心不全は心臓の収縮や弛緩が不十分になることで発生しますが、これらの変化は一般的に、心筋が弱ったり硬くなったりすることが原因で起こります。
心臓に影響を及ぼす多くの病気が心不全の原因になります。
多くの場合、最初は無症状で、数日または数カ月の間に徐々に息切れや疲労がみられるようになります。
肺、腹部、または脚に体液が貯留することがあります。
医師は通常、症状から心不全を疑いますが、通常は心機能を評価するために心エコー検査(心臓の超音波検査)などの検査を行います。
治療では、心不全の原因疾患を治療するとともに、生活習慣を改善し、手術を含む処置や薬の使用によって心不全自体を治療することに重点が置かれます。
心不全 心臓の異常の概要 約100人に1人は心臓に異常をもって生まれます。重症の場合もありますが、多くはそうではありません。心臓の異常には心臓壁、弁、心臓に出入りする血管の異常形成などがあります。 哺乳不良、呼吸困難、青みがかった皮膚、正常に発育しない、あるいは正常に運動できない、速い心拍、失神のほか、乳児が成長するに従って運動中の胸痛といった症状がみられます。... さらに読む は年齢を問わず発生し、幼い小児(特に生まれつき心臓に異常がある場合)にも起こります。しかし、高齢者は心不全になりやすい病気(心筋を損傷する 冠動脈疾患 冠動脈疾患(CAD)の概要 冠動脈疾患とは、心臓の筋肉(心筋)への血液供給が部分的または完全に遮断されることで起きる病気です。 心筋は酸素を豊富に含んだ血液を絶えず必要とします。その血液を心臓に送る血管は、大動脈が心臓から出たところで枝分かれする 冠動脈です。この血管が狭くなる冠動脈疾患では、血流が遮断されて、... さらに読む など)や 心臓弁膜症 心臓弁膜症の概要 心臓弁は、4つの心腔(心臓の上部にある比較的小さな丸い空洞である左右の心房と、心臓の下部にある比較的大きな円錐形の空洞である左右の心室)を通過する血液の流れを制御しています。それぞれの心室には、その入口側と出口側に、一方向に開く弁が1つずつあります。それぞれの弁は複数の薄い組織(弁尖)で構成され、一方向だけに開閉できるようになっています。... さらに読む
をもっている可能性が高いため、他の年齢層よりはるかに多くの人でみられます。また、加齢に伴う心臓の変化により、心臓の機能が低下する傾向もあります。
米国では、心不全は約650万人にみられ、毎年約96万人で新たに発生しています。世界全体では約2600万人にみられます。余命が長くなり、一部の国では 肥満 肥満 肥満とは、体重が過剰な状態です。 複数の要因が組み合わさって肥満に影響を及ぼします。複数の要因が組み合わさった結果、体に必要な量よりも多くの カロリーを摂取することになります。 そうした要因には、運動不足、食事、遺伝子、生活習慣、民族的背景、社会経済的背景、ある種の化学物質への曝露、特定の病気、特定の薬の使用などがあります。... さらに読む 、 糖尿病 糖尿病 糖尿病は、体がインスリンを十分に産生しないかインスリンに正常に反応しないため、血中の糖分の濃度(血糖値)が異常に高くなる病気です。 排尿が増加し、のどが渇くほか、減量しようとしていなくても体重が減少することがあります。 神経を損傷し、知覚に問題が生じます。 血管を損傷し、心臓発作、脳卒中、慢性腎臓病、視力障害のリスクが高まります。... さらに読む 、喫煙、 高血圧 高血圧 高血圧とは、動脈内の圧力が恒常的に高くなった状態のことです。 高血圧の原因は不明のことも多いですが、腎臓の基礎疾患や内分泌疾患によって起こる場合もあります。 肥満、体を動かさない生活習慣、ストレス、喫煙、過度の飲酒、食事での過剰な塩分摂取などはすべて、遺伝的に高血圧になりやすい人の高血圧の発症に何らかの形で関与しています。... さらに読む
など、心臓病の危険因子をもつ人が多くなっていることから、心不全の患者は増加する傾向にあります。
心不全とは、心臓が停止することではありません。心臓が体のすべての部分に十分な血液を送るために必要な動き(仕事量)を維持できなくなることです。しかし、この定義はいくぶん単純化されています。心不全は複雑な状態で、その原因、病態、分類、予後(経過の見通し)は様々であるため、単純に定義することはできません。
心臓の機能 心臓の機能 心血管系は心臓と 血管から構成され、循環器系とも呼ばれます。心臓は 血液を肺に送り出した後、肺で酸素を豊富に取り込んだ血液を、今度は全身に送り出します。血液はその中を循環しながら、酸素と栄養分を全身の組織に送り届けてから、老廃物(二酸化炭素など)を回収して組織から運び出す働きを担っています。... さらに読む は、ポンプのように血液を送り出すことです。このポンプ機能により、血液をある場所から他の場所に送ります。心臓には以下の機能があります。
心臓の右側部分は静脈から戻ってきた血液を肺に送り出す
心臓の左側部分は、肺から戻ってきた血液を取り込み、動脈を介して体内の他の部分に送り出す
血液は心筋が収縮したとき(収縮期)に心臓から出ていき、心筋が弛緩したとき(拡張期)に心臓に流れ込みます。心不全は、心臓の収縮や弛緩が不十分になることで発生しますが、これらは一般的に、心筋が弱ったり硬くなったりすることが原因で起こります。その結果、十分な量の血液が送り出されなくなります。また血液が組織にたまることで、うっ血が起きる場合もあります。そのため、このような心不全は、うっ血性心不全と呼ばれています。
心臓の左側部分に入ってくる血流が停滞すると、肺にうっ血が起こり、呼吸が苦しくなります。反対に、心臓の右側部分に入ってくる血流が停滞すると、体のあちこち(脚や肝臓など)でうっ血が起きて体液がたまります。心不全は通常、心臓の左右両側にいくらかの影響を及ぼしますが、片側により強く影響が出ることもあります。そのような場合は、右心不全あるいは左心不全と呼ばれることがあります。
心不全になると、心臓が全身で必要とされる酸素や栄養分を供給するのに十分な量の血液を送り出せなくなります。その結果、脚や腕の筋肉が疲れやすくなったり、腎臓が正常に機能できなくなったりします。腎臓は血液をろ過して水分や老廃物を尿として排出する役割を担っていますが、心臓のポンプ機能が不十分になると、腎臓の機能が低下して、血液から余分な水分を取り除くことができなくなります。その結果、全身の血流量が増えることで、弱った心臓にかかる負担が増大するという悪循環が起こります。そのため、心不全はさらに悪化します。
心不全の種類
心不全の種類は駆出率(EF)(1回の心拍で心臓から送り出される血液の割合で、心臓のポンプ機能の指標となる数値)に従って分類されます。左心室の正常な駆出率は約55~60%です。
駆出率が低下した心不全(HFrEF—収縮性心不全と呼ばれることもあります):
心臓の収縮力が弱まり、心臓に戻ってきた血液のうち外に送り出す血液の比率が低下します。そのため、心臓にたまる血液が多くなります。さらに肺や静脈にも血液がたまるようになります。
駆出率が保持された心不全(HFpEF—拡張性心不全と呼ばれることもあります):
