生の葉野菜や柑橘類を十分に摂取しないと、葉酸欠乏症になることがあります。
貧血が生じて、疲労、蒼白、易怒性、息切れ、めまいが現れることがあります。
重度の欠乏症の場合、舌が赤くなって痛み、下痢となり、味覚が低下し、抑うつ、錯乱、認知症が生じることがあります。
妊婦に葉酸欠乏症があると、乳児に脊髄または脳の先天異常が生じるリスクが高まります。
診断は血液検査の結果に基づいて下されます。
葉酸のサプリメントを経口投与することで、通常は葉酸欠乏症は改善されます。
葉酸は ビタミン ビタミンの概要 ビタミンは健康的な食事に不可欠です。ほとんどのビタミンについて、健康な人の大半が健康を維持するのに必要な1日当たりの量を表した推奨量(RDA)が設定されています。一部のビタミンには、安全な上限量(耐容上限量)が決められています。この上限を超えて摂取すると、有害な影響(毒性)が出るリスクが高まります。... さらに読む B群の1つです。ビタミンB12とともに、葉酸は 正常な赤血球の形成 血球の形成 赤血球、ほとんどの 白血球、 血小板は、骨髄という骨の中にある脂肪に富んだ軟らかい組織でつくられます。白血球のうち、T細胞とB細胞( リンパ球)の2つは、リンパ節や脾臓(ひぞう)でもつくられることがあり、T細胞の一部は胸腺内でつくられて、そこで成熟することもあります。( 血液の概要も参照のこと。) 骨髄の中では、幹細胞と呼ばれる単一のタイプのまだ役割の定まっていない未分化の細胞から、すべての血球がつくられます。幹細胞は分裂すると、まず未... さらに読む と細胞の遺伝物質であるDNA(デオキシリボ核酸)の合成に必要不可欠な物質です。葉酸は胎児の神経系の正常な発達にも必要です。
生の緑色の葉野菜、アスパラガス、ブロッコリー、果物(特にかんきつ類)、レバーなどの内臓肉、乾燥酵母、栄養強化したパンやパスタおよびシリアルなどには、葉酸が豊富に含まれています。長時間の加熱調理によって、食品中の葉酸の50~95%が破壊されます。
米国とカナダでは、穀物を原料とする食品に葉酸を添加して栄養を強化しています。サプリメントや栄養強化食品に含まれる葉酸は、食物中に自然に存在する葉酸よりも容易に体に吸収されます。
妊婦または妊娠する可能性がある女性の場合は、胎児の先天異常(主に神経管閉鎖不全)のリスクを減らすために、葉酸のサプリメントを摂取するべきです。神経管閉鎖不全の胎児を妊娠したことのある女性には、高用量の葉酸が処方されることがしばしばあります。
経口避妊薬と抗てんかん薬の両方を服用している女性では、葉酸のサプリメントの摂取が必要な場合があります。抗てんかん薬の服用は、経口避妊薬の効果を低下させることがあります。葉酸のサプリメントは経口避妊薬の効果を維持するのに役立つ可能性があります。
葉酸のサプリメントによって、冠動脈疾患や脳卒中が予防されることはありません。葉酸のサプリメントが様々ながんのリスクを減らしたり増やしたりするという証拠はありません。葉酸のサプリメントで高齢者の認知機能が改善することはないと考えられます。
葉酸は一般に毒性はありません。
原因
葉酸欠乏症は、以下のものから生じることがあります。
葉酸の摂取不足(通常、過度の飲酒をする人や低栄養の人の場合)
吸収障害(セリアック病や特定の薬による吸収不良を引き起こす病気)
葉酸の必要量の増大(妊娠時や授乳時など)
大量に飲酒する人は、アルコールを食べものの代わりにすることがよくあるため、十分な葉酸を摂取していません。そうした人は、全般的な低栄養であることがよくあります。大量の飲酒はまた、葉酸の吸収と処理(代謝)を妨げます。
