銅中毒

執筆者:Larry E. Johnson, MD, PhD, University of Arkansas for Medical Sciences
レビュー/改訂 2020年 5月
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銅は体内の多数のタンパク質の構成要素であり,体内の銅のほとんどは銅タンパク質と結合している。結合していない(遊離)銅イオンには毒性がある。遺伝的機序により,銅のアポタンパク質への組み込みおよび体内への有毒な銅蓄積を防ぐプロセスが制御される。代謝必要量を超えて吸収された銅は,胆汁を介して排泄される。

銅中毒は,後天性のこともあれば,遺伝性のこともある(ウィルソン病として遺伝)。(ミネラル欠乏症および中毒の概要も参照のこと。)

後天性銅中毒は,過剰な銅の摂取または吸収(例,銅の容器に長期間接触した酸性の食品または飲料の摂取)から生じうる。悪心,嘔吐,および下痢を伴う,自然治癒する胃腸炎が起こることがある。

より重度の中毒が,銅塩(例,硫酸銅)のグラム単位の摂取(通常は自殺企図による),または皮膚を介した大量吸収(例,銅塩の溶液に浸した湿布を広範囲の皮膚熱傷部に貼付した場合)から生じる。溶血性貧血および無尿を来すことがあり,死に至ることもある。

Indian childhood cirrhosis(インド小児肝硬変),non-Indian childhood cirrhosis(非インド小児肝硬変),および特発性銅中毒は,おそらく過剰な銅により肝硬変を来す同一の疾患である。いずれも,腐食した銅もしくは真鍮の容器で沸かしたまたは保存したミルクを摂取することによって起こると思われる。研究では,特発性銅中毒が未知の遺伝的欠陥をもつ乳児だけに発生しうることが示唆されている。

後天性銅中毒の診断には通常,肝生検(マロリー硝子体を認める可能性がある)を必要とする。

銅中毒の治療

  • キレート化

  • 支持療法

グラム単位の銅の摂取による銅中毒に対しては,迅速な胃洗浄を行う。溶血性貧血,無尿症,肝毒性などの合併症を引き起こす銅中毒は,以下を併用するキレート療法でも治療可能である:

  • ペニシラミンを経口で250mg,6時間毎~750mg,12時間毎(1000~1500mg/日,1日2~4回)

  • ジメルカプロール3~5mg/kg,筋注,4時間毎,2日間,その後4~6時間毎

早期に施行すれば,血液透析が効果的となりうる。

ときに,銅中毒は治療にもかかわらず死に至る。

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