耳硬化症は,新生骨の異常な増殖を引き起こす迷路骨包の疾患であり,最も一般的には卵円窓内に起こる。
耳硬化症は,骨構造に影響を及ぼす多くの遺伝性および後天性疾患のうちの1つである。そのほかには,鼓室硬化症,パジェット病,鰓耳腎症候群,骨形成不全症,Goldenhar症候群などにより生じる。
耳硬化症では,骨吸収と再沈着が起こり,結果として病理学的変化が生じる。好発部位はアブミ骨であり,その場合はアブミ骨が固着し,伝音難聴が生じる。耳硬化症は感音難聴も引き起こすことがあり,特に硬化した骨病巣が蝸牛中央階に隣接する場合に多い。
耳硬化症は遺伝する傾向があり,全症例の半数が遺伝性である。耳硬化症を発症する確率は,片方の親が罹患している場合で25%,両親とも罹患している場合で50%である。耳硬化症は,単一の遺伝子に起因する常染色体顕性(優性)のまれで複雑な病態である。連鎖解析によると,耳硬化症の遺伝子は染色体15q25-q26に位置している。最近の研究では,より複雑な遺伝子像が示されており,ほかにも複数の遺伝子の関与が示唆されている(1)。耳硬化症の遺伝的素因を有する患者では麻疹ウイルスが誘因になるという仮説が提唱されている。
白人成人の約10%に何らかの耳硬化症が認められるが(黒人成人では1%),そのうち伝音難聴を発症するのは約10%のみである。まれに,耳硬化症により引き起こされる難聴は7~8歳の若年で発症することもあるが,大半の症例では,緩徐に進行する難聴が青年後期または成人初期に診断されるまで明らかにならない。耳硬化症は典型的には片耳で発症するが,半数以上の患者では対側にも症状が現れて両耳で持続する。
補聴器により聴力が改善することがある。別の方法として,アブミ骨摘出術でアブミ骨の一部または全部を摘出して人工材料に置換することが有益な場合もあるが,難聴および前庭機能障害のリスクを考慮する必要がある。
総論の参考文献
1.Rämö JT, Kiiskinen T, Seist R, et al: Genome-wide screen of otosclerosis in population biobanks: 27 loci and shared associations with skeletal structure.Nat Commun 14 (1):157, 2023.doi: 10.1038/s41467-022-32936-3



