ニューモシスチス肺炎(Pneumocystis jirovecii肺炎)

執筆者:Sanjay Sethi, MD, University at Buffalo, Jacobs School of Medicine and Biomedical Sciences
Reviewed ByRichard K. Albert, MD, Department of Medicine, University of Colorado Denver - Anschutz Medical
レビュー/改訂 修正済み 2024年 2月
v13384755_ja
意見 同じトピックページ はこちら

Pneumocystis jiroveciiは非典型的な真菌であり,免疫抑制患者,特にヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染患者およびコルチコステロイドの全身投与を受けている患者における肺炎の一般的な起因菌である。症状としては,発熱,呼吸困難,乾性咳嗽などがある。診断には,誘発または気管支鏡によって採取した喀痰検体における起因菌の証明が必要である。治療は抗菌薬によって行い,通常トリメトプリム/スルファメトキサゾールもしくはジアフェニルスルホン(ダプソン) + トリメトプリム,クリンダマイシン/プリマキン,アトバコン,またはペンタミジンを用いる。PaO2< 70mmHgまたは酸素飽和度 < 92%の患者にはコルチコステロイドの全身投与を行う。時宜を得た治療を行えば,一般に予後は良好である。

肺炎の概要および易感染性患者における肺炎も参照のこと。)

Pneumocystis jiroveciiは普遍的な微生物であり,エアロゾルによって伝播されるが,免疫能の正常な患者では疾患を引き起こすことはない。しかしながら,次のような患者はP. jirovecii肺炎を発症するリスクがある:

  • HIV感染がありCD4陽性T細胞数 < 200/μLまたは < 14%の患者

  • 臓器移植レシピエント

  • 造血器腫瘍の患者

  • コルチコステロイドまたはその他の免疫抑制薬を使用している患者

効果的な抗レトロウイルス療法の登場により,HIV感染患者におけるPneumocystis jirovecii感染症の発生率は劇的に低下している。しかしながら,自身がHIVに感染していることを知らない患者や抗レトロウイルス療法を受けていない患者では,P. jirovecii肺炎を発症するリスクが依然として高い。

大半の患者には,発熱,呼吸困難,および乾性咳嗽があり,乾性咳嗽は数週間(HIV感染症),または数日間(細胞性免疫不全のその他の原因)にわたり進行する。呼吸困難がよくみられる。

ニューモシスチス肺炎の診断

  • 胸部X線

  • パルスオキシメトリー

  • 病理組織学的確定

身体診察では,大半の患者で発熱および頻呼吸が認められる。Pneumocystis jirovecii肺炎を診断するためには,胸部X線およびパルスオキシメトリーによる酸素化の評価を行うべきである。

胸部X線は両側性びまん性の肺門周囲の浸潤影を示すのが特徴的であるが,20~30%の患者ではX線所見は正常である。胸部X線が正常であっても,CTでしばしばすりガラス様の浸潤影を認める。

胸部X線で浸潤影を認めない場合でも,低酸素血症が存在する可能性がある;この所見は診断に重要な手がかりとなりうる。パルスオキシメトリーが正常であれば,肺胞気-動脈血酸素分圧較差の開大を評価するためにしばしば動脈血ガス分析が施行される。

パール&ピットフォール

  • 乾性咳嗽および胸部X線またはパルスオキシメトリーに異常所見を認める免疫抑制患者では,P. jirovecii肺炎に対するさらなる検査を行う。

肺機能検査を行った場合,拡散能異常を示す(ただし,肺機能検査がPneumocystis jirovecii肺炎の診断検査として行われるのはまれである)。

医学計算ツール(学習用)

血清β-Dグルカンおよび乳酸脱水素酵素(LDH)の上昇は非特異的であるが,診断の補助になることがある。

診断の確定には,呼吸器検体中のPneumocystis jirovecii証明が必要である。PCR法による検出が最も診断率が高い。モノクローナル抗体による直接蛍光抗体染色法がしばしば用いられる。メテナミン銀染色,ギムザ染色,ライト-ギムザ染色,グロコット染色(modified Grocott),またはワイゲルト-グラム染色が用いられるが,感度はより低い。適切な呼吸器検体としては,喀痰検体(通常は誘発による)や気管支肺胞洗浄または気管からの吸引(挿管患者の場合)などがある。誘発喀痰で陰性の場合は,気管支鏡を用いる洗浄の方が感度がはるかに高いため,これを行うべきである。

ニューモシスチス肺炎の治療

  • トリメトプリム/スルファメトキサゾール

  • 室内気下での呼吸時に動脈血酸素分圧(PaO2)が70mmHg未満またはパルスオキシメトリーが92%未満であれば,コルチコステロイド

治療は,トリメトプリム/スルファメトキサゾール(TMP/SMX)による。P. jiroveciiのシストは肺内に何週間も残存するため,治療は診断が確定する前に開始してよい。治療の有害作用は後天性免疫不全症候群(AIDS)患者でより頻度が高く,発疹,好中球減少,肝炎,および発熱などがみられる。

同様に21日間投与できる代替レジメンとして,以下のものがある:

  • トリメトプリムとジアフェニルスルホン(ダプソン)の併用

  • クリンダマイシン + プリマキン

  • ペンタミジン

  • アトバコン(軽症肺炎に対して)

ペンタミジンの主な制約は,急性腎障害,低血圧,低血糖などの有害作用の発生頻度が高いことである。

室内気下での呼吸時にPaO2< 70mmHgまたはパルスオキシメトリー < 92%の患者には,コルチコステロイドによる補助療法が推奨されている。コルチコステロイドの用量は21日間かけて減量する。

ニューモシスチス肺炎の予後

入院患者におけるP. jirovecii肺炎の全死亡率は高い。死亡の危険因子には,P. jirovecii肺炎の既往,高齢,およびHIV感染患者におけるCD4陽性T細胞数 < 50/μLなどがある。

ニューモシスチス肺炎の予防

P. jirovecii肺炎に罹患したことがあるかCD4陽性T細胞数が200/μL未満のHIV感染患者には,予防的にTMP/SMXを投与すべきである;この抗菌薬に耐えられない場合は,ジアフェニルスルホン(ダプソン)またはペンタミジンのエアロゾルを用いてもよい。これらの予防的レジメンは,HIVに感染していないがP. jirovecii肺炎のリスクがある多く患者でも同様に適応となる。

要点

  • 呼吸器症状が軽度で,胸部X線所見が正常であっても,免疫抑制患者ではP. jirovecii肺炎を考慮する。

  • 誘発喀痰または気管支鏡により採取した検体の病理組織学的検査を行う。

  • トリメトプリム/スルファメトキサゾールにより治療し,またPaO2< 70mmHgである場合はコルチコステロイドを追加する。

quizzes_lightbulb_red
Test your KnowledgeTake a Quiz!
iOS ANDROID
iOS ANDROID
iOS ANDROID