加齢黄斑変性(AMD)は,高齢患者における不可逆的な中心視力障害の最も一般的な原因である。散瞳下の眼底所見で診断可能であり,カラー写真撮影,フルオレセイン蛍光眼底造影,および光干渉断層法が診断の確定と治療方針の決定に役立つ。治療は,栄養補助食品,血管内皮増殖因子阻害薬の硝子体内注射,レーザー光凝固,光線力学療法,およびロービジョン補助具による。
加齢黄斑変性は高齢者における永久的かつ不可逆的な視力障害の最大の原因である。白人に好発する(1)。
総論の参考文献
1.Klein R, Chou CF, Klein BE, et al: Prevalence of age-related macular degeneration in the US population.Arch Ophthalmol 129(1):75-80, 2011.doi: 10.1001/archophthalmol.2010.318
加齢黄斑変性の病因
加齢黄斑変性の病態生理
2つの異なる病型がある:
萎縮型(非滲出型):加齢黄斑変性(AMD)は,当初は全て萎縮型として発生する。加齢黄斑変性患者の約85%は萎縮型にとどまる(1)。
滲出型(滲出型または新生血管型):約15%の患者では滲出型加齢黄斑変性が生じる。
Image provided by Sunir Garg, MD.
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加齢黄斑変性患者のうち滲出型は15%にとどまるが,加齢黄斑変性による重度の視力障害の80~90%は滲出型加齢黄斑変性に起因する(1)。
PAUL WHITTEN/SCIENCE PHOTO LIBRARY
萎縮型加齢黄斑変性は,網膜色素上皮の変化を引き起こし,典型的に暗色の点状領域として認められる。網膜色素上皮は,錐体および杆体が健常性を維持し良好に機能する上で重要な役割を果たしている。杆体および錐体からの老廃物の蓄積によりドルーゼンが形成され,これが黄色斑として現れる。萎縮型加齢黄斑変性がより進行した症例では,脈絡網膜萎縮(地図状萎縮と呼ばれる)の領域が現れる。黄斑部の隆起した瘢痕(円盤状瘢痕),浮腫,出血,または滲出は認めない。
滲出型加齢黄斑変性は,脈絡膜新生血管と呼ばれる過程で網膜下に新たな異常血管が形成されることにより発生する。限局性の黄斑浮腫または出血により,黄斑部の領域が隆起したり,限局性の網膜色素上皮剥離が引き起こされたりする。新生血管を未治療のまま放置すると,最終的に黄斑下に円盤状瘢痕が形成される。
病態生理に関する参考文献
1.Ferris FL 3rd, Fine SL, Hyman L: Age-related macular degeneration and blindness due to neovascular maculopathy.Arch Ophthalmol 102(11):1640-1642, 1984.doi: 10.1001/archopht.1984.01040031330019
加齢黄斑変性の症状と徴候
萎縮型加齢黄斑変性
中心視力障害が数年間かけて発生するが,無痛性で,大半の患者は読書および運転に十分な視力を保持する。中心の盲点(暗点)は通常,疾患の後期に現れ,ときに重度となることがある。症状は通常,両眼性である。
眼底検査における変化としては以下のものがある:
網膜色素上皮の変化
ドルーゼン
脈絡網膜萎縮の領域
滲出型加齢黄斑変性
滲出型加齢黄斑変性では,通常数日から数週間で起こる急速な視力障害がより典型的にみられる。初発症状として,通常は中心の盲点(暗点)または直線の歪み(変視症)など視覚の歪曲が現れる。周辺視力および色覚は一般に侵されない;しかしながら,患眼では,特に加齢黄斑変性を治療しない場合,法的盲(視力20/200[0.1]未満)となることがある。滲出型加齢黄斑変性の発症は,通常片眼のみである;そのため,滲出型加齢黄斑変性の症状はしばしば片側性である。
眼底検査における変化としては以下のものがある:
限局性の網膜隆起として現れる網膜下の液体
網膜浮腫
黄斑下の灰緑色の変色
黄斑部または黄斑周囲における滲出
網膜色素上皮剥離(網膜隆起領域としてみられる)
黄斑部または黄斑周囲における網膜下出血
PAUL PARKER/SCIENCE PHOTO LIBRARY
加齢黄斑変性の診断
眼底検査
カラー眼底写真撮影
フルオレセイン蛍光眼底造影
光干渉断層撮影
加齢黄斑変性(AMD)は,どちらの病型も眼底検査により診断される。視覚の変化はAmslerグリッドで検出できることが多い。所見から滲出型加齢黄斑変性が示唆されたときは,カラー眼底写真撮影およびフルオレセイン蛍光眼底造影を施行する。血管造影により,網膜下の脈絡膜新生血管膜が認められ,その特徴が明らかになり,地図状萎縮の範囲が描出できる。光干渉断層撮影(OCT)は,網膜内および網膜下にある液体の同定を支援し,治療に対する反応の評価に役立つ可能性がある。
加齢黄斑変性の治療
高リスクの萎縮型または片眼性滲出型加齢黄斑変性(AMD)に対する栄養補助食品
滲出型加齢黄斑変性に対する血管内皮増殖因子(VEGF)阻害薬の硝子体内注射またはレーザー治療
支持療法
一般に,萎縮型加齢黄斑変性の管理では疾患の進行を遅らせるための栄養補給に重点が置かれるが,滲出型加齢黄斑変性ではVEGF阻害薬の硝子体内注射またはレーザー療法による治療も行われる。
萎縮型加齢黄斑変性
萎縮型加齢黄斑変性による障害を回復させる手段はない。広範囲のドルーゼン,色素の変化,および/または地図状萎縮を認める患者では,以下の栄養補助食品を毎日摂取することにより,加齢黄斑変性の進行リスクを25%低下させることができる:
酸化亜鉛80mg
銅2mg
ビタミンC 500mg
ビタミンE 400IU
ルテイン10mg/ゼアキサンチン2mg(または喫煙歴がない患者にはβ-カロテン15mgもしくはビタミンA 28,000単位)
