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慢性閉塞性肺疾患(COPD)

(慢性閉塞性気管支炎;肺気腫)

執筆者:

Robert A. Wise

, MD, Johns Hopkins Asthma and Allergy Center

最終査読/改訂年月 2018年 11月
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慢性閉塞性肺疾患(COPD)は,毒素の吸入(しばしばタバコ煙)に対する炎症反応によって引き起こされる気流制限である。比較的まれな原因として,非喫煙者におけるα1-アンチトリプシン欠乏症および様々な職業曝露がある。症状は数年かけて発現する湿性咳嗽および呼吸困難であり,一般的な徴候には呼吸音の減少,呼気相の延長,および喘鳴などがある。重症例では体重減少,気胸,頻回の急性代償不全のエピソード,右心不全,かつ/または急性もしくは慢性呼吸不全などを合併することがある。診断は病歴,身体診察,胸部X線,および肺機能検査に基づく。治療は気管支拡張薬,コルチコステロイド,また必要があれば酸素および抗菌薬を投与する。重症COPD患者の約50%は診断から10年以内に死亡する。

COPDは以下の要素で構成される:

  • 慢性閉塞性気管支炎(臨床的定義)

  • 気腫(病理学的または放射線学的定義)

患者の多くは両方の特徴をもつ。

慢性閉塞性気管支炎は,気流閉塞(airflow obstruction)を伴う慢性の気管支炎である。慢性気管支炎は,ほぼ毎日湿性咳嗽がみられる週が合計で少なくとも3カ月続き,かつそのような年が2年間連続することと定義される。慢性気管支炎は,スパイロメトリーにより気流閉塞の存在が判明すれば,慢性閉塞性気管支炎となる。慢性の喘息性気管支炎は,類似かつ重複する病態であり,慢性の湿性咳嗽,喘鳴,および部分的に可逆的な気流閉塞によって特徴づけられ,主に喘息の病歴のある喫煙者に生じる。一部の症例では,慢性閉塞性気管支炎と慢性の喘息性気管支炎の区別は不明瞭であり,ときに喘息-COPDオーバーラップ(ACO)と呼ばれることがある。

肺気腫は,肺実質の破壊であり,弾性収縮力の喪失ならびに肺胞中隔および気道開存のための牽引力の喪失を招き,その結果気道虚脱の傾向が強まる。それに続いて肺の過膨張,気流制限,エアトラッピングが起こる。気腔が拡大し,やがてブレブまたはブラが発生することもある。小さな気道の閉塞は,気腫に先立って現れる最も初期の病変であると考えられている。

疫学

米国では,約2400万人に気流制限がみられ,そのうち約1200万人はCOPDと診断されている。COPDは死亡原因の第3位であり,1980年の死亡者数52,193人と比較して,2015年の死亡者数は155,000人であった。1980年から2000年の間に,COPDの死亡率は64%上昇し(40.7/100,000から66.9/100,000へ),それ以降横ばいである。有病率,発生率,および死亡率は年齢が高くなるとともに上昇する。有病率は現在,女性の方が高いが,全死亡率は男女で同程度である。COPDは,α1-アンチトリプシン欠乏症 α1-アンチトリプシン欠乏症 α1-アンチトリプシン欠乏症は,肺の主要なアンチプロテアーゼであるα1-アンチトリプシンの先天的欠乏であり,成人においてプロテアーゼを介した組織破壊および気腫の増大を招く。異常なα1-アンチトリプシンの肝臓への蓄積は,小児でも成人でも肝疾患の原因となる。血清α1-アンチトリプシン値が... さらに読む (α1- antiprotease inhibitor deficiency)とは無関係に,家族集積性があるようである。

COPDは,発展途上国における喫煙の増加,感染症による死亡の減少,およびバイオマス燃料(例えば,木材,牧草,または他の有機資材)の広範囲の利用により,世界的に増加しつつある。またCOPDによる死亡率は,先進国よりも発展途上国に対し影響を与える可能性がある。2015年には,世界のCOPDの患者数は6400万人,死亡者数は320万人を超えており,2030年までに世界の死因の第3位になると予測されている。

病因

COPDにはいくつかの原因がある:

  • 喫煙(および頻度は低くなるがその他の吸入曝露)