心臓が硬くなることで収縮後に十分拡張できなくなり、それにより血液を取り込む能力が低下します。心臓の収縮は正常であるため、正常時と同じ割合で血液を心室から送り出すことができますが、1回の収縮で送り出される血液の量は減少する可能性があります。ときには、血液を取り込む能力の低下を補うために、硬くなった心臓が正常時より高い割合で血液を送り出すようになります。しかし、最終的には収縮性心不全と同じように、心臓に戻るべき血液が肺や静脈の中にたまるようになります。
駆出率が中間域にある心不全(HFmrEF)は新しい概念で、駆出率が保持された心不全と駆出率が低下した心不全の中間に該当する人がこれに含まれます。
心不全:拍出と充満の異常
正常な状態では、心臓は拡張することで血液を取り入れ(拡張期)、収縮することで全身に血液を送り出しています(収縮期)。心臓を構成する4つの部屋(心腔)のうち、血液の拍出を主に担っているは左右の心室です。 収縮機能障害による心不全(駆出率が低下した心不全)は、通常は心臓が正常に収縮できなくなることで発生します。その場合、血液を取り込むことはできますが、心筋(心臓の筋肉)の力が弱くなっているため、あるいは心臓弁に機能障害が起きているために、取り込んだ血液を十分に送り出すことができません。その結果、全身や肺に送られる血液量が減少するとともに、通常は心室が広がります(拡大)。 拡張機能障害による心不全(駆出率が保持された心不全)は、心筋が硬くなり(特に左心室)、心臓が十分な血液を取り込めなくなるために発生します。その結果、血液が左心房や肺の血管の中にたまり、うっ血を起こします。しかし、この状況でも、心臓が血液を取り込む量と送り出す量の比率が正常を維持している場合があります(ただし送り出される血液の総量は減少します)。 心房や心室には常にある程度の血液が入っていますが、この図では、拍動毎に出入りする血液の量が異なることを矢印の太さで示しています。 ![]() |
原因
心不全の原因はしばしば以下のように分類されます。
心臓に直接影響を及ぼす病気(心原性)
心臓に間接的に影響を及ぼす体の他の部位の病気(非心原性)
心臓に直接的または間接的に影響を及ぼす病気は、どれも心不全の原因になります。急速に心不全を引き起こす病気もあれば、何年もかけて心不全を引き起こす病気もあります。収縮性心不全を引き起こす病気もあれば、拡張性心不全を引き起こす病気もあり、 高血圧 高血圧 高血圧とは、動脈内の圧力が恒常的に高くなった状態のことです。 高血圧の原因は不明のことも多いですが、腎臓の基礎疾患や内分泌疾患によって起こる場合もあります。 肥満、体を動かさない生活習慣、ストレス、喫煙、過度の飲酒、食事での過剰な塩分摂取などはすべて、遺伝的に高血圧になりやすい人の高血圧の発症に何らかの形で関与しています。... さらに読む や一部の 心臓弁膜症 心臓弁膜症の概要 心臓弁は、4つの心腔(心臓の上部にある比較的小さな丸い空洞である左右の心房と、心臓の下部にある比較的大きな円錐形の空洞である左右の心室)を通過する血液の流れを制御しています。それぞれの心室には、その入口側と出口側に、一方向に開く弁が1つずつあります。それぞれの弁は複数の薄い組織(弁尖)で構成され、一方向だけに開閉できるようになっています。... さらに読む
(心臓弁の病気)などは両方の種類の心不全を引き起こします。
心不全の原因となる心原性の病態
収縮性心不全を引き起こす心臓の病気は、心臓の全体または一部に損傷を与えます。多くの場合、心不全は複数の要因が組み合わさって起こります。
心不全の原因となる一般的な心原性の病態は以下のものです。
心筋が正常に収縮するためには酸素が必要であるため、冠動脈疾患により酸素を豊富に含む血液の流量が減少すると、広範囲の心筋に損傷が生じます。冠動脈が閉塞することで、心筋の一部に重大な損傷を与える 心臓発作 急性冠症候群(心臓発作、心筋梗塞、不安定狭心症) 急性冠症候群は、冠動脈が突然ふさがる(閉塞)ことによって起こります。閉塞の位置と量に応じて、不安定狭心症か心臓発作(心筋梗塞)が起こります。心臓発作とは、血液供給がなくなることにより心臓の組織が壊死する病気です。 急性冠症候群を発症すると、通常は胸部の圧迫感や痛み、息切れ、疲労などが起こります。... さらに読む が発生する場合もあります。その結果、損傷した部分の心筋は正常に収縮できなくなります。
その他の心原性の病態には以下のものがあります。
心筋炎(心臓の筋肉の炎症)
一部の薬剤(例えば、一部の化学療法薬)
一部の毒素(例えば、アルコール)
心臓弁膜症
心臓の刺激伝導系に影響を及ぼし、不整脈を引き起こす病気
一部の遺伝性疾患
心臓が硬くなる病気
細菌やウイルスなどの感染が原因で起こる 心筋炎 心筋炎 心筋炎とは、心臓の筋肉組織(心筋)に炎症が起きた状態であり、組織の壊死につながります。 心筋炎は、感染症、心臓に影響を与える毒素や薬剤、サルコイドーシスといった全身性疾患など、様々な病気によって引き起こされる可能性がありますが、原因が分からないこともよくあります。 症状は様々ですが、疲労、息切れ、腫れ(浮腫)、心拍の自覚(動悸)、突然死な... さらに読む (心臓の炎症)では、心筋の全体または一部に損傷が生じて、心機能が低下します。
がんの治療に使用される薬やある種の有害物質(アルコールなど)が心筋に損傷を与えることもあります。
心臓弁膜症 心臓弁膜症の概要 心臓弁は、4つの心腔(心臓の上部にある比較的小さな丸い空洞である左右の心房と、心臓の下部にある比較的大きな円錐形の空洞である左右の心室)を通過する血液の流れを制御しています。それぞれの心室には、その入口側と出口側に、一方向に開く弁が1つずつあります。それぞれの弁は複数の薄い組織(弁尖)で構成され、一方向だけに開閉できるようになっています。... さらに読む とは、心臓の弁の開口部が狭くなって(狭窄)心臓を通る血流が妨げられたり、血液が弁を逆流したりする病気ですが、この種の病気も心不全の原因になります。弁の狭窄と血液の逆流は、どちらも心臓にとって大きな負担になりますので、次第に心臓が拡大していき、十分に収縮できなくなります。
心臓の左右を隔てる壁に異常な通路(例えば、 心室中隔欠損症 心房中隔欠損症と心室中隔欠損症 心房中隔欠損症と心室中隔欠損症とは、心臓の右側と左側を隔てる壁(中隔)に孔が開いた状態です。 その孔は、上側の2つの心腔を隔てる壁にみられることもあれば、下側の2つの心腔を隔てる壁にみられることもあります。 欠損孔の多くは小さいもので、症状を示さず、治療をしなくても閉鎖します。... さらに読む など)があると、心臓内で血液が再循環するために心臓の負担が増加し、結果として心不全になる可能性があります。
心臓の刺激伝導系を障害する病気によって(図「 心臓の電気刺激の伝導経路 心臓の電気刺激の伝導経路 」を参照)、 心拍の変化 不整脈の概要 不整脈とは、一連の心拍が不規則、速すぎる(頻脈)、遅すぎる(徐脈)、あるいは心臓内で電気刺激が異常な経路で伝わるなど、心拍リズムの異常のことをいいます。 不整脈の最も一般的な原因は心臓の病気(心疾患)です。 自分で心拍リズムの異常に気づくこともありますが、ほとんどの人は、脱力感や失神などの症状が起きるまで不整脈を自覚しません。... さらに読む