現喫煙者または過去に喫煙していた患者では,β-カロテンにより肺癌リスクが高まる可能性がある。β-カロテンをルテイン+ゼアキサンチンで代用しても,同程度の効力が得られることが示されている(1)。したがって,現喫煙者または過去に喫煙していた患者では,このような代用を考慮すべきである。一部の患者では,β-カロテンにより皮膚が黄変する。これらの栄養補助食品の亜鉛成分は,泌尿生殖器疾患で入院するリスクを高める。心血管系危険因子を減少させ,ω-3脂肪酸を豊富に含む食品と緑黄色の濃い葉野菜を定期的に摂取することが,疾患の進行を遅らせるのに役立つ可能性があるが(2),ω-3脂肪酸の栄養補助食品摂取による進行の抑制効果はランダム化試験では示されていない(3)。
地図状萎縮による進行した萎縮型加齢黄斑変性の治療として,2023年にペグセタコプランの硝子体内注射とアバシンカプタド ペゴルの硝子体内注射が使用可能となった。これらの薬剤は補体経路を阻害し,地図状萎縮の進行を遅らせることができる(4, 5)。この結果が示された研究で用いられた主要アウトカムは網膜組織の温存であり,視力のアウトカム(滲出型加齢黄斑変性の研究で用いられたアウトカム)ではなかった。これらの硝子体内注射は1~2カ月毎に施行可能である。
滲出型加齢黄斑変性
片眼性滲出型加齢黄斑変性の患者は,他眼の加齢黄斑変性による視力障害のリスクを低下させるため,萎縮型加齢黄斑変性に対して推奨されている栄養補助食品を毎日摂取すべきである。ほかに選択する治療法は,新生血管の大きさ,位置,および種類により決まる。血管内皮増殖因子阻害薬(VEGF阻害薬)の硝子体内注射(通常はラニビズマブ,ベバシズマブ,アフリベルセプト)は視力障害のリスクを大幅に低下させることができ,20%の患者で生涯にわたり有用な視力の温存が可能となり,最大3分の1の患者で読書ができる視力を保つことが可能である(6)。
現在では,治療期間を延長できる新しい硝子体内注射液が使用可能であり,これにはファリシマブおよび高用量アフリベルセプトが含まれる(7)。ファリシマブは,VEGF-Aおよびアンジオポエチン-2に結合する二重機序の薬剤として機能し,効力はアフリベルセプトと同程度である(8)。2021年に,滲出型加齢黄斑変性の治療で,ラニビズマブの埋込み型ポートデリバリーシステムが利用できるようになった(9)。これは外科的に留置する補充可能な永久眼内インプラントであり,ラニビズマブを硝子体内に継続的に放出し,繰り返し補充することができる。インプラント内部の中隔の位置がずれたために,製造元は2022年10月にインプラントの自主回収を発表し,現在再設計中である。
2020年に,ブロルシズマブ(brolucizumab)という硝子体内注射液が滲出型加齢黄斑変性の治療で使用可能になったが(10),初期の報告(11)では,眼内炎症や網膜動脈閉塞症,血管炎などの有害事象の発生率が他のVEGF阻害薬の硝子体内注射より高いことが示唆されている。
患者のごく一部では,中心窩の外側にある新生血管に対する熱レーザー光凝固により,重度の視力障害を予防することがある。レーザー治療の一種である光線力学療法も,特定の状況下で有用である。ときにコルチコステロイド(例,トリアムシノロン)をVEGF阻害薬とともに眼内に注射する。経瞳孔温熱療法,網膜下手術,および黄斑移動術など他の治療が行われることはめったにない。
治療に関する参考文献
1.Age-Related Eye Disease Study 2 Research Group: Lutein + zeaxanthin and omega-3 fatty acids for age-related macular degeneration: The age-related eye disease study 2 (AREDS2) randomized clinical trial.JAMA 309(19):2005-2015, 2013.doi: 10.1001/jama.2013.4997.Clarification and additional information.JAMA 310(2):208, 2013.doi:10.1001/jama.2013.6403
2.Hogg RE, Woodside JV, McGrath A, et al: Mediterranean diet score and its association with age-related macular degeneration: The European Eye Study.Ophthalmology 124(1):82-89, 2017.doi: 10.1016/j.ophtha.2016.09.019
3.Christen WG, Cook NR, Manson JE, et al: Effect of vitamin D and ω-3 fatty acid supplementation on risk of age-related macular degeneration: An ancillary study of the VITAL randomized clinical trial.JAMA Ophthalmol 138(12):1280-1289, 2020.doi: 10.1001/jamaophthalmol.2020.4409
4.Heier JS, Lad EM, Holz FG, et al: Pegcetacoplan for the treatment of geographic atrophy secondary to age-related macular degeneration (OAKS and DERBY): two multicentre, randomised, double-masked, sham-controlled, phase 3 trials.Lancet 402(10411):1434-1448, 2023.doi: 10.1016/S0140-6736(23)01520-9
