進行性核上性麻痺(PSP)

(Steele-Richardson-Olszewski症候群)

執筆者:Alex Rajput, MD, University of Saskatchewan;
Eric Noyes, MD, University of Saskatchewan
Reviewed ByMichael C. Levin, MD, College of Medicine, University of Saskatchewan
レビュー/改訂 修正済み 2024年 2月
v1044097_ja
意見 同じトピックページ はこちら

進行性核上性麻痺は,眼球の随意運動を進行性に障害し,動作緩慢,進行性体軸性ジストニアを伴う筋強剛,偽性球麻痺,および認知症をもたらす,まれな中枢神経系の変性疾患である。診断は臨床的に行う。治療は症状の緩和に焦点を置く。

運動障害疾患および小脳疾患の概要も参照のこと。)

進行性核上性麻痺の原因は不明である。

基底核および脳幹のニューロンが変性し,異常なリン酸化を示すタウタンパク質を含んだ神経原線維変化も認められる。

進行性核上性麻痺の症状と徴候

進行性核上性麻痺の症状は通常,中年期後期に始まる。

初発症状としては以下のものがある:

  • 首を固定した状態での上方視または下方視の困難や階段昇降の困難

眼球の随意運動,特に下方注視が困難になるが,頭部の受動運動(頸部の屈曲,伸展)で誘発される反射による鉛直方向の眼球運動は正常に保たれる。

動作が緩慢になり,筋肉が硬直し,体軸性ジストニアが生じる。患者は後方に倒れそうになる傾向がある。

嚥下困難,情緒不安定を伴う構音障害(偽性球麻痺),抑うつ,および睡眠障害がよくみられる。安静時振戦が生じる場合がある。

最終的には認知症に至る。多くの患者は約5年以内に生活能力を失い,約10年以内に死亡する(1)。

進行性核上性麻痺には,優勢な症候に基づく臨床病型がいくつか存在する(2):

  • リチャードソン症候群(PSP with Richardson syndrome:PSP-RS):進行性核上性眼筋麻痺と重度の平衡感覚障害を伴う古典的な進行性核上性麻痺(最も頻度の高い病型であり,70%以上の症例が該当する)

  • PSP with predominant Parkinsonism(PSP-P):パーキンソン型の進行性核上性麻痺であり,レボドパに反応し,一過性のわずかな改善が得られる

  • PSP with ocular motor dysfunction(PSP-OM):眼球運動の異常(例,垂直性核上性注視麻痺)を特徴とする

  • PSP with progressive gait freezing(PSP-PGF):進行性のすくみ足を特徴とする

  • PSP with predominant speech and language disorder(PSP-SL):進行性の非流暢性失語または発語もしくは言語障害を特徴とする

  • PSP with predominant frontal presentation(PSP-F):認知障害または行動変化を伴う前頭側頭葉の変性を特徴とする

  • PSP with predominant corticobasal syndrome(PSP-CBS):著明な非対称性の症状を引き起こす大脳皮質基底核症候群を特徴とする

  • PSP with predominant primarily lateral sclerosis(PSP-PLS):原発性側索硬化症に関連する運動ニューロン症状を特徴とする

  • PSP with predominant cerebellar ataxia(PSP-C):小脳徴候を特徴とする

  • PSP with predominant postural instability(PSP-PI):姿勢不安定特徴とする

リチャードソン症候群以外の病型(非古典型[非定型パーキンソニズムと呼ばれる])では,眼筋麻痺が数年遅れることがある。

進行性核上性麻痺では臨床病型毎に異なる特徴がみられる(例,パーキンソン病の特徴,大脳皮質基底核症候群,言語障害,前頭側頭葉の変性徴候,無動,すくみ足)。

症状と徴候に関する参考文献

  1. 1.Cosseddu M, Benussi A, Gazzina S, et al: Natural history and predictors of survival in progressive supranuclear palsy.J Neurol Sci 15:382:105–107, 2017.doi: 10.1016/j.jns.2017.09.043

  2. 2.Höglinger GU, Respondek G, Stamelou M, et al: Clinical diagnosis of progressive supranuclear palsy: The Movement Disorder Society criteria. Mov Disord 32 (6):853–864, 2017.doi:10.1002/mds.26987

進行性核上性麻痺の診断

  • 臨床的評価

進行性核上性麻痺の診断は臨床的に行う(1)。

通常は他の疾患を除外するためにMRIを施行する。進行例のMRIでは,特徴的な中脳の縮小を認め,これは正中矢状断像で最もよく観察され,中脳がハチドリまたは皇帝ペンギンに似た形状を呈する。横断像では,中脳はアサガオのように見えることがある(2)。

診断に関する参考文献

  1. 1.Höglinger GU, Respondek G, Stamelou M, et al: Clinical diagnosis of progressive supranuclear palsy: The Movement Disorder Society criteria.Mov Disord (32) 6,:853–864, 2017.Epub 2017 May 3.doi: 10.1002/mds.26987

  2. 2.Adachi M, Kawanami T, Ohshima H, et al: Morning glory sign: a particular MR finding in progressive supranuclear palsy.Magn Reson Med Sci 3 (3):125–132, 2004.

進行性核上性麻痺の治療

  • 支持療法

PSPの治療では症状の緩和に焦点を置く;抗パーキンソン病薬を使用してもよいが,パーキンソン病患者と比較して,症状が緩和する効果ははるかに小さい。理学療法と作業療法は,患者の移動能力と機能を改善し,転倒リスクを減少させるのに役立つことがある。

PSP患者の予後は不良であるため,患者とその家族にケアに関する事前指示書について早期に話し合うよう勧める。PSPで予想される機能低下として,嚥下困難を伴う早期の認知障害が挙げられる。誤嚥が一般的な死因の1つとなっている。

要点

  • 古典的な進行性核上性麻痺では,首を固定した状態での上方視または下方視の困難や階段昇降の困難が初発症状となる場合がある。

  • 進行性核上性麻痺では臨床病型毎に異なる特徴がみられる(例,パーキンソン病の特徴,大脳皮質基底核症候群,言語障害,前頭側頭葉の変性徴候,無動,すくみ足)。

  • 症状に基づいて診断するが,他の疾患を除外するためにMRIを施行する。

  • 症状の緩和に重点を置き,筋強剛の緩和のためにレボドパおよび/またはアマンタジンを考慮し,理学療法および作業療法を処方する。

quizzes_lightbulb_red
Test your KnowledgeTake a Quiz!
iOS ANDROID
iOS ANDROID
iOS ANDROID