようなプログラムは,医師が治療の目標に関する患者の希望を最大限に尊重し,ケア環境間の連続性を確保することに役立ちうる。
POLSTや同様のプログラムが全ての州に存在し,国立のPOLST組織がwww.polst.orgでクリアリングハウスを提供している。