5.Khanani AM, Patel SS, Staurenghi G, et al: Efficacy and safety of avacincaptad pegol in patients with geographic atrophy (GATHER2): 12-month results from a randomised, double-masked, phase 3 trial.Lancet 402(10411):1449-1458, 2023. doi: 10.1016/S0140-6736(23)01583-0
6.Finger RP, Puth MT, Schmid M, Barthelmes D, et al: Lifetime outcomes of anti-vascular endothelial growth factor treatment for neovascular age-related macular degeneration.JAMA Ophthalmol 138(12):1234-1240, 2020.doi: 10.1001/jamaophthalmol.2020.3989
7.Wykoff CC, Brown DM, Reed K, et al.Effect of high-dose intravitreal aflibercept, 8 mg, in patients with neovascular age-related macular degeneration: The phase 2 CANDELA randomized clinical trial.JAMA Ophthalmol 141(9):834–842, 2023.doi: 10.1001/jamaophthalmol.2023.2421
8.Heier JS, Khanani AM, Quezada Ruiz C, et al: Efficacy, durability, and safety of intravitreal faricimab up to every 16 weeks for neovascular age-related macular degeneration (TENAYA and LUCERNE): two randomised, double-masked, phase 3, non-inferiority trials.Lancet 399(10326):729-740, 2022.doi: 10.1016/S0140-6736(22)00010-1
9.Holekamp NM, Campochiaro PA, Chang MA, all Archway Investigators: Archway randomized phase 3 trial of the port delivery system with ranibizumab for neovascular age-related macular degeneration.Ophthalmology S0161-6420(21)00734-X, 2021
10.Dugel PU, Koh A, Ogura Y, HAWK and HARRIER Study Investigators: HAWK and HARRIER: Phase 3, multicenter, randomized, double-masked trials of brolucizumab for neovascular age-related macular degeneration.Ophthalmology 127(1):72-84, 2020.doi: 10.1016/j.ophtha.2019.04.017
11.Haug SJ, Hien DL, Uludag G, et al: Retinal arterial occlusive vasculitis following intravitreal brolucizumab administration.Am J Ophthalmol Case Rep 18:100680, 2020.doi: 10.1016/j.ajoc.2020.100680
支持療法
中心視力を失った患者には,拡大鏡,高倍率の読書用眼鏡,大きなコンピュータ画面,および遠用レンズなどのロービジョン補助具が利用可能である。また,特定の種類のソフトウエアでは,コンピュータのデータを大きい字で表示したり,文字情報を合成音声で読みあげたりできる。ロービジョンのカウンセリングが勧められる。
要点
加齢黄斑変性は白人に好発し,高齢者における永久的な視力障害で第1位の原因である。
加齢黄斑変性は,萎縮型(非滲出型もしくはドライタイプ)または滲出型(新生血管型もしくはウェットタイプ)の場合がある。
加齢黄斑変性の85%は萎縮型であるが,加齢黄斑変性による重度の視力障害の80~90%は滲出型に起因する。
萎縮型加齢黄斑変性において眼底検査でみられる変化には,ドルーゼン,脈絡網膜萎縮の領域,および網膜色素上皮の変化などがある。
滲出型加齢黄斑変性において眼底検査でみられる変化には,網膜の浮腫および限局性隆起,網膜色素上皮剥離,黄斑下の灰緑色の変色,ならびに黄斑部および黄斑周囲における滲出などがある。
眼底検査で加齢黄斑変性を認めた患者では,カラー眼底写真撮影,フルオレセイン蛍光眼底造影,および光干渉断層撮影を行う。
片眼性の滲出型加齢黄斑変性または高リスクの萎縮型加齢黄斑変性では,栄養補助食品を処方する。
滲出型加齢黄斑変性は,VEGF阻害薬の硝子体内注射またはポートデリバリーシステムを介した投与,またはレーザー療法により治療する。
一部の滲出型加齢黄斑変性は,光線力学療法またはレーザー療法により治療する。



