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自殺行動

執筆者:

Paula J. Clayton

, MD, University of Minnesota School of Medicine

最終査読/改訂年月 2018年 1月
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本ページのリソース

自殺行動には自殺既遂および自殺企図が含まれる。自殺を思う,深く考える,計画することは,自殺念慮と呼ばれる。

疫学

自殺行動に関する統計は,主として死亡診断書および検死時に記録された報告に基づいており,実際の発生率を過小評価している。より信頼性のある情報を収集するために,米国疾病予防管理センター(Centers for Disease control and prevention:CDC)はNational Violent Death Reporting System(NVDRS)を設立した;これは暴力死(殺人および自殺)の原因をより詳細に解明するために,個々の暴力事件について様々な情報源から情報を収集する州単位の制度である。NVDRSは現在40の州で整備されている。

米国では,自殺は10番目に多い死因となっており,2015年には死亡率が10万人当たり13.8人,自殺既遂が約41,000件であった。米国では,1日当たり121人が自殺により死亡している。死因としての自殺の順位は以下の通りである:

  • 15~34歳では2位

  • 10~14歳では3位

  • 35~44歳以上では4位

現在,自殺率が最も高い年齢群は,近年の著しい増加の結果,45~64歳となっている。この年齢群の自殺率が上昇した理由は不明であるが,以下の要因が寄与している可能性がある:

  • この年齢群については,10歳代であった当時により高年齢の集団と比べてうつ病の罹患率が高かったことから,研究者らはこの年齢群では加齢とともに自殺率が上昇するであろうと予測していた。

  • この年齢群の自殺率には,軍人および退役軍人における自殺者数の増加分が含まれている(自殺者の20%がこの集団に属する)。

  • この年齢群の自殺率は,処方薬および非処方薬の乱用の増加ならびに経済不況に対する反応を反映している可能性がある。

自殺率が2番目に高い年齢層は85歳以上である。

いずれの年齢群においても,自殺による男性の死亡者数は3.5対1の比率で女性の死亡者数より多くなっている。その理由は不明であるが,考えられる説明として以下のものがある:

  • 男性は,悩んでいるときに助けを求めることが少ない。

  • 男性はアルコールおよび薬物乱用の有病率が高く,これが自殺傾向につながっている。

  • 男性はより攻撃的であり,自殺を試みる際により致死的な手段を採用する。

  • 男性の自殺者数には,女性よりも男性の割合が高い軍人および退役軍人の自殺者が含まれている。

2015年には,自殺10件当たり7件を白人男性が占めていた。

2015年には,110万人以上の人が自殺企図を行ったことを報告している。自殺による死亡1例に対し,約25例の自殺企図が起きている。多くが自殺企図を繰り返す。自殺企図者で最終的に自殺により死亡するのは5~10%のみであるが,高齢者では自殺企図者の4人に1人が死亡する。女性では自殺企図が男性より2~3倍多く,15~19歳の女子においては,同年齢の男子の自殺企図1例につき100例の比率で自殺企図が起きている可能性がある。

遺書を残すのは自殺既遂者の約6人に1人である。その内容には,自殺の理由(精神障害を含む)が示されていることがある。

後追い自殺または群発自殺が自殺全体の約10%を占める。集団自殺は極めてまれであり,無理心中も同様である。まれに,警察官が殺害せざるを得ない行為(例,武器を振り回す)に至る者もおり,警察を利用した自殺(suicide by police)と呼ばれる。

病因

自殺行動は通常,複数の因子の相互作用により生じる。

自殺の治療可能な主な危険因子は次のものである:

自殺の他の危険因子としては以下のものがある:

  • 他の大半の重篤な精神障害

  • 飲酒,乱用薬物,および処方鎮痛薬の使用

  • 過去の自殺企図

  • 重篤な身体疾患(特に高齢者)

