呼吸リハビリテーションとは,慢性呼吸器疾患を有する患者の機能を改善し,生活の質を高めるために,監督下での運動,教育,支援,行動療法を行うことである(1)。
慢性呼吸器疾患の多くの患者にとって,内科的治療は,疾患の症状および合併症を部分的に軽快させるに過ぎない。呼吸リハビリテーションの包括的プログラムにより,以下のようなかなりの臨床的改善がもたらされる可能性がある:
息切れが減る
運動耐容能が高まる
より程度は低いが,呼吸リハビリテーションによって,慢性閉塞性肺疾患(COPD)の増悪で入院した患者の入院回数および死亡率も低下するようである。小規模なランダム化試験のメタアナリシスから得られたエビデンスは(2),COPD患者の大規模な後ろ向きコホートを対象としたその後の解析によって支持されており,退院後3カ月以内に呼吸リハビリテーションを開始することで,1年以内の死亡リスクと再入院回数の両方が有意に低下することが示されている(3, 4)。バイアスの可能性があるため,これらの知見の妥当性をより大規模なランダム化臨床試験で確認する必要がある。
呼吸リハビリテーションプログラム
呼吸リハビリテーションは病院または診療所で実施されることが最も多いものの,代替戦略としては,在宅でのケア,遠隔リハビリテーション,インターネットベースのプログラム,最小限の資源で済むプログラムなどがある。心臓リハビリテーションと呼吸リハビリテーションを組み合わせたプログラムもある。これらのモデルの有効性を実証するための臨床試験が進行中である(1)。
どのモデルを用いるかにかかわらず,呼吸リハビリテーションの基本的要素は専門家のコンセンサスによって確立されており,以下の4つの領域に分けられる(1):
患者の評価
プログラムの構成要素
実施の方法
質の保証
呼吸リハビリテーションを開始する前に,医療従事者が最初に患者の身体機能のベースラインの状態および呼吸リハビリテーションのニーズを評価する。この評価は病院の呼吸リハビリテーションセンターで実施され,以下の項目が含まれる:
検査室ベースの運動負荷試験(自転車エルゴメーターによる漸増負荷試験または定常負荷試験,トレッドミルによる漸増負荷試験または定常負荷試験)
屋外での運動負荷試験(6分間または12分間歩行試験,漸増負荷下または定常負荷下でのシャトルウォーキングテスト)
生活の質の測定
職業状態の評価
十分な呼吸リハビリテーションプログラムは,持久力トレーニングとレジスタンストレーニングの両方で構成される。患者の状態と目標に合わせてプログラムを処方し,定期的に進捗を評価する。ケアチームには理想的には,運動の専門知識を有する人と,リハビリテーションの実施について訓練を受けた医療提供者を含めるべきである。
適応
以前は,呼吸リハビリテーションは以下を有する患者に限って行われていた:
重症COPD(慢性閉塞性肺疾患)
しかしながら,以下を有する患者への有益な効果を示唆するエビデンスが増えている:
肺高血圧症の患者には,運動に基づくリハビリテーションが有益であり,運動耐容量が改善する(5)。COVID-19患者を対象とした研究では,呼吸リハビリテーションにより肺機能の回復が加速した(6)。
大半のCOPD患者では,病期を問わず呼吸リハビリテーションが有益である。安定しており,かつ中等症から重症のCOPD患者に対し,ガイドラインは呼吸リハビリテーションに参加することを推奨している(7, 8)。さらに,急性増悪により入院したCOPD患者も,退院後3週間以内に呼吸リハビリテーションに紹介すべきである。COPD患者を対象にした研究の示唆するところによると,呼吸リハビリテーションはCOPDが重症化(すなわち,気流閉塞が悪化)する前に開始すべきであり,これは疾患重症度と運動能力にあまり相関はないと考えられるためである。さらに,より軽症の患者でも,呼吸困難の減少,運動耐容能の改善,筋力の改善,コンディショニング,心肺生理機能の改善,動的過膨張の軽減,および呼吸リハビリテーションに伴う心理的効果によって,便益が得られる可能性が高い(9)。
禁忌
禁忌は相対的なもので,患者の運動レベルを高める試みを困難にする併存疾患(例,未治療の狭心症,左室機能障害)などがある。しかしながら,これらの併存疾患は,呼吸リハビリテーションプログラムの他の要素の利用を妨げるものではない。
合併症
呼吸リハビリテーションには,身体活動および運動から予測できるもの以上の合併症はない。
手技
呼吸リハビリテーションは以下の総合的プログラムの一環として実施するのが最もよい:
運動トレーニング
呼吸筋訓練
教育
心理社会的評価および行動評価
呼吸リハビリテーションは,医師,看護師,呼吸療法士,理学療法士,作業療法士,および心理士またはソーシャルワーカーから成るチームによって行われる。内容は個別化し,個々の患者の需要に合わせて調整すべきである。呼吸リハビリテーションは,疾患のどの段階から始めることも可能であり,目標は疾患による負担および症状を最小化することとする。
運動トレーニングとして,有酸素運動ならびに呼吸筋および四肢の筋力トレーニングを行う。四肢の筋力トレーニングおよびインターバルトレーニングの両方を行うことを支持するエビデンスが増えている。インターバルトレーニングとは,短時間(例,30秒)の強度の高い運動と,長時間(例,2分間)の強度を下げた運動を交互に行うトレーニングである。
吸気筋トレーニング(IMT)も呼吸リハビリテーションに含まれることが多い。IMTでは,装置を用いて患者の最大吸気圧の何十%かの負荷をかける。IMTと呼吸リハビリテーションとの併用によって,患者の吸気筋力が改善しうるが,この改善が息切れの軽減や生活の質または機能パラメータの改善につながるわけではない(10)。
教育には多くの要素がある。禁煙の必要性についてのカウンセリングは重要である。必要に応じて栄養カウンセリングも行うとよい。呼吸法の指導(口すぼめ呼吸により,呼気がすぼめられた唇に当たり,呼吸数が減少し,その結果エアトラッピングが少なくなるなど)および身体エネルギーをうまく使うための原理の説明が役に立つ。適応,適切な使用,および吸入薬の正しい投与などの,治療に関する教育が重要である。