  • 遺伝因子

吸入曝露

あらゆる吸入曝露のうち,ほとんどの国において喫煙が第一の危険因子となっているが,臨床的に明らかなCOPDを発症するのは喫煙者の約15%のみである;40 pack-year以上の曝露歴は強い予測因子である。発展途上国では,室内での調理や暖房によって生じる煙が原因として重要である。すでに気道反応性(メサコリン吸入への感受性亢進により定義される)のある喫煙者は,たとえ臨床的に喘息がなくても,反応性がない喫煙者と比べてCOPDを発症するリスクが高い。

低体重,小児期の呼吸器疾患,ならびにタバコの受動喫煙,大気汚染,および職業性塵埃(例,鉱物塵または綿塵)または吸入化学物質(例,カドミウム)への曝露は,COPDのリスクを高めるが,喫煙に比べれば重要性は低い。

遺伝因子

近年,特定の集団において30を超えるアレルがCOPDまたは肺機能の低下と関連することが判明しているが,α1-アンチトリプシンと同程度に重大であると示されているものはない。

病態生理

様々な要因が気流制限やCOPDのその他の合併症を引き起こす。

炎症

吸入曝露は気道および肺胞における炎症反応の誘因となるが,遺伝的感受性を有する人々においては,それがCOPDの発症につながる。その過程にはプロテアーゼ活性の増大とアンチプロテアーゼ活性の減少が介在すると考えられている。好中球エラスターゼ,マトリックスメタロプロテアーゼ,およびカテプシンなどの肺プロテアーゼは,正常な組織修復過程においてエラスチンや結合組織を分解する。その活性は,正常では,α1-アンチトリプシン,気道上皮由来の分泌型白血球プロテアーゼインヒビター,エラフィン,およびマトリックスメタロプロテアーゼ組織インヒビターなどのアンチプロテアーゼにより均衡が保たれる。COPD患者では,炎症過程の一部として,活性化された好中球および他の炎症細胞がプロテアーゼを放出し,プロテアーゼ活性がアンチプロテアーゼ活性を上回り,その結果,組織の破壊および粘液の過分泌が生じる。

好中球およびマクロファージの活性化はまた,フリーラジカル,スーパーオキシドアニオン,および過酸化水素の蓄積にもつながり,それがアンチプロテアーゼを阻害して気管支収縮,粘膜浮腫,および粘液過分泌を引き起こす。好中球誘発性の酸化傷害,線維化誘導神経ペプチド(profibrotic neuropeptide[例,ボンベシン])の放出,および血管内皮増殖因子の濃度低下は,アポトーシスによる肺実質破壊に寄与している可能性がある。

疾患重症度が増すとともにCOPDの炎症は悪化し,重症(進行)例では,禁煙したとしても炎症は完全には消失しない。この慢性炎症はコルチコステロイドに反応しないようである。

感染

呼吸器感染症(COPD患者は感受性が高い)は肺破壊の進行を拡大させる。

細菌,特にインフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)は,約30%のCOPD患者の下気道に定着する。より重症例(例,入院歴のある患者)では,緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)または他のグラム陰性細菌の定着がよくみられる。喫煙および気流閉塞が下気道の粘液クリアランスの障害につながる場合があり,それが感染の素因となる。繰り返す感染が炎症による負荷を増大し,それが疾患の進行を速める。しかしながら,抗菌薬の長期使用が,COPDの進行を遅らせるというエビデンスはない。

気流制限

COPDの主要な病態生理学的特徴は,気道の狭小化/閉塞,弾性収縮力の喪失,またはその両方に起因する気流制限である。

気道の狭小化/閉塞は,炎症による粘液分泌過多,粘液栓子,粘膜浮腫,気管支攣縮,気管支周囲線維化,末梢気道のリモデリング,あるいはこれらの機序が組み合わさることにより生じる。肺胞中隔が破壊され,肺実質の気道への付着が弱くなることにより,呼気時の気道閉塞が助長される。

拡大した肺胞腔は,ときに癒合してブラ(直径1cm以上の気腔と定義される)となる。局所的に重度の気腫が生じた領域では,ブラ内は完全な空洞となるか,紐状の肺組織が内部を走行した状態となる;ときに一側胸郭全体をブラが占めることもある。これらの変化は弾性収縮力の喪失および肺の過膨張につながる。

気道抵抗の増大は,呼吸仕事量を増大させる。肺の過膨張は,気道抵抗を低下させるものの,やはり呼吸仕事量を増大させる。呼吸仕事量の増大は,低酸素症および高炭酸ガス血症を伴う肺胞低換気につながることがあるが,低酸素症および高炭酸ガス血症は換気血流(V/Q)不均衡によっても引き起こされうる。