  • パーソナリティ障害

  • 衝動性

  • 失業および経済不況

  • 小児期の心理的に外傷的な体験

  • 自殺および/または精神障害の家族歴

自殺による死は,年齢および性別をマッチングした対照と比較して,精神障害の患者でより高頻度でみられる。

アルコール アルコール中毒および離脱 アルコール(エタノール)は中枢抑制薬である。短時間で大量に飲酒すると,呼吸抑制と昏睡を来たし,死に至ることがある。長期にわたる大量の飲酒は,肝臓や他の多くの臓器を損傷する。アルコール離脱症状は振戦から,重度の離脱(振戦せん妄)でみられる痙攣発作,幻覚,および生命を脅かす自律神経不安定状態に至るまで,連続的な病態として現れる。診断は臨床的に... さらに読む および乱用薬物は,脱抑制および衝動性を増強すると同時に,気分を悪化させることがあるが,この組合せが致死的となる可能性がある。自殺により死亡する人の30~40%は企図前に飲酒しており,そのうち約半数は自殺企図時に酩酊状態であった。衝動的な若年の男性および女性は,特にアルコールの影響を受けやすく,中等度の酩酊状態がより致死的な自殺方法の選択につながる可能性がある(1 病因論に関する参考文献 自殺行動には自殺既遂および自殺企図が含まれる。自殺を思う,深く考える,計画することは,自殺念慮と呼ばれる。 (American Psychiatric Association’s Practice Guideline for the Assessment and Treatment... さらに読む )。しかしながら, アルコール使用障害 アルコール使用障害とリハビリテーション アルコール使用障害では,飲酒のパターンが生じ,典型的には渇望と耐性(tolerance)の症状および/または心理社会的な悪影響のある離脱症状が伴う。アルコール依存症およびアルコール乱用は一般的であるが,あまり厳密に定義されていない用語であり,アルコール関連の問題を有する人に適用される。... さらに読む 患者は,たとえ酔っていない状態でも,自殺のリスクが高い。

高齢者の自殺の約20%には,重篤な身体疾患(特に痛みを伴う慢性疾患)が寄与している。

特定の社会的因子(例,セックスパートナーの問題,いじめ,最近の逮捕,法律上のトラブル)が自殺と関連するようである。そのような出来事の発生後には,すでに苦痛に苛まれている人にとって,しばしば自殺が最後の手段となる。

小児期の心理的に外傷的な体験(特に性的もしくは身体的虐待または親との離別によるストレス)は,自殺企図のほか,おそらくは自殺既遂と関連する。

自殺には家族集積性があり,自殺,自殺企図,または精神障害の家族歴は,自殺危険性の高い人における自殺リスクの増加と関連している。

病因論に関する参考文献

  • 1.Park CHK, Yoo SH, Lee J, et al: Impact of acute alcohol consumption on lethality of suicide methods.Compr Psychiatry 75:27–34, 2017.doi: 10.1016/j.comppsych.2017.02.012.

方法

自殺方法の選択は,文化的因子および各手段の利用可能性,さらには意図の真剣さなど,数多くの因子によって決定される。生存がほぼ不可能な方法(例,高所からの飛び降り)もあれば,救命の可能性がある方法(例,薬物摂取)もある。しかしながら,致死的でないような方法を用いていることは,必ずしも自殺の意図があまり真剣でないということを意味しない。

奇異な自殺方法は根底にある精神病を示唆する。

自殺企図に関しては,薬物摂取が最もよく用いられる方法である。銃撃や縊死などの暴力的な方法は自殺企図では一般的ではない。

米国における自殺既遂のほぼ50%で銃が使用されており,この方法を使用するのは女性よりも男性の方が多い。女性は男性よりも服毒を選択することが多い。その他の典型的な自殺方法としては,縊死,高所からの飛び降り,入水,刃物の使用などがある。

車で崖から飛び降りるなどの一部の方法は,他者を危険に曝す可能性がある。

管理

ほとんどの司法管轄区域では,患者に自殺の可能性があることを予見した医療従事者は,介入の権限をもつ機関に報告することが求められている。これを怠ると,刑事および民事訴訟につながる可能性もある。そのような患者は,安全な環境下に置かれるまで1人にしてはならない。訓練を受けた専門職(例,救急隊員,警察)により安全な環境(しばしば精神医療施設)へ移送されるべきである。

自殺の素振りであろうと自殺企図であろうと,いかなる自殺行為も真剣に受けとめなければならない。重篤な自傷行為のある者については,必ず身体的損傷に対する評価および治療を行うべきである。

最初の評価は,自殺行動の評価および管理について訓練を受けた者であれば,あらゆる医療従事者が行うことができる。しかしながら,全ての患者に可及的速やかな精神医学的評価が必要である。入院が必要か否か,および強制的な処置または拘束が必要か否かを判断しなければならない。精神病性障害の患者,および重度の抑うつに加えて未解決の危機的状況が併存する一部の患者は,精神科病棟に入院させるべきである。判断に影響を与える身体疾患の臨床症状(例,せん妄,痙攣発作,発熱)がみられる患者では,適切な自殺予防策が講じられた身体科病棟への入院が必要になりうる。

