市販薬の概要

執筆者:Shalini S. Lynch, PharmD, University of California San Francisco School of Pharmacy
Reviewed ByEva M. Vivian, PharmD, MS, PhD, University of Wisconsin School of Pharmacy
レビュー/改訂 2025年 3月 | 修正済み 2025年 4月
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市販薬(OTC薬)とは、処方せんがなくても購入できる医薬品のことです。

OTC薬は、多くの症状を緩和し、簡単な病気なら医師の診察を受けることなくたやすく治すことができます。しかし、市販薬を安全かつ効果的に使用するには、知識、常識、自己責任が求められます。

多くの人が典型的な市販薬と考えているアスピリンやアセトアミノフェンなどの医薬品に加え、米国食品医薬品局(FDA)は、通常購入できるほかの多くの製品も市販薬として扱っています。歯磨き粉や洗口液、点眼薬、いぼ取りの薬、抗生物質を含む応急処置用のクリームや軟膏、さらにはフケ取りシャンプーなどにも市販薬とみなされるものがあります。どの製品が市販薬として入手可能かは、それぞれの国で定められています。

市販製品の中には、もともとは処方せんがなければ購入できなかったものがあります。米国では、処方薬の規制を受けながら何年も使われる中で優れた安全性を示した医薬品が市販薬としてFDAに承認されます。鎮痛薬のイブプロフェンや胸やけの薬のファモチジンはこうした医薬品の例です。多くの場合、同じ医薬品でも、市販薬では処方薬に比べて、個々の医薬品に含まれる有効成分の量が大幅に少なくなっています。市販薬としての適切な用量を確立するにあたり、製薬会社および米国のFDAのように医薬品を監督する責任を負う規制当局は、安全性と有効性のバランスを取るよう努めます。

市販薬は、必ずしも類似の処方薬よりも忍容性が優れているとは限りません。例えば、市販の睡眠補助薬であるジフェンヒドラミンは、多くの処方薬の睡眠補助薬に伴う副作用と同等の重篤な副作用を引き起こす可能性があり、特にこれは高齢成人に当てはまります。

米国における医薬品規制の歴史

一時期、米国ではほとんどの医薬品は処方せんがなくても手に入りました。食品医薬品局ができる前は、びんに詰められたものは何でも、確かな治療薬であるかのように販売されていました。アルコール、コカイン、マリファナ、アヘンが、使用者に通知されることなく、一部の市販薬(OTC薬)に含まれていました。1938年に制定された米連邦食品医薬品化粧品(FD&C)法は、FDAに規制を設ける権限を与えましたが、どの医薬品を処方せんがあるときだけ買える医薬品とし、どの医薬品を店頭で市販してよい医薬品とするかについては、明確な指針を規定しませんでした。

1951年のFD&C法の改正では、市販薬と処方薬の違いを明らかにし、医薬品の安全性の問題に取り組もうとしました。このとき処方薬の定義を、依存性や毒性の可能性があったり、医師の管理下でなければ安全に使用できない化合物と定めました。それ以外のものは店頭で販売できることになりました。

1962年のFD&C法の改正で述べられているように、市販薬は有効性と安全性の両方を兼ね備えたものでなければなりません。しかしながら、有効性と安全性を判定することが難しいことがあります。ある人にとって有効でも別の人には効かない場合や、どんな医薬品でも望ましくない副作用(有害作用、有害事象または薬の有害反応とも呼ばれます)が生じる可能性があるためです。2007年まで、米国では市販薬の有害作用を報告するための組織化されたシステムは存在しませんでしたが、2007年には企業に対して市販薬に関連する重篤な有害事象の報告を求める新たな法律が施行されました(市販薬および栄養補助食品を参照)。

安全性への配慮

安全性は、米国食品医薬品局(FDA)が処方薬をOTC(市販薬)に移行させるかどうかを検討する際の重要な問題点です。ほとんどの市販薬は、健康食品や栄養補助食品(薬用ハーブを含む)、補完療法とは異なり、科学的かつ広範囲に研究されてきました。しかし、どんな医薬品にも便益とリスクがあるため、薬の恩恵を受けるには、ある程度のリスクは覚悟しなければなりません。どの程度のリスクなら受け入れられるかは、個人の考え方によります。

