骨盤痛が子宮内膜症である可能性 医師と相談すべき3つの徴候-コメンタリー
コラム19年3月27日 James H. Liu, MD, Professor and Chair, Departments of Obstetrics and Gynecology and Reproductive Biology, UH Cleveland Medical Center, Case Western Reserve University School of Medicine

骨盤痛に苦しむ女性にとって、痛みは時に耐えがたく、しばしば不安とフラストレーションを伴います。痛みの原因はなにか、どうすれば痛みを取り除けるのかを突き止めることは、患者当人や担当医師にとって現実的な課題です。

米国の子宮内膜症啓発月間は、そんな子宮内膜症について少しでも学ぶのにふさわしい月です。子宮内膜症は、骨盤痛の原因の1つであり、数年にわたり診断されないことがあります。

子宮内膜症は、子宮内膜細胞が卵管、卵巣、大腸、小腸などの子宮外組織に癒着した時に発症します。通常、子宮内膜細胞は、女性の子宮内で月経周期に伴い増殖します。卵子が受精しないと、子宮内膜層は経血の一部として剥がれ落ちます。子宮内膜症の女性では、本来は子宮内膜細胞がない部位に癒着した子宮内膜細胞が月経周期に伴い増殖し、剥がれ落ちることから、出血、激しいけいれん、痛みが引き起こされます。

子宮内膜症は全女性の6~10%に発症し、骨盤痛のある女性の4分の3にみられます。子宮内膜症は不妊症を引き起こす可能性があり、不妊症の女性では子宮内膜症がよくみられます。

骨盤痛の原因は特定するのが難しいことがあります

子宮内膜症によって引き起こされる痛みは、多くの場合、月経痛尿路感染症骨盤内炎症性疾患、さらには過敏性腸症候群などを原因とする他の骨盤痛と区別がつきません。

より悪いことに、子宮内膜症は医師にとっても診断が困難な疾患です。子宮内膜症用の血液検査はなく、画像検査で発見することも難しいのです。子宮内膜症を確認する唯一の方法は、腹腔鏡下手術を行うことですが、これは画像検査よりも侵襲的です。中には子宮内膜症による痛みが比較的少なく、不妊の問題が発生した時に初めて診断を受けることもあります。

その結果、最終的に正確な診断を受けて治療を開始するまでの数年間、子宮内膜症に苦しむこともあります。多くの女性は思春期に症状が出始めますが、20代半ばまでは診断を受けず、治療も行われません。

幸いにも、子宮内膜症が原因の骨盤痛にはいくつか指標が存在します。

1. 月経直前、月経中、月経後に痛みが悪化する場合

若年齢で子宮内膜症を発症する女性では特に、通常の月経周期の結果、痛みが生じると考えられます。実際、子宮内膜症による痛みは月経痛と重なることが多く、子宮内外での出血が同時に起こります。

しかし、子宮内膜症による痛みは、月経の時期を過ぎても痛みが延長することが多く、通常の月経周期の出血前後に痛みがある場合は、医師に診てもらう必要があります。 子宮内膜症は、性交中の痛みや、排便・排尿中の痛みのほか、頻尿を引き起こすこともあります。しかし、この種の痛みは、子宮内膜症以外の疾患が原因のこともよくあります。

2. 抗生物質が効かない場合

子宮内膜症の女性は、最初に尿路感染症または骨盤内炎症性疾患ではないかと疑われることがあります。そのため、感染症を治療するために抗生物質を処方したり、尿または子宮頸部の培養を行うこともあります。検査の結果が陰性である場合や抗生物質が効かない場合、患者本人と医師は痛みの原因の候補として子宮内膜症を考えるべきです。

3. 家族が子宮内膜症を患っている場合

家族に子宮内膜症患者がいる女性は、子宮内膜症になりやすい傾向があります。しかし、現時点で子宮内膜症を診断する遺伝子検査はありません。

ただし、骨盤痛に苦しむ女性にとって、家族歴は有用な手がかりになります。母親、叔母、姉妹、従姉妹に子宮内膜症患者がいる場合、最初の診察で痛みについて医師と話す際に、そのことを伝えるようにしてください。

診断の遅れによる問題

子宮内膜症の診断が遅れると、現実的な問題が生じます。衰弱を伴う痛みのせいで、毎年救急科に何回も行くことになったり、就業や通学が困難になります。また、家族計画に影響が及ぶこともあります。性感染症と誤って診断されれば、人間関係の問題が生じる可能性があります

骨盤痛が起こるタイミング、家族に子宮内膜症患者がいるか、培養検査や抗生物質治療の結果を医師と話し合うことは、痛みの原因を特定し、子宮内膜症の正確な診断をするうえできわめて重要です。一般的にかかりつけ医は、腹腔鏡検査や子宮内膜症の診断を行うため、産婦人科医に患者を紹介します。こうした会話や紹介は、医師が重い骨盤痛の原因として子宮内膜症を考えるために必要です。

子宮内膜症の診断、一般的な治療選択肢についてさらに知りたい場合は、子宮内膜症に関する本マニュアルページ