自殺企図の後に,自殺行為を引き起こした重度の抑うつの後に一時的な気分の高揚が生じることがあるため,患者が一切の問題を否定することがある。それでも,患者の疾患が治療されない限り,その後に自殺既遂に至るリスクが高い。

精神医学的評価では,自殺企図の原因となった問題の一部を確認し,医師が適切な治療計画を立てるための一助とする。評価は以下から成る:

管理に関する参考文献

  • 1.Michel K, Valach L, Gysin-Maillart A: A novel therapy for people who attempt suicide and why we need new models of suicide.Int J Environ Res Public Health 14 (3), 2017.pii: E243.doi: 10.3390/ijerph14030243.

  • 2.Stanley B, Brown G: Safety planning intervention: A brief intervention to mitigate suicide risk.Cogn Behav Pract 19: 256-264, 2011.

予防

自殺の予防には,リスクの高い人を同定して( Professional.see table 自殺の危険因子および警告徴候 自殺の危険因子および警告徴候 自殺の危険因子および警告徴候 ),適切な介入を開始することが必要である。

自殺企図後に入院した患者は,退院後の最初の数日から数週間は自殺による死亡リスクが最大となり,退院後最初の6~12カ月間はリスクが高いままであるということでコンセンサスが得られている。その後,リスクは増加と減少を繰り返すが,自殺傾向が認められたことのない人と比べると,常に高い水準にある。

自殺リスクが増加する理由としては,以下のものがある:

  • 患者の気分が改善するまでに長い時間がかかる場合がある。

  • 楽観的な感情を抱けないために,患者が処方薬を服用しない場合がある。

  • 気分が良好でないために,患者が定期的なフォローアップのための受診をしない場合がある。

  • 一旦自宅に戻ると,原因となる問題が解決していないと感じられる。

したがって,退院前に患者と家族または親友に対して自殺による切迫した死亡リスクについてのカウンセリングを行うべきであり,また退院後最初の週のフォローアップの予約を患者が退院する前に決めるべきである。さらに,患者が使用する薬剤の名称,用量,および投与頻度を患者と家族または友人に伝えておくべきである。

可能であれば,退院後最初の数週間にわたり以下を行うべきである:

  • 患者を1人にさせない。

  • 処方薬のレジメンに対する患者の遵守をモニタリングすべきである。

  • 患者に全般的な心の状態,気分,睡眠パターン,および活力(例,起床,更衣,周囲の人との交流)について毎日尋ねるべきである。

患者の家族または友人が患者のフォローアップの予約を取り,患者の改善の有無について医療従事者に情報を提供すべきである。このような介入は退院後2カ月以上続けるべきである。

自殺企図または自殺既遂の一部は,親密な近親者や関係者に対しても驚きやショックをもたらす場合があるが,家族,友人,または医療従事者に明らかな警告が発せられていた場合もある。患者が実際に計画について話す,または突然遺書を書く,もしくは遺書を書き換えるというように,警告はしばしば明白である。しかしながら,患者が何のために生きているのか分からない,または死んだ方がましだといったようなことを話すなど,より微妙な警告の場合もある。

プライマリケア医は,平均すると年に6例以上の頻度で,自殺の可能性がある患者に遭遇する。自殺者の約77%は自殺前の1年以内に医師を受診しており,約32%は自殺前の1年間に精神科のケアを受けていた。

痛みを伴う重度の身体疾患,物質乱用,および精神障害(特にうつ病)は,しばしば自殺の因子となるため,このような考慮すべき因子を識別し,適切な治療を開始することは,医師が自殺予防のためにできる重要な貢献である。

うつ病患者には必ず自殺念慮について質問するべきである。そのような質問をすると,患者に自己破壊の考えが植えつけられるのではないかという恐れには,根拠がない。質問することで,医師はうつ病の重篤さをより明確に把握でき,建設的な話合いを促し,医師が患者の深い絶望感や無力感を認識していることを伝えるのに役立つ。

今にも自殺すると脅してくる当事者(例,電話してこれから致死量の薬を飲むところだと告げる患者,高所から飛び降りると脅す患者)であっても,生きたいという願望はいくばくかは存在している場合がある。助けてほしいと求められた医師または他の者は,生を求めるその願望を支援しなくてはならない。

自殺傾向のある人々を対象とする緊急の精神医学的援助としては以下のものがある:

  • 当事者と関係を構築し,率直なコミュニケーションを取る

  • 現在および過去の精神科治療ならびに現在服用している薬剤について質問する

  • 危機を引き起こしている問題の解決を手助けする

  • 問題について建設的な支援を提供する

  • 基礎にある精神障害の治療を開始する

  • 可及的速やかに適切なフォローアップケアの場に紹介する

  • 低リスク患者は,親密な家族または献身的で理解のある友人を付き添わせて退院させる

  • このような患者には,Lifelineの電話番号(1-800-273-TALK[8255])もしくはオンラインのLifeline Crisis ChatCrisis Text Line(text HOME to 741741)またはAmerican Foundation for Suicide Preventionへのリンクを提供する【訳注:日本では「いのちの電話」https://www.inochinodenwa.org/lifeline.php】

うつ病の治療と自殺のリスク

うつ病患者は自殺リスクが高く,自殺行動および希死念慮について注意深くモニタリングされるべきである。うつ病治療の初期には自殺リスクが高まることがあり,このとき,精神運動制止および決断困難は改善しているが,抑うつ気分は部分的にしか改善していない。抗うつ薬の開始時または用量の増量時には,一部の患者で焦燥,不安,および悪化する抑うつがみられるが,これらにより自殺傾向が高まることがある。

小児,青年,および若年成人において,抗うつ薬の使用(特にパロキセチン)と自殺念慮および自殺企図が関連する可能性に関する最近の公衆衛生上の警告のため,これらの集団に対する抗うつ薬の処方は大幅に(30%以上)減少した。しかしながら,同じ期間中に若年者の自殺率は14%増加した。このため,これらの警告は,うつ病の薬物療法を控えさせることで,自殺による死亡を減少させたのではなく,むしろ一時的に増加させた可能性がある。これらの知見を総合すると,治療を促しながら,以下のような適切な予防策を講じることが最善の方法であることが示唆される:

  • 配付する抗うつ薬が致死量を超えないようにする

  • 治療の早期には来院頻度を増やす

  • 患者,家族,その他の重要な関係者に対し,症状の悪化または希死念慮に注意するよう明確な警告を与える

  • 患者,家族,その他の重要な関係者に対し,症状の悪化または希死念慮がみられた場合は直ちに処方医に連絡するか,他の場所でのケアを求めるよう指示する

リチウムを抗うつ薬および非定型抗精神病薬と併用すると,うつ病または双極性障害患者における自殺による死亡数が減少することが,いくつかの研究で示されている。リチウムは,たとえ低用量でも,反復性のうつ病に対する抗自殺薬として非常に有効である。さらに,クロザピンは統合失調症患者における自殺リスクを低下させる。

電気痙攣療法は,重度のうつ病や自殺の危険があるうつ病の治療に対して現在も用いられている。

自殺の影響

自殺行為はいかなるものでも,関係者全員に著しい精神面での影響を及ぼす。医師,家族,および友人は,自殺を防止できなかったことに罪悪感,恥辱感,および後悔の念を抱き,同時に故人または他の人に対して怒りを覚えることもある。医師としては,遺族および友人が罪悪感および悲しみに対処する上で貴重な支援を提供することができる。

医師による死の幇助

医師による死の幇助(かつての自殺幇助)とは,自らの人生を終わらせることを望む人に対して医師が行う補助を指す。これについては議論があり,米国では5つの州のみ(オレゴン州,ワシントン州,モンタナ州,バーモント州,カリフォルニア州)とカナダでは合法とされている;医師による死の幇助が合法とされる全ての州には,適格性や報告要件(例,患者に精神的能力があり,かつ末期疾患に罹患しており,期待余命が6カ月未満でなければならない)など,当事者となる患者および医師に向けたガイドラインが整備されている。自発的安楽死はオランダ,ベルギー,コロンビア,およびルクセンブルグでは合法である。自殺幇助はスイス,ドイツ,およびカナダで合法である。

医師による自殺幇助(または死の幇助)では,患者が自ら選択した時点で患者が致死的な手段を利用できるようにする。自発的積極的安楽死では,患者の要望を実行に移す上で医師が積極的な役割を果たし,通常は致死的な薬物の静脈内投与を行う。

医師による死の幇助の利用可能性には制約が設けられているが,疼痛を伴い消耗性で根治不能の疾患を有する患者は,医師との間で死の幇助に関する話合いを始めることがある。

医師による死の幇助は,医師にとって困難な倫理的問題となることがある。

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