合併症

気流制限およびときに生じる呼吸機能不全に加え,以下のような合併症がみられる:

  • 肺高血圧症

  • 呼吸器感染症

  • 体重減少およびその他の併存症

COPD患者では,ウイルス性または細菌性呼吸器感染症がよくみられ,急性増悪の原因の大きな割合を占める。現在のところ,急性細菌感染の原因は,慢性的に定着した細菌の増殖過多ではなく新しい細菌株の獲得によると考えられている。

体重が減少する可能性があり,これはおそらくカロリー摂取量の減少および腫瘍壊死因子(TNF)αの血中濃度上昇の結果である。

QOLおよび/または生存率に悪影響を与えるその他の併存疾患または合併症として,骨粗鬆症 骨粗鬆症 骨粗鬆症は,骨密度(単位体積当たりの骨量)が減少し,骨の構造が劣化する進行性の代謝性骨疾患である。骨格の脆弱性は,軽度または不顕性の外傷による骨折(脆弱性骨折と呼ぶ)の原因となる(特に胸腰椎,手関節,および股関節)。診断は,二重エネルギーX線吸収法(DXA)または脆弱性骨折の確認による。予防および治療には,危険因子の是正,カルシウムおよび... さらに読む 骨粗鬆症 うつ病 抑うつ障害群 抑うつ障害群は,機能を妨げるほど重度または持続的な悲しみ,および興味または喜びが減退することにより特徴づけられる。正確な原因は不明であるが,おそらくは遺伝,神経伝達物質の変化,神経内分泌機能の変化,および心理社会的因子が関与する。診断は病歴に基づく。通常,治療は薬物療法,精神療法,またはその両方,および電気痙攣療法から成る。... さらに読む 不安 不安症の概要 恐怖や不安は誰もが日常的に経験するものである。恐怖とは,直ちに認識可能な外部からの脅威(例,侵入者,凍結した路面でスピンする車)に対する情動的,身体的,および行動的な反応である。不安とは,神経過敏や心配事による苦痛で不快な感情状態であり,その原因はあまり明確ではない。脅威が生じる厳密な時期と不安との間に強い結びつきはなく,不安は脅威の前に... さらに読む 冠動脈疾患 冠動脈疾患の概要 冠動脈疾患では,冠動脈の血流が障害され,そのほとんどがアテロームに起因する。臨床像としては,無症候性心筋虚血,狭心症,急性冠症候群(不安定狭心症,心筋梗塞),心臓突然死などがある。診断は症状,心電図検査,負荷試験,ときに冠動脈造影による。予防法は可逆的な危険因子(例,高コレステロール血症,高血圧,運動不足,肥満,糖尿病,喫煙)の是正である... さらに読む 冠動脈疾患の概要 肺癌 肺腫瘍の概要 肺腫瘍は以下の場合がある: 原発性 別の部位からの転移 肺の原発性腫瘍は以下の場合がある: 悪性(Professional.see table 原発性悪性肺腫瘍の分類) さらに読む を始めとする癌,筋萎縮,胃食道逆流 胃食道逆流症(GERD) 下部食道括約筋の機能不全によって胃内容が食道に逆流し,灼熱痛が起こる。逆流が持続することで,食道炎,狭窄,まれに化生または癌がもたらされる可能性がある。診断は臨床的に行い,ときに内視鏡検査を併用し,場合によっては胃酸検査を併用する。治療は,生活習慣の改善とプロトンポンプ阻害薬による胃酸分泌抑制のほか,ときに外科的修復による。... さらに読む 胃食道逆流症(GERD) などがある。これらの疾患がどの程度までCOPD,喫煙,およびそれに伴う全身性炎症の結果であるかは不明である。

症状と徴候

COPDは何年もかけて発生および進行する。患者の多くはタバコ20本/日以上の喫煙を20年以上続けている。

  • 通常は湿性咳嗽が最初の症状であり,40代から50代の喫煙者に発生する。

  • 進行性,持続性,労作性,または呼吸器感染時に増悪する呼吸困難が,患者が50代後半から60代の頃に現れる。

喫煙を継続し,生涯におけるタバコへの曝露が多い患者では,通常は症状の進行が速い。起床時の頭痛は,さらに進行した症例でみられ,夜間の高炭酸ガス血症または低酸素血症を示唆する。

COPDの徴候には,喘鳴,呼気相の延長,心音および肺音の減弱として現れる肺の過膨張,および胸郭の前後径の増大(樽状胸)などがある。進行した肺気腫患者は,体重が減少し,活動低下,低酸素症,または全身性の炎症メディエータ(TNF-αなど)放出に起因する筋萎縮を経験する。

