自己免疫疾患

執筆者:James Fernandez, MD, PhD, Cleveland Clinic Lerner College of Medicine at Case Western Reserve University
Reviewed ByBrian F. Mandell, MD, PhD, Cleveland Clinic Lerner College of Medicine at Case Western Reserve University
レビュー/改訂 修正済み 2024年 8月
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やさしくわかる病気事典

自己免疫疾患とは免疫系が正常に機能しなくなり、体が自分の組織を攻撃してしまう病気です。

  • 自己免疫疾患の原因は不明です。

  • 症状は、自己免疫疾患の種類および体の中で攻撃を受ける部位によって異なります。

  • 自己免疫疾患を調べるために、しばしばいくつかの血液検査が行われます。

  • 治療法は自己免疫疾患の種類によって異なりますが、免疫機能を抑える薬剤がしばしば使用されます。

アレルギー反応の概要も参照のこと。)

免疫系異物や危険物質から体を守るためには、まず免疫系がそれらを認識しなければなりません。このような物質には、細菌、ウイルス、蠕虫などの寄生虫、特定のがん細胞がありますが、このほかに移植された臓器や組織を異物と認識してしまうこともあります。これらの物質には、免疫系が認識し、免疫系による反応を刺激する分子が含まれています。これらの分子を抗原と呼んでいます。抗原は細胞内にあったり、細胞(細菌やがん細胞など)の表面にあったり、ウイルスの一部であったりします。花粉や食物の分子などは、それ自体が抗原となります。

特定の白血球(B細胞T細胞)は、抗原に遭遇すると、それを攻撃する方法を学習し、そうすることで危険な可能性のある抗原から身体を守ります。B細胞は抗体を作りますが、これは抗原に対する体の免疫による主な防御機構の1つです。抗体は特定の抗原にしっかりと結合し、それを攻撃するための目印になるか、直接無力化します。体は数千もの様々な抗体を生産します。それぞれの抗体は、特定の抗原に特異的に反応します。免疫系の細胞は特定の抗原を記憶しているため、次にそれに遭遇したときに、より効率的に攻撃することができます。

それぞれの人の組織内細胞にも抗原が含まれています。しかし、通常であれば免疫系は異物や危険な物質に対してだけ反応し、自己の組織の抗原には反応しません。ただし、ときに免疫系が正常に機能しなくなり、自己の組織を異物と認識して自己抗体と呼ばれる抗体や免疫細胞を生産し、これらが特定の細胞や組織を標的にして攻撃します。この反応を自己免疫反応と呼び、炎症と組織の損傷を引き起こします。こうした反応は自己免疫疾患の症状である場合がありますが、多くの人では作られる自己抗体の量がごく少量であるため、自己免疫疾患は起こりません。血液中に自己抗体があるからといって、自己免疫疾患があるわけでもありません。

自己免疫疾患には様々なものがあります。特に多くみられる自己免疫疾患には、バセドウ病関節リウマチ橋本甲状腺炎1型糖尿病全身性エリテマトーデス(ループス)、血管炎などがあります。自己免疫性と考えられているその他の疾患には、アジソン病多発性筋炎シェーグレン症候群、進行性の全身性強皮症、多くの糸球体腎炎(腎臓の炎症)、一部の不妊症などがあります。

自己免疫疾患の原因

自己免疫反応は以下のように、いろいろなものが引き金になって起こります。

  • 体内の正常な物質がウイルス、薬、日光、放射線などの影響で変化し、変化した物質を免疫系が異物と認識することがあります。例えばウイルスに感染すると体の細胞が変化します。この細胞が免疫系を刺激し、攻撃を促します。

  • 体にもともと存在する物質によく似た異物が体外から入ってきたときに、免疫系が異物を攻撃する際に気づかずに、体内にあったよく似た物質も標的にしてしまうことがあります。例えば、レンサ球菌咽頭炎を起こす細菌は人間の心臓細胞に存在する物質と似た抗原をもっています。まれに、レンサ球菌咽頭炎の後に免疫系が心臓を攻撃することもあります(この反応はリウマチ熱の一部です)。

  • 抗体の産生を調節する細胞、例えば白血球の一種であるB細胞が正常に機能しなくなり、体の細胞を攻撃する異常な抗体を産生する場合があります。

  • 免疫反応に関与する別の種類の白血球であるT細胞もまた、機能不全を起こして体の細胞に損傷を与えることがあります。

  • 正常な状態では体内の特定の領域にとどまり免疫系の標的にならない物質が血流の中に放出されてしまった場合も、それが引き金になります。例えば、眼をぶつけると眼球の中の液体が血流に流れ出します。この液体の刺激によって免疫系が眼を異物と認識し、攻撃します。

ある人に自己免疫反応または疾患が発生する引き金となっても、別の人ではならない物質が存在する理由は大体が不明です。しかし、ときに遺伝が関与していることがあります。自己免疫疾患を発症する可能性を、わずかではありますが高める遺伝子をもつ人もいます。病気そのものではなく、このようにわずかに高い自己免疫疾患の起きやすさが遺伝します。このように、もともと自己免疫疾患になりやすい人はウイルス感染や組織の損傷などが引き金になって発症します。

