コロナウイルス 3月30日更新情報
感染状況に関する例数はいくつかのオンライン サイトで公表されている。
Johns Hopkins Coronavirus Resource Center
クルーズ船 (Moriarty LF, Plucinski MM, Marston BJ, et al.Public health responses to COVID-19 outbreaks on cruise ships -- Worldwide, February-March 2020.MMWR Morb Mortal Wkly Rep. ePub:23 Mar 2020.doi:http://dx.doi.org/10.15585/mmwr.mm6912e3):
クルーズ船は、閉ざされた環境、複数の船で航行する世界各国からの旅行者や乗務員との高い接触頻度、高リスク年齢層(65歳以上の基礎疾患のある人)などの要因から、感染病が集団発生しやすい条件が整っている。800人以上の新型コロナウイルス(COVID-19)感染者が、クルーズ船の航行中に感染しており、市中感染での2次感染はクルーズ船乗客にリンクしている。感染は複数のクルーズ船の複数の航行で発生している。
- ダイアモンド・プリンセス号では、感染者の17.9%が無症状感染であり、これが乗客と乗務員の間で感染が広まった理由の一つとして挙げられる。
- RNAは、下船後の除菌作業前、客室が空いた状態になってから17日後に、有症状感染者と無症状感染者のいた客室のさまざまな表面から検出された。RNAが生きたウイルスと死滅したウイルスのどちらに由来しているかは明らかではないが、生きたウイルスであれば、理論的にはウイルス粒子が伝染する。感染源を特定するには、さまざまな表面でのウイルスの感染力を研究する必要がある。
- グランド・プリンセス号では、恐らく複数の船で従事した乗務員がある船でSARS-CoV-2に感染した後に、別の船で乗客と乗務員にうつしたと考えられている。
- CDCは、世界規模でクルーズ船の運航を停止することを推奨し、クルーズ船運航会社も新型コロナウイルス(COVID-19)によるパンデミック中は運航を一時停止すると発表した。
薬剤:
新型コロナウイルス(COVID-19)患者の治療向けの米国FDA承認済みの薬剤、抗体、ワクチンはない。必要に応じて酸素吸入および人工呼吸器を含む支持療法での管理は有効的である。その他の症状についていくつかの薬剤が承認されており、いくつかの治験薬も世界的に多数の治験が実施されている(https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/hcp/therapeutic-options.html)。
- レムデシビル(RDV)は、静注投与の広域スペクトル抗ウイルス治験薬である。RDVは、RNAポリメラーゼを阻害してウイルスの増殖を抑制するヌクレオシド類似体である。SARS-CoV-2に対してインビトロ試験で抗ウイルス活性が確認されており、関連コロナウイルスではインビトロおよびインビボ試験で抗ウイルス活性が確認されている。RDVは、臨床状態が悪化した場合、患者に特例的に使用されている(https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2001191)。RDVは、安全性と有効性を評価するために世界的に無作為化比較対照試験が実施されており、一部の患者には、非対称的、特例的に使用されている(https://rdvcu.gilead.com/)。
- ファビピラビルは、インフルエンザ治療薬として日本で承認されているもう一つの広域スペクトルRNAポリメラーゼ阻害薬であり、新型コロナウイルス(COVID-19)の治療における安全性と有効性を評価するための治験が現在中国で実施されている(https://www.jstage.jst.go.jp/article/ddt/14/1/14_2020.01012/_pdf/-char/en)。
- クロロキンは、マラリアの治療と化学的予防で使用される経口薬であり、ヒドロキシクロロキンは、リウマチ性関節炎、全身性エリテマトーデス、および晩発性皮膚ポルフィリン症の治療で使用されている。これらの薬剤は、細胞内のファゴリソソームのpHを増加させ、ドキシサイクリンにQ熱病原体であるコクシエラ・バーネッティに対する殺菌作用を持たせる。ヒドロキシクロロキンとドキシサイクリンを併用して、Q熱性心内膜炎の治療で使用されている。クロロキンとヒドロキシクロロキンは、SARS-CoV、SARS-CoV-2、その他のコロナウイルスに対する抗ウイルス活性がインビトロ試験で確認されており、ヒドロキシクロロキンは相対的にSARS-CoV-2に対する高い効能が確認されている(https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/hcp/therapeutic-options.html)。比較対象集団を用いた中国のある研究では、新型コロナウイルス(COVID-19)患者に対してクロロキンを使用した治療では、臨床的およびウイルス学的にも有効性があることが報告されている。