インフルエンザワクチン

執筆者:Margot L. Savoy, MD, MPH, Lewis Katz School of Medicine at Temple University
Reviewed ByEva M. Vivian, PharmD, MS, PhD, University of Wisconsin School of Pharmacy
レビュー/改訂 2024年 4月 | 修正済み 2025年 4月
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インフルエンザワクチンは毎年,世界保健機関および米国疾病予防管理センター(Centers for Disease Control and Prevention:CDC)の勧告に基づき,最も流行しているウイルス株(通常はインフルエンザA型の2株とインフルエンザB型の1~2株)が含まれるように変更されている。ときに,北半球と南半球で若干異なるワクチンが使用されることもある。

詳細については,米国疾病予防管理センター(Centers for Disease Control and Prevention:CDC)のInfluenza Advisory Committee on Immunization Practices Vaccine RecommendationsおよびCDC: Influenza Vaccinationを参照のこと。【】2024年の成人向け予防接種スケジュールに加えられた変更点の概要については,Advisory Committee on Immunization PracticesのRecommended Adult Immunization Schedule, United States, 2024を参照のこと。

予防接種の概要も参照のこと。)

インフルエンザワクチンの製剤

インフルエンザウイルスワクチンは基本的には次の2種類に分類される:

  • 不活化インフルエンザワクチン(IIV)

  • 弱毒生インフルエンザワクチン(LAIV)

3価ワクチンは,追加のB型ウイルス株をカバーする4価ワクチンに徐々に取って代わられつつある。鶏卵タンパク質を含まない4価組換えインフルエンザワクチン(RIV4)と細胞培養由来のワクチン(ccIIV4)が利用できる。65歳以上の患者には,高用量の4価ワクチンが使用できる。(CDC: Different Types of Flu Vaccinesも参照のこと。)

インフルエンザワクチンの適応

禁忌のない生後6カ月以上の全ての個人には,年齢に応じたインフルエンザワクチン製剤による年1回のインフルエンザ予防接種が推奨される。(CDC: Child and Adolescent Immunization Schedule by AgeおよびCDC: Adult Immunization Schedule by Ageを参照のこと。)

不活化インフルエンザワクチン(IIV)は生後6カ月以上の(妊婦を含む)全ての個人に接種することができる。

組換えインフルエンザワクチン(RIV4)は18~49歳の個人に使用できる。

弱毒生インフルエンザワクチン(LAIV)(経鼻インフルエンザワクチン)は,妊娠しておらず,易感染状態でない2~49歳の健常者に接種することができる。LAIVの安全性は,進行した肺疾患や喘息など,インフルエンザからの合併症を発生させやすくする疾患のある集団では確立されていない。

65歳以上の成人には,4価高用量IIV,4価組換えインフルエンザワクチン,または4価アジュバント添加IIVのいずれかを接種すべきである。いずれも入手できない場合は,年齢に応じた他のインフルエンザワクチンを使用すべきである。高用量接種は65歳以上の成人にのみ推奨される。

易感染者(すなわち,感染防御下でのケアを必要とする患者)の診療に携わる医療従事者は,LAIVではなくIIVまたはRIV4の接種を受けるべきである(または,ワクチン接種を受けた後の7日間は易感染性患者との接触を控えるべきである)。

インフルエンザワクチンの禁忌および注意事項

IIVの主な禁忌は以下の通りである:

  • 以前のIIV接種後に,または鶏卵タンパク質などのワクチン成分に対して重度のアレルギー反応(例,アナフィラキシー)を起こしたことがある

IIVの注意事項としては以下のものがある:

  • 発熱の有無にかかわらず,中等度または重度の急性疾患が認められる(消失するまで接種を延期する)

  • インフルエンザワクチンの接種後6週間以内にギラン-バレー症候群(GBS)を発症したことがある

LAIVの禁忌としては以下のものがある:

  • ワクチン成分(鶏卵を除く)または過去に接種したインフルエンザワクチンに対して重度のアレルギー反応(例,アナフィラキシー)を起こしたことがある

  • 易感染状態(例,HIV感染症などの疾患や免疫抑制薬の使用によるもの)

  • 小児および青年では,アスピリンまたはその他のサリチル酸系薬剤の併用

  • 保護環境下での管理を要する重度の易感染性患者と濃厚接触する者,そのような患者のケアを行う者(LAIV接種後7日間接触を回避できる場合を除く)

  • 妊娠

  • 機能的または解剖学的無脾症

  • 48時間以内にインフルエンザに対する抗ウイルス薬を服用した人

  • 髄液漏または人工内耳

  • 2歳未満または50歳以上

  • 喘息があるか,12カ月以内に呼気性喘鳴または喘息エピソードがみられた2~4歳の小児

LAIVの注意事項としては以下のものがある:

  • 慢性肺,心疾患,腎疾患,肝疾患,血液疾患(例,異常ヘモグロビン症),代謝性疾患(例,真性糖尿病)などの特定の慢性疾患

  • 5歳以上の患者の喘息

  • 発熱の有無にかかわらず,中等度または重度の急性疾患が認められる(消失するまで接種を延期する)

  • インフルエンザワクチンの接種後6週間以内にギラン-バレー症候群を発症したことがある

  • 特定の抗ウイルス薬を使用している:アマンタジン,リマンタジン(rimantadine),ザナミビル,オセルタミビル(これらの薬剤は接種の48時間前から中止し,接種後14日間は再開しない)

RIV4の主な禁忌は以下の通りである:

  • 以前のRIV4の接種後に重度のアレルギー反応(例,アナフィラキシー)を起こしたことがある

RIV4の注意事項としては以下のものがある:

  • 発熱の有無にかかわらず,中等度または重度の急性疾患が認められる(消失するまで接種を延期する)

  • インフルエンザワクチンの接種後6週間以内にギラン-バレー症候群を発症したことがある

鶏卵アレルギーが疑われる患者に対する注意事項:鶏卵アレルギーの既往がある患者にもインフルエンザワクチンを接種すべきである。一般に患者の年齢および健康状態に基づいて推奨される全てのインフルエンザワクチンが使用できる。

インフルエンザワクチンの用量および用法

インフルエンザワクチンは年1回接種する。

IIVは次のように接種する:

  • 生後6~35カ月の小児では,0.25mLまたは0.50mLを筋肉内接種(ワクチンによって異なる

  • 3歳以上では,0.5mLを筋肉内接種

  • 18~64歳では,0.1mLを皮内接種

6カ月から8歳までの小児でインフルエンザワクチンの接種回数が2回未満の場合,またはインフルエンザワクチン接種歴が不明である場合,4週間以上空けて2回の接種を行うべきである。

供給不足の際には,ワクチンを節約するため,より少量で皮内接種することができる。

LAIVは,左右の鼻孔に0.1mLずつ噴霧する(計0.2mL)。

RIV4は,0.5mLを筋肉内接種する。

インフルエンザワクチンの有害作用

【】有害作用に関する情報については,米国食品医薬品局(Food and Drug Administration:FDA)を参照のこと。

より詳細な情報

有用となりうる英語の資料を以下に示す。ただし,本マニュアルはこれらの資料の内容について責任を負わないことに留意されたい。

  1. Advisory Committee on Immunization Practices (ACIP): Influenza ACIP Vaccine Recommendations

  2. ACIP: Recommended Adult Immunization Schedule, United States, 2024 including Changes to the 2024 Adult Immunization Schedule

  3. Centers for Disease Control and Prevention (CDC): Influenza Vaccination: Information for Healthcare Professionals

  4. European Centre for Disease Prevention and Control (ECDC): Influenza: Recommended vaccinations

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