吸収不良を引き起こす病気 吸収不良の概要 吸収不良症候群とは、食べたものに含まれる栄養素が様々な理由により小腸で適切に吸収されない状態のことをいいます。 ある種の病気、感染症、手術でも吸収不良が起こることがあります。 吸収不良によって、下痢、体重減少、極度の悪臭がする大量の便がみられます。 診断は、典型的な症状と、便検査の結果、ときに小腸粘膜の生検結果に基づいて下されます。... さらに読む (セリアック病など)は、葉酸の吸収を妨げます。
妊娠中や授乳中の女性および透析を受けている人は、葉酸の必要量が増加しているため、葉酸欠乏症を発症することがあります。
一部の薬物は葉酸の吸収を低下させます。具体的には以下のものがあります。
また、葉酸の代謝を妨げる他の薬もあります。具体的には以下のものがあります。
メトトレキサート(がん、関節リウマチの治療薬)
トリアムテレン(高血圧の治療薬)
メトホルミン(糖尿病の治療薬)
トリメトプリム/スルファメトキサゾール(抗菌薬)
症状
葉酸欠乏症は、 貧血 ビタミン欠乏性貧血 ビタミン欠乏性貧血は、ビタミンB12や葉酸の不足または欠乏が原因です。 脱力感や息切れを覚えたり、顔色が青白くなったりすることがあります。 神経が機能不全を起こすことがあります。 血液検査でビタミン欠乏性貧血を示す異常細胞が認められることがあります。 不足しているビタミンを補給します。 さらに読む を徐々に発生させ、症状から推察されるよりも重い場合があります。疲労が最初の症状の場合があります。
蒼白、易怒性、息切れ、めまいなど貧血の一般的な症状に加えて、葉酸欠乏症が重度になると、赤くただれた舌、下痢、味覚低下、体重減少、抑うつが起こることがあります。
妊婦に葉酸欠乏症があると、乳児に 脊髄または脳の先天異常 脳と脊髄の先天異常の概要 脳および脊髄の先天異常は、胎児発育の早期または後期に発生します。 典型的な症状としては、知的障害、麻痺、失禁、体の一部の感覚消失などがあります。 診断はCT検査およびMRI検査の結果に基づいて下されます。 妊娠前と妊娠中に葉酸を摂取することで、特定の種類の異常が起きるリスクを減らすことができます。... さらに読む (神経管閉鎖不全)が生じるリスクが高まります。
診断
血液検査
貧血 ビタミン欠乏性貧血 ビタミン欠乏性貧血は、ビタミンB12や葉酸の不足または欠乏が原因です。 脱力感や息切れを覚えたり、顔色が青白くなったりすることがあります。 神経が機能不全を起こすことがあります。 血液検査でビタミン欠乏性貧血を示す異常細胞が認められることがあります。 不足しているビタミンを補給します。 さらに読む や低栄養の人の血液検査で大きな赤血球が検出された場合、医師は採取した血液の葉酸値を測定します。低い値であれば、葉酸欠乏症が疑われます。
ビタミンB12欠乏症 ビタミンB12欠乏症 ビタミンB12欠乏症は、サプリメントを摂取しない完全な菜食主義者に発生したり、吸収障害の結果として発生することがあります。 貧血が起こり、蒼白、筋力低下、疲労が生じ、重度の場合には息切れやめまいも起こります。 重度のビタミンB12欠乏症によって神経の損傷が起きることがあり、手足のチクチク感や感覚消失、筋力低下、反射消失、歩行困難、錯乱、認知症が起こります。 ビタミンB12欠乏症の診断は、血液検査の結果に基づいて下されます。... さらに読む も貧血や大きな赤血球の原因になるため、医師はその可能性を排除するためにビタミンB12の値も測定します。貧血患者の葉酸欠乏症に対して治療を行う前に、ビタミンB12欠乏症である可能性を排除する必要があります。ビタミンB12欠乏症の人に葉酸を使用した場合、貧血が軽減されることがあります。しかし、葉酸を補給することでビタミンB12の欠乏による神経の損傷が緩和されることはなく、かえって悪化する可能性があります。
予防と治療
葉酸のサプリメント
葉酸欠乏症を予防するために、葉酸の吸収や代謝を阻害する薬を服用している場合は、葉酸のサプリメントを摂取するべきです。
葉酸のサプリメントを毎日摂取することで、葉酸欠乏症を効果的に治療できます。