(特に頻脈などの不整脈)が長期にわたって起こることで、心不全が発生する場合もあります。心拍が異常になると、心臓は血液を十分に送り出せなくなります。
一部の遺伝性疾患は、心臓に影響を及ぼし、心不全を引き起こします。例えば、 デュシェンヌ型筋ジストロフィー デュシェンヌ型筋ジストロフィーとベッカー型筋ジストロフィー 筋ジストロフィーとは、正常な筋肉の構造と機能のために必要な遺伝子の1つ以上に異常があるために、様々な重症度の 筋力低下を引き起こす遺伝性筋疾患の総称です。デュシェンヌ型筋ジストロフィーとベッカー型筋ジストロフィーは、体幹に最も近い筋肉に筋力低下を引き起こします。 これらの筋ジストロフィーは、筋肉の機能に関与している遺伝子の異常によって発生... さらに読む は、(他の多くの筋肉とともに)心筋の衰弱を引き起こします。 ダウン症候群 ダウン症候群(21トリソミー) ダウン症候群は、余分な21番染色体によって引き起こされる染色体異常症の一種で、知的障害と様々な身体的異常がみられます。 ダウン症候群は、21番染色体が余分にあることで発生します。 ダウン症候群の小児では、発育の遅れ、精神発達の遅れ、特異的な頭部と顔貌、しばしば低身長がみられます。... さらに読む は心臓の先天性の異常を引き起こすことがあります。
心不全は、浸潤や感染のように心臓の壁を硬く変化させる異常によって起こることがあります。例えば、 アミロイドーシス アミロイドーシス アミロイドーシスは、異常に折りたたまれたタンパク質がアミロイド線維を形成し、様々な組織や器官に蓄積して臓器が正常に機能しなくなり、臓器不全や死に至ることもあるまれな病気です。 アミロイドーシスの症状と重症度は、どの重要臓器が影響を受けるかによって異なります。 組織サンプル(生検サンプル)を採取し、顕微鏡で検査することにより、診断を確定しま... さらに読む では、アミロイドという異常なタンパク質が全身の組織に入り込みます(浸潤)。このアミロイドが心臓の壁に入り込むと、壁が硬くなり、心不全が起こります。熱帯の国々では、特定の寄生虫が心筋の内部に入り込んで心不全を引き起こすことがあり(シャーガス病 シャーガス病 シャーガス病は、クルーズトリパノソーマ Trypanosoma cruziという原虫による感染症で、サシガメ(アサシンバグ;サシガメ類の昆虫)に刺咬されることで感染します。 刺された傷や眼の周囲の組織から原虫が体内に侵入することもあれば、まれに汚染された食べものを食べて感染することもあります。... さらに読む
など)、これは若い人にも起こります。
収縮性心膜炎 心膜疾患の概要 心膜疾患とは、心膜という心臓を包んでいる柔軟な2層の袋状の膜が侵される病気です。 心膜は、心臓を本来の位置に保ち、心臓に過度に血液が流入するのを防ぎ、胸部の感染症による影響から心臓を守っています。しかし、心膜は生きていく上で不可欠なものではなく、たとえ心膜が除去されても、心機能への影響はほとんどみられません。... さらに読む では、心臓を包んでいる袋状の膜(心膜)が硬くなり、たとえ心臓が健康であっても、血液の出入りが妨害されます。
心不全の原因となる非心原性の病態
心不全の原因となる非心原性の病態で最も一般的なものは、以下のものです。
高血圧があると、正常な状態よりも高い血圧に抵抗して動脈内に血液を送り込まなくてはならないため、心臓にかなりの負荷がかかります。その結果、心臓の壁が厚く(肥大)硬くなります。硬くなった心臓は十分な血液を素早く取り込むことができず、1回の収縮で送り出せる血液の量が少なくなります。 糖尿病 糖尿病 糖尿病は、体がインスリンを十分に産生しないかインスリンに正常に反応しないため、血中の糖分の濃度(血糖値)が異常に高くなる病気です。 排尿が増加し、のどが渇くほか、減量しようとしていなくても体重が減少することがあります。 神経を損傷し、知覚に問題が生じます。 血管を損傷し、心臓発作、脳卒中、慢性腎臓病、視力障害のリスクが高まります。... さらに読む や 肥満 肥満 肥満とは、体重が過剰な状態です。 複数の要因が組み合わさって肥満に影響を及ぼします。複数の要因が組み合わさった結果、体に必要な量よりも多くの カロリーを摂取することになります。 そうした要因には、運動不足、食事、遺伝子、生活習慣、民族的背景、社会経済的背景、ある種の化学物質への曝露、特定の病気、特定の薬の使用などがあります。... さらに読む も、心室の壁が硬くなる原因です。
加齢によっても、心臓の壁は硬くなります。高血圧、肥満と 糖尿病 糖尿病 糖尿病は、体がインスリンを十分に産生しないかインスリンに正常に反応しないため、血中の糖分の濃度(血糖値)が異常に高くなる病気です。 排尿が増加し、のどが渇くほか、減量しようとしていなくても体重が減少することがあります。 神経を損傷し、知覚に問題が生じます。 血管を損傷し、心臓発作、脳卒中、慢性腎臓病、視力障害のリスクが高まります。... さらに読む の組合せは高齢者によくみられ、これに加齢による心臓の壁の硬化が加わるため、心不全は特に高齢者で多くみられます。
心不全の原因となる非心原性の病態であまり一般的でないものは、以下のものです。
肺に至る動脈内での血圧上昇(肺高血圧。ときに肺塞栓症により引き起こされる)
貧血
甲状腺の病気
腎不全
一部の薬
肺高血圧症 肺高血圧症 肺高血圧症とは、心臓から肺につながる動脈(肺動脈)の血圧が異常に高くなる病気です。 多くの病気が肺高血圧症を引き起こす可能性があります。 通常は、体力低下のほか軽い運動であっても息切れが現れ、場合によっては軽い運動でもふらつきや疲労感がみられることもあります。 胸部X線検査、心電図検査、心エコー検査により、診断の手がかりが得られるものの、... さらに読む などの一部の肺疾患では、肺の血管(肺動脈)が変化したり損傷したりすることがあります。その結果、肺に血液を供給している心臓の右側部分により大きな負担がかかるようになります。やがて 肺性心 肺性心 肺性心は、肺の基礎疾患によって生じた 肺高血圧症(肺の中の血圧が高くなった状態)のために、右心室に拡大と肥厚が起きた状態です。右心室に拡大と肥厚が起きた結果として、 心不全に陥ります。 肺高血圧症とは、心臓から肺につながる動脈(肺動脈)の血圧が異常に高くなる病気です。肺疾患によって肺高血圧症が引き起こされる原因はいくつかあります。... さらに読む という状態になり、右心室が拡大して、右心不全になります。
1つまたは複数の血栓が突然、肺動脈を重度に閉塞させることで(肺塞栓症 肺塞栓症 肺塞栓症は、血液のかたまり(血栓)や、まれに他の固形物が血液の流れに乗って肺の動脈(肺動脈)に運ばれ、そこをふさいでしまう(塞栓)病気です。 肺塞栓症は、一般に血栓によって発生しますが、別の物質が塞栓を形成して動脈をふさぐこともあります。 肺塞栓症の症状は様々ですが、一般に息切れなどがみられます。... さらに読む )、肺動脈への血液の送り出しが急激に困難になり、右心不全に陥る場合もあります。
