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コロナウイルス 3月30日更新情報

コラム
0001/01/01 Matthew E Levison, MD, Adjunct Professor of Medicine, Drexel University College of Medicine

最新の感染者数はいくつかのウェブサイトで公表されている

Worldomete

世界保健機構(WHO)

Johns Hopkins Coronavirus Resource Center

クルーズ船 (Moriarty LF, Plucinski MM, Marston BJ, et al.Public health responses to COVID-19 outbreaks on cruise ships -- Worldwide, February-March 2020.MMWR Morb Mortal Wkly Rep. ePub:23 Mar 2020.doi:http://dx.doi.org/10.15585/mmwr.mm6912e3):

クルーズ船は閉ざされた環境であり、多くの国々からの旅行者と複数の船で働く乗員が頻繁に接触し、さらに乗客者の多くがリスクの高い人々(65歳以上の高齢者や基礎疾患のある人)であるため、多くの場合、感染症のアウトブレイク(集団感染)が起きる条件がそろっています。クルーズ船の航行中に発生した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のアウトブレイクでは800人以上が感染し、市中での二次感染にクルーズ船を降りた乗客との関係が確認されています。感染は数隻のクルーズ船の複数回の運航で発生しました。

- ダイヤモンド・プリンセス号では、感染者の17.9%が症状の無症状の感染でした。このことから乗客と乗員の発症率が高かった事実をある程度説明できます。

- 下船後の消毒作業前には、客室が空いた状態になってから最長17日後まで、症状がある感染者と無症状の感染者がいた客室のさまざまな表面からウイルスのRNAが検出されました。そのRNAが生きたウイルスのものか死んだウイルスのものかは不明ですが、それが生きたウイルスのものであれば、理論的にはウイルス粒子には感染力があります。感染源を特定するには、さまざまな表面上でのウイルスの感染性について研究を行う必要があります。

- グランド・プリンセス号では、複数の船で勤務した乗員たちが、ある船でSARSコロナウイルス2COVID-19の原因である新型コロナウイルスのこと)に感染した後に、別の船で乗客や乗員に感染を広めたと考えられています。

- 米国疾病予防管理センター(CDC)は、世界規模ですべてのクルーズ船の運航を停止するよう勧告し、クルーズ船運航会社はCOVID-19のパンデミック(世界的大流行)中は運航を一時に停止することを発表しました。

 

薬剤

COVID-19の患者の治療に特化した薬剤、抗体、ワクチンで米国食品医薬品局(FDA)の承認を得ているものはありません。発症者は必要に応じて酸素吸入や人工呼吸器を用いる対症療法で管理されます。その他の症状に対していくつかの薬剤が承認されているほか、研究段階のいくつかの薬剤について世界中で多数の治験が進められています(https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/hcp/therapeutic-options.html)。

            - レムデシビル(RDV)は、現在治験中の広域スペクトル抗ウイルス薬で、静脈内注射で投与されます。レムデシビルは、RNAポリメラーゼの働きを阻害することでウイルスの増殖を抑制する、ヌクレオシド類似体という種類の薬です。インビトロ試験(細胞などを用いて行う実験)でSARSコロナウイルス2に対する抗ウイルス活性が確認されており、近縁のコロナウイルスに対してはインビトロ試験とインビボ試験(生きた動物を用いて行う実験)で抗ウイルス活性が確認されています。レムデシビルは、患者の臨床状態が悪化した状況で特例的に使用されています(https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2001191)。レムデシビルについては、安全性と有効性を評価するランダム化比較試験が世界的に実施されているほか、一部の患者には研究以外で特例的に使用されています(https://rdvcu.gilead.com/)。

            - ファビピラビル(アビガン)は、インフルエンザ治療薬として日本で承認されている別の広域スペクトルRNAポリメラーゼ阻害薬で、COVID-19の治療における安全性と有効性を評価するための臨床試験が現在中国で実施されています(https://www.jstage.jst.go.jp/article/ddt/14/1/14_2020.01012/_pdf/-char/en)。

