歯の解剖と発達

執筆者:Rosalyn Sulyanto, DMD, MS, Boston Children's Hospital
レビュー/改訂 2018年 11月
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歯は切歯,犬歯,小臼歯,および大臼歯に分類され,一般的に右上顎第3大臼歯から番号がつけられている( see figure 歯の同定)。

歯の同定

ここに示した番号による命名法は米国で最も一般的に用いられる方法である。

歯には歯冠と歯根がある。犬歯の歯根は最大で最強である。歯髄内には血管,リンパ管,神経を含み,硬いが多孔性の象牙質で囲まれており,歯冠部は非常に硬いエナメル質で覆われている;歯髄は触覚,温度変化に敏感である。健康な状態であれば,歯肉によって覆われている歯根は骨様のセメント質で覆われている(犬歯の断面の図を参照)。

20本の乳歯は通常生後6カ月近くで萌出し始め,30カ月までに萌出し終える(歯の萌出時期の表を参照)。これらの歯の後には,32本の永久歯が6歳頃までに現れ始める。6歳から11歳までの期間は混合歯列期と呼ばれ,乳歯と永久歯の双方が存在する。歯の萌出の時期は骨年齢の1つの目印であり,発育遅滞の指標となり,法医学上の目的で年齢の推定にも使用される。

犬歯の断面

支持組織

歯肉は歯冠の基部で歯を取り囲んでいる。歯槽堤は歯のソケットを含む骨梁である。歯周組織は歯を支持する組織(歯肉,上皮付着,結合組織付着,歯周靱帯,歯槽骨)から成る。下顎骨と上顎骨は歯槽堤を支持し,歯を収納する。唾液腺からの唾液は歯を洗浄し,保護する。舌は咬合面の間に食物を導き,歯を清潔にするのに役立つ。上顎骨は三叉神経(第5脳神経)の第2枝である上顎神経から神経支配を受ける。三叉神経の第3枝で最下枝の下顎神経は下顎を支配する。

高齢者,または一部の歯周病においては,歯肉の退縮により歯冠に隣接した歯根が露出し,根面齲蝕が頻発する。歯の崩壊が生じ,抜歯が必要になる場合,健全な骨を維持するために必要な機械的刺激が止まる。その結果,歯の喪失後に歯槽堤の萎縮が始まる。

正常では,角化上皮が口唇の顔側,舌背,硬口蓋,歯周囲の歯肉に存在する。健康な状態であれば,角化歯肉は歯冠から5mmから7mmにわたって存在している。非角化粘膜は歯から離れた歯槽骨上,口唇と頬の内側,舌側面および舌下面,軟口蓋,口底に存在している。口唇の皮膚と粘膜は赤唇縁を境界としている。

口腔前庭と非角化歯槽粘膜を含む頬粘膜は,(健康な歯肉と比較して)通常平滑,湿潤でピンク色と言うより赤色を呈している。この部分の無害な所見には,頬部白線(通常は両側性で,咬合平面の頬が咬まれる位置に生じる細い白線),Fordyce顆粒(1mm未満の淡黄色斑として現れる異所性皮脂腺で口唇にも生じる),白色海綿状母斑(頬粘膜の大部分に生じる両側性の白色上皮肥厚)などがある。ときに,組織内に取り込まれた異物によって粘膜の色素沈着が生じることがある。最も一般的なのは,歯のアマルガム充填に隣接した青色または黒色の領域として生じる。これはアマルガムタトゥーとして知られる。耳下腺(Stensen)管開口部は上顎第1大臼歯に対向する頬粘膜に存在するが,異常なものと混同しないようにするべきである。このような所見を認識することにより必要のない生検や不安を避けることができる。

舌背表面は糸状乳頭と呼ばれる無数の白色突起物で覆われている。これらの間に散在する孤立した赤色突出物は茸状乳頭と呼ばれ,舌前縁に多く分布している。有郭乳頭(数は8個から12個)はそれらよりはるかに大きく,舌の奥にV字型に位置する。有郭乳頭は舌から突出してはおらず,深い溝に囲まれている。葉状乳頭は口峡の前部口蓋弓近くの舌側縁面に,細長い裂け目のようなヒダが並行して連なっているようにみえる。葉状乳頭は長さが一様でなく,舌盲孔,正中菱形舌炎,および舌甲状腺結節(まれ)と同様に,悪性病変と混同されやすい。舌扁桃はワルダイエル(Waldeyer)輪の構成要素であり,舌の奥後方にみられ,これも病変と取り違えるべきではない。明らかな異常が両側性である場合,ほとんどのケースで正常の範囲の異形である。

神経支配は舌神経(第5脳神経の分枝)と鼓索神経線維(第7脳神経の)によって支配され,前者は感覚神経の支配を担っており,後者は舌の前部3分の2の味蕾を神経支配する。舌の有郭乳頭の後方では,舌咽神経(第9脳神経)が触覚と味覚を支配する。舌には甘味,塩味,酸味,苦味,そして旨味(天然のグルタミン酸や香味物質であるグルタミン酸ナトリウムなどのグルタミン酸塩で得られる風味)に対する味覚受容器がある。かつては,味覚受容器は舌の特定の部分に孤立して存在すると考えられていたが,現在では,舌の表面全体に分布していることが知られている。舌下神経(第12脳神経)は舌の動きを支配する。

大唾液腺は1対の耳下腺,顎下腺,舌下腺から成る。口腔粘膜表面の大部分に,粘液を分泌する多数の小唾液腺がある。同側の顎下腺と舌下腺から排液するWharton管の開口部は,口底前部の正中線近くの両側にある。耳下腺はStensen管を経由して頬に開口する。

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