様々な異常が陰茎(ペニス)の皮膚を侵す可能性があります。なかには、他の部位の皮膚だけでなく陰茎も侵される全身性の皮膚疾患もあります。例えば、乾癬、扁平苔癬、脂漏性皮膚炎などが挙げられます。陰茎のみを侵す病気や、他の部位の前に陰茎を侵す病気もあります。また、陰茎がんでも陰茎の皮膚が侵されることがあります。
陰茎の感染症
陰茎の扁平苔癬
扁平苔癬は亀頭または陰茎体に小さな斑点を生じることがあり、斑点は平らな場合も盛り上がっている場合もあります。それらはしばしばかゆいことがあります。ときには、痛みを伴うびらんが陰茎と歯肉に生じます(陰茎歯肉症候群と呼ばれます)。扁平苔癬は通常、自然に回復します。かゆみが煩わしくないかぎり治療は必要ありません。コルチコステロイドのクリームでかゆみを和らげることができます。
真珠様陰茎小丘疹
真珠様陰茎小丘疹は、陰茎の血管から生じる異常な腫瘍です。ドーム状または髪の毛に似た小さくて通常は皮膚色の腫瘍が陰茎体上に現れます。これは無害のよくみられる腫瘍で、男性の10%に生じます。治療は必要ありません。
閉塞性乾燥性亀頭炎
閉塞性乾燥性亀頭炎(硬化性萎縮性苔癬)は、長期間続く(慢性)炎症により、陰茎の先端付近の皮膚が硬く白くなった場合に起こります。外尿道口(陰茎先端の開口部)がこの硬く白い組織で囲まれることが多く、それによってやがて尿や精液の流れが妨げられます。炎症は抗菌薬、コルチコステロイド、または抗炎症薬のクリーム剤で緩和されることがありますが、外尿道口を再び開通させる必要がある場合は手術によって行われます。
© Springer Science+Business Media
陰茎の接触皮膚炎
接触皮膚炎は、多くの場合ラテックスにアレルギーのある男性がラテックス製のコンドームを使うことにより生じます。通常は赤色でかゆみを伴う斑点が現れます。ときに皮膚が破れたり斑点の周囲から体液が漏れ出たりすることがあります。患者の男性は、ラテックス製ではない合成素材のコンドームを使うべきです。天然素材のコンドームではヒト免疫不全ウイルスの感染を十分に防ぐことはできません。必要な場合は、1%ヒドロコルチゾンクリーム(市販薬として入手可能)などのコルチコステロイドクリームによって症状を和らげることができます。
陰茎の限局性の皮膚がん(表皮内がん)
陰茎の限局性の皮膚がんとしては以下のものがあります。
ケーラー紅色肥厚症
陰茎ボーエン病
ボーエン様丘疹症
腺がん
ケーラー紅色肥厚症と陰茎ボーエン病は、亀頭(ケーラー紅色肥厚症の場合)または陰茎体(陰茎のうち灰白色の太い部分;ボーエン病の場合)に境界明瞭で赤みを帯びたビロード状の色素沈着斑ができる病気で、主に包皮の環状切除術を受けていない男性で発生します。
ボーエン様丘疹症では、陰茎体により小さな隆起(丘疹)が(しばしば複数)出現します。
乳頭パジェット病(骨パジェット病と混同しないようにしてください)は、まれながんの一種ですが、陰茎を含む乳房以外の部位にも発生する可能性があります。
医師はがんの種類を判定するために、また、がんが皮膚の外に広がっていないことを確認するために、組織のサンプルを採取します(生検)。
がんを取り除く方法として、フルオロウラシルのクリーム剤、外科手術、またはレーザー療法が用いられます。再発や転移を検出するために、定期的に経過観察を行っていく必要があります。