家族性地中海熱

執筆者:Gil Amarilyo, MD, Tel Aviv University
Reviewed ByMichael SD Agus, MD, Harvard Medical School
レビュー/改訂 修正済み 2023年 12月
v1104007_ja
意見 同じトピックページ はこちら

家族性地中海熱は,発熱および腹膜炎発作の反復を特徴とする常染色体潜性遺伝(劣性遺伝)疾患であり,ときに胸膜炎,丹毒様の紅斑,および関節炎を,また,まれに心膜炎を伴う。アミロイドーシスを発症することがあり,ときに腎不全に至ることもある。他の民族集団と比べて,地中海沿岸に遺伝的起源をもつ人々において高頻度でみられる。診断は,臨床的な疑いおよび遺伝子検査に基づく。予防的コルヒチン投与による治療は,ほぼ全例の患者でアミロイドーシスだけでなく急性発作の予防も可能とする。コルヒチンに耐性を示すか,過敏症のある患者は,インターロイキン1阻害薬(アナキンラカナキヌマブリロナセプト[rilonacept])で治療することがある。治療を行えば,予後は極めて良好である。

家族性地中海熱(FMF)は地中海沿岸部に遺伝的起源をもつ人々の疾患であり,主にセファルディユダヤ人,北アフリカのアラブ人,アルメニア人,トルコ人,ギリシア人,イタリア人を祖先にもつ人にみられる。しかしながら,他の集団(例,アシュケナージ系ユダヤ人,キューバ人,日本人を祖先にもつ人)の症例も十分にみられることから,祖先のみを基準にこの疾患を除外してはならない。

家族性地中海熱の病因

FMFは以下により引き起こされる:

  • 16番染色体短腕にあるMEFV遺伝子の変異

この変異は古典的には常染色体潜性(劣性)の形式で遺伝するが,ヘテロ接合体でも臨床的な表現型を示すことがある。FMF変異は機能獲得型,すなわちタンパク質に新たな活性を付与したり活性を増強したりする変異であり,遺伝子量効果がみられる(すなわち,異常遺伝子のコピー数が多いほど効果が大きい)。MEFV遺伝子は正常であれば末梢血中好中球に発現するパイリン(pyrin)というタンパク質をコードしている。

パイリンは自然免疫に関与している。パイリンは細胞骨格の組織化などの様々なシグナル伝達経路を調節する分子スイッチであるsmall GTPase RhoAの活性の変化を感知する。RhoAの活性が病原性毒素(Clostridioides difficileBurkholderia cenocepacia,コレラ菌[Vibrio cholera]など)によってダウンレギュレートされると,パイリンが他のタンパク質とともにパイリンインフラマソームを形成し,最終的に炎症性サイトカインであるインターロイキン1β(IL-1β)が産生される。MEFVの病的変異はパイリンの活性状態に有利に働き,細胞膜の破裂(パイロトーシス)および炎症性サイトカインの放出を引き起こす(1)。

腺ペストの原因であるペスト菌(Yersinia pestis)によってFMF関連MEFV変異の正の選択(positive selection)が起こったという強力な証拠がある。このような変異は,ペスト菌(Yersinia pestis)を保有する特定の人々に生存上の優位性をもたらす(2)。

病因論に関する参考文献

  1. 1.Ben-Chetrit E: Old paradigms and new concepts in familial Mediterranean fever (FMF) - an update 2023.Rheumatology (Oxford) kead439, 2023.doi: 10.1093/rheumatology/kead439

  2. 2.Park YH, Remmers EF, Lee W, et al: Ancient familial Mediterranean fever mutations in human pyrin and resistance to Yersinia pestis.Nat Immunol 21(8):857–867, 2020.doi: 10.1038/s41590-020-0705-6

家族性地中海熱の症状と徴候

FMFの発症は通常5~15歳であるが,これよりはるかに早いことも遅いこともあり,乳児期の場合すらある。発作の反復に規則性はない。発作は通常,12~72時間続くが,それ以上続く場合もある。発作頻度は週2回から年1回までである(2~6週毎に1回が最も多い)。身体的および精神的ストレス因子(例,身体的外傷,感染,月経)が発作を誘発することがある(1)。重症度および頻度は,妊娠中およびアミロイドーシス患者で低下する傾向がある。自然寛解が何年も続くことがある。

