チクングニアウイルスは,ヤブカ(Aedes属の蚊)によって伝播される。チクングニア熱は通常,急性熱性疾患として発症する。慢性の多関節炎が持続し,生活に支障を来すことがある。診断の確定は逆転写PCR(RT-PCR)検査または血清学的検査による。治療は支持療法である。予防では,蚊の刺咬を回避することに焦点が置かれる。
チクングニア熱は,ヤブカ(Aedes属の蚊)により伝播し,アフリカ,インド,パキスタン,ネパール,グアム,東南アジア,ニューギニア,中国,メキシコ,中南米,カリブ諸国,インド洋,および太平洋の諸島,ならびに欧州の限られた地域でよくみられる。フロリダ州,プエルトリコ,米国領ヴァージン諸島で限定的な地域内伝播が報告されている。チクングニアウイルスはトガウイルス科のアルファウイルスの一種である。
チクングニア熱の症状と徴候
チクングニア熱は,関節痛と発疹を伴う急性熱性疾患である。その他の症状としては,頭痛,筋肉痛,関節の腫脹などがある。熱性疾患の急性期が終わると,一部(40~80%)の患者では慢性の多関節炎が生じ,それが数カ月ないし数年続くことがあり,重症化して生活に支障を来すこともある。関節痛は典型的には対称性で,遠位関節に好発する。死に至ることは極めてまれである。
チクングニア熱の診断
流行地域に居住しているか旅行したことがある患者が発熱と関節痛で突然した場合,チクングニア熱が疑われる。
チクングニアウイルスRNAはRT-PCR法で検出可能であり,感染後8日以内の検査が推奨される(1)。発症後7日以上が経過した患者ではウイルス特異的IgMの血清学的検査が可能になるが,抗体が他のアルファウイルスやフラビウイルス(例,デングウイルス)と交差反応を起こすことで,偽陽性の判定につながる可能性がある。
デングウイルスとジカウイルスも同じ蚊によって伝播され,チクングニア熱に類似した臨床的特徴を示す感染症を引き起こすことから,診断評価ではこれらのウイルスを考慮すべきである(2, 3)。デングウイルス感染症は適切な臨床管理により転帰が改善する可能性があるため,デングウイルス感染症を除外することは重要である。
診断に関する参考文献
1.Centers for Disease Control and Prevention: Chikungunya Virus: Clinical Testing and Diagnosis for Chikungunya Virus Disease.May 15, 2024.Accessed June 16, 2025.
2.Centers for Disease Control and Prevention: Chikungunya Virus: Clinical Signs and Symptoms of Chikungunya Virus Disease.May 15, 2024.Accessed June 16, 2025.
3.Bartholomeeusen K, Daniel M, LaBeaud DA, et al: Chikungunya fever [published correction appears in Nat Rev Dis Primers 2023 May 19;9(1):26. doi: 10.1038/s41572-023-00442-5]. Nat Rev Dis Primers 9(1):17, 2023.Published 2023 Apr 6.doi:10.1038/s41572-023-00429-2
チクングニア熱の治療
支持療法
チクングニア熱の治療は対症療法であり,具体的には安静,輸液,鎮痛薬および解熱薬の使用などがある。急性の発熱および疼痛には,非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)を使用できる。ただし,デング熱の流行地域では,デング熱を除外できるまで出血リスクを低減するため,アセトアミノフェンが解熱および関節痛に対する第一選択の治療として推奨される。
チクングニア熱の予防
チクングニア熱の予防としては,蚊の刺咬を回避するとともに,ワクチンを接種する(1)。チクングニア熱ワクチンは,単回接種の弱毒ウイルスワクチンである。海外渡航や実験業務によりチクングニアウイルスへの曝露リスクが高い18歳以上の人に使用することができる。易感染者には投与すべきでない。米国食品医薬品局(Food and Drug Administration:FDA)は,入院,脳炎,死亡を含む重篤な有害事象の発生を受けて,弱毒生ウイルスワクチンの認可を停止している。(FDA Update on the Safety of Ixchiq (Chikungunya Vaccine, Live). FDA Suspends Biologics License: FDA Safety Communicationを参照のこと。)
ウイルス様粒子である(ウイルス自体ではない)分子を用いる第2のワクチンも開発され,流行地域への渡航者やリスクのある実験室職員など,曝露リスクが高い12歳以上的人に使用可能。
予防に関する参考文献
1.Centers for Disease Control and Prevention: Chikungunya Virus: Chikungunya Vaccine Information for Healthcare Providers.May 16, 2025.Accessed June 16, 2025.