            - クロロキンはマラリアの治療と予防に使用されている経口薬で、ヒドロキシクロロキンは関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、晩発性皮膚ポルフィリン症の治療に使用されています。これらの薬剤は、細胞内のファゴリソソームのpHを上昇させることで、ドキシサイクリンという別の薬剤のコクシエラ・バーネッティ(Q熱という感染症の原因菌)に対する殺菌作用を高めます。このため、ヒドロキシクロロキンはドキシサイクリンとの併用でQ熱性心内膜炎の治療に使用されます。クロロキンとヒドロキシクロロキンはどちらも、SARSコロナウイルスやSARSコロナウイルス2、その他のコロナウイルスに対する抗ウイルス活性がインビトロ試験で確認されており、ヒドロキシクロロキンはSARS-CoV-2に対する効果が相対的に高いことが確認されています(https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/hcp/therapeutic-options.html)。中国のある研究では、クロロキンを使用したCOVID-19に対する治療の有効性が、対照群と比較して臨床的にもウイルス学的にも高かったと報告されました。中国では、COVID-19の治療に推奨される抗ウイルス薬のリストにクロロキンが追加されました(https://www.unboundmedicine.com/medline/citation/32074550/full_citation)。フランスで実施された小規模な非ランダム化比較試験では、ヒドロキシクロロキンのみの使用、またはヒドロキシクロロキンとアジスロマイシンの併用により、上気道の検体で検出されるSARSコロナウイルス2RNAの量が対照群と比較して減少したと報告されていますが、臨床的な効果は評価されていません(https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0924857920300996?via%3Dihub)。クロロキンとヒドロキシクロロキンは、どちらもQT間隔の延長という副作用を引き起こす作用がありますが、COVID-19の患者における忍容性は良好と報告されています。限られたインビトロ試験のデータと症例報告による臨床データに基づき、クロロキンやヒドロキシクロロキンは現在、いくつかの国でCOVID-19の入院患者の治療に推奨されています。米国では、SARSコロナウイルス2に感染した人の治療または予防を用途として、ヒドロキシクロロキンの臨床試験がいくつか計画されています。臨床試験に関する詳細はhttps://clinicaltrials.govで確認できます。その一方で、医師が自身や家族に処方していると言われていることから、米国の複数の州では、これらの薬剤の処方が制限されています。

            - 中国の臨床試験では、肺炎を発症したCOVID-19の入院患者の治療として抗HIV薬のロピナビル-リトナビル(カレトラ)が評価されましたが、有効性は示されませんでした(https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2001282)。この臨床試験は被験者数が十分でなかったことから、報道によると、ロピナビル-リトナビルは世界保健機関(WHO)による研究で引き続き検討されています。

免疫療法:流行性の重症急性呼吸器症候群(SARS)、中東呼吸器症候群(MERS)、COVID-19では、回復期患者の血清を使用する受動免疫療法が用いられており、回復期患者の血清が予防やウイルス量の減少に効果がある可能性が症例報告で示されています(https://www.jci.org/articles/view/138003)。ニューヨーク州知事は、同州では回復患者の血漿を用いた感染者の治療を開始すると話しています(https://www.fda.gov/vaccines-blood-biologics/investigational-new-drug-ind-or-device-exemption-ide-process-cber/investigational-covid-19-convalescent-plasma-emergency-inds)。しかしながら、ウイルス性の呼吸器感染症が過去に集団発生した際に調査された回復期患者の血漿の有効性ははっきりしておらず、これについては、適切な対照群が設定されなかったことのほか、重症度や基礎疾患の有無、回復期患者の血漿が疾患経過のどのタイミングで投与されたか、投与された中和抗体の抗体価、さらに併用療法の影響など、ほかの要因が結果に影響を及ぼした可能性があります。

インターロイキン6IL-6)は、急性呼吸窮迫症候群を発症したCOVID-19患者の肺で過剰な炎症反応(「サイトカインストーム」)を引き起こす要因となる可能性があります。サリルマブは、IL-6受容体と結合してこれをブロックすることでIL-6の働きを阻害する完全ヒトモノクローナル抗体ですが、重度のCOVID-19の入院患者を対象とした臨床試験が予定されています。もう一つのIL-6阻害薬であるトシリズマブは、中国で重度のCOVID-19患者21人の治療に使用され、酸素飽和度やその他の臨床項目に改善がみられました。重度の肺炎を発症したCOVID-19患者を対象とする二重盲検ランダム化比較試験が予定されています(https://www.onclive.com/web-exclusives/fda-oks-launch-of-phase-iii--tocilizumab-trial-for-covid19-pneumonia)。

アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬およびアンジオテンシンII受容体拮抗薬:ヒトに病原性を示すコロナウイルスであるSARSコロナウイルスとSARSコロナウイルス2は、どちらも肺と腸の上皮細胞や血管の内皮細胞に発現している受容体とアンジオテンシン変換酵素2ACE2)に結合します(https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1002/path.1570)。ACE2の発現量は、1型または2型糖尿病の人やACE阻害薬(ラミプリル、カプトプリル、エナラプリル、リシノプリルなど)またはアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)(カンデサルタン、バルサルタン、ロサルタンなど)による治療を受けている高血圧患者で増加します(https://www.thelancet.com/journals/lanres/article/PIIS2213-2600(20)11306-8/fulltext)。またACE2は、チアゾリジンジオンとイブプロフェンを使用しても増加することが報告されています。これらのデータは、ACE2の発現を増加させるACE阻害薬やARB、さらにはイブプロフェンによる治療でさえも、COVID-19の感染の可能性を高めるとともに、重症化のリスクも高める可能性があることを示しています。糖尿病や高血圧の人にはこれらの薬剤が使用されることが多いため、このような研究結果を確認しておくことが重要になります。