進行例の徴候には,口すぼめ呼吸,呼吸補助筋の使用,吸気時における下部胸郭の奇異性の内側への動き(Hoover徴候),およびチアノーゼなどがある。肺性心の徴候には,頸静脈怒張,肺動脈成分の亢進を伴うII音の分裂,三尖弁閉鎖不全の雑音,および末梢浮腫などがある。COPDでは肺が過膨張しているため,傍胸骨拍動はまれである。

自然気胸(おそらくブラの破裂と関連する)が起こることもあり,肺の状態が突然悪化したCOPD患者ではこれを疑うべきである。

急性増悪

急性増悪はCOPDの経過中に散発的に起こり,その予兆は症状の重症化である。増悪の具体的な原因の同定はほとんどの場合不可能であるが,しばしばウイルス性上気道感染症,急性の細菌性気管支炎,または呼吸器刺激物への曝露が原因となる。COPDが進行するにつれて,急性増悪はより頻繁になる傾向があり,平均して1~3エピソード/年である。

診断

  • 胸部X線

  • 肺機能検査

診断は病歴,身体診察,および胸部画像所見により示唆され,肺機能検査で確定される。同様の症状は,喘息 喘息 喘息は,様々な誘発刺激により引き起こされ,部分的または完全に可逆的な気管支収縮を生じさせる気道のびまん性炎症疾患である。症状および徴候には,呼吸困難,胸部圧迫感,咳嗽,および喘鳴などがある。診断は病歴,身体診察,および肺機能検査に基づく。治療には誘発因子の制御および薬物療法があり,吸入β2作動薬および吸入コルチコステロイドが最も多く用いら... さらに読む 心不全 心不全 (HF) 心不全は心室機能障害により生じる症候群である。左室不全では息切れと疲労が生じ,右室不全では末梢および腹腔への体液貯留が生じる;左右の心室が同時に侵されることもあれば,個別に侵されることもある。最初の診断は臨床所見に基づいて行い,胸部X線,心エコー検査,および血漿ナトリウム利尿ペプチド濃度を裏付けとする。治療法としては,患者教育,利尿薬,ア... さらに読む 心不全 (HF) ,および気管支拡張症 気管支拡張症 気管支拡張症とは,慢性の感染および炎症によって引き起こされる太い気管支の拡張および破壊である。一般的な原因は嚢胞性線維症,免疫異常,および反復性の感染であるが,一部の症例は特発性とみられる。症状は慢性咳嗽および膿性痰の喀出であり,一部の患者では発熱および呼吸困難も伴う。診断は病歴および画像検査に基づき,通常は高分解能CTを必要とするが,通... さらに読む 気管支拡張症 によっても起こりうる(COPDの鑑別診断 COPDの鑑別診断 COPDの鑑別診断 の表を参照)。COPDと喘息はときに容易に混同され,重複することもある(気管支喘息COPDオーバーラップ)。