貧血 貧血の概要 貧血とは、赤血球の数が少ない状態をいいます。 赤血球には、肺から酸素を運び、全身の組織に届けることを可能にしているヘモグロビンというタンパク質が含まれています。赤血球数が減少すると、血液は酸素を十分に供給できなくなります。組織に酸素が十分に供給されないと、貧血の症状が現れます。... さらに読む とは、赤血球が重度に欠乏した(赤血球の数が減少した)状態のことです。赤血球は肺から全身の組織へ酸素を運んでいます。貧血では、血液が運べる酸素の量が減少するので、正常時と同じ量の酸素を組織に供給するため、心臓はより激しく収縮しなければなりません。
甲状腺機能亢進症 甲状腺機能亢進症 甲状腺機能亢進症は甲状腺が働きすぎている状態で、甲状腺ホルモンの値が高く、身体の重要な機能が働く速度が上昇します。 バセドウ病は甲状腺機能亢進症の原因として最もよくみられます。 心拍数と血圧の上昇、不整脈、過剰な発汗、神経質や不安、睡眠障害、意図しない体重減少などの症状がみられます。... さらに読む (甲状腺が過剰に活発になる病気)では、心臓が過剰に刺激されて速く拍動しすぎるため、それぞれの拍動で心房や心室から血液が十分に出ていきません。 甲状腺機能低下症 甲状腺機能低下症 甲状腺機能低下症は、甲状腺の働きが低下し、甲状腺ホルモンの産生が不十分になる病気で、身体の重要な機能が働く速度が低下します。 顔の表情が乏しく、声がかすれ、話し方はゆっくりになり、まぶたは垂れて、眼と顔が腫れます。 通常は1回の血液検査で診断が確定されます。 甲状腺機能低下症の人は、生涯にわたって甲状腺ホルモンの投与を受ける必要があります... さらに読む
(甲状腺が不活発になる病気)では、全身の筋肉は甲状腺ホルモンによって正常な機能を維持しているため、心臓を含むすべての筋肉が結果的に弱くなります。
腎不全 腎不全の概要 腎不全とは、血液をろ過して老廃物を取り除く腎臓の機能が十分に働かなくなった状態のことです。 腎不全の原因としては、様々なものが考えられます。腎機能が急激に低下する場合( 急性腎障害、急性腎不全とも呼ばれます)もあれば、ゆっくりと低下していく場合( 慢性腎臓病、慢性腎不全とも呼ばれます)もあります。腎不全になると、腎臓は血液をろ過して老廃物... さらに読む では、腎臓で血流から余分な水分を取り除けなくなることで、心臓がより多くの血液を送り出さなければならなくなるため、心臓に負担が加わります。最終的に心臓が限界を超えると、心不全に至ります。
非ステロイド系抗炎症薬などの一部の薬は、体内への水分の貯留を引き起こし、それにより心臓の負担を増大させ、心不全を引き起こすことがあります。
代償機構
体には心不全による機能低下を補うための仕組み(代償機構)がいくつか備わっています。
ホルモンの反応
心不全を含めた負荷に対する体の最初の反応は、闘争・逃走ホルモンとも呼ばれるアドレナリン(エピネフリン)とノルアドレナリン(ノルエピネフリン)の分泌です。例えば、心臓発作で心筋が損傷すると、これらのホルモンが直ちに分泌されます。アドレナリンもノルアドレナリンも心臓を速く強く拍動させます。まずは、これらのホルモンが心臓から送り出される血液の量(心拍出量)をときに正常な量にまで増やすことで、低下した心機能を補います。
心臓病のない人であれば、短期的に心機能を高めるなど、これらのホルモンの分泌によって有益な変化がもたらされます。しかし、慢性心不全の人では、この反応が持続して起こることで、すでに損傷している心臓にさらに大きな負担がかかります。時間の経過とともに、心臓はホルモンに対しても反応しなくなり、増大した負担によって心機能が低下していきます。
腎臓の反応
心不全で血流が減少したときに働くもう1つの主な代償機構は、腎臓の働きで体内に保持する塩分と水分の量を増加させるというものです。塩分と水分を尿中に排泄せずに体内に保持することで、血液の量が増え、血圧を維持するのに役立ちます。しかし、血液の量が増加すると、心筋が伸びて、心腔(特に心室)が拡大します。当初、心筋は伸びるにつれ、いっそう力強く収縮するようになり、心機能を向上させます。しかし、ある程度伸びてしまうと、伸びすぎた輪ゴムのように、もはや心臓の収縮を助けられなくなり、心臓の収縮力は弱まります。その結果、心不全は悪化します。さらに、塩分と水分が体内に貯まっていくことで、肺などの臓器内で体液のうっ滞が助長され、その結果としても心不全の症状が悪化します。
心臓の肥大
また別の重要な代償機構として、心室の筋肉の壁を厚くする心室肥大があります。心臓が激しく働くと、心臓の壁は数カ月間ウェイトトレーニングをした後の上腕二頭筋のように大きく厚くなります。最初のうちは、心臓が肥大することで、心臓から送り出される血液の量(心拍出量)を維持できるようになります。しかし、肥大した心臓の壁は最終的には硬くなり、心不全の発生や悪化につながります。また、肥大により心臓弁の開口部が伸びると、機能不全に陥り、ポンプ機能の問題が大きくなることがあります。
症状
心不全の症状は突然始まる場合があり、特に心臓発作による心不全ではその傾向が顕著です。しかし、ほとんどの人では、心臓に問題が発生し始めた時点では症状はみられません。その後、数日から数カ月、ときには数年かけて徐々に症状が現れます。心不全は長い間安定している場合もありますが、知らない間にゆっくりと進行する場合も多々あります。
よくみられる症状は以下の通りです。
疲労
運動や労作を必要とする他の活動ができない
高齢者の心不全では眠気、錯乱、見当識障害などの漠然とした症状がみられます。
心不全の重症度は通常、患者が日常生活の行動をどの程度良好に行うことができるかに基づいて分類されます。ニューヨーク心臓協会(NYHA)分類は、患者やそのケアをする人が病気の重症度や生活への影響について理解する上で重要なツールです。
右心不全と左心不全では現れる症状が異なります。両方の心不全が起こっている場合でも、どちらか一方の症状が強く現れることがあります。最終的には、左心不全によって右心不全が起こります。
右心不全の症状
右心不全の主な症状は、足、足首、脚、腰部、肝臓、腹部に体液がたまって生じる腫れやむくみ(浮腫 むくみ むくみ(浮腫)は、組織内の体液の量が過剰になることによって起こります。その体液は主に水が占めています。 むくみは、広い範囲に及ぶこともあれば、腕や脚の全体または一部分でとどまることもあります。むくみは脚の膝より下の部分に起こることが多いですが、長期にわたってベッドで寝ていなければならない人(長期の床上安静)では、ときに殿部や性器、太ももの... さらに読む )です。体液がたまる場所は、余分な体液の量と重力のかかり方によって異なります。立っている場合は、脚や足に体液がたまります。あお向けに寝ている場合は、通常は腰の辺りに体液がたまります。体液の量が多ければ、腹部にもたまります。肝臓や胃に体液がたまると、吐き気や腹部膨満、食欲不振などが生じます。重度の右心不全では、体重が減り、筋肉が衰えることがあります。この状態を心臓悪液質といいます。
