角膜上皮剥離および角膜異物

執筆者:Jurij R. Bilyk, MD, Thomas Jefferson University Hospital
Reviewed ByDiane M. Birnbaumer, MD, David Geffen School of Medicine at UCLA
レビュー/改訂 修正済み 2024年 10月
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角膜上皮剥離は,自然治癒性の表層上皮の欠損である。表層の異物は,しばしば角膜上皮剥離の原因となるため,除去すべきである。

眼外傷の概要も参照のこと。)

最も頻度が高い角膜の損傷は,異物残存および剥離である。眼の症状を訴えて救急診療部を受診する患者の25%に角膜上皮剥離がみられる(1, 2)。

表層の異物は,ときに上皮剥離を残しながらもしばしば涙液膜に取り込まれて自然に角膜から除去されるが,それ以外の異物は角膜上または角膜内に残留する。上眼瞼下に閉じ込められた異物は,1つまたは複数の垂直角膜上皮剥離を引き起こすことがあり,これは瞬目によって悪化する。眼内への異物の侵入は,見た目には軽度な外傷でも起こることがあり,角膜上皮剥離に似た臨床像を示すことがあるが(3),特に異物が高速機械(例,ドリル,電動のこぎり,グラインダー,回転工具,メタルオンメタル構造のあらゆる機械),金槌作業,または爆発によって飛散する破片に由来する場合にこのような状況が生じやすい。

金属異物による角膜損傷では,感染は通常発生しない。ただし,角膜の瘢痕化や錆の沈着が起こることがある。

角膜異物が汚染されている有機物であるか,角膜上皮剥離がコンタクトレンズによる場合は,感染症が発生する可能性がある。コンタクトレンズの不適切な使用は,角膜損傷の一般的な原因である。また,眼内への異物の侵入が認められなくても,異物の組成にかかわらず,眼の内部に感染症(眼内炎)または炎症(虹彩毛様体炎)が発生し,視力がリスクに曝されることがある。

参考文献

  1. 1.Edwards RS: Ophthalmic emergencies in a district general hospital casualty department.Br J Ophthalmol 71(12):938-942, 1987.doi: 10.1136/bjo.71.12.938

  2. 2.Channa R, Zafar SN, Canner JK, et al: Epidemiology of eye-related emergency department visits.JAMA Ophthalmol 134(3):312-319, 2016.doi: 10.1001/jamaophthalmol.2015.5778

  3. 3.Chronopoulos A, Ong JM, Thumann G, et al: Occult globe rupture: diagnostic and treatment challenge.Surv Ophthalmol 63(5):694-699, 2018.doi: 10.1016/j.survophthal.2018.04.0015

角膜上皮剥離および角膜異物の症状と徴候

角膜上皮剥離または異物の症状と徴候には,眼の異物感,流涙充血,およびときに眼脂などがある。剥離が視軸(角膜中央部)に及んでいれば,視力が障害されることがある。

角膜上皮剥離および角膜異物の診断

  • 細隙灯顕微鏡検査,通常はフルオレセイン染色

  • 異物の有無を調べるための上眼瞼反転

表面麻酔薬(例,0.5%プロパラカイン1~2滴)を下結膜円蓋に滴下後,上下眼瞼を反転させ,双眼ルーペまたは細隙灯顕微鏡を用いて結膜および角膜をくまなく視診する。下結膜円蓋にフルオレセインを塗布し,涙液層に分布させる(角膜の診察を参照)。細隙灯顕微鏡検査の際にコバルトブルーの照明をフルオレセイン染色に当てると,上皮剥離および非金属異物が見えやすくなる。Seidel徴候が陽性であれば(フルオレセインが角膜穿孔部から流れ出る様子が観察される),房水が前房から角膜穿孔部を介して漏出していることが示唆される。

複数の垂直線状角膜剥離がある患者では,眼瞼を反転させて上眼瞼内に異物がないか探すべきである。

高リスクの眼内損傷もしくは(よりまれであるが)眼球穿孔,または瞳孔の変形を認める患者では,CTを施行して眼内異物を除外する;このような患者には眼科医による診察を緊急に受けさせるべきである。穿孔が除外されるまで,眼球を眼の保護具で保護すべきである。眼の保護具が使用できない場合は,紙コップまたは発泡スチロールのカップを切って,カップの直径が眼窩縁の直径とほぼ同じになるようにし,それを眼窩縁に固定して一時的な保護具とする。眼球に圧力をかけると,穿孔部から眼内内容物が押し出される可能性があるため,眼球には圧力をかけない。包帯,眼帯,または眼の保護具を使用する場合は,必ず眼瞼や眼球に接触させずに眼窩縁に固定するよう特に注意すべきである。眼および眼周囲の外傷では,CTが第1選択の画像検査法である(1, 2)。

診断に関する参考文献

  1. 1.Balakrishnan S, Harsini S, Reddy S, et al.Imaging review of ocular and optic nerve trauma.Emerg Radiol 27(1):75-85, 2020.doi: 10.1007/s10140-019-01730-y

  2. 2.Thelen J, Bhatt AA, Bhatt AA: Acute ocular traumatic imaging: what the radiologist should know [corrected].Emerg Radiol 24(5):585-592, 2017.doi: 10.1007/s10140-017-1528-0.Epub 2017 Jun 17.Erratum in: Emerg Radiol 24(5):593, 2017.doi: 10.1007/s10140-017-1536-0