中国では新型コロナウイルス(COVID-19)での治療でクロロキンを推奨抗ウイルス薬として追加した(https://www.unboundmedicine.com/medline/citation/32074550/full_citation)。フランスで実施された小規模の研究では、非無作為化比較対照試験の対象集団と比較して、ヒドロキシクロロキンのみの使用、またはアジスロマイシンとの併用で上気道検体のSARS-CoV-2 RNAの検出が減少したことが報告されているが、臨床的有用性は評価されていない(https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0924857920300996?via%3Dihub)。クロロキンとヒドロキシクロロキンは共に、QT間隔の延長作用があるが、新型コロナウイルス(COVID-19)患者で忍容性が良好であることが報告されている。限られたインビトロ試験および事例報告の臨床データに基づき、クロロキンまたはヒドロキシクロロキンは、いくつかの国で新型コロナウイルス(COVID-19)入院患者の治療で使用が推奨されている。米国では、SARS-CoV-2感染者の治療および予防に対して、ヒドロキシクロロキンの臨床試験がいくつか計画されている。臨床試験に関する詳細は、https://clinicaltrials.govを参照。その一方で、医師がこれらの薬剤を自身や家族のために処方していると言われているため、米国政府はこれらの薬剤の処方を制限している。
- 中国の臨床試験では、抗HIV薬のロピナビル・リトナビル(カレトラ)は肺炎を伴う新型コロナウイルス(COVID-19)の入院患者の治療では有効性が示されなかった(https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2001282)。この臨床試験は低力価であり、ロピナビル・リトナビルは世界保健機構(WHO)の研究で調査中という報告がある。
免疫療法:SARS、MERS、新型コロナウイルス(COVID-19)の流行では、回復期患者の血清を使用する受動免疫療法が適用され、回復期患者の血清が予防およびウイルス量の減少に効果を持つ可能性を示す事例が報告されている(https://www.jci.org/articles/view/138003)。ニューヨーク州知事は、ニューヨーク州では回復期患者の血漿を感染者の治療で使用開始することを発表した(https://www.fda.gov/vaccines-blood-biologics/investigational-new-drug-ind-or-device-exemption-ide-process-cber/investigational-covid-19-convalescent-plasma-emergency-inds)。しかしながら、呼吸器系感染におけるウイルス流行発生前に実施された回復患者の血漿の有効性は不明確な部分があり、適切な対象集団の不足、疾患の重度や基礎疾患の有無、回復期患者の血漿が投与された罹患中のタイミング、投与された中和抗体の力価、および併用療法など、その他の要因が影響した可能性が考えられる。
インターロイキン6は、急性呼吸不全を発症した新型コロナウイルス(COVID-19)感染患者の肺で過剰な炎症反応(「サイトカインストーム」)を引き起こす要因となった可能性がある。IL-6受容体と結合してこれをブロックすることでインターロイキン6の経路を抑制する完全ヒトモノクローナル抗体のサリルマブは、重度の新型コロナウイルス(COVID-19)の入院患者で臨床試験を実施することが予定されている。もう一つのIL-6受容体抗体であるトシリズマブは、中国の重度の新型コロナウイルス(COVID-19)の入院患者21人の治療で使用され、酸素飽和とその他の臨床結果で有効性を示しており、重度の肺炎を伴う新型コロナウイルス(COVID-19)の入院患者を対象に二重盲検無作為化比較試験が予定されている(https://www.onclive.com/web-exclusives/fda-oks-launch-of-phase-iii--tocilizumab-trial-for-covid19-pneumonia)。
アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬および受容体拮抗薬:ヒト病原体コロナウイルスのSARS-CoVおよびSARS-CoV-2は共に肺や腸の上皮細胞および血管内皮細胞に発現している受容体とアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)に結合する(https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1002/path.1570)。ACE2の発現は、1型または2型糖尿病患者、またはACE阻害薬(ラミプリル、カプトプリル、エナラプリル、リシノプリルなど)もしくはアンジオテンシンII タイプI受容体拮抗薬(カンデサルタン、バルサルタン、ロサルタンなどのアンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB))で治療を受けている高血圧症の患者では増加する(https://www.thelancet.com/journals/lanres/article/PIIS2213-2600(20)11306-8/fulltext)。またACE2は、チアゾリジンジオンおよびイブプロフェンでも増加することが報告されている。これらのデータは、ACE阻害薬およびARB、イブプロフェンによる治療でさえも、ACE2の発現を増加させることを示しており、新型コロナウイルス(COVID-19)の感染を重篤化させるリスクを増加させる可能性がある。糖尿病や高血圧症の管理ではこれらの薬剤の使用頻度は高く、こういった見解の評価が重要になる。