心臓病に関する米国の三学会(米国心臓協会[AHA]、米国心臓病学会[ACC]、米国心不全学会[HFSA])に加えて、欧州心臓病学会(ESC)、欧州高血圧学会https://www.eshonline.org/spotlights/esh-letter-covid-19/)、カナダ循環器疾患学会、国際高血圧学会は、レニン-アンギオテンシン-アルドステロン系(RAAS)阻害薬について、理論上はCOVID-19に感染した場合の症状を悪化させる可能性があると懸念されているものの、患者への使用を継続するよう呼び掛ける声明を発表しています。

SARSコロナウイルス2は、内皮細胞の表面でACE2受容体と結合し、微小循環での血管損傷を引き起こす可能性があり、これが播種性血管内凝固症候群(DIC)やDダイマーの高値につながります(https://www.practiceupdate.com/content/abnormal-coagulation-parameters-and-poor-prognosis-in-patients-with-covid-19/97218)。

診断検査:

ウイルスのRNAの有無を調べる診断検査は、COVID-19の感染拡大を追跡し、感染者の管理に有用な情報をもたらし、感染拡大を抑える上で極めて重要です。無症状の感染者が感染拡大にどの程度関わっているかは不明ですが、中国当局はウイルス検査で陽性と判定された人の3分の1で症状が出ないか発症が遅かったことを示すデータを公表すると言われていますhttps://www.dw.com/en/up-to-30-of-coronavirus-cases-asymptomatic/a-52900988)。また、武漢から脱出した日本人感染者の30.8%が無症状でしたhttps://www.ijidonline.com/article/S1201-9712(20)30139-9/pdf)。中国当局は無症状のウイルス感染者を感染確定者として数えていませんが、そのような人たちを隔離しています。韓国では、全国規模でロックダウン(封鎖)を行う代わりに、SARSコロナウイルス2の感染の有無を幅広く検査して、症状の有無に関係なく検査で陽性と判定された人を感染確定者とみなし、陽性者全員を隔離しています。米国では、症状がある人だけを検査しています。米国では幅広く検査を行っておらず、人から人への感染が拡大しているとみなされる地区にいる人は全員、日常生活に欠かせないサービスに携わっている場合を除き、自宅待機するよう要請し、外出時は他者と安全な距離(1.8メートル)を維持するよう求めています。

米国の規制当局はここ数週間で、病院や民間研究所が開発したPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)検査を複数承認しています。患者から採取した検体は多くの場合、地理的に離れた検査施設に送る必要があり、そこで数時間かけて検査処理を行うため、検査結果が分かるまでには数日を要します。すでに多くの医療施設で用いられている検査機器で複数の患者検体を同時に検査することができて、わずか45分で結果が出せる医療現場で行う検査も承認されていますhttps://www.statnews.com/2020/03/21/coronavirus-test-returns-results-in-45-minutes/)。韓国のようなドライブスルー方式の検査場が米国全土に設置されつつあります。医師の指示による予約検査では、写真付きの身分証明書と被保険者証が必要とされ、検査結果はおよそ1週間で分かります。

英国では、指先を針で刺して血液中の抗体の有無を1015分で調べる検査法が評価されています。この検査では、過去に感染したかどうかを調べることができますが、その時点でSARSコロナウイルス2に感染しているかどうかは判断できませんhttps://www.theguardian.com/world/2020/mar/25/uk-coronavirus-mass-home-testing-to-be-made-available-within-days)。無症状の感染がどの程度広がっているかを解明するには、血清陽性率について大規模研究を体系的に行っていく必要があります。

病床と医療機器の不足:

COVID-19に感染した患者の約15%で入院が必要になるとみられ、さらに5%ICU(集中治療室)での治療を必要する重症例になり、人工呼吸器の使用が必要になる可能性が高くなります。感染者数の推移を示す曲線が極めて長期間にわたり平坦にならない限り、病床数やICUのベッド数、人工呼吸器が不足するほか、呼吸療法士や集中治療に携わる看護師をはじめとする医療従事者が発症したり隔離されたりする可能性があり、人員の不足に陥る可能性が高くなります。スペースや器材、スタッフがはるかに少ない地方の病院や小規模な病院は、より一層大きな影響を受けるでしょう。診断、治療、予防のための医療提供も不十分になります。ウイルス感染を抑制できるとされている公衆衛生対策(自宅待機、ソーシャルディスタンシング、せきエチケット、手洗いなど)により、必要になる医療と利用可能な医療提供との差を小さくすることで、医療資源の不足を軽減できるかもしれません。