心筋イオンチャネル病は、心臓の電気的活動を制御している細胞のタンパク質に異常があるために、不整脈が発生する病気です。
(不整脈の概要も参照のこと。)
イオンチャネル病は、心臓の細胞壁にあるナトリウム、カリウム、カルシウムなどの電解質が通過するイオンチャネルという微小な孔に異常が生じた状態です。こうした電解質の流れは、心臓の正常な電気的活動に不可欠です。イオンチャネルにはいくつかの種類があり、そのうちの1つに異常があると、心臓が一定のリズムを維持できなくなる可能性があります。心臓の拍動が突然、速くなりすぎたり、遅くなりぎたりする場合もあれば、完全に停止する場合すらあります(心停止)。
イオンチャネル病は通常、心臓の細胞がもつイオンチャネルの構成を決定する遺伝子の1つに変異がみられる疾患によって引き起こされます。一方で、全身性エリテマトーデスやシェーグレン症候群など、特定の自己免疫疾患や炎症性疾患の合併症としてイオンチャネル病が発生する場合もあります。
心筋イオンチャネル病がある人の大半は、ほかに心疾患(心臓発作や心臓弁膜症など)をもっていません。
最も一般的なイオンチャネル病では以下の病態が生じます。
ほかにも、まれな心筋イオンチャネル病として以下のものがあります。
QT短縮症候群
早期再分極症候群
カテコールアミン誘発性多形性心室頻拍(CPVT)
ブルガダ症候群
孤発性かつ進行性の心臓伝導障害
イオンチャネル病でみられる電気的な異常は、ときに心室頻拍(心拍が危険な水準まで速くなった状態)や心室細動(心臓がまったく拍動しない状態)を引き起こすことがあります。イオンチャネル病は以前考えられていたよりも頻度が高く、心臓突然死の原因の約10%を占めている可能性があります。
心筋イオンチャネル病の症状
何の症状も現れないこともありますが、多くの場合、心室頻拍による失神が起こります。心室細動を起こした人は突然心停止に陥ります。
症状は発熱、運動、または一部の薬によって誘発され、そのような薬としては、一部の不整脈治療薬や一部の抗うつ薬などがあります。
心筋イオンチャネル病の診断
心電図検査
患者またはその家族が明らかな原因(既知の心臓の問題など)なく失神または心停止を起こしたことがある場合、特に若年で心停止を起こしたことがある場合、医師はイオンチャネル病の可能性を考慮します。
イオンチャネル病が疑われる場合、医師は心電図検査と携帯型心電計による連続モニタリングを行い、さらに通常は心臓負荷試験も行います。ときに遺伝子検査が行われます。イオンチャネル病の診断が確定した場合は、心電図検査と携帯型心電計による定期的なフォローアップを行って、無症状の不整脈が起きていないか確認するべきです。
イオンチャネル病は通常は遺伝性疾患であるため、この病気の患者の家族もリスクがあります。近親者は、心電図検査と携帯型心電計によるモニタリングを含めた、医師による評価を受けるべきです。
心筋イオンチャネル病の治療
さらなる情報
以下の英語の資料が役に立つかもしれません。こちらの情報源の内容について、MSDマニュアルでは責任を負いませんのでご了承ください。
米国心臓協会:不整脈(American Heart Association: Arrhythmia):不整脈のリスクについて理解するのに役立つ情報と診断および治療に関する情報