米国の心臓病学会(AHA-米国心臓協会、ACC-米国心臓学学部、およびHFSA-米国心不全学会、欧州心臓病学会(ESC)欧州高血圧学会、カナダ循環器疾患学会、国際高血圧学会は、新型コロナウイルス(COVID-19)に感染した場合にレニン-アンギオテンシンー アルドステロン系(RAAS)拮抗薬によって症状が悪化するという議論があるが、これらの薬の内服を継続するように緊急声明を発表した。
SARS-CoV-2は、内皮細胞でACE2受容体と結合して、微小循環での血管損傷の原因となる可能性があり、これにより播種性血管内凝固症候群(DIC)および高レベルのDダイマーを誘引する(https://www.practiceupdate.com/content/abnormal-coagulation-parameters-and-poor-prognosis-in-patients-with-covid-19/97218)。
診断検査:
RNAウイルスの有無を検出するための診断検査は、新型コロナウイルス(COVID-19)の感染、情報管理、感染の抑制において重要な役割を果たす。無症状感染者が感染の拡大にもたらす影響は不明だが、中国が、検査陽性者の最大1/3に相当する感染者が無症状または発症が遅かったことを示すデータを公開するといわれている(https://www.dw.com/en/up-to-30-of-coronavirus-cases-asymptomatic/a-52900988)。同様に、武漢市から引き上げてきた日本人の30.8%が無症状感染者であった(https://www.ijidonline.com/article/S1201-9712(20)30139-9/pdf)。中国では無症状感染者を確定感染例数に含めていないが、これらの患者に隔離を義務付けた。韓国では、全土封鎖を実施する代わりに、SARS-CoV-2ウイルスの検査を広範囲で実施し、症状の有無を問わず検査陽性者全員を隔離した。米国では、症状のある場合のみ検査を実施している。米国で広範囲にわたる検査を実際しない場合、コミュニティー内の誰もが、症状の有無にかかわらず感染の確立が高いとされる人から人への感染に晒されることになるため、必要不可欠なサービスに従事する人以外は、自宅待機することが推奨され、屋外では安全な距離(1.8メートル)を置いて人に接するようにすることが推奨される。
米国の規制当局は、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)検査を病院や商業試験を実施する研究室で実施することを承認した。患者の検体は、地理的にも離れた試験施設に送付られ、数時間にわたって一括検査が実施され、数日後に検査結果が通知される。複数人の患者の検体を一度に検査できるデバイスを使用したサービス提供時点の検査が承認され、多くのヘルスケア施設で提供されており、45分で検査結果が出るようになっている(https://www.statnews.com/2020/03/21/coronavirus-test-returns-results-in-45-minutes/)。韓国のようなドライブスルー検査サイトも米国で増加している。医師の指示による検査の予約では、写真付きの身分証明書と保険カードが必要になり、検査結果はおよそ1週間で提供される。
英国では10~15分で人の血液にある抗体の有無を検出する指刺検査を評価中であり、これにより過去の感染を検出できることになるが、現時点でのSARS-CoV-2の有無は確認できない(https://www.theguardian.com/world/2020/mar/25/uk-coronavirus-mass-home-testing-to-be-made-available-within-days)。無症状感染の範囲を把握するには、大規模で体系的な血清有病率の研究が必要となる。
病床および医療機器不足:
新型コロナウイルス(COVID-19)感染患者の15%が入院が必要になり、5%は重篤症状で集中治療室(ICU)に収容され、人工呼吸器が必要になるとされている。感染者数を示す流行曲線が長期間にわたって横ばいに推移しない限り、病床、ICU病床、人工呼吸器、その他の医療用品、並びに呼吸療法士やクリティカルケア看護師が病気になったり隔離対象となったりするなど、医療従事者の不足が恐らく発生する。遠隔地や小規模の病院では、スペース、医療用品、スタッフの数などに制限があり、これにより影響を受ける。診断、治療、および予防策などの提供も不十分になる。自宅待機、社会的距離、咳のエチケット、手洗いなど、ウイルスの感染を軽減するとされる公衆衛生上の対策は医療ニーズと利用可能な医療用品とのギャップを縮めることから、リソース不足の緩和につながる可能性がある。