心臓発作と心停止の違いは何か?
コラム23年5月8日 Ranya N. Sweis, MD, MS, Northwestern University Feinberg School of Medicine

何人かの友人と夕食に出かけるのを想像してみてください。出された料理を食べていると、突然、一人が胸を押さえながら椅子から床に倒れました。すぐに何人かが応急処置を始め、その間に別の一人が救急車を呼びました。このような状況を説明するときには、多くの人がこの人は心臓発作を起こしたと言うでしょう。心停止を起こしたと言う人もいるかもしれません。

「心臓発作」と「心停止」という用語は、しばしば同じ意味で使われがちですが、実際には、これらは明確に異なるもので、典型的には原因が異なり、必要な対応も異なります。ここでは、心臓発作と心停止の違いについて重要なポイントをいくつか挙げるとともに、それぞれをどのように認識し、自分や身近な人がそうなった場合にどう対処すべきかを説明します。

心臓発作と心停止は違います

心臓発作は、心臓の組織に血液を供給する血管(動脈)が閉塞する(塞がる)ことで起こります。これにより酸素の供給が不足して、心臓の細胞が死んでしまい、胸痛などの症状が引き起こされますが、多くの場合、心臓の拍動は続いています。これに対して、心停止は心臓の拍動が停止することを意味します。心臓発作から心停止が起こるケースもありますが、心停止の原因になるものはほかにも多くあります。

心停止とは、心臓から脳やその他の臓器や組織に血液が送り出されなくなっている状態を指します。心臓の拍動を停止させるあらゆる病態が原因となりえますが、重度の心臓発作の一部もこれに含まれます。

つまり、心臓発作から心停止が起きる可能性はあるものの、すべての心停止が心臓発作が原因で起きるわけではないのです。

ほとんどの心臓発作は心停止につながりません

心臓発作から心停止が起きる可能性はありますが、ほとんどの場合そうはなりません。心臓発作を引き起こす閉塞は突然発生することがありますが、閉塞につながる心臓の動脈の狭まりは、典型的には長い期間を経て起こります。高血圧、糖尿病、運動不足、偏食は、いずれも血管の狭まり(動脈硬化と呼ばれます)が起こるリスクを高めます。血管の狭まりがひどくなるにつれて、血流の量が制限されることで、体を動かしたときに胸痛が生じます。痛みや不快感を感じることなく日常生活を送ることはできるかもしれませんが、血流の量が制限されているため、体を動かしたときに胸痛を経験することがあります。典型的には、運動をやめると痛みは治まります。これが狭心症と呼ばれるものです。これは閉塞の徴候の一つですが、狭心症が原因で心臓の筋肉(心筋)に損傷が生じることは通常ありません。これらの症状はしばしば進行します。時間の経過とともに、より少ない運動量で同程度の疼痛や症状が起きるようになります。この病気がある人には、それらの症状についてかかりつけ医と話し合うことが重要で、かかりつけ医は負荷試験を勧めたり、あなたを心臓専門医に紹介したりするかもしれません。

もし痛みが治まらない場合は、心臓発作の徴候かもしれませんので、直ちに救急車を呼ぶべきです。

心臓発作では、ただの胸痛ではない症状がみられることもあります。そうした症状を圧迫感と表現する人もいれば、単に痛い、ずきずきする、刺し込まれたような痛みなどと表現する人もいます。痛みは左胸に感じるのが最も一般的ですが、首と左腕に痛みが伝わっているように感じることもあります。腕にチクチクする感覚や痛みを訴える人もいれば、のどやあごの痛みを訴える人もいます。ときには呼吸が苦しくなることもあります。その他の徴候・症状としては、吐き気や発汗などがあります。女性では、上に挙げた典型的な症状がみられないことが多く、気力の低下や全身の不快感を経験するだけの場合もあります。

安静にしてもこれらの症状が治まらない人は、心臓発作を起こしている可能性があるため、病院で緊急の評価を受けるために救急車を呼ぶべきです。

心停止の原因には心臓とは無関係のものもあります

心停止は、脳や他の組織に血液を送り出せるだけの十分な心臓の拍動がなくなることで起こります。一般的な原因の一つで、特に成人で多くみられるのが不整脈です。別の原因として、窒息や溺水などによる呼吸の停止も考えられます。心停止は、重い肺の感染症や重度の喘息発作が治療されずにいることで十分な呼吸ができなくなった場合にも起こります。肺の中に非常に大きな血栓ができることが原因で心停止が起きる場合もあります。心停止が起きても、その原因を特定するのが難しいことがしばしばあります。心停止を起こしていると思われる人を目撃した人にできる最も重要なことは、救急車を呼んで、心肺蘇生を開始することです。

どちらも医学的に深刻な緊急事態です

心臓発作と心停止の共通点は、どちらも直ちに医師の診察を受ける必要がある、生命を脅かす事態であるということです。

心臓発作は脳卒中によく似ていて、血管が塞がっている場所を開通させる治療を受けるのが早ければ早いほど、心臓の筋肉に生じる永続的な損傷を減らすことができます。心臓発作を起こした人は、自分で車を運転するのではなく、必ず救急車を呼んで病院に連れて行ってもらうべきです。そうすることで、搬送中に必要な処置を受けることができますし、場合によっては、より適切なケアを受けられる病院に(それが遠くにあるとしても)かかることができます。

心停止に対しては、可能な限り早く医学的な処置を受けられるようにすることが不可欠です。1人の救助者が心肺蘇生を直ちに開始し、その間に別の誰かが救急車を呼び、入手できるなら自動体外式除細動器(AED)を取りに行きます。AEDを取りに行っている間に心肺蘇生を遅らせてはならず、AEDは用意ができ次第すぐに使用できます。救急サービスのスタッフから、胸骨圧迫のみの心肺蘇生のやり方を含めて、対処の指示を電話を通じて受けられる場合があります。心停止の原因が特定の不整脈である場合には、AEDの使用が救命につながることが証明されています。

心臓発作と心停止の違いについてより詳しく知りたい方は、MSDマニュアルの心停止冠動脈疾患に関するページか、やさしくわかる病気事典の心臓発作に関するページを読んでください。