加齢黄斑変性についてのよくある疑問にお答えします
加齢黄斑変性は、高齢者において最もよくみられる網膜疾患の1つです。完全な視力障害には至りませんが、加齢黄斑変性では網膜中央部の視力が障害されます。視力障害は進行する可能性があり、最終的には運転、読書、さらには顔を認識する能力にも影響が及びます。
加齢黄斑変性には異なる病型があり、進行は人によって異なる可能性があります。加齢黄斑変性と診断された人を見守る立場の人にとっては、この病気について、そしてこの病気が日常生活に及ぼす影響についての理解を深めることが極めて大切です。ここでは、加齢黄斑変性に関してよく寄せられる疑問にお答えします。
加齢黄斑変性とはどのような病気でしょうか?
眼をカメラに例えると、網膜はフィルムのようなものです。網膜で光が電気信号に変換されて脳に送られます。網膜の中心には黄斑と呼ばれる最も大切な場所があります。加齢に伴い、黄斑部にドルーゼンと呼ばれる斑が形成されることがあります。これは加齢による皮膚のしみと似ています。結果として、中心視力が徐々に低下し、細かい部分が見えなくなっていきます。直線が波打って見えることもあります。
滲出型加齢黄斑変性と萎縮型加齢黄斑変性はどう違うのでしょうか?
加齢黄斑変性には萎縮型と滲出型の2つの病型があります。最初は、すべての加齢黄斑変性が萎縮型です。萎縮型加齢黄斑変性では、特徴としてドルーゼンの沈着がみられ、細胞が消失するにつれて黄斑の組織が薄くなっていきます。
萎縮型加齢黄斑変性では、数年かけて中心視力が徐々に損なわれていきます。痛みはありません。症状がほとんどまたはまったくない人もいますが、症状がある場合は、多くの場合、両眼にみられます。病気が進行するにつれ、視野の中央に盲点(暗点)が現れ、視力が大幅に損なわれることがあります。
萎縮型加齢黄斑変性の約10~15%が滲出型加齢黄斑変性に進行します。滲出型加齢黄斑変性では、損傷を受けた黄斑の下で異常な血管が成長し、体液や血液がそこから漏れ出すようになります(「滲出型」と呼ばれているのはこのためです)。これらの異常な血管により視力障害が急速に進行します。最終的に、黄斑の下に盛り上がった瘢痕組織ができます。滲出型加齢黄斑変性は、最初、片方の眼だけに起こりますが、いずれ、反対の眼にも起こります。
加齢黄斑変性の原因は何ですか?
加齢黄斑変性は1つの原因だけで起こるわけではありません。時間をかけて発症する変性疾患であり、50歳以上の人に最もよくみられます。この病気になりやすい体質が家族の中で受けつがれる可能性がありますが、家族歴があるからといって確実に発症するわけではありません。
喫煙、栄養不良、高血圧、心血管疾患など、いくつかの危険因子によって加齢黄斑変性になる可能性が高まることがあります。
加齢黄斑変性は予防できますか?
加齢黄斑変性のリスクを低下させる最善の方法には、喫煙をしないこと、血圧をコントロールすること、運動を続けること、健康的な食事をとる(特に魚や濃い緑色の葉野菜に含まれるオメガ3脂肪酸が豊富な食事をとる)ことなどがあります。
加齢黄斑変性に対するスクリーニングの普遍的なガイドラインはありませんが、家族歴のある人は、点眼薬で瞳孔を散大して行う眼の診察を、50歳頃から受けるようにしましょう。さらに、加齢黄斑変性と診断された人で、視力の変化に気づいた場合は、直ちに眼科医の診察を受けるようにします。滲出型加齢黄斑変性への進行がみつかって治療を始めるのが早いほど、視力が維持される可能性が高くなります。
加齢黄斑変性はどのように治療しますか?
少なくとも片眼に中期または進行期の加齢黄斑変性がある場合には、疾患の進行を遅らせるために、特定の栄養補助食品(AREDS2サプリメント)が推奨されます。
滲出型加齢黄斑変性では、異常な血管からの漏出を阻止するために、薬剤を眼内に直接注射することがあります(硝子体内注射)。このような治療により視力障害のリスクが有意に低下し、約3分の1の人では読書に必要な視力が回復することがあります。
加齢黄斑変性によって重度の視力障害がみられる場合には、医師は以下のことも行います:
- 目の奥にも注射をする
- レーザーまたは光を用いた治療により異常な血管を閉鎖する
- 拡大鏡、特殊な老眼鏡、電子機器などのロービジョン補助具を勧める
- 場合によっては、中心視力を改善するために眼内に小型の単眼鏡を埋め込む
加齢黄斑変性になっても運転できるでしょうか?
加齢黄斑変性になると、運転できなくなるのではないかと心配する人が多く、この心配はもっともなことです。多くの人にとって、運転することは自立のための中心的要素でもあります。幸いなことに、萎縮型加齢黄斑変性ではほとんどの場合、特に早期の段階では、安全に運転を続け、読書をするのに十分な視力が保たれます。しかしながら、加齢黄斑変性は進行性の疾患であるため、視力の変化を定期的にモニタリングすることが大切です。
加齢黄斑変性の人を見守る立場の人に役に立つ指針があります。加齢黄斑変性の人が運転する車に乗ったときに、もし安全ではないと感じたら、それが眼科医の診察を受けるように勧めるタイミングです。
運転以外にも、加齢黄斑変性は多くの日常活動に影響を及ぼす可能性がありますが、近くを見る視力と遠くを見る視力の両方を補助する優れたロービジョン器具などが利用できます。まずは眼科医の診察を受けましょう。眼科医は現在の視力に基づいて適切な補助具または専門医療を勧めることができます。
この分野は急速に進歩しています。新しい治療や技術が常に生まれています。視力障害があったとしても、希望を持ち続ける本当の理由があります。
加齢黄斑変性に関する詳しい情報については、「MSDマニュアル」または「やさしくわかる病気事典」の該当するページをご覧ください。
