組織への薬物分布

執筆者:Jennifer Le, PharmD, MAS, BCPS-ID, FIDSA, FCCP, FCSHP, Skaggs School of Pharmacy and Pharmaceutical Sciences, University of California San Diego
Reviewed ByEva M. Vivian, PharmD, MS, PhD, University of Wisconsin School of Pharmacy
レビュー/改訂 修正済み 2024年 11月
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薬物は,体循環に入った後,体の組織に分布する。分布は,血液灌流,組織結合(例,含有する脂質のため),局所pH,および細胞膜の透過性に差があるため,概して一様ではない。

薬物が組織に移行する速度は,組織への血流の割合,組織量,および血液と組織間の分配特性によって決まる。細胞膜を通過する拡散が律速段階でない限り,血管に富んだ部位ほど,血液と組織間の分配平衡(入出速度が同じとき)に速く到達する。平衡に達した後,組織および細胞外液の薬物濃度は血漿中薬物濃度に反映される。代謝と排泄が分布と同時に起こるため,この過程は動的で複雑である。

薬物が組織に入った後,間質液への薬物分布は主に灌流によって規定される。灌流の乏しい組織(例,筋肉,脂肪)では,特にその組織の薬物に対する親和性が高い場合,分布は非常に緩徐となる。

薬物動態の概要も参照のこと。)

分布容積

見かけの分布容積とは,その血漿中薬物濃度を生じさせるために投与薬物総量の希釈に要する理論上の液体量のことである。例えば,1000mgの薬物を投与し,その結果血漿中薬物濃度が10mg/Lなら,1000mgが100Lに分布しているかのように見える(用量/容積 = 濃度;1000mg/xL = 10mg/L;したがってx= 1000mg/10mg/L = 100L)。

分布容積は実際の身体容積またはその体液コンパートメントとは関連せず,むしろ体内での薬物分布に関係する。組織結合の強い薬物では,少量の薬物しか血液循環中にとどまらないため,血漿中薬物濃度は低く分布容積は大きい。血液循環中にとどまる薬物では,分布容積が小さい傾向がある。

分布容積は,所定の用量について予想される血漿中薬物濃度の参考となるが,分布の特異なパターンについてはほとんど情報をもたらさない。各々の薬物は体内で独特な分布をする。一部の薬物は主に脂肪組織に分布し,他の薬物は細胞外液にとどまる,さらに特異的な組織に広く結合する薬物もある。

多くの酸性薬物(例,ワルファリンアスピリン)はタンパク質と高度に結合するため,見かけの分布容積は小さい。多くの塩基性薬物(例,アンフェタミンペチジン)は組織に多く取り込まれ,それゆえ,見かけの分布容積は全身の容積よりも大きい。

結合

薬物の組織への分布の程度は,血漿タンパク質結合および組織結合の度合いによって決まる。血流中では,薬物は一部が溶解して遊離型(非結合型)薬物として,別の一部は血液成分(例,血漿タンパク質,血球)と可逆的に結合した形態で輸送される。薬物と相互作用する可能性がある多くの血漿タンパク質のうち,最も重要なものはアルブミン,α1酸性糖タンパク質,およびリポタンパク質である。酸性薬物は多くがアルブミンと比較的強く結合し,塩基性薬物は多くがα1酸性糖タンパク質,リポタンパク質,またはこの両方と比較的強く結合する。

薬物の薬理作用が発現する場である血管外や組織中への受動拡散は,非結合型薬物のみに起こる。したがって,主に体循環中の非結合型薬物の濃度が作用部位における薬物濃度,すなわち効力を規定する。

薬物濃度が高くなると,結合型薬物の量は存在する結合部位の数によって規定される上限値に近づく。薬物間の置換は結合部位の飽和を基盤として生じる。

薬物はタンパク質以外にも多くの物質と結合する。結合は通常,水環境下で薬物が高分子と結びつくときに起こるが,薬物が体脂肪に分配された場合に起こることもある。脂肪は灌流が不良であるため,平衡時間が長く,親油性の高い薬物では特に長くなる。

組織や体区画に薬物が蓄積すると,血漿中薬物濃度が低下するにつれ蓄積した薬物が組織から放出されるため,薬物の作用時間が延長する可能性がある。例えば,チオペンタールは脂溶性が高く,単回静脈内投与後に急速に脳内に移行し,著明な麻酔作用が速やかに発現し,薬物が灌流の遅い脂肪組織に再分布するにつれて,その作用は数分で終息する。チオペンタールはその後,脂肪組織の貯蔵域からゆっくりと放出され,麻酔域下の血漿中濃度が維持される。チオペンタールの投与を繰り返すと,この濃度が有意に高まり,脂肪組織に蓄積される量が増大することがある。このように,脂肪組織の貯蔵は薬物の作用時間を当初は短縮するが,後に延長させるようになる。

一部の薬物はタンパク質,リン脂質,または核酸と結合するため,細胞内に蓄積する。例えば,クロロキンでは白血球中および肝細胞中濃度が血漿中薬物濃度より数千倍高くなることがある。細胞内の薬物は血漿中の薬物と平衡状態にあり,薬物が体内から消失するにつれて血漿中に移行する。

血液脳関門

薬物は脳の毛細血管と髄液を介して中枢神経系に到達する。脳は心拍出量の約6分の1の血液を受けているにもかかわらず,脳の透過特性のために,薬物透過は制限される。一部の脂溶性薬物(例,チオペンタール)は脳に容易に入るが,極性化合物はそうではない。その理由は,脳毛細血管内皮細胞とアストロサイトの鞘から成る血液脳関門があるためである。脳毛細血管内皮細胞は,多くの毛細血管と比べて,互いに強固に結合しているとみられ,これにより水溶性薬物の拡散が遅くなる。星細胞の鞘は,毛細血管内皮の基底膜に密着した神経膠細胞(星細胞)の結合組織の層で構成される。加齢に伴い,血液脳関門の効果が弱まることがあり,その結果化合物の脳への通過が増加する。

薬物は脈絡叢から脳室の髄液に直接入ることがあり,その後髄液から脳組織へ受動拡散する。さらに脈絡叢では,有機酸(例,ペニシリン)が髄液から血液に能動輸送される。

薬物の髄液への透過速度は,他の組織細胞と同様に,主にその薬物のタンパク質結合の程度,イオン化の程度,および脂質-水分配係数により決まる。脳内への透過速度は,タンパク質結合が高度な薬物では遅く,弱酸および弱塩基のイオン型ではほとんどないに等しい。髄液が中枢神経系に十分灌流しているため,薬物分布速度は主に透過性により決定される。

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