左心不全の症状
左心不全では、肺の内部に体液がたまり、 息切れ 息切れ 息切れ(医師は呼吸困難と呼びます)とは、息がしにくくなる不快な感覚のことです。息切れをどのように感じ、それをどのように表現するかは、原因によって異なります。 通常、運動をしているときや、標高が高い所では呼吸が速く深くなりますが、それで不快になることはまずありません。肺の病気であれ他の病気であれ、多くの病気では、安静時でも呼吸数が増加します... さらに読む が起こります。当初は息切れが生じるのは運動中だけですが、心不全が悪化するにつれて、軽い運動でも息切れが生じ、ついには安静時にも起こるようになります。重度の左心不全がある人では、横になると息切れがすることがあり(起座呼吸)、これは重力によってより多くの体液が肺に移動するためです。そのため、患者はよく目を覚まして、あえいだり喘鳴(ぜんめい)を起こしたりします(この状態を発作性夜間呼吸困難といいます)。上体を起こすと体液が肺の底部に移動するため、呼吸が楽になります。左心不全のある人は、筋肉に十分な量の血液が行きわたらないため、体を動かすと疲労や体力の低下を感じます。
重度の心不全の症状
心不全が進行すると、チェーン-ストークス呼吸(周期性呼吸)がみられることがあります。この異常な呼吸パターンでは、数秒間の呼吸をしない期間があった後に、呼吸が再開して次第に速く深くなり、そこから遅く浅くなっていき、再び短時間の呼吸停止に入って、また再開するというサイクルを繰り返します。チェーン-ストークス呼吸は、脳への血流が減少し、呼吸を調節する脳の部位に十分な酸素が行きわたらないために起こります。チェーン-ストークス呼吸は 中枢性睡眠時無呼吸症候群 中枢性睡眠時無呼吸症候群 睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中に長い呼吸停止が繰り返し起こって眠りが妨げられる重篤な病気で、しばしば一時的に血液中の酸素レベルが低下して二酸化炭素濃度が上昇することもあります。 睡眠時無呼吸症候群の患者は、日中でも強い眠気を催し、睡眠中には大きないびきをかいて、あえぎや息詰まり、呼吸停止などを起こし、荒い鼻息とともに突然目を覚ますことがよく... さらに読む の一種と考えられています。
閉塞性睡眠時無呼吸症候群 睡眠時無呼吸症候群 睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中に長い呼吸停止が繰り返し起こって眠りが妨げられる重篤な病気で、しばしば一時的に血液中の酸素レベルが低下して二酸化炭素濃度が上昇することもあります。 睡眠時無呼吸症候群の患者は、日中でも強い眠気を催し、睡眠中には大きないびきをかいて、あえぎや息詰まり、呼吸停止などを起こし、荒い鼻息とともに突然目を覚ますことがよく... さらに読む (気道の閉塞によって睡眠が妨げられ、日中の眠気が生じる病態)は、心不全の患者に起こりうる一般的な呼吸障害です。重度の閉塞性睡眠時無呼吸症候群は、心不全を悪化させることがあります。
急性肺水腫は、肺に大量の水分が突然蓄積する状態です。ひどい呼吸困難、速い呼吸、皮膚が青白くなる変化、気分が落ち着かない感覚、不穏(落ち着かなくなる)、不安、窒息感などが起こります。人によっては、気道のけいれん(気管支れん縮)や喘鳴がみられることがあります。急性肺水腫は、心不全の人で血圧が非常に高くなったり心臓発作が起きたりしたときなどに発生する生命を脅かす緊急事態で、ときには心不全の薬の服用を中断したり、塩辛い物を食べたりしただけで発生することもあります。
心臓がひどく損傷すると、心腔内に血栓ができることがあります。心腔内の血流が滞りがちになることが原因で血栓が形成される場合もあります。血栓が剥がれ落ちて、血流に乗って移動すると、体内のどこかの動脈に詰まり、その動脈が部分的または完全に閉塞することがあります(この現象を塞栓といいます)。脳に向かう動脈がこの塞栓で閉塞すると、 脳卒中 脳卒中の概要 脳卒中は、脳に向かう動脈が詰まったり破裂したりして、血流の途絶により脳組織の一部が壊死し(脳梗塞)、突然症状が現れる病気です。 脳卒中のほとんどは虚血性(通常は動脈の閉塞によるもの)ですが、出血性(動脈の破裂によるもの)もあります。 一過性脳虚血発作は虚血性脳卒中と似ていますが、虚血性脳卒中と異なり、恒久的な脳損傷が起こらず、症状は1時間... さらに読む が起こります。
重症の心不全患者では、 抑うつ うつ病 うつ病とは、日常生活に支障をきたすほどの強い悲しみを感じているか、活動に対する興味や喜びが低下している状態です。喪失体験などの悲しい出来事の直後に生じることがありますが、悲しみの程度がその出来事とは不釣り合いに強く、妥当と考えられる期間より長く持続します。 遺伝、薬の副作用、つらい出来事、ホルモンなど体内の物質の量の変化、その他の要因がう... さらに読む や精神機能の低下がよくみられ、特に高齢者でその傾向が強く、入念な評価と治療が必要になります。
診断
胸部X線検査
心電図検査
心エコー検査、ときにその他の画像検査
血液検査
医師は通常、臨床症状から心不全を疑います。身体診察において、弱くてしばしば速い脈拍、血圧の低下、聴診器で確認できる心音の異常や心雑音と肺への液体貯留、心臓の拡大、首の静脈の膨張(頸静脈怒張)、肝臓の腫大、腹部や脚のむくみなどがあれば、診断の裏付けになります。
通常は心機能を評価する検査も行います。心不全の原因を特定する検査も必要です。
胸部X線検査
胸部X線検査では、心臓の拡大、血管内でのうっ血、肺への液体貯留がみられます。
心電図検査
通常は 心電図検査 心電図検査 心電図検査は心臓の電気刺激を増幅して記録する検査法で、手早く簡単に行える痛みのない方法です。この記録は心電図と呼ばれ、以下に関する情報が得られます。 心臓の1回1回の拍動を引き起こしている、ペースメーカーとしての部分(洞房結節、洞結節) 心臓の神経伝導経路 心拍数や心拍リズム 心電図では、心臓が拡大していること(通常の原因は... さらに読む を行って、心拍が正常かどうか、心室の壁が厚くなっているかどうか、心臓発作を起こしていないかどうかを調べます。
心エコー検査
超音波を利用した心臓の画像検査である 心エコー検査 心エコー検査とその他の超音波検査 超音波検査では、周波数の高い超音波を内部の構造に当てて跳ね返ってきた反射波を利用して動画を生成します。この検査ではX線を使いません。心臓の超音波検査(心エコー検査)は、優れた画像が得られることに加えて、以下の理由から、心疾患の診断に最もよく用いられる検査法の1つになっています。... さらに読む は、心拍出量や心臓弁の働きなど、心機能を評価するのに最も優れた検査法の1つです。心エコー検査では、以下の点が明らかになります。
心臓の壁は厚くなっているか、また正常に弛緩しているか
心臓弁は正常に機能しているか
収縮が正常か
心臓に異常な収縮がみられる部分はないか
