肩関節唇は通常,特定の外傷(例,腕を伸ばしたまま転倒)の結果として断裂する。断裂は投球のような頭上への挙上動作を頻繁に行うことでも生じる。肩関節唇断裂(glenoid labral tear)が発生すると,動作時に痛みを来す。治療は理学療法およびときに手術による。
肩関節は(股関節または肘とは異なり)本質的に不安定な関節である;ティーの上のゴルフボールに例えられる。構造上の安定性を高めるため,関節窩(解剖学的に非常に浅い窪み)は,関節唇(関節窩の縁に沿ってついている弾力性のある線維性軟骨)によって,深みを増している。この構造は,運動中,特に投擲運動中に断裂する場合や,転倒して伸ばしたままの上肢で着地したときの鈍的外傷の結果,断裂する場合がある。
肩関節唇断裂の症状と徴候
肩関節唇断裂は,動作時に肩関節の深部痛を引き起こし,特に野球の投球時に顕著である。この不快感は,肩関節に有痛のクリック音やゴツンという感覚,または引っかかるような感覚を伴うことがある。
肩関節唇断裂の診断
通常は造影MRI
徹底的な肩関節および頸部の身体診察をまず行うべきであるが,より高度な診断検査(例,造影MRI)が,しばしば病理を決定的に同定するための唯一の方法であるため,多くの場合に専門医への紹介が必要となる。
肩関節唇断裂の治療
理学療法
ときに手術
初期治療は理学療法である。理学療法で症状が改善せず,MRIによって診断が確定した場合,第1選択の治療法は外科的なデブリドマンまたは修復である。手術は通常,関節鏡視下で行われる。
1.うつ伏せになり,患側の腕をベッドの端から降ろし,母指の先を床に向ける。
2.肘を伸ばしたまま,肩甲骨を下方と後方に寄せながら,腕を体幹の高さまで上げる。
3.元の位置に戻す。
4.以上の動作10回を1セットとし,3セット行う。
5.余裕があれば,重量を少し追加する。
Courtesy of Tomah Memorial Hospital, Department of Physical Therapy, Tomah, WI; Elizabeth C.K.Bender, MSPT, ATC, CSCS; and Whitney Gnewikow, DPT, ATC.
1.健側を下にして横たわり,患側の腕と体で枕を挟む。
2.患側の肘を90度に曲げる。
3.肩甲骨を引き,下げておく(脊椎側に寄せて,降ろす)。
4.前腕を肩関節から外旋させて,手背を天井に向ける。
5.ゆっくり元の位置に戻し,同じ動きを繰り返す。
6.10回を1セットとし,3セットを1日1回行う。
7.余裕があれば,重量を少し追加する。
Courtesy of Tomah Memorial Hospital, Department of Physical Therapy, Tomah, WI; Elizabeth C.K.Bender, MSPT, ATC, CSCS; and Whitney Gnewikow, DPT, ATC.
1.うつ伏せになり,患側の腕をベッドの端から降ろし,母指の先を床に向ける。
2.肩甲骨を引き,下げる(脊椎側に寄せて,降ろす)。
3.腕を肩の高さまで持ち上げる。
4.腕を床に向けて降ろし,同じ動作を繰り返す。
5.10回を1セットとし,3セットを1日1回行う。
6.特記事項
a.腕を持ち上げる際に,肩甲骨を動かさないようにする。
b.常に母指が天井の方に向かうようにする。
Courtesy of Tomah Memorial Hospital, Department of Physical Therapy, Tomah, WI; Elizabeth C.K.Bender, MSPT, ATC, CSCS; and Whitney Gnewikow, DPT, ATC.
1.体側に沿って肘関節をまっすぐに,母指を上に保つ。
2.腕を前方に約30度動かし,肩甲骨の位置をスキャプションと呼ばれるポジションにする。
3.そのまま,痛みのない範囲で腕を上げ,保持する。
4.元の位置に戻す。
5.10回を1セットとし,3セットを1日1回行う。
6.余裕があれば,重量を少し追加する。
Courtesy of Tomah Memorial Hospital, Department of Physical Therapy, Tomah, WI; Elizabeth C.K.Bender, MSPT, ATC, CSCS; and Whitney Gnewikow, DPT, ATC.
1.安定した物体に腰の高さでバンドを取り付ける。
2.患側の肘と体幹の間に枕や巻いたタオルを挟む。
3.患側の手でバンドをつかみ,肘を90度に曲げて母指を上に向ける。
4.腕を内旋し(手を内側へと引き寄せ),ゆっくりと元の位置に戻す。
5.10回を1セットとし,3セットを1日1回行う。
6.特記事項
a.最初はバンドの抵抗を最小限にする。
b.腕を体の側方に保持し,肘を90度に保つ。
Courtesy of Tomah Memorial Hospital, Department of Physical Therapy, Tomah, WI; Elizabeth C.K.Bender, MSPT, ATC, CSCS; and Whitney Gnewikow, DPT, ATC.
1.安定した物体に腰の高さでバンドを取り付ける。
2.患側の肘と体幹の間に枕や巻いたタオルを挟む。
3.患側の手でバンドをつかみ,肘を90度に曲げて母指を上に向ける。
4.腕を内旋し(手を内側へと引き寄せ),ゆっくりと元の位置に戻す。
5.10回を1セットとし,3セットを1日1回行う。
6.特記事項
a.最初はバンドの抵抗を最小限にする。
b.腕を体の側方に保持し,肘を90度に保つ。
Courtesy of Tomah Memorial Hospital, Department of Physical Therapy, Tomah, WI; Elizabeth C.K.Bender, MSPT, ATC, CSCS; and Whitney Gnewikow, DPT, ATC.
1.患側の手で重りを持つ。
2.股関節と膝関節を少し曲げ,対側の手をテーブルやベッドに置いて上体を支える。
3.肘を90度に曲げて肩関節を伸展させ,肩甲骨を引いて(寄せて)肘を肩の高さに上げる。
4.元の位置に戻す。
5.10回を1セットとし,3セットを1日1回行う。
6.特記事項
a.最初は1~2ポンド(0.5~1kg)の重り(スープ缶程度)から始める。
Courtesy of Tomah Memorial Hospital, Department of Physical Therapy, Tomah, WI; Elizabeth C.K.Bender, MSPT, ATC, CSCS; and Whitney Gnewikow, DPT, ATC.
