ネフロン癆(ろう)と常染色体優性尿細管間質性腎疾患は、液体で満たされた袋状の病変(嚢胞)が腎臓内の深い部分に形成され、最終的には腎不全を伴う慢性腎臓病に発展する病気です。
ネフロン癆と常染色体優性尿細管間質性腎疾患は、遺伝子異常が受け継がれることによって発生します。
症状としては過度の排尿や強いのどの渇きなどがみられますが、それらはネフロン癆では小児期または青年期から、常染色体優性尿細管間質性腎疾患では青年期または成人期から始まります。
診断は家族歴のほか、臨床検査、画像検査、遺伝子検査の結果に基づいて下されます。
どちらの病気も治療法は腎機能の変化をコントロールすることですが、小児では栄養補助食品と成長ホルモン製剤の使用が必要になる場合もあります。
ネフロン癆と常染色体優性尿細管間質性腎疾患は遺伝性の疾患群であり、腎臓の深部にあって尿の濃縮とナトリウムの再吸収を担っている微細な管(尿細管)の発達が障害されます。その結果、過剰な量のナトリウムが尿中に排出されるため、身体および血液中のナトリウムが不足します。また血液の酸性度が異常に高まることもあります。尿細管に損傷が生じて炎症や瘢痕化が起き、最終的には重度の慢性腎臓病が生じ、結果として末期腎不全(あるいは末期腎臓病)になります。これらの病気は似ていますが、いくつかの重要な違いがあり、特に遺伝パターンと慢性腎臓病が重症化する年齢が異なります。
ネフロン癆は、常染色体劣性疾患であるため、両親から異常遺伝子を1つずつ受け継いだ場合にのみ発症します。症状は小児期、または青年期の初期から始まり、通常は青年期の初期に腎不全に至ります。
常染色体優性尿細管間質性腎疾患は、常染色体優性遺伝疾患ですので、片方の親から異常遺伝子が受け継がれるだけで発症し、通常は成人期に最初の症状が現れます。ときに、腎疾患の家族歴がない人に発生する場合もあります。そのような場合については、新たな突然変異(明らかな理由なしに遺伝子が異常なものに変化すること)として遺伝子異常が発生したか、あるいは遺伝子異常はそもそも存在していたが両親の片方または両方で認識されていなかったという可能性が考えられます。
症状
腎臓での尿の濃縮やナトリウムの保持ができなくなるため、尿が過剰に作られるようになり、極めて強いのどの渇きがみられます。
ネフロン癆では、症状は小児期の1歳以降に始まります。成長が遅れ、骨の脆弱化を伴う場合があります。ネフロン癆の患者には、眼の病気、肝臓の病気、知的障害(精神遅滞)などがみられます。以降の小児期には、慢性腎臓病により貧血、高血圧、吐き気、筋力低下などが生じます。
常染色体優性尿細管間質性腎疾患では、症状は青年期または成人期の初期から始まります。強いのどの渇きと過剰な尿の生成は、ネフロン癆ほど重度ではありません。高血圧になる場合もあります。腎臓以外の臓器は侵されません。通常は30~70歳で慢性腎臓病が起こります。痛風を発症する場合もあります。
診断
治療
さらなる情報
役立つ可能性がある英語の資料を以下に示します。こちらの情報源の内容について、MSDマニュアルでは責任を負いませんのでご了承ください。
米国腎臓基金(American Kidney Fund[AKF]):腎疾患および腎移植、ならびに医療費の管理を支援するためのニーズに応じた経済的支援に関する情報
米国国立糖尿病・消化器・腎疾患研究所(National Institute of Diabetes and Digestive and Kidney Diseases[NIDDK]):研究成果、統計、地域の健康促進プログラムやアウトリーチプログラムなど、腎疾患に関する一般的な情報
全米腎臓財団(National Kidney Foundation[NKF] ):腎機能の基礎から腎疾患患者の治療や支援へのアクセスまでのあらゆる事項に関する情報