心エコー検査は、心臓の壁の厚さと硬さ、駆出率を評価することで、心不全が収縮機能障害によるものか、拡張機能障害によるものかを判断するのに役立ちます。駆出率とは、1回の拍動で心臓から送り出される血液の割合のことで、心機能を測る重要な指標です。左心室の正常な駆出率は約55~60%です。駆出率が低い(40%未満)場合は、収縮性心不全の診断が確定します。心不全の症状がある人の駆出率が正常以上である場合は、拡張性心不全の可能性が高くなります。
血液検査
血液検査はほぼ必ず行われます。多くの場合、ナトリウム利尿ペプチドという物質が測定されます。ナトリウム利尿ペプチドは、心不全がある場合には血液中に蓄積しますが、息切れが他の病気によって引き起こされている場合には蓄積しません。心不全を引き起こす病気がないか確かめるために、他の血液検査が行われることもあります。
その他の検査
心不全の原因を究明するため、その他に 核医学検査 心臓の核医学検査 核医学検査では、微量の放射性物質(トレーサー)を静脈に注射します。核医学検査の際に受ける放射線の量はごくわずかです。トレーサーはガンマ線を放出し、これをガンマカメラという特殊なカメラで検出します。得られた情報をコンピュータで解析し、組織に取り込まれた放射性物質の量の違いを示した画像を生成します。... さらに読む 、 MRI検査 心臓のMRI(磁気共鳴画像)検査 MRI検査では、強力な磁場と電磁波を用いて心臓と胸部の詳細な画像を描き出します。この高価で複雑な検査法は、主に複雑な先天性の心疾患の診断や正常組織と異常組織の識別のために用いられます。 MRI検査には短所もあります。MRI検査では、 CT検査よりも画像の生成に時間がかかります。また心臓の拍動による影響を受けやすいため、MRI画像はCT画像... さらに読む 、 CT検査 心臓のCT(コンピュータ断層撮影)検査 CT検査は、心臓や心膜(心臓を包んでいる袋状の膜)、大血管、肺、胸部の支持組織などの構造的な異常を検出するために行われることがあります。 非常に高速なCT装置であるマルチスライスCTでは、1回の拍動の間に撮影を行うことができます。そのような高速で行うCT検査(CT冠動脈造影検査)は、心臓に血液を供給する冠動脈を評価するために用いられること... さらに読む 、 血管造影を伴う心臓カテーテル検査 心臓カテーテル検査と冠動脈造影検査 心臓カテーテル検査と冠 動脈造影検査は、手術を行わずに心臓とそこに血液を供給する血管(冠動脈)を調べることができる低侵襲検査です。通常、これらの検査は、 非侵襲的な検査では十分な情報が得られない場合や、非侵襲的な検査では心臓や血管の問題が示唆されない場合、患者の症状から心臓や冠動脈の問題が強く疑われる場合に行われます。これらの検査の利点の... さらに読む 、 運動負荷試験 負荷試験 心臓に(運動や心拍を速く強くする薬剤で)負荷をかけると、 冠動脈疾患を特定しやすくなります。冠動脈疾患では、心筋に血液を供給する冠動脈の血流が、部分的に、または完全に遮断されます。冠動脈の一部だけがふさがっている場合、安静時には心臓に十分な量の血液が供給されていても、心臓が激しく働いているときには供給が不足することがあります。したがって、... さらに読む
などを実施することがあります。
まれに、 アミロイドーシス アミロイドーシス アミロイドーシスは、異常に折りたたまれたタンパク質がアミロイド線維を形成し、様々な組織や器官に蓄積して臓器が正常に機能しなくなり、臓器不全や死に至ることもあるまれな病気です。 アミロイドーシスの症状と重症度は、どの重要臓器が影響を受けるかによって異なります。 組織サンプル(生検サンプル)を採取し、顕微鏡で検査することにより、診断を確定しま... さらに読む で起こるような心臓への浸潤や、細菌やウイルスなどの感染症による心筋炎が疑われる場合に、心筋の生検が必要になります。
予防
予防措置として、心不全が起きる前に心不全の原因となる病気を治療します。治療可能なその他の原因としては、以下のものがあります。
高血圧
肥満
閉塞性睡眠時無呼吸症候群
冠動脈の閉塞
心臓弁膜症
一部の不整脈
アルコール依存症
貧血
甲状腺疾患
治療
食事と生活習慣の改善
心不全の原因に対する治療
薬剤
ときに植込み型除細動器、心臓再同期療法、または機械的循環補助
ときに心臓移植
心不全の治療には、いくつかの一般的な対策に加えて、心不全の原因になっている病気の治療、生活習慣の改善、心不全に対する薬の服用が必要です。
一般的な対策
心不全はほとんどの人にとって慢性の病気ですが、身体活動に伴う不快感を軽減し、生活の質を向上させ、突然の悪化(急性心不全)のリスクを最小限に抑え、余命を延ばすためにできる対策はたくさんあります。心不全患者とその家族は、自宅でも多くのケアが必要になることから、心不全に関する知識をできるだけ多く学ぶ必要があります。特に心不全の悪化を警告する初期症状を識別する方法を知り、必要な対策(例えば、食塩の制限、利尿薬の追加服用、主治医への連絡)を把握しておかなければなりません。
心不全は突然悪化することがあるため、常に医療従事者と連絡をとって医師の診察を受けることが非常に重要です。例えば、看護師が心不全のある人に定期的に電話をして、体重や症状の変化を確認します。それにより、医師の診察が必要かどうかを判断します。
また心不全専門の医療機関を受診することもできます。このような医療機関には心不全に関する専門知識をもった医師が在籍していて、特別な訓練を受けた看護師やその他の医療従事者(薬剤師、管理栄養士、ソーシャルワーカーなど)と密接に連携しながら、患者および介護者に自己管理のスキルを指導し、心不全患者の治療を行います。このような医療機関では、患者に最も効果的な治療が行われていることを確認するとともに、患者が自ら積極的に治療に取り組む方法を教えることで、症状の軽減や入院期間の短縮が可能になるほか、余命が延びる場合もあります。このようなケアは、かかりつけの医師の治療に代わるものではなく、それを補完するものです。
心不全のある人は、新しい薬の服用を始める前に、たとえ処方薬ではないとしても、必ず担当医に確認する必要があります。一部の薬剤(関節炎の治療薬の多くを含む)は、塩分や体液の貯留を引き起こす場合があります。心機能を抑制する可能性がある薬剤もあります。薬の飲み忘れは症状を悪化させる原因としてよく起こるため、飲み忘れを防ぐ方法を教わっておくとよいでしょう。
インフルエンザにより心不全が突然悪化する可能性があるため、心不全患者には年1回の インフルエンザ予防接種 インフルエンザワクチン インフルエンザウイルスワクチンは インフルエンザの予防に役立ちます。米国では、A型とB型の2種類のインフルエンザウイルスが定期的にインフルエンザの季節的流行を引き起こしています。どちらの種類にも、多くのウイルス株が存在します。インフルエンザの大流行を引き起こすウイルス株は毎年変わります。このため、毎年新しいワクチンが必要になります。それぞ... さらに読む が推奨されます。
知っていますか?
