トリコモナス症

執筆者:Sheldon R. Morris, MD, MPH, University of California San Diego
Reviewed ByChristina A. Muzny, MD, MSPH, Division of Infectious Diseases, University of Alabama at Birmingham
レビュー/改訂 2025年 8月 | 修正済み 2025年 9月
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やさしくわかる病気事典

トリコモナス症は、腟トリコモナス(Trichomonas vaginalis)という原虫によって引き起こされる腟または尿道の性感染症で、症状が現れない場合もありますが、腟が過敏になったり分泌物が出たりするほか、ときに排尿に問題がみられます。

  • 女性では、泡状で黄緑色の生臭いおりものが生じ、陰部に過敏性と痛みが生じることがあります。

  • 男性では症状が出にくいのですが、少数ながらも陰茎から泡状の分泌物が出て、排尿時に軽度の痛みや不快感が生じることがあります。

  • 通常は、分泌物のサンプルを顕微鏡で調べることで、トリコモナス症を特定できます。

  • 感染した人とそのセックスパートナーに対して抗菌薬による治療が行われます。

  • 性行為中にコンドームを使用することは、トリコモナス症やその他の性感染症が人から人に広がるのを防ぐのに役立ちます。

性感染症の概要も参照のこと。)

腟トリコモナス(Trichomonas vaginalis)は、女性の腟の性感染症や、男性と女性の尿路の性感染症の原因としてよくみられます。女性の方がはるかに症状が現れやすい病気です。トリコモナス症は全世界で女性の約5%に、男性の1%未満に発症しています。

トリコモナス症の人は、淋菌感染症やその他の性感染症を併発している場合があります。

トリコモナス症の症状

女性の場合、この病気は通常、黄緑色の泡立った生臭いおりものが出る症状から始まります。分泌物の量はわずかなこともあります。陰部が過敏になって痛み、性交時に痛みが起こることもあります。重症の場合、陰部や周辺の皮膚が炎症を起こし、腟の開口部周辺の組織(陰唇)が腫れます。膀胱感染症のように、排尿時に痛みが生じ、頻尿になることがあります。尿路と腟の症状は、単独で起こることもあれば、同時に起こることもあります。

尿道(尿を膀胱から体外に排出するための陰茎を通る管)にトリコモナス症を発症した男性では、その大半に症状はみられませんが、一部の人に陰茎から泡状の分泌物が出る、排尿時の痛み、頻尿が現れることもあります。症状がまったくない男性や軽度の男性でも、セックスパートナーを感染させる可能性があります。

知っていますか?

  • 男性のトリコモナス症では大半に症状がありませんが、それでもセックスパートナーに感染を起こす可能性があります。

トリコモナス症の診断

  • 女性では、分泌物サンプルの核酸増幅検査、顕微鏡検査、または培養検査、もしくは尿サンプルの核酸増幅検査

  • 男性では、尿または分泌物サンプルの核酸増幅検査または培養検査、もしくは精液サンプルの培養検査

女性では腟感染症がある場合、男性では尿道感染症がある場合、またセックスパートナーに感染症がある場合にトリコモナス症が疑われます。

男性か女性かにかかわらず、分泌物や尿のサンプルを使って核酸増幅検査を行うことで、腟トリコモナス(Trichomonas vaginalis)を特定できます。核酸増幅検査は、微生物の固有の遺伝物質であるDNAやRNA(核酸)を検出するために行います。NAATは、細菌のDNAまたはRNAの量を増やすプロセスを使って菌を特定しやすくします。

女性の場合は通常、おりもののサンプルを顕微鏡で調べて微生物を見つけることですぐに診断がつきます。結果がはっきりしない場合は、サンプルを数日間培養します。培養検査とは、細菌などの微生物を検査室で特定できるまで増殖させる過程のことです。

男性の場合は、朝一番の排尿前に採取した陰茎の先から出た分泌物、尿、精液のいずれかを、顕微鏡で調べ、さらに検査室で培養します。

トリコモナス症に感染している人は、淋菌感染症クラミジア感染症も併発していることがあるため、通常は他の感染症も同時に行います。

トリコモナス症の治療

  • 抗菌薬

  • セックスパートナーへの同時治療

通常は、女性も男性も抗菌薬のメトロニダゾールで治療します。男女両性に対する代替治療として、抗菌薬のチニダゾールか、もしくはセクニダゾール1袋をプリン、アップルソース、またはヨーグルト1皿に振りかけて内服してもらいます。チニダゾールセクニダゾールは妊婦には投与されません。

メトロニダゾールを服用すると、口の中に金属の味がしたり、吐き気や白血球数の減少が起きたりすることがあります。この薬剤を使用する女性は腟の真菌感染症(腟カンジダ症)になりやすくなる場合があります。

過去60日間のセックスパートナーや直近のセックスパートナーも同時に治療しない場合、女性に再感染させることがあります。

迅速パートナー療法は、セックスパートナーの治療を促すためにときに用いられる選択肢の1つです。このアプローチでは、トリコモナス症の人に対して、そのセックスパートナー用の処方せんを発行したり薬剤を渡したりします。こうすることで、感染者のセックスパートナーが医師の診察を受けていなくても、治療が受けられます。受診をすれば、医師が薬剤に対するアレルギーや他の性感染症の有無まで確認することができるため、その方が理想的です。セックスパートナーが受診する可能性が低い場合には、迅速パートナー療法が有用になります。

感染者は感染症が治るまで性行為を控えるべきであり、そうしない場合はパートナーを感染させてしまう危険があります。

トリコモナス症の予防

トリコモナス症やその他の性感染症のリスクを減らすには、以下の方法が役立ちます。

  • 口、肛門、または性器での性行為では必ずコンドームを使用するなど、安全な性行為の習慣

  • セックスパートナーの数を減らすか、リスクの高いセックスパートナー(多くのセックスパートナーがいる人、安全な性行為の習慣を実践しない人)をつくらないようにする

  • 互いにパートナーを1人だけにするか、性行為を控える

  • 一部の性感染症には予防接種

  • 性感染症の迅速な診断と治療(感染の拡大を防ぐため)

  • 感染者の性的接触を把握し、それらの接触に対するカウンセリングや治療を行う

さらなる情報

以下の英語の資料が役に立つかもしれません。こうした情報源の内容について、MSDマニュアルでは責任を負いかねることをご了承ください。

  1. Centers for Disease Control and Prevention (CDC): トリコモナス症について

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