40℃°にも及ぶ発熱が主な臨床像であり,通常は腹膜炎を伴う。患者の95%が腹痛(通常4分の1分画に始まり,腹部全体に広がる)を覚え,その重症度は発作毎に異なる。発作ピーク時には腸音減弱,腹部膨隆,筋性防御,反跳痛が起こる可能性が高く,身体診察では内臓穿孔との鑑別ができない。その結果,一部の患者では正しい診断がつく前に緊急開腹手術が施行される。胸膜が侵されると,胸膜痛による呼吸困難が起こることがある。

FMFのその他の症状として,関節炎(25%,通常は膝関節,足関節,股関節が侵される),下腿の丹毒様発疹,精巣鞘膜の炎症による陰嚢の腫脹および疼痛などがある。まれながら心膜炎も発生する。FMFの胸膜,滑膜,皮膚の症状は集団毎にその頻度が異なる(2)。

急性発作中の重度の症状にもかかわらず,患者の大半は速やかに回復し,次の発作までは無症状の状態が維持される。

自己炎症性疾患である周期熱

CAPS = クリオピリン関連周期熱症候群; FMF = 家族性地中海熱;NOMID = 新生児期発症多臓器系炎症性疾患;PFAPA = アフタ性口内炎,咽頭炎,およびリンパ節炎を伴う周期熱;TRAPS = 腫瘍壊死因子受容体関連周期性症候群。

Adapted from Sag E, Bilginer Y, Ozen S: Autoinflammatory diseases with periodic fevers.Curr Rheumatol Rep 19(7):41, 2017.doi: 10.1007/s11926-017-0670-8

家族性地中海熱の合併症

FMFの最も重大な長期合併症は次のものである:

  • 腎臓へのアミロイドタンパク質の沈着による慢性腎不全

アミロイドはまた,消化管,肝臓,脾臓,心臓,精巣,甲状腺にも沈着しうる。

腹腔骨盤癒着が形成され受精を妨げるため,FMFによって無治療の女性の最大3分の1で不妊または自然流産が生じることがある。

FMFは,強直性脊椎炎IgA血管炎結節性多発動脈炎,およびベーチェット病など,他の炎症性疾患のリスクを増大させる(3)。

症状と徴候に関する参考文献

  1. 1.Yenokyan G, Armenian HK: Triggers for attacks in familial Mediterranean fever: application of the case-crossover design. Am J Epidemiol 175(10):1054-1061, 2012.doi: 10.1093/aje/kwr460

  2. 2.Ben-Chetrit E, Yazici H: Familial Mediterranean fever: different faces around the world. Clin Exp Rheumatol 37 Suppl 121(6):18-22, 2019.PMID: 31694745

  3. 3.Balcı-Peynircioğlu B, Kaya-Akça Ü, Arıcı ZS, et al: Comorbidities in familial Mediterranean fever: Analysis of 2000 genetically confirmed patients.Rheumatology (Oxford) 59(6):1372–1380, 2020.doi: 10.1093/rheumatology/kez410

家族性地中海熱の診断

  • 臨床的評価

  • 遺伝子検査

家族性地中海熱の診断はTel HaShomerの基準に基づいて主に臨床的に下されるが(家族性地中海熱のTel HaShomer診断基準の表を参照)(1),遺伝子検査が利用可能であり,これは非典型例の評価において特に有用である。しかしながら,現時点の遺伝子検査は確実なものではなく,表現型は間違いなくFMFである患者において,変異遺伝子が1つしかみられないことや,ときにはMEFV遺伝子に明らかな変異が1つも認められないこともある。FMFの診断基準を満たす患者の約10~20%ではMEFV変異がみられないことから,エピジェネティック因子および環境因子が疾患の発生機序に寄与していることが示唆される(2)。

非特異的所見には,好中球優位の白血球増多,赤沈亢進,C反応性タンパク(CRP)およびフィブリノーゲンの上昇などがある。タンパク質の尿中排泄量が0.5g/24時間を超える場合,腎アミロイドーシスを示唆していることがある。

鑑別診断としては,急性間欠性ポルフィリン症,腹部発作を伴う遺伝性血管性浮腫,再発性膵炎,その他の遺伝性回帰熱などがある。

表&コラム
表&コラム

診断に関する参考文献

  1. 1.Livneh A, Langevitz P, Zemer D, et al: Criteria for the diagnosis of familial Mediterranean fever.Arthritis Rheum 40(10):1879–1885, 1997.doi: 10.1002/art.1780401023

