腕や脚が麻痺していると訴えたり、触覚、視覚、聴覚が失われたと訴えることがあります。
通常は身体診察と検査を何度も行って、起きている症状が身体的な病気に起因するものでないことを確認します。
治療では、支えとなり信頼できる医師から得られる安心感が助けになるほか、 催眠 催眠療法 催眠療法は 心身医療の一種です。催眠療法(催眠)では、リラックスと注意力がより高まった状態へと誘導されます。催眠下にある患者は、催眠療法士が示すイメージに没頭し、疑念を感じなくなります。注意力を一点に集中させやすくなり、指示が耳に入りやすい状態となることから、患者の行動を変えるために用いることができ、これに伴い、健康状態が改善されます。( 統合、補完、代替医療の概要も参照のこと。)... さらに読む や認知行動療法などの 精神療法 精神療法(心理療法) 精神障害の治療は大きな進歩を遂げています。その結果、多くの精神障害に関する治療成績が身体的な病気に近い水準まで向上してきています。 精神障害に対する治療法の大半は、以下のいずれかに分類できます。 身体的な治療法 精神療法(心理療法) 身体的な治療法としては、薬物療法と電気けいれん療法のほか、脳を刺激する治療法(経頭蓋磁気刺激療法や迷走神経刺激療法など)などがあります。 さらに読む が有効に働くこともあります。
変換症は、精神的な要因が身体症状として表出する 身体化 身体症状症と関連症群の概要 身体症状症と関連症群は、体の症状(身体症状)に強くとらわれるようになり、それにより強い苦痛や日常生活への支障がみられることを特徴とする精神障害です。 ほとんどの精神障害は 精神症状を特徴とし、異常または不快な思考、気分、行動などがみられます。しかし、この身体症状症においては、精神的な要因が身体症状として表出され(このプロセスを身体化といい... さらに読む の一形態です。(身体症状症と関連症群の概要 身体症状症と関連症群の概要 身体症状症と関連症群は、体の症状(身体症状)に強くとらわれるようになり、それにより強い苦痛や日常生活への支障がみられることを特徴とする精神障害です。 ほとんどの精神障害は 精神症状を特徴とし、異常または不快な思考、気分、行動などがみられます。しかし、この身体症状症においては、精神的な要因が身体症状として表出され(このプロセスを身体化といい... さらに読む も参照のこと。)米国精神医学会は最近、この病態の名称を機能性神経症状症に変更しました。
変換症は、ストレスや葛藤など、精神的な要因が誘因になると考えられており、患者はそうしたストレスや葛藤を身体症状として経験(変換)します。
変換症は小児期後期から成人期初期にかけて発症する傾向にありますが、あらゆる年齢層で起こる可能性があります。この病気は男性よりも女性に多くみられます。
症状
変換症の症状(腕や脚の麻痺や体の一部分の感覚消失など)からは、神経系の機能障害が示唆されます。その他の症状としては、けいれん発作に似た症状や、思考に関する問題、嚥下困難(ものを飲み込みづらい)、視覚や聴覚など特定の感覚の消失などがみられます。
しばしば、社会的または精神的につらい出来事が引き金になって発症します。症状は意識的に作られたものではなく、つまり、偽りの症状を訴えているわけではありません。症状は著しい苦痛の原因になったり、日常生活に支障をきたしたりするほど重くなります。
生涯に一度しか発症しない場合もあれば、散発的に起こる場合もあります。通常、症状は短期間です。
診断
医師による評価
医師はまず、徹底的な病歴聴取、身体診察、検査を行うことで、症状を説明できる身体的な病気、特に神経疾患がないか調べます。
診断に至る鍵は、認められる症状が神経疾患によって生じる症状と一致しないことです。例えば、体にふるえが生じていて、その原因がけいれん性疾患であると思われても、患者の気をそらすと、ふるえが消失します。けいれん性疾患がある場合は、気をそらしてもふるえが治まることはありません。
また、医師が変換症の診断を下すには、それらの症状によって大きな苦痛が生じていて、日常生活に師匠をきたしている必要があります。
症状が神経の病気を原因とするものと一致しないと判断すれば、医師は変換症の診断を考慮します。診断は評価で得られたあらゆる情報に基づいて下されます。
治療
医師の支援
催眠
精神療法(心理療法)
医師と患者の間に協力的な信頼関係を構築することが不可欠です。かかりつけ医が精神科医や他科の医師(神経科医など)と協力して治療に当たる診療体制が最も役立ちます。
考えられる身体的な病気を否定し、重篤な病気を示す症状ではないことを伝えて安心させると、患者はよくなったように感じ、症状が徐々に消失していくこともあります。
次の治療が役立ちます。
催眠 催眠療法 催眠療法は 心身医療の一種です。催眠療法(催眠)では、リラックスと注意力がより高まった状態へと誘導されます。催眠下にある患者は、催眠療法士が示すイメージに没頭し、疑念を感じなくなります。注意力を一点に集中させやすくなり、指示が耳に入りやすい状態となることから、患者の行動を変えるために用いることができ、これに伴い、健康状態が改善されます。( 統合、補完、代替医療の概要も参照のこと。)... さらに読む は、ストレスや他の精神状態が体の機能に影響を及ぼすプロセスを患者がコントロールできるようすることで、有効に働く可能性があります。
麻酔分析法は、まれにしか用いられませんが、鎮静薬を投与して患者を嗜眠状態に誘導することを除けば、催眠と同様の方法です。
さらなる情報
役立つ可能性がある英語の資料を以下に示します。こちらの情報源の内容について、MSDマニュアルでは責任を負いませんのでご了承ください。
機能性および解離性の神経症状:患者向けガイド(Functional and Dissociative Neurological Symptoms: A Patient's Guide):このガイドでは、実際に神経疾患がない場合も含め、患者が経験しうる厄介な神経症状について、分かりやすく詳細に説明しています。