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原因の治療
心不全の原因が心臓弁の狭窄や逆流、あるいは心房や心室の中隔欠損である場合は、手術を行うことで問題を是正できます。 冠動脈の閉塞 治療 冠動脈疾患とは、心臓の筋肉(心筋)への血液供給が部分的または完全に遮断されることで起きる病気です。 心筋は酸素を豊富に含んだ血液を絶えず必要とします。その血液を心臓に送る血管は、大動脈が心臓から出たところで枝分かれする 冠動脈です。この血管が狭くなる冠動脈疾患では、血流が遮断されて、... さらに読む に対しては、薬物療法、手術、または冠動脈ステントによる血管形成術が行われます。降圧薬を使用して血圧を下げ、高血圧をコントロールします。一部の感染症は抗菌薬で根治させることができます。
生活習慣の改善
心不全の人では、生活習慣を変えることで、気分や身体機能が改善する場合があります。
心不全の人は、激しい運動はできなくても、できるだけ体力を維持するようにすべきです。軽い心不全の場合は、医師に指示された運動プログラムを実施します。重い心不全では、心血管系専門のリハビリテーション施設で専門家の監督の下で運動を行います。
過体重の心不全患者では、運動すると心臓にさらに負担がかかり、心不全が悪化します。そのような場合は、理想的な体重まで減量してそれを維持するために、 食事療法 減量のための食事法 食事(ダイエット)とは本来、体重を減らす、体重を増やす、脂肪の摂取を控える、炭水化物を避けるといった目的の有無に関係なく、人が食べること全般を意味する言葉です。しかし、この「ダイエット」という言葉はしばしば、体重を減らすという多くの人にとって強迫観念となっている目的を含んだ意味で使われています。... さらに読む を行う必要があります。
喫煙は血管を傷つけます。大量のアルコールは心臓に直接悪影響を与えます。いずれも心不全を悪化させるため、 禁煙 禁煙 禁煙は非常に困難なことが多いですが、喫煙者が自分の健康のためにできる最も重要なことの1つです。 禁煙はすぐに健康上の便益をもたらし、便益は時間の経過とともに大きくなります。 禁煙する人は、イライラし、不安で、悲しく、落ち着きのない状態になることがありますが、これらの症状は時間の経過とともに軽減します。... さらに読む および禁酒するようにします。
塩分(ナトリウム)の多い食事は体液が貯留する原因になるため、排泄する水分の量を増やして水分貯留を軽減する目的で投与された薬剤(利尿薬など)の作用を打ち消してしまいます。したがって、塩分の過剰摂取は症状を悪化させます。ほぼすべての心不全の人は、食塩や塩辛い食べものの摂取を控え、塩分を控えた食事をとる必要があります。加工食品に含まれる塩分量はラベルを読んで確認できます。重い心不全の患者には通常、どのように塩分の摂取を制限するかが詳しく指示されます。栄養士による指導も役立ちます。塩分摂取量を制限している人でも、体液がひどくたまっているのでない限り、通常は正常時と同じだけ水分を摂取することができます。ただ、余分な水分はとらない方がよいでしょう。
体にたまった体液の量を調べる簡単で信頼性の高い方法は、毎日体重を測ることです。心不全の人は、できるだけ正確に毎日体重を測るよう医師に指示されますが、典型的には、朝起きて排尿してから朝食をとる前までに測定します。毎日同じ時間に同じ体重計を使い、同じような重さの服を着て体重を測り、毎日の体重を記録すれば、体重の変化の傾向を簡単に把握できます。1日当たり約1キログラム以上の体重増加は、体液の貯留を示す早期の警告です。急激な体重増加(1日に約1キログラムなど)が継続して起こる場合は、心不全の悪化が疑われます。
食塩摂取を制限しても、むくみが生じる人はたくさんいます。そうした人は、腰掛けるときに腫れた脚を台の上などに乗せて高くすべきです。この姿勢は余分な体液の再吸収と排泄を促します。人によっては、体液がたまるのを防ぐのに役立つフルレングスの弾性ストッキングの着用も必要になります。肺に水分がたまっている場合は、枕を重ねて上体を高くして寝るか、ベッドの頭の方を高くして寝ると、楽に眠れます。
心不全の治療薬
心不全の薬物療法では以下の薬剤を使用します。
症状を緩和する薬剤: 利尿薬 利尿薬 心不全とは、心臓が体の需要を満たせなくなった状態のことで、血流量の減少や静脈または肺での血液の滞留(うっ血)、心臓の機能をさらに弱めたり心臓を硬化させたりする他の変化などを引き起こします。心不全の薬物療法には以下のものがあります。 症状を緩和する薬剤:利尿薬、血管拡張薬、またはジゴキシン... さらに読む 、 硝酸薬 血管拡張薬 心不全とは、心臓が体の需要を満たせなくなった状態のことで、血流量の減少や静脈または肺での血液の滞留(うっ血)、心臓の機能をさらに弱めたり心臓を硬化させたりする他の変化などを引き起こします。心不全の薬物療法には以下のものがあります。 症状を緩和する薬剤:利尿薬、血管拡張薬、またはジゴキシン... さらに読む 、または ジゴキシン ジゴキシン 心不全とは、心臓が体の需要を満たせなくなった状態のことで、血流量の減少や静脈または肺での血液の滞留(うっ血)、心臓の機能をさらに弱めたり心臓を硬化させたりする他の変化などを引き起こします。心不全の薬物療法には以下のものがあります。 症状を緩和する薬剤:利尿薬、血管拡張薬、またはジゴキシン... さらに読む
余命を延長する薬剤: アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬 アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬 心不全とは、心臓が体の需要を満たせなくなった状態のことで、血流量の減少や静脈または肺での血液の滞留(うっ血)、心臓の機能をさらに弱めたり心臓を硬化させたりする他の変化などを引き起こします。心不全の薬物療法には以下のものがあります。 症状を緩和する薬剤:利尿薬、血管拡張薬、またはジゴキシン... さらに読む 、 ベータ遮断薬 ベータ遮断薬 心不全とは、心臓が体の需要を満たせなくなった状態のことで、血流量の減少や静脈または肺での血液の滞留(うっ血)、心臓の機能をさらに弱めたり心臓を硬化させたりする他の変化などを引き起こします。心不全の薬物療法には以下のものがあります。 症状を緩和する薬剤:利尿薬、血管拡張薬、またはジゴキシン... さらに読む 、 アルドステロン拮抗薬 アルドステロン拮抗薬 心不全とは、心臓が体の需要を満たせなくなった状態のことで、血流量の減少や静脈または肺での血液の滞留(うっ血)、心臓の機能をさらに弱めたり心臓を硬化させたりする他の変化などを引き起こします。心不全の薬物療法には以下のものがあります。 症状を緩和する薬剤:利尿薬、血管拡張薬、またはジゴキシン... さらに読む 、 アンジオテンシンII受容体拮抗薬 アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB) 心不全とは、心臓が体の需要を満たせなくなった状態のことで、血流量の減少や静脈または肺での血液の滞留(うっ血)、心臓の機能をさらに弱めたり心臓を硬化させたりする他の変化などを引き起こします。心不全の薬物療法には以下のものがあります。 症状を緩和する薬剤:利尿薬、血管拡張薬、またはジゴキシン... さらに読む (ARB)、 アンジオテンシン受容体/ネプリライシン阻害薬 アンジオテンシン受容体/ネプリライシン阻害薬 心不全とは、心臓が体の需要を満たせなくなった状態のことで、血流量の減少や静脈または肺での血液の滞留(うっ血)、心臓の機能をさらに弱めたり心臓を硬化させたりする他の変化などを引き起こします。心不全の薬物療法には以下のものがあります。 症状を緩和する薬剤:利尿薬、血管拡張薬、またはジゴキシン... さらに読む (ARNI)、 ナトリウム・グルコース共輸送体2阻害薬 ナトリウム-グルコース共輸送体2阻害薬 心不全とは、心臓が体の需要を満たせなくなった状態のことで、血流量の減少や静脈または肺での血液の滞留(うっ血)、心臓の機能をさらに弱めたり心臓を硬化させたりする他の変化などを引き起こします。心不全の薬物療法には以下のものがあります。 症状を緩和する薬剤:利尿薬、血管拡張薬、またはジゴキシン... さらに読む 、 洞結節阻害薬 洞結節阻害薬 心不全とは、心臓が体の需要を満たせなくなった状態のことで、血流量の減少や静脈または肺での血液の滞留(うっ血)、心臓の機能をさらに弱めたり心臓を硬化させたりする他の変化などを引き起こします。心不全の薬物療法には以下のものがあります。 症状を緩和する薬剤:利尿薬、血管拡張薬、またはジゴキシン... さらに読む
