ベイカー嚢胞

(ベイカー嚢腫;膝窩嚢胞;膝窩嚢腫)

執筆者:Deepan S. Dalal, MD, MPH, Brown University
Reviewed ByBrian F. Mandell, MD, PhD, Cleveland Clinic Lerner College of Medicine at Case Western Reserve University
レビュー/改訂 2024年 3月 | 修正済み 2025年 1月
v63203466_ja
意見 同じトピックページ はこちら

ベイカー嚢胞は,膝窩の滑液包が拡大したものである。滑液で満たされており,通常は隣接する関節腔と連絡している。症状としては,疼痛,膝裏の腫脹,膝のこわばり,可動域の減少などがある。診断は通常,臨床的に行うが,臨床所見が確定的でない場合は,超音波検査またはMRIが必要になることがある。症状がみられる場合の治療法としては,非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)のほか,ときにドレナージ,コルチコステロイド注射,嚢胞の外科的切除などがある。

ベイカー嚢胞は滑液で満たされた膝窩の滑液包であり,膝関節の滑液が貯留することによって発生する。大半のベイカー嚢胞は小さく,症状を引き起こさない。それらが大きくなる(5cmを超える)と,患者は膝裏の腫脹として気づくことがある。

ベイカー嚢胞の病因

大半のベイカー嚢胞では,隣接する膝関節腔からの滑液が貯留する。滑液の産生増加は,基礎にある関節疾患によって引き起こされる。膝関節の伸展に伴い,滑液が関節から嚢胞に向かって流れる。ベイカー嚢胞は,小児において膝関節の交通がなくても発生することがある(例,腓腹筋半膜様筋滑液包からのもの)。

ベイカー嚢胞は一般的には以下によって生じる:

  • 膝関節損傷の既往

  • 関節リウマチおよびその他の炎症性関節疾患

  • 変形性関節症

  • 膝関節のオーバーユース

ベイカー嚢胞の症状と徴候

ベイカー嚢胞は無症状のこともあるが,腫脹(例,5cm以上)すると目立つようになる。隣接組織を圧迫すると,通常は膝関節の伸展時に疼痛が生じることがある。嚢胞が大きくなるにつれて,患者は疼痛の悪化,膝のこわばりの増強,および可動域の減少を訴える。嚢胞が破裂することがあり,下肢遠位部の腫脹,紅斑,熱感,および/またはHoman徴候を伴って深部静脈血栓症に類似する。

パール&ピットフォール

  • 特に慢性の膝関節液貯留または急性の膝関節痛がある患者で腓腹部の深部静脈血栓症も疑われる場合には,ベイカー嚢胞破裂を考慮すること。

ベイカー嚢胞の診断

  • 臨床的評価

  • ときに超音波検査

  • ときにMRI

ベイカー嚢胞は膝窩にみられる。患者を立位にして膝を完全に伸展させると,嚢胞がより著明となり硬くなる。

臨床所見が確定的でない場合(例,嚢胞が小さいか疼痛を伴う場合や,深部静脈血栓症や膝窩部の脂肪沈着との鑑別が必要である場合),超音波検査を施行することができる。ときにMRIを施行するが,これは例えば,超音波検査が確定的でない場合や,手術が必要となりうる膝関節内部の障害の有無および特徴を判断するために行う。

発症が急性または亜急性で,炎症が疑われる場合は,感染症または結晶に関連した関節炎を除外するために関節または滑液包の穿刺吸引を施行すべきである(急性の単関節炎の場合と同様)。

ベイカー嚢胞の治療

  • 非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)

  • 関節穿刺およびコルチコステロイド注射

  • まれに嚢胞の外科的切除

無症状の嚢胞については治療を必要としない。非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)が,症候性のベイカー嚢胞に対する主たる治療である。

関節穿刺は,滑液を除去し,疼痛および腫脹を緩和するために行うことができる。関節穿刺およびコルチコステロイド注射は,ときに炎症を治療するために用いられる。嚢胞の穿刺は,ときに超音波ガイド下で行われる。他の治療が効果的でない場合は,嚢胞の外科的切除が代替法となる。

要点

  • ベイカー嚢胞の通常の原因は,損傷の既往,関節リウマチ,変形性関節症,または膝関節のオーバーユースである。

  • 臨床所見が確定的でない場合は,超音波検査または頻度は低いがMRIを行う。

  • 症状がみられる場合,大半の症例はNSAIDで治療し,ときに関節穿刺およびコルチコステロイド注射を用いる。

quizzes_lightbulb_red
Test your KnowledgeTake a Quiz!
iOS ANDROID
iOS ANDROID
iOS ANDROID