処方薬から市販薬への移行

以下の質問は、規制当局が医薬品が市販薬として販売できるほど安全かどうかを判断するのに役立ちます。

  • その医薬品はあらゆる有害作用が十分に理解されているといえるだけ長く使用されてきたか。

  • その医薬品はどのような有害作用(誤使用によるものも含む)を引き起こすか。

  • その医薬品に習慣性はあるか。

  • 市販薬とした場合の便益がリスクを上回るか。

医療環境以外で病気を診断・治療できるような簡便性について評価するには、次のような質問が役に立ちます。

  • その医薬品を必要とする病気を普通の人が自分で判断できるか。

  • 医師やその他の医療従事者の助けがなくても、普通の人がその病気を治療できるか。

最後に、その医薬品の使用方法を理解してもらう必要があるため、医薬品のパッケージの外側と内側のラベルは、重要な考慮点です。以下の質問は、医薬品のラベル表示にどのような情報が含まれているかを判断するのに役立ちます。

  • 使用上の指示が的確に記載されているか。

  • 危険な使用法についての警告が記載されているか。

  • 普通の人がそのラベルの情報を読んで理解できるか。

市販薬の選択と使用

安全性は医薬品の適切な使用にかかっています。市販薬の場合、正しく使えるかどうかは消費者の自己診断にかかっているため、間違いもついてまわります。たとえば、ほとんどの頭痛は危険ではありませんが、まれに、脳腫瘍脳出血の初期の徴候であることがあります。同様に、ひどい胸やけのように思えるものが、切迫した心臓発作のサインだということもあります。最終的には、症状や病気が軽度であるか、医師の診察が必要かを判断するために常識を働かせ、不明な場合は医師または薬剤師に相談する必要があります。

市販薬の選択と使用のガイドラインは以下の通りです。

  • 自己診断が正確かどうか可能な限り確認する。問題を「今、流行中の何かだろう」などと安易に決めつけない。

  • 良く知っている製品名だからというだけで製品を選ばず、症状に適した成分のものを選ぶ。

  • 成分の数が最も少ない製品を選ぶ。あらゆる症状を緩和しようとする製品は、不要な成分まで使用することになり、医薬品によるリスクも費用もかさむ。

  • ラベルをよく読んで、正しい投与量を判断し、どんな病状には向かないという情報を含め、使用上の注意に注意を払う。

  • 疑問がある場合は、あなたの症状を治療するのに最も適した製品は何か薬剤師か医師に尋ねる。

  • 使用中の他の医薬品と相互作用を起こす可能性がないか薬剤師にチェックしてもらう。

  • 起こりうる副作用を薬剤師に尋ねる。

  • 推奨用量を超えて使用しない。

  • 市販薬を、ラベルの指示にある使用最長期間より長く使用しない。症状が悪化した場合は、その医薬品の使用を中止し、担当の医療従事者に連絡する。

  • 市販薬を含め、すべての医薬品は小児の手の届かない所に保管する。

市販薬のラベルを読む

市販薬を購入した場合は、説明書をよく読んで指示に注意深く従う必要があります。即放性製剤や放出制御製剤(例えば徐放剤)など、製品名が同じでも製剤設計が異なる場合、用法・用量の指示が異なることがあるため、製品を購入するたびにラベルをチェックして用量・用法に注意することが必要です。同じ薬だから用法・用量も同じだろうと思いこむのは安全とはいえません。

また製品名が同じでも剤形が異なれば、成分が異なる場合もあるので、ラベルに記載されている成分をチェックすることは大切です。例えば、解熱鎮痛薬のタイレノール®には様々な成分や用量の製剤が数十種類もあります。マーロックス®の中には、アルミニウムと水酸化マグネシウムを含むものもあれば、炭酸カルシウムを含むものもあります。