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気流制限の要素があると考えられる全身性疾患はCOPDを示唆しうる;そのような疾患には,HIV感染 ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症 ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症は,2つの類似したレトロウイルス(HIV-1およびHIV-2)のいずれかにより生じ,これらのウイルスはCD4陽性リンパ球を破壊し,細胞性免疫を障害することで,特定の感染症および悪性腫瘍のリスクを高める。初回感染時には,非特異的な熱性疾患を引き起こすことがある。その後に症候(免疫不全に関連するもの)が現れ... さらに読む ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症 ,静脈内投与薬剤の乱用(特にコカインおよびアンフェタミン),サルコイドーシス サルコイドーシス サルコイドーシスは単一または複数の臓器および組織に生じる非乾酪性肉芽腫を特徴とする炎症性疾患であり,病因は不明である。肺およびリンパ系が侵される頻度が最も高いが,サルコイドーシスはどの臓器にも生じうる。肺症状は,無症状から咳嗽,労作時呼吸困難,および,まれであるが肺または他臓器の機能不全に至るまで様々である。通常まず肺病変をきっかけに診断... さらに読む サルコイドーシス シェーグレン症候群 シェーグレン症候群(SS) シェーグレン症候群(SS)は,比較的よくみられる原因不明の慢性,自己免疫性,全身性,炎症性の疾患である。外分泌腺のリンパ球浸潤およびそれに続く二次的な分泌機能障害による,口腔,眼,およびその他の粘膜の乾燥を特徴とする。SSは様々な外分泌腺または他の器官に影響を及ぼすことがある。診断は,眼,口腔,および唾液腺の障害に関連する特異的な基準,自... さらに読む シェーグレン症候群(SS) 閉塞性細気管支炎 職業性喘息 職業性喘息は可逆性の気道閉塞であり,職場における数カ月から数年のアレルゲンへの感作を経て発症する。症状は,呼吸困難,喘鳴,咳嗽であり,ときに上気道のアレルギー症状がみられる。診断は職業歴に基づき,従事している活動,職場におけるアレルゲン,仕事と症状との時間的関連の評価などを行う。アレルゲンの皮膚テストおよび吸入誘発試験は専門施設で行われる... さらに読む リンパ脈管筋腫症 リンパ脈管筋腫症 リンパ脈管筋腫症(LAM)は,肺,肺血管,リンパ管,および胸膜に及ぶ平滑筋細胞の緩徐な増殖である。まれな疾患で,専ら若年女性に起こる。症状は,呼吸困難,咳嗽,胸痛,および喀血である;自然気胸がよくみられる。症状および胸部X線所見に基づいて本症を疑い,高分解能CTで診断を確定する。予後は不明であるが,この疾患は緩徐に進行し,しばしば何年間も... さらに読む ,好酸球性肉芽腫などがある。COPDと間質性肺疾患 間質性肺疾患の概要 間質性肺疾患は,肺胞中隔の肥厚,線維芽細胞の増殖,コラーゲン沈着,および(疾患が進行した場合は)肺線維化を特徴とする,多様な疾患の集合である。間質性肺疾患は様々な基準によって分類しうる(例,急性か慢性か,肉芽腫性か非肉芽腫性か,原因がわかっているか不明か,肺原発性か全身性疾患に続発するものか,喫煙歴があるかないか)。... さらに読む の鑑別は,間質性肺疾患においては胸部画像検査で間質の陰影が増加し,肺機能検査で閉塞性換気障害ではなく拘束性換気障害を示すことにより可能である。中にはCOPDおよび間質性肺疾患が併存する(気腫合併肺線維症[CPFE])例もあり,この場合肺気量は比較的保たれているが,ガス交換能が重度に障害されている。

肺機能検査

  • FEV1:最大吸気に続く努力呼気で,最初の1秒間に呼出される気量

  • 努力肺活量(FVC):最大努力で呼出した全気量

  • フローボリューム曲線:努力最大呼気および吸気を行う間に,スパイロメトリーで気流および気量を同時に記録したもの

FEV1,FVC,およびFEV1/FVCの比の低下は,気流制限の明確な指標である。フローボリューム曲線は,呼気時に凹形のパターンを示す(フローボリューム曲線 フローボリューム曲線 フローボリューム曲線 の図を参照)。

COPDの発症とその後の症状発現の様式には基本的に2つの経過がある。1つは,成人期初期の肺機能は正常で,その後,FEV1の減少率が高まる(約 ≥ 60mL/年)という経過である。もう1つの経過は,成人期初期に肺機能が障害され,しばしば喘息その他の小児呼吸器疾患と関連するものである。これらの患者では,FEV1の正常な加齢に伴う減少率(約30mL/年)を示しながらCOPDが発症する。この2番目の経過モデルは役立つ概念であるものの,患者ごとに非常に多様な軌跡をたどる可能性がある(1 診断に関する参考文献 慢性閉塞性肺疾患(COPD)は,毒素の吸入(しばしばタバコ煙)に対する炎症反応によって引き起こされる気流制限である。比較的まれな原因として,非喫煙者におけるα1-アンチトリプシン欠乏症および様々な職業曝露がある。症状は数年かけて発現する湿性咳嗽および呼吸困難であり,一般的な徴候には呼吸音の減少,呼気相の延長,および喘鳴などがある。重症例で... さらに読む 診断に関する参考文献 )。FEV1がおよそ1L未満に低下すると,患者は日常生活動作で呼吸困難を生じるようになる(しかし,呼吸困難は気流制限の程度よりも動的過膨張[労作時の不完全呼出による進行性の過膨張]の程度に密接に関連する)。FEV1がおよそ0.8L未満に低下すると,低酸素血症,高炭酸ガス血症,および肺性心 肺性心 肺性心とは,肺動脈性肺高血圧症を引き起こす肺疾患に続発して右室拡大が生じる病態である。続いて右室不全へと至る。所見には,末梢浮腫,頸静脈怒張,肝腫大,胸骨近傍の挙上などがある。診断は臨床的に行い,心エコー検査による。治療は原因に対して行う。 肺性心は肺またはその血管系の障害により生じるもので,左室不全,先天性心疾患(例,心室中隔欠損症),... さらに読む 肺性心 のリスクが生じる。

