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コメンタリー:COVID-19と子どもの心の健康 ― 親が知っておくべきこと

コラム
21年5月19日 Josephine Elia, MD, Sidney Kimmel Medical College of Thomas Jefferson University|Nemours/A.I. duPont Hospital for Children;

子どもと新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の関係については、小児や青年では成人と比べて感染率が低いという事実が多くの注目を集めてきました。しかし、これらの年代の子どもたちも、COVID-19にかかる可能性が低いからといって、現在のパンデミック(世界的大流行)がもたらした感染症以外の苦難の影響を受けていないわけではありません。むしろ、COVID-19の影響によって、米国の子どもたちが直面する心の健康面の危機は、以前より大きく悪化しています。不安、抑うつ、自傷行為、摂食障害、薬物乱用などは、そのいずれもパンデミックの発生以来、劇的に増加しているのです。

多少の差こそあれ、家族の全員がCOVID-19の影響を受けているというのが現実なのです。子どもたちがこの混乱した状況をうまく乗り切る手助けをするために、子どもの親たちは敢然と対策を講じてきました。しかし、パンデミックへの対応が洗練され変化していくにつれて、親たちが与える支援もそれに伴って進化させる必要があります。この記事では、子どもたちがパンデミックの影響に対処していく過程を親たちはどのようにして手助けできるかと、子どもたちが心の健康面で大きな困難に直面している可能性を示すいくつかのサイン(徴候)について、詳しく見ていきます。

以前の厳しい学習環境に戻ることの難しさ

米国の公衆衛生当局がCOVID-19への対応として外出禁止令を初めて出したとき、ほとんどの人は、それらの対策は一時的なものだと考えていました。親たちは、自分たちが出勤せずに家にいるのも、子どもたちが学校に行かずに家で過ごすのも、数週間のことだと予想していました。子どもたちには心の回復力が自然に備わっているため、パンデミックの当初は、大半の子どもたちが比較的うまく日々を過ごせていました。ところが、混乱が長引くにつれて、子どもたちはより大きな困難に直面するようになります。学校はオンライン学習への急速な移行に準備ができていなかったため、子どもたちは人と直接交流する機会を大幅に失い、それまでの日課を行えなくなったことに苦しみました。

同時に、多くの子どもたちが学習の質の低下に直面しました。教師たちがリモート学習をうまく行えるようになると、子どもたちは宿題や試験について不明確な期待をかけられるようになり、それと同時に、家の中で集中を乱す要因が増えていきました。新しいスキルや考え方を本当の意味で身につけるには、綿密に計画された積極的な学習が必要であるということが、研究により示されています。残念ながら、そのような学習を一貫して達成することは、万全の準備を整えた教室での授業でも困難です。親や教師が果敢に努力したとしても、リモートの環境では、大半の子どもたちはこうした積極的な学習を経験できません。結果として、生徒たちは進級していくなか、その多くが学力や社会性の面で次の学年に進む準備ができていないという事態が生じる可能性があります。

心の健康問題を知らせるサイン

学校での対面授業が再開されるにあたり、親としては、子どもがかつての日課やより厳しい学習を再開するための準備に注目する必要があります。社会全体としては、すべての人が日常の生活に戻ることが期待されますが、現実は多くの子どもたちにとって、そうはならないでしょう。子どもの親は、不安や抑うつ、自分を傷つける思考や行為など、心の健康問題のサイン(徴候)に注意する必要があります。睡眠習慣や食習慣の変化は、心の健康問題の徴候である可能性がありますので、細心の注意を払ってください。心の病気と正常な感情の違いは、その感情が子どもの心を押しつぶして日常生活に支障を来しているほどに、あるいは本人が苦痛を感じるほどに強いかという、程度の差にあります。学年が進むにつれて、学業成績の変化や子どもたちの学習への取り組み方に注意してください。

COVID-19はこれら以外の面でも子どもたちの心の健康を損なう可能性があることを覚えておく必要があります。子どもたちは、自分がウイルスに感染することを心配しているかもしれませんし、親や他の大人たちの安全について恐れを抱いているかもしれません。危険だと感じて活動への参加をためらっているかもしれません。あるいは、愛する人をCOVID-19で失って、悲嘆に暮れている可能性もあります。学校での取組みとして、子どもたちが家庭内での喪失や大きなストレスを抱えていないか注意し、必要に応じてグリーフ(悲嘆)カウンセリングやその他の継続的な支援を検討するべきです。

子どもたちの心の回復力を育む

親や保護者は、心の健康問題を警告するサインに目を配りつつ、子どもたちがCOVID-19やその他の困難に対する心の回復力を育むのを手助けすることもできます。以下にヒントをいくつか示します:

  • よき指導者(メンター)を見つける:子どもたちが他の大人たちとのつながりを感じられるようにしてください。公のユースメンタープログラムがたいへん有益となる可能性があります。
  • 友人関係を育む:お子さんの友達のことをよく知り、子どもたちが友人関係を育む手助けをしてください。
  • 自然を体験する:公園などの屋外で時間を過ごさせるか、子どもが植物の世話をして自然の一部を家の中に持ち込むのを手助けしてください。
  • 運動する:体を動かすことには、たとえ少しの運動でも、脳機能を改善する効果があり、それにより気分を高めたり、学習を強化したり、不安を減らしたりすることができます。
  • 音楽を聴く:音楽により、私たちは言葉で表せない感情に触れることができます。
  • 活動的になる:スポーツは運動と社会性を促します。
  • 好奇心を高める:子どもたちが物事を調べたり、日々の活動を記録したりすることで身の回りの世界や出来事の経過を理解する手助けをしてください。
  • 精神性を高める:他者を信頼したり感謝を伝えたりすることは、ストレスを軽減する助けになることがあります。
  • 画面をみる時間を把握する:インターネットの利用を制限し、ニュースメディアに接する機会を最小限にしましょう。

親自身の心の健康も軽視できない

子どもをもつ親なら誰しも、子どもたちが信じられないほど敏感だということを知っていますが、精神的な健康問題の多くに遺伝的な要素が強く関連していることが研究で示されています。この未曾有の状況において親たちが子どもを手助けできる最善の方法の一つは、自分自身の心の健康を守ることです。

親であることは、この世の中で最もハードな仕事だと覚えておいてください。心の健康を損ねて苦しんでいる子どもの親たちは、自分たちが何か間違っているように感じることがよくありますが、実際のところは、そのような考えは全くの見当違いです。大半の人は、親の務めを果たす上で絶え間なく直面する困難に立ち向かうために、持てるものをすべて捧げています。あらゆる状況で機会を見つけ、一日一日を最高のものにする姿勢が肝心です。新しい一日を迎えるたびに心を込めて挨拶し、支援の輪を維持して、自分が人であることを受け止めてください。

子どもたちの心の健康問題について詳しく知りたい方は、MSDマニュアルのこのトピックに関するページをご覧ください。また、MSDマニュアルのCOVID-19情報ポータルページをブックマークしてください。

翻訳: TransPerfect