心理社会療法には,患者の社会活動への全面的参加を妨げる抑うつ,不安,および恐怖に関するカウンセリングならびにフィードバック【訳注:成果を評価して行動を修正できるようにアドバイスをしたり支援すること】がある。行動修正戦略および自己管理の強調は,呼吸リハビリテーションの要となる要素である。このような戦略として,目標設定および問題解決,意思決定,薬剤のアドヒアランス,ならびに決められた運動および身体活動の維持を促す手法などがある(1)。
最適な維持戦略は不明であるが,呼吸リハビリテーションの有益な効果を維持するためには,運動プログラムへ参加し続けることが不可欠である。
総論の参考文献
1.Holland AE, Cox NS, Houchen-Wolloff L, et al: Defining Modern Pulmonary Rehabilitation.An Official American Thoracic Society Workshop Report.Ann Am Thorac Soc 18(5):e12–e29, 2021. doi: 10.1513/AnnalsATS.202102-146ST
2.Ryrsø CK, Godtfredsen NS, Kofod LM, et al: Lower mortality after early supervised pulmonary rehabilitation following COPD exacerbations: A systematic review and meta-analysis.BMC Pulm Med 18(1):154, 2018.doi: 10.1186/s12890-018-0718-1
3.Lindenauer PK, Stefan MS, Pekow PS, et al: Association between initiation of pulmonary rehabilitation after hospitalization for COPD and 1-year survival among Medicare beneficiaries.JAMA 323(18):1813–1823, 2020. doi: 10.1001/jama.2020.4437
4.Stefan MS, Pekow PS, Priya A, et al: Association between initiation of pulmonary rehabilitation and rehospitalizations in patients hospitalized with chronic obstructive pulmonary disease.Am J Respir Crit Care Med 204(9):1015-1023, 2021.doi: 10.1164/rccm.202012-4389OC
5.Morris NR, Kermeen FD, Holland AE: Exercise-based rehabilitation programmes for pulmonary hypertension.Cochrane Database Syst Rev 1(1):CD011285, 2017. doi: 10.1002/14651858.CD011285.pub2
6.Zhu P, Wang Z, Guo X, et al: Pulmonary rehabilitation accelerates the recovery of pulmonary function in patients With COVID-19.Front Cardiovasc Med 8:691609, 2021. doi: 10.3389/fcvm.2021.691609
7.Global Initiative for Chronic Obstructive Lung Disease: Global Strategy for Prevention, Diagnosis and Management, and Prevention of COPD (2024 GOLD report).
8.Rochester CL, Alison JA, Carlin B, et al: Pulmonary Rehabilitation for Adults With Chronic Respiratory Disease: An Official American Thoracic Society Clinical Practice Guideline.Am J Respir Crit Care Med 208(4):e7-e26, 2023.doi:10.1164/rccm.202306-1066ST
9.Rochester CL, Vogiatzis I, Holland AE, et al: An Official American Thoracic Society/European Respiratory Society Policy Statement: Enhancing Implementation, Use, and Delivery of Pulmonary Rehabilitation.Am J Respir Crit Care Med 192:1373–1386, 2015.doi: 10.1164/rccm.201510-1966ST
10.Beaumont M, Mialon P, Le Ber C, et al: Effects of inspiratory muscle training on dyspnoea in severe COPD patients during pulmonary rehabilitation: Controlled randomised trial.Eur Respir J 51:1701107, 2018. doi: 10.1183/13993003.01107-2017