FEV1およびFVCは外来でスパイロメトリーにより簡単に測定でき,症状および死亡率と相関があるため,これらの値により疾患の重症度(COPDの病期および治療 COPDの分類および治療 COPDの分類および治療 の表を参照)が定義される。正常の基準値は患者の年齢,性別,および身長により決定される。

  • 全肺気量の増加

  • 機能的残気量の増加

  • 残気量の増加

  • 肺活量の減少

  • 1回呼吸法(single breath)による一酸化炭素拡散能(DLco)の低下

全肺気量,機能的残気量,および残気量はCOPDでは増加するが,拘束性肺疾患では減少するため,これらの測定値はCOPDと拘束性肺疾患の鑑別に役立つ。

DLcoの低下は非特異的であり,間質性肺疾患など肺血管床を侵す他の障害でも低下するが,喘息ではDLcoが正常または上昇するため,肺気腫と喘息との鑑別に役に立つ。

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画像検査

胸部X線では特徴的な所見がみられる場合がある。肺気腫の患者では,横隔膜の平坦化として現れる肺過膨張(すなわち,胸骨と横隔膜前方のなす角が側面像で正常の45°に対し,90°を超える),肺門部の血管の急峻な先細り(tapering),およびブラ(すなわち,弓状の毛髪のように細い線に囲まれた > 1cmのX線透過像)などの変化がみられる。その他の典型的な所見には,胸骨後方の気腔の拡大および幅の狭い心陰影などがある。主に肺底部に生じる気腫性変化は,α1-アンチトリプシン欠乏症 α1-アンチトリプシン欠乏症 α1-アンチトリプシン欠乏症は,肺の主要なアンチプロテアーゼであるα1-アンチトリプシンの先天的欠乏であり,成人においてプロテアーゼを介した組織破壊および気腫の増大を招く。異常なα1-アンチトリプシンの肝臓への蓄積は,小児でも成人でも肝疾患の原因となる。血清α1-アンチトリプシン値が... さらに読む を示唆する。肺は正常のように見えるか,または肺実質の喪失に伴う透過性の上昇がみられる。慢性閉塞性気管支炎の患者では,胸部X線は正常か,または気管支壁肥厚の結果として両側肺底部に気管支血管影の増加がみられる場合がある。

肺門部の突出は,中心部の肺動脈の拡大を示唆し,これは肺高血圧を意味する。肺性心で生じる右室拡大は,肺の過膨張により認識できないこともあれば,心陰影の胸骨後腔への侵入として示されるか,または過去の胸部X線写真と比べて心陰影の横幅が広がることによって示されることもある。

胸部CTでは,胸部X線では明らかではない異常が示される場合があり,肺炎,塵肺症,肺癌などの併存疾患または合併症が示唆されることがある。CTは肺気腫の程度と分布の評価に有用であり,これらは視覚的スコア,または肺密度の分布を分析することによって推定される。COPD 患者でCT撮影が適応となるのは,肺容量減少手術の評価,胸部X線で明らかでないまたは除外できない併存疾患または合併症が疑われる場合,肺癌の疑いがある場合,および肺癌のスクリーニング スクリーニング 肺癌は世界におけるがん関連死因の第1位である。約85%の症例に喫煙の関連がみられる。症状としては,咳嗽,胸部不快感または胸痛,体重減少などのほか,頻度は低いものの喀血もありうるが,多くの患者では何の臨床症状もないまま転移を来す。診断は,典型的には胸部X線またはCTによって行い,生検によって確定する。治療には,病期に応じ手術,化学療法,放射... さらに読む スクリーニング を行う場合などである。肺動脈径が上行大動脈径より拡大している場合,肺高血圧が示唆される(2 診断に関する参考文献 慢性閉塞性肺疾患(COPD)は,毒素の吸入(しばしばタバコ煙)に対する炎症反応によって引き起こされる気流制限である。比較的まれな原因として,非喫煙者におけるα1-アンチトリプシン欠乏症および様々な職業曝露がある。症状は数年かけて発現する湿性咳嗽および呼吸困難であり,一般的な徴候には呼吸音の減少,呼気相の延長,および喘鳴などがある。重症例で... さらに読む 診断に関する参考文献 )。