多くの自己免疫疾患は、女性により多くみられます。

自己免疫疾患の症状

症状は疾患の種類と、侵された体の部位により様々です。例えば血管、軟骨、皮膚などの特定の組織が全身で侵される疾患もあれば、決まった臓器だけが侵される疾患もあります。決まった臓器だけが侵される疾患もあります。腎臓、肺、心臓、脳を含め、事実上いかなる臓器も侵される可能性があります。発症すると炎症と組織の損傷が起こり、痛み、関節の変形、脱力感、黄疸、かゆみ、呼吸困難、体液貯留(浮腫)、せん妄が現れて、死亡することすらあります。

自己免疫疾患の診断

  • 血液検査

自己免疫疾患は症状に基づいて疑われます。診断の確定を助けるために、医師はいくつかの臨床検査を行います。

血液検査で炎症が起きていることが分かれば、自己免疫疾患の診断に役立つことがあります。そのような検査には、次のものがあります。

  • 赤血球沈降速度(赤沈):この検査では、血液の入った試験管の底に赤血球が沈澱する速さを測定します。炎症があると、それに反応してつくられるタンパク質によって、赤血球が血液中に浮遊する能力が抑制されるため、赤沈がしばしば高くなります。

  • C反応性タンパク質(CRP): この検査では、全般的な炎症も測定します。CRPは、活動性の自己免疫疾患などの炎症が起きたときに肝臓から放出されるタンパク質です。

  • 血算(CBC):この検査には、血液中の赤血球数測定も含まれます。炎症があると、生産される赤血球の数が減少するため、赤血球数が減少します(貧血)。

炎症は様々な原因で起こり、その大半は自己免疫疾患と関係ありません。そのため医師はしばしば血液検査も行い、特定の自己免疫疾患にかかった患者に現れる様々な抗体の有無を調べます。このような抗体の例として、以下があります。

しかし、これらの抗体でも、ときに自己免疫疾患ではない人に検出されるため、医師は通常、検査結果と患者の徴候と症状を組み合わせて自己免疫疾患の診断を行います。

知っていますか?

  • 自己免疫疾患を発症する可能性を、わずかではありますが高める遺伝子をもつ人もいます。

  • 自己免疫疾患では、事実上いかなる臓器も侵される可能性があります。

自己免疫疾患の治療

  • コルチコステロイドなどの免疫抑制薬

  • 一部の自己免疫疾患に対して、血漿交換と免疫グロブリン製剤の静脈内投与

薬物治療

アザチオプリン、クロラムブシル、シクロホスファミド、シクロスポリン、ミコフェノール酸モフェチル、メトトレキサートなどの免疫機能を抑える薬剤(免疫抑制薬)を長期間にわたって内服します。しかし、これらの薬は自己免疫反応を抑えるだけでなく、感染症の原因となる微生物やがん細胞を含む異物から自分の体を守る能力も抑制してしまうため、結果としてある種の感染症やがんを発症するリスクを高めます。

プレドニゾン(日本ではプレドニゾロン)などのコルチコステロイドを通常は服用します。コルチコステロイドは炎症を鎮めますが、免疫系も抑制するため、コルチコステロイドは長期にわたって用いると様々な副作用が起こります。したがって、できればコルチコステロイドは疾患の初期、または症状が悪化したときに短期間だけ使うようにします。ただし、場合によっては一生使い続けなければなりません。

多発性硬化症や甲状腺疾患など、ある種の自己免疫疾患の治療には免疫抑制薬とコルチコステロイド以外の薬も使います。また、症状を和らげるための治療が必要になることもあります。

エタネルセプト、インフリキシマブ、アダリムマブは、体内で炎症を起こす腫瘍壊死因子(TNF)の作用を妨げる薬です。これらの薬は関節リウマチなどの一部の自己免疫疾患の治療に非常に効果的ですが、多発性硬化症などの特定の自己免疫疾患の治療に使用すると逆に有害なことがあります。また、感染症とある種の皮膚がんを発症するリスクを高める可能性もあります。

薬の中には特に白血球を標的とするものがあります。白血球には体を感染症から守る働きがあるとともに、自己免疫反応にも関与しています。このような薬には以下のものがあります。

  • アバタセプトは、白血球の一種であるT細胞の作用を妨げる薬で、関節リウマチの治療に使用されます。

  • リツキシマブは、白血球の仲間であるB細胞を減少させるため、当初は、ある種の白血球のがんの治療に使用されていました。関節リウマチや、血管の炎症(血管炎)を引き起こす特定の疾患(多発血管炎性肉芽腫症[以前はウェゲナー肉芽腫症と呼ばれていた]など)のような一部の自己免疫疾患で効果的です。リツキシマブは、他の様々な自己免疫疾患で研究段階にあります。

ほかに白血球を標的とする薬の開発が進んでいます。

血漿交換と免疫グロブリン製剤の静脈内投与

一部の自己免疫疾患の治療には血漿交換が用いられます。まず血液を採取し、ろ過を行い、自己抗体などの異常なタンパク質を取り除きます。その後、ろ過した血液を患者の体内に戻します。

一部の自己免疫疾患の治療では免疫グロブリン製剤の静脈内投与(ヒトの血漿中の抗体を精製して製造され静脈内投与される)を行います。その作用機序は不明です。

自己免疫疾患の予後

自己免疫疾患の中には、原因が分からないまま発症し、自然に治癒するものもあります。しかし、ほとんどは慢性の病気で、たいていは生涯にわたって薬で症状をコントロールする必要があります。

予後は、疾患によって異なります。

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