角膜上皮剥離および角膜異物の治療

  • 角膜表層または結膜の異物に対しては,洗浄,または湿らせたスワブもしくは小さな針による除去

  • 角膜上皮剥離に対しては,抗菌薬軟膏およびときに散瞳

  • 眼内異物に対しては,外科的除去

医師は,表面麻酔薬を結膜に滴下後に,洗浄により結膜異物を除去したり,湿らせた滅菌綿棒で結膜異物を取り出したりできる。角膜異物のうち,洗浄で除去できないものは,ルーペ(拡大鏡)またはできれば細隙灯顕微鏡で見ながら,滅菌眼用スパッド(眼内異物除去用に作られた器具)の先または25~27G皮下注射針の先で注意深く除去することがある;患者は異物除去の間,眼球を動かさず固視が可能でなければならない。注意すべき点として,皮下注射針の先端は常に角膜の側方から当てるようにする;意図せず角膜を貫通する可能性があるため,決して角膜の正面に向かって針を近づけてはならない。

角膜に鋼または鉄の異物が数時間残留すると,角膜に環状の錆を残す場合があり,これも細隙灯顕微鏡による拡大下で,掻き出すか低速の角膜ドリル(rotary burr)で除去する必要がある;除去は眼科医が行うべきである。この処置後に,角膜上皮剥離が残存していれば治療する。

角膜上皮剥離

圧迫眼帯は痛みを軽減したり治癒期間を短縮したりすることはなく,感染リスクを増大させる可能性がある。通常は圧迫眼帯を用いず,特に,コンタクトレンズ,または土壌もしくは植物に汚染されている恐れのある物質が原因の剥離には決して使用しない(1, 2)。

抗菌薬の眼用軟膏(例,バシトラシン/ポリミキシンB,エリスロマイシン)が大半の角膜上皮剥離に対して,上皮欠損が治癒するまで用いられているが,これが感染率の低下と関連していることを示す研究は存在しない。角膜上皮剥離のあるコンタクトレンズ装着者には,緑膿菌を至適にカバーする抗菌薬(例,0.3%シプロフロキサシン軟膏)が必要である。

コルチコステロイドの眼投与は,真菌の増殖および単純ヘルペスウイルスの再活性化を促進する傾向にあるため,禁忌である。表面麻酔薬の継続使用も,治癒を阻害する可能性があり,剥離が治癒しないまたは悪化していることに関連する疼痛を覆い隠す可能性があるため,禁忌である。表面麻酔薬を短期間投与された患者とプラセボを投与された患者との間で疼痛緩和に差があることは研究で実証されていない(3)。疼痛は経口鎮痛薬で管理できる。広範囲(例,面積 > 10mm2)の症状を伴う上皮剥離に対しては,短時間作用型調節麻痺薬(例,1%シクロペントラートまたは5%ホマトロピン1滴)で瞳孔も散大させる。外用の非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)(例,ジクロフェナク)は,角膜上皮剥離の治療には承認されておらず,また,経口鎮痛薬より効果的ではないようである(4)。

角膜上皮は再生が速い;広範囲に及ぶ剥離でも一般に1~3日で治癒する。損傷が治癒するまでは,コンタクトレンズを装着すべきではない。特に異物を除去した場合や剥離の原因が有機物である場合,受傷1~2日後に眼科医によるフォローアップ診察を行うことが推奨される。

治療に関する参考文献

  1. 1.Lim CH, Turner A, Lim BX: Patching for corneal abrasion.Cochrane Database Syst Rev 7(7):CD004764, 2016.doi: 10.1002/14651858.CD004764.pub3

  2. 2.Kaiser PK: A comparison of pressure patching versus no patching for corneal abrasions due to trauma or foreign body removal.Corneal Abrasion Patching Study Group.Ophthalmology 102(12):1936-1942, 1995.doi: 10.1016/s0161-6420(95)30772-5

  3. 3.Puls HA, Cabrera D, Murad MH, et al: Safety and effectiveness of topical anesthetics in corneal abrasions: Systematic review and meta-analysis.J Emerg Med 49(5):816-824, 2015.doi: 10.1016/j.jemermed.2015.02.051

  4. 4.Wakai A, Lawrenson JG, Lawrenson AL, et al: Topical non-steroidal anti-inflammatory drugs for analgesia in traumatic corneal abrasions.Cochrane Database Syst Rev 5(5):CD009781, 2017.doi: 10.1002/14651858.CD009781.pub2

要点

  • 角膜上皮剥離または異物の症状としては,異物感,流涙,充血などがあり,典型的には視力に変化はない。

  • 診断は通常フルオレセイン染色を用いた細隙灯顕微鏡検査による。

  • フルオレセインが角膜欠損部から流出する場合,瞳孔の形状が不整である場合,または受傷機転に高速機械(例,ドリル,電動のこぎり,メタルオンメタル構造のあらゆる機械),金槌作業,または爆発が含まれる場合,眼内異物を疑う。

  • 穿通性損傷が疑われる場合は,絶対に眼帯をしてはならない。必ず眼の保護具のみを使用する。

  • 眼内異物に対しては,抗菌薬の全身投与および局所投与を行い,眼保護具を使用するとともに,痛みと悪心をコントロールし,外科的除去について眼科医に相談する。

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