補助検査

α1-アンチトリプシン欠乏症 α1-アンチトリプシン欠乏症 α1-アンチトリプシン欠乏症は,肺の主要なアンチプロテアーゼであるα1-アンチトリプシンの先天的欠乏であり,成人においてプロテアーゼを介した組織破壊および気腫の増大を招く。異常なα1-アンチトリプシンの肝臓への蓄積は,小児でも成人でも肝疾患の原因となる。血清α1-アンチトリプシン値が... さらに読む を検出するため,50歳未満で症状があるCOPD患者,および非喫煙患者でCOPDのある全年齢層で,α1-アンチトリプシン値の測定を行うべきである。α1-アンチトリプシン欠乏症を示唆する他の指標には,若年でのCOPDまたは説明のつかない肝疾患の家族歴,下葉に分布する気腫,抗好中球細胞質抗体(ANCA)陽性の血管炎を伴うCOPDなどがある。α1-アンチトリプシン濃度が低ければ,α1-アンチトリプシン表現型判定のための遺伝子検査により診断を確定すべきである。

心電図 肺疾患における心電図検査 心電図検査では,右心系に関する情報とひいては慢性肺高血圧症や肺塞栓症などの肺疾患に関する情報が得られるため,他の肺の検査に対する有用な補助的手段となる。 (心血管疾患における心電図検査も参照のこと。) 右房および右室の慢性肥大・拡大を招く慢性肺高血圧症では,II,III,aVF誘導でのP波増高(肺性P波)およびST低下,QRS電気軸の右軸... さらに読む は,呼吸困難の原因として心疾患を除外するためにしばしば施行されるが,進行した肺気腫の典型例では,肺の過膨張による立位心を伴ったびまん性のQRS波低電位,および右房拡大によるP波の増高またはPベクトルの右軸偏位を認める。右室肥大の所見には,V1誘導でRまたはR波がS波と同高,あるいはS波より高い;V6誘導でR波がS波より低い;右脚ブロックを伴わない > 110°の右軸偏位;またはこれらの所見の組合せなどがある。多源性心房頻拍は,COPDに随伴することのある不整脈であるが,これはP波の多形性およびPR間隔の変動を伴った頻拍性不整脈として出現する。

ヘモグロビンおよびヘマトクリットはCOPDの評価において診断的価値はほとんどないが,慢性低酸素血症のある患者では,赤血球増多症(Hct > 48%)を示すことがある。貧血(COPD以外の原因による)のある患者では,不相応に激しい呼吸困難がみられる。白血球分画が参考になる場合がある。好酸球増多 好酸球増多症 好酸球増多症は,末梢血中の好酸球数が500/μLを超える場合と定義される。好酸球増多症の原因および関連疾患は無数にあるが,多くの場合がアレルギー反応または寄生虫感染症である。診断には,臨床的に疑われる原因に標的を絞った検査が必要である。治療は原因に対して行う。 好酸球増多症では免疫応答の特徴がみられる:すなわち,旋毛虫(Trichi... さらに読む 好酸球増多症 がコルチコステロイドへの反応を予測することを示唆するエビデンスが増えている。

血清電解質分析の重要性は低いが,慢性の高炭酸ガス血症があれば,重炭酸濃度の上昇を認めることがある。

増悪の評価

急性増悪の患者では通常,咳嗽,喀痰,呼吸困難,および呼吸仕事量の増加,またパルスオキシメトリー上の酸素飽和度の低下,発汗,頻脈,不安,およびチアノーゼなどが複合してみられる。しかしながら,二酸化炭素の滞留を伴う増悪患者は,嗜眠または傾眠状態といった,非常に異なる容態を示すことがある。

入院を必要とする全ての急性増悪患者で,低酸素血症および高炭酸ガス血症を定量化するための検査を行うべきである。低酸素血症を伴わずに高炭酸ガス血症がみられることがある。

黄色または緑色の喀痰は,喀痰中の好中球を示す信頼できる指標であり,細菌の定着または感染を示唆する。入院患者では通常培養を行うが,外来患者では通常は必ずしも必要ではない。外来患者の検体のグラム染色では,しばしばグラム陽性双球菌(肺炎球菌[Streptococcus pneumoniae]),グラム陰性桿菌(インフルエンザ菌[H. influenzae]),またはその両方の微生物が混在した好中球像が通常みられる。その他の中咽頭の常在菌,例えばMoraxellaBranhamellacatarrhalisも,ときに増悪を引き起こす。入院患者では,培養により,耐性を示すグラム陰性菌(例,Pseudomonas属),またはまれにブドウ球菌[Staphylococcus]属がみられることもある。インフルエンザのシーズン中は,インフルエンザの迅速検査がノイラミニダーゼ阻害薬による治療の指針となり,RSウイルス,ライノウイルス,およびメタニューモウイルスに対する呼吸器ウイルスパネルにより抗菌薬療法を調整できる場合がある。

診断に関する参考文献

  • 1.Lange P, Celli B, Agusti A, et al: Lung-function trajectories leading to chronic obstructive pulmonary disease.N Engl J Med 373(2):111–122, 2015.