具体的な薬剤およびクラスの詳細は、 心不全の薬物療法 心不全に対する薬物療法 心不全とは、心臓が体の需要を満たせなくなった状態のことで、血流量の減少や静脈または肺での血液の滞留(うっ血)、心臓の機能をさらに弱めたり心臓を硬化させたりする他の変化などを引き起こします。心不全の薬物療法には以下のものがあります。 症状を緩和する薬剤:利尿薬、血管拡張薬、またはジゴキシン... さらに読む を参照してください。
どの種類の薬剤を使用するかは、心不全の種類によって異なります。収縮性心不全(駆出率が低下した心不全)には、すべてのクラスの薬剤が役立ちます。拡張性心不全(駆出率が保持された心不全)では、一般的にACE阻害薬、ARB、アルドステロン拮抗薬、ベータ遮断薬のみが使用されます。HFmrEFでは、ARNIが役に立つことがあります。
薬を定期的に服用し、薬がなくなっていないか確認しておくことが重要です。
その他の治療
肺水腫のある人には 酸素 酸素療法 酸素は私たちが呼吸している空気中の約21%を占める気体です。空気中の酸素が肺に取り込まれ、それが血流へと運ばれます( 酸素と二酸化炭素の交換を参照)。酸素は、例えば自動車のエンジンのように、燃料を燃やしてエネルギーを放出するために必要とされます。同様に、すべての生体組織は体にエネルギーを供給するために酸素を必要とします。十分な酸素がないと... さらに読む を供給する必要があり、特別なマスクを用いる場合もあります。場合によっては気管内にチューブを挿管し、 人工呼吸器 人工呼吸器 人工呼吸器は、肺への空気の出入りを補助するために用いる機械です。 呼吸不全の患者の一部は、人工呼吸器(肺に出入りする空気の流れを補助する機械)による呼吸の補助を必要とします。人工呼吸器によって命が助かることもあります。 人工呼吸器には、多くの使い方があります。通常は、合成樹脂製のチューブを鼻または口から気管に挿入します。人工呼吸器が数日以... さらに読む によって呼吸を補助し、呼吸仕事量の増加に対応します。
重度の心不全がある人には、ときに胸部に小さなモニター装置が埋め込まれることがあります。そのモニターで肺の中の圧力を継続的に測定できるため、主治医が薬剤を調整する上で役に立ちます。この装置は、心不全の発作を繰り返し、同時に 腎不全 腎不全の概要 腎不全とは、血液をろ過して老廃物を取り除く腎臓の機能が十分に働かなくなった状態のことです。 腎不全の原因としては、様々なものが考えられます。腎機能が急激に低下する場合( 急性腎障害、急性腎不全とも呼ばれます)もあれば、ゆっくりと低下していく場合( 慢性腎臓病、慢性腎不全とも呼ばれます)もあります。腎不全になると、腎臓は血液をろ過して老廃物... さらに読む もある人で特に有用です。
心不全が非常に重度で悪化しており、薬物療法が効かない人では、 心臓移植 心臓移植 心臓移植とは、死亡した直後の人から健康な心臓を摘出し、薬や移植以外の手術では有効な治療効果がもはや得られない重度の心疾患のある人に移植することです。 ( 移植の概要も参照のこと。) 心臓移植は、以下のいずれかの疾患があり、薬や移植以外の手術では有効な治療効果が得られない場合に限って行います。... さらに読む が選択肢の1つになることもあります。薬物療法が効かない極めて重症の心不全患者には、血液の拍出を補助する機械的補助装置を専門機関で使用します。その他の機械的治療法や新しい治療法が研究されています。
心拍の異常には、薬が役に立つこともありますが、 ペースメーカー ペースメーカー 不整脈とは、一連の心拍が不規則、速すぎる(頻脈)、遅すぎる(徐脈)、あるいは心臓内で電気刺激が異常な経路で伝わるなど、心拍リズムの異常のことをいいます。 不整脈の最も一般的な原因は心臓の病気(心疾患)です。 自分で心拍リズムの異常に気づくこともありますが、ほとんどの人は、脱力感や失神などの症状が起きるまで不整脈を自覚しません。... さらに読む が必要になる人もいます。一部の心不全患者では、ワイヤーが3本ついた特殊なペースメーカーを使用して心腔の収縮の順序を正常に戻すことができ(心臓再同期療法)、その後の経過を改善できる可能性があります。心機能が大幅に低下している人では、突然死のリスクが高いため、 植込み型除細動器 正常なリズムの回復 不整脈とは、一連の心拍が不規則、速すぎる(頻脈)、遅すぎる(徐脈)、あるいは心臓内で電気刺激が異常な経路で伝わるなど、心拍リズムの異常のことをいいます。 不整脈の最も一般的な原因は心臓の病気(心疾患)です。 自分で心拍リズムの異常に気づくこともありますが、ほとんどの人は、脱力感や失神などの症状が起きるまで不整脈を自覚しません。... さらに読む
の使用が検討されることがあります。
心不全の原因が心臓弁の問題であれば、医師はその弁の修復または置換を行うことがあります。
急性心不全の治療
突然発症した心不全や急激に悪化した心不全に対しては、病院での緊急の治療が必要です。
急性肺水腫(肺に急激に体液がたまる病気)を起こしている場合は、フェイスマスクから酸素吸入を行います。利尿薬を静脈内注射し、ニトログリセリンなどの薬を静脈内または舌下投与することで、症状は急速かつ劇的に改善します。急性肺水腫に通常伴う不安感はモルヒネで軽減されますが、呼吸数も減少するため、現在ではあまり用いられていません。これらの治療を行っても呼吸が十分に改善しない場合は、制御された圧力で酸素供給できる専用のマスクを使用するか、気道にチューブを挿管することにより、人工呼吸器を使用して呼吸を補助します。
より症状が重く、治療がうまくいかない場合は、心臓の収縮を刺激するために、ドパミンやドブタミンといったアドレナリンやノルアドレナリンと似た作用のある薬や、ミルリノンなどの心臓のポンプ機能を高める薬を短期間使用する場合もあります。これらの薬は長期間の治療には有用ではありません。
終末期の問題
患者の余命は、心不全の重症度、原因を是正できたかどうか、そして行われた治療の内容といった、多くの要因によって異なります。しかし、心不全で入院する必要があった人のうち、その後5年生存できるのは、約3分の1だけです。重度の心不全患者の約半数が2年以上生存します。余命は治療によって延ばすことができます。
心不全になってしばらくした人は、やがて生活の質が低下し、限られた治療法しか受けられなくなる可能性があり、特に心臓移植を受けられない高齢者では治療法の選択肢が非常に限られます。最終的には、延命を試みるより、快適な状態を保つことの方が重要になる場合もあります。患者自身と家族が治療方針の決定に参加するべきです。実際、重症の心不全患者とその家族は、この問題について話し合いたいと望むもので、話し合うことは不必要な苦痛をもたらさないということが多くの研究で示されています。思いやりのあるケアを行う、症状を緩和する、個人の尊厳を保つ上で、できることはたくさんあります(死と死期に関する序 死と死期に関する序 本質的に死は生の一部であるため、医療においては、死や死期を視野に入れつつ病気の見通しについて話し合うことが重要です。医師と患者は使う言葉も違えば、そうした話し合いに臨む気持ちにも違いがあります。 また、必要とする情報の量や意思決定に関与できる程度も、人によって様々です。一般に重病患者と周囲の親密な人々は、今後の病気の見通しを理解し、各自の... さらに読む )。
心不全の人は、症状の悪化を経ないで、突然予期せず死亡することがあります。したがって、心不全の人は、自分のケアについて意思決定ができなくなった場合に備え、どのようなケアを望むかについての 事前指示書 事前指示書 患者とその家族は多くの場合、死や死期に関する特定の希望やニーズを抱えています。 事前指示書は、医療ケアに関する患者の決定事項を家族や医療従事者に指示する文書で、そうした決定が必要な場面で患者にその能力がない場合に使用されます。 死期にある人の中には、自殺を考える人もいますが、実際に自分の死につながるような行為に及ぶ人はごく少数です。... さらに読む をできる限り用意しておくべきです。また、遺言書を作成したり、ときおり見直したりすることも重要です。
さらなる情報
アメリカ心臓協会(American Heart Association)