  2. 2.Booty MG, Chae JJ, Masters SL, et al: Familial Mediterranean fever with a single MEFV mutation: Where is the second hit?Arthritis Rheum 60(6):1851–1861, 2009.doi: 10.1002/art.24569

家族性地中海熱の治療

  • コルヒチンの連日投与

  • コルヒチンに耐性を示すか,過敏症のある患者には,インターロイキン1(IL-1)阻害薬

アミロイドーシスおよび発作を予防するために,コルヒチンの連日予防投与を診断がついたらすぐに開始するべきである(1)。コルヒチンは患者のほぼ95%に完全寛解または明らかな改善をもたらす。発作または無症状の炎症が持続する場合は,コルヒチンを増量すべきである。発作のピーク時にコルヒチンを開始しても有益ではない。小児ではコルヒチンの用量調節が必要であり,通常は年齢,体重,表現型および遺伝子型の重症度に基づいて調節する(2)。用量調節は,肝または腎機能不全患者に対しても行うべきである。コルヒチンの予防投与が広く普及したことにより,アミロイドーシスとその結果として起こる腎不全の発生数は激減した。

コルヒチンによって女性患者の不妊や自然流産のリスクが増大することはなく,また妊娠中の服用によって催奇形性のある事象のリスクが上昇することもない。コルヒチンに対する反応の欠如は,しばしばレジメンに対するアドヒアランス不良が原因である。

コルヒチンに耐性を示すか,過敏症のある患者は,IL-1阻害薬(アナキンラ1日1回,リロナセプト[rilonacept]週1回,またはカナキヌマブ4週毎)で治療することがある(3, 4)。しかしながら,アミロイドーシスの予防におけるIL-1阻害薬の効果は依然として不明であり,IL阻害薬を服用している患者は,耐容される場合はコルヒチンの服用を継続すべきである。

非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)やアセトアミノフェンがときに鎮痛に必要となる。

治療に関する参考文献

  1. 1.Ter Haar N, Lachmann H, Özen S, et al: Treatment of autoinflammatory diseases: results from the Eurofever Registry and a literature review. Ann Rheum Dis 72(5):678-685, 2013.doi: 10.1136/annrheumdis-2011-201268

  2. 2.Goldberg O, Levinsky Y, Peled O, et al: Age dependent safety and efficacy of colchicine treatment for familial mediterranean fever in children. Semin Arthritis Rheum 49(3):459-463, 2019.doi: 10.1016/j.semarthrit.2019.05.011

  3. 2.Ozen S, Demirkaya E, Erer B, et al: EULAR recommendations for the management of familial Mediterranean fever.Ann Rheum Dis 75(4):644–651, 2016.doi: 10.1136/annrheumdis-2015-208690

  4. 3.De Benedetti F, Gattorno M, Anton J, et al: Canakinumab for the treatment of autoinflammatory recurrent fever syndromes.N Engl J Med 378(20):1908–1919, 2018.doi: 10.1056/NEJMoa1706314

要点

  • 家族性地中海熱(FMF)は,好中球における炎症反応の調節を助けるパイリンタンパク質をコードするMEFV遺伝子の常染色体潜性(劣性)変異によって起こる。

  • 地中海沿岸に遺伝的起源のある人々でより高頻度にみられる(しかし必ずというわけではない)。

  • 発熱,腹痛,ならびにときに胸膜炎,関節炎,および発疹など他の症状の短期発作がみられる。

  • 腎アミロイドーシス(ときに腎不全を引き起こす)が最も頻度の高い合併症であるが,コルヒチン予防投与によりアミロイドーシス発生を防ぎうる。

  • 診断は臨床的に行う;遺伝子検査が利用でき,診断の裏付けとなる場合がある。

  • コルヒチン連日投与によって,大半の患者で発作をかなり予防できるが,コルヒチンに耐性を示すか,過敏症のある患者にはインターロイキン-1阻害薬(アナキンラ,リロナセプト[rilonacept],またはカナキヌマブ)を投与することがある。

quizzes_lightbulb_red
Test your KnowledgeTake a Quiz!
iOS ANDROID
iOS ANDROID
iOS ANDROID