製品を選ぶにあたっては、ラベルを注意深く読み、どの製品が自分の症状や疾患に最もふさわしいかを決める必要があります。米国では市販薬のラベルはFDAによって記載が求められていますが、それを見れば、消費者が医薬品の正しい使い方だけでなく、医薬品の便益とリスクについても理解できるようになっています。市販薬について質問がある場合や、ラベルに記載されている指示を十分に理解していない場合は、薬剤師に尋ねる必要があります。

たいていの場合、市販薬のラベルには起こりうるすべての副作用が記載されているわけではありません。そのため、市販薬には副作用がほとんどないか、あったとしてもわずかだと思っている人が多いようです。例えば、ある市販の鎮痛薬の添付文書には、10日を超えてこの医薬品を服用し続けないようにと書いてあります。しかし、長期の使用によって起こりうる重篤な副作用(生命を脅かす消化管出血など)については、箱にも、びんにも、添付文書にも記載されていません。そのため、慢性的な痛みや炎症のある人が、こうした深刻な問題が起こりうることを知らないまま、長期にわたって医薬品を服用することがあります。

米国では市販薬(非処方薬)には、薬の便益とリスクおよび医薬品の正しい使い方を説明するラベルをつける必要があります。ラベルの見出しには「薬の詳細情報(Drug Facts)」と書かれています。一番上から有効成分、効能、使用上の注意、用法・用量、その他の情報、そして不活性成分が記載されています。

有効成分: 有効成分はその医薬品の本質です。配合剤には複数の有効成分が入っています。医薬品の一般名とともに、錠剤またはカプセル1個あたり、あるいは1回分の服用単位中に含まれるその成分の量が記載されています。同じ医薬品のジェネリック医薬品が、複数の異なる商品(ブランド)名で販売されていることもあります。

効能: その医薬品が推奨される症状や病名が記載されています。

使用上の注意: その医薬品を使うべきではない場合、医師や薬剤師に相談すべき場合(またどれくらいの使用期間の後に相談すべきか)、医薬品により期待される反応を変えることのある要因が、通常は以下のセクションに記載されています。

  • 「使用禁止」の項目には、その医薬品を使用すべきでない状況、または医師の指示のもとでのみ使用すべき状況が記載されています。

  • 「以下に該当する人は、使用する前に医師に相談してください」という項目には、医薬品を服用すると問題や危険がある状態について記載されています。この項目は薬と病気の相互作用を表しています。

  • 「以下に該当する人は、使用する前に医師または薬剤師に相談してください」という項目には、医薬品の有効性または安全性を妨げる可能性のある他の医薬品が記載されています。この項目は、薬同士の相互作用を表しています。

  • 「この製品を使用するときは」という項目には、一般的な副作用、医薬品の有効性または安全性を阻害するおそれのある食品(薬と食品の相互作用)、特に注意すべき事項(例えば、服用中は運転をしない)などが記載されています。

  • 「以下に該当する場合は、使用を中止して医師に相談してください」という項目には、その医薬品の使用を直ちに中止する必要があるあらゆる反応が記載されています。

  • 最後の項目には、妊婦や授乳中の女性、小児に対する特別な注意と、過剰摂取した場合の対処法が記載されています。

用法・用量: 医薬品の用量と服用頻度が年齢層別に記載されています。これは、いくつかの要因の中でも、とりわけ体重と年齢が医薬品に対する反応のしかたに影響を及ぼすからです。

その他の情報: 医薬品が劣化しないようにするための保管方法などの特記事項が記載されています。

不活性成分: 有効成分に加えて、医薬品には、薬を扱いやすい大きさに増量したり、味や色を好ましいものにする成分など、医薬品の投与を容易にするために添加された物質が含まれています。有効成分が同じ製品でも、含まれる不活性成分が異なることがあります。不活性成分は通常は無害ですが、なかには少数の人でアレルギー反応を引き起こすものもあり、その場合はその不活性成分を含まない製品を探す必要があります。

さらなる情報

以下の英語の資料が役に立つかもしれません。こうした情報源の内容について、MSDマニュアルでは責任を負いかねることをご了承ください。

  1. OTC Products and Dietary Supplements:市販薬やサプリメントの使用に関連する有害事象を報告するサイト

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