  • 2.Iyer AS, Wells JM, Vishin S, et al: CT scan-measured pulmonary artery to aorta ratio and echocardiography for detecting pulmonary hypertension in severe COPD.Chest 145(4):824–832, 2014.

予後

気道閉塞の重症度からCOPD患者の生存率が予測できる。FEV1 が予測値の50%以下である患者の死亡率は,一般集団よりもわずかに高い。FEV1が0.75~1.25Lであれば,5年生存率は約40~60%であり,0.75L未満であれば,約30~40%である。

より正確な死亡リスクの予想は,BMI(B),気流閉塞の程度(O:obstruction,FEV1),呼吸困難の程度(D:dyspnea,Modified British Medical Research Council[mMRC]Questionnaire Modified British Medical Research Council(mMRC)Questionnaireを用いた息切れの評価 Modified British Medical Research Council(mMRC)Questionnaireを用いた息切れの評価 で測定),および運動耐容量(E:exercise capacity,6分間歩行試験 6分間歩行試験 肺疾患の評価に最も頻用される運動負荷試験は,以下のものである: 6分間歩行試験 心肺運動負荷試験 これは,患者が自分のペースで6分間に歩ける最大距離を測定するという単純な検査である。この検査では全般的な機能を評価するが,運動耐容量に関わる個別の系統(すなわち,心,肺,血液,筋骨格)についての特定の情報は得られない。また,患者の努力の評価も... さらに読む で測定)を同時に測定することで可能であり,これはBODE指数と呼ばれる。また,高齢,心疾患,貧血,安静時頻脈,高炭酸ガス血症,および低酸素血症は,生存率を低下させる一方,気管支拡張薬に対する有意な反応は,生存率改善を予測する。入院が必要な急性増悪患者における死亡の危険因子には,高齢,Paco2高値,および維持療法のための経口コルチコステロイドの使用などがある。 (BODE指数の計算方法の詳細はMedical Criteriaで参照可能である。)

説明のつかない進行性の体重減少または重度の機能低下がある患者(例,更衣,入浴,または食事などの自己管理を行う際に呼吸困難を経験する患者)は,切迫した死亡のリスクが高い。COPDにおける死亡は,喫煙をやめた患者ではこの基礎疾患の進行ではなく,併発疾患に起因する場合がある。死亡は一般に,急性呼吸不全,肺炎,肺癌,心疾患,または肺塞栓による。

治療

  • 禁煙

  • 吸入気管支拡張薬,コルチコステロイド,またはその両方

  • 支持療法(例,酸素療法,呼吸リハビリテーション)

慢性安定期COPDの治療は,増悪を予防し,肺および身体の機能を改善することを目標とする。主に短時間作用型β作動薬により症状を急速に緩和させ,吸入コルチコステロイド,長時間作用型β作動薬,長時間作用型抗コリン薬,またはこれらの併用により増悪を減少させる(COPDの分類および治療 COPDの分類および治療 COPDの分類および治療 の表を参照)。

要点

  • 先進国では,感受性のある患者における喫煙が慢性閉塞性肺疾患(COPD)の主な要因である。

  • COPDの診断および同様の特徴を有する他の疾患(例,喘息,心不全)との鑑別は,まず症状(特に経過),発症年齢,危険因子,およびルーチン検査の結果(例,胸部X線,肺機能検査)などの基本的臨床情報に基づいて行う。

  • FEV1,FVC,およびFEV1/FVCの比の低下は,特徴的所見である。

  • 症状および増悪のリスクに基づいて患者を4群のうちの1つに分類し,この分類を指針として薬物治療を行う。

  • 主に短時間作用型β作動薬により症状を急速に緩和させ,吸入コルチコステロイド,長時間作用型β作動薬,長時間作用型抗コリン薬,またはこれらの併用により増悪を減少させる。

  • 多様な手段で禁煙を奨励する。

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