Msd マニュアル

Please confirm that you are not located inside the Russian Federation

コメンタリー — COVID-19 最新情報

コラム
2020/04/02 Matthew E Levison, MD, Adjunct Professor of Medicine, Drexel University College of Medicine
 

最新情報

COVID-19(コビッド・ナインティーン)の感染者数は、中国本土で減少するにつれ、中国本土以外では増加しています。313日現在、過去2週間で感染者の数は13倍になり、感染が発生した国の数は3倍に増加しました。現時点で143,000例以上の感染が世界全体で確認されており、およそ81,000例が中国本土から、54,000例が中国本土以外の134ヵ国から報告されています。わずか4カ国(中国、韓国、イタリア、イラン)で全体の約82%を占めていますが、中国と韓国では新たな感染者数は減少に転じています。一方、58カ国では感染者数が10名以下で、80カ国はいまだ感染者なしと報告されています。

現在、イタリアでは報告される感染者数が5日ごとに倍増しています。イタリアの医療体制は世界有数とされていましたが、この急速な感染拡大によって完全に崩壊しています(https://www.medscape.com/viewarticle/926804?nlid=134498_3901&src=wnl_newsalrt_200313_MSCPEDIT&uac=130759PG&impID=2310754&faf=1)。イタリア国内や他のEU加盟国との国境を越える人々の自由な往来がCOVID-19の感染拡大の制御を困難にしています。そこで2020310日、イタリアは全土のロックダウン(封鎖)に踏み切りました。

米国では、感染者数の増加がさらに速く、3日ごとに倍増しており、31日の76名から313日には約1,700名へと20倍以上に増加しました。現在までに、47の州とコロンビア特別区で感染者が報告されています(https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/cases-in-us.html#2019coronavirus-summary)。シアトル地区とニューヨーク市北部の小規模周辺地区では、大規模なクラスター(感染者集団)が発生しています。

米国では検査数の伸びが遅々としています。同国初の市中感染例が発生してから1週間以上経過した現在でも、検査を受けた人の数はわずか1,895人で、そのうちの約10%が陽性と判定されました。一方、韓国では、最初の市中感染例が確認されてから1週間以内に66,650人以上が検査を受け、11万人の検査を実施できる体制が速やかに整備されました(https://www.theatlantic.com/health/archive/2020/03/how-many-americans-have-been-tested-coronavirus/607597/)。米国では依然として診断検査をすぐに受けることができず、検査対象者の範囲についても州や地域の保健当局によってかなりのばらつきがあります。近い将来、SARSコロナウイルス2COVID-19の原因である新型コロナウイルスのこと) に対する検査体制が拡大されると、より多くの感染者が明らかになるでしょう。米国疾病予防管理センター(CDCは現在、鼻咽頭スワブ(鼻から喉に挿入する綿棒)を用いて上気道から検体を採取して検査を実施する方法を推奨しています(https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/hcp/clinical-criteria.html)。口から挿入する口腔咽頭スワブによる検体採取法は、より優先度が低い方法とされています。患者がたんを伴う咳をしている場合のみ、たんを採取します。

現在では感染を封じ込めて感染者数の増加を抑えるべく、各国でますます厳格な戦略が採用されるようになっています。シンガポール、香港、台湾では、早期の診断、感染確認者の隔離、広範囲にわたる接触者の追跡、接触者の隔離、ソーシャルディスタンシング(社会的距離の保持)によって、市中感染の進行を抑えることができています。韓国では感染の封じ込めと抑制に大々的に取り組んだことで、感染の拡大が鈍化していますが、イタリアとイランでは依然として、連日多くの感染が報告されています(https://www.bloomberg.com/graphics/2020-wuhan-novel-coronavirus-outbreak/)。イランとつながりのある感染者によって、イラク、アフガニスタン、バーレーン、クウェート、オマーン、レバノン、アラブ首長国連邦、カナダ、米国など、他の多くの国々で感染が拡大しています。

米国では、各地の状況に応じて、州や地方自治体の間で大きなばらつきがあります。一部の地域ではすべての学校と必要不可欠でない事業所(レストラン、バーなど)の閉鎖が勧告されていますが、具体的な勧告の内容はさまざまです。

大統領は人の集まりを10人までに制限するよう呼びかけています。しかし、ウイルスにさらされる可能性は集まりの規模には関係なく、その集まりの中に感染者がどのくらいの割合でいるかで決まりますが、現時点では十分な検査が行われていないため、これは不明です。全ての人が他者との濃厚接触(1.8m以内)を避けるなど、ソーシャルディスタンシングを続けることが最善の策であり、影響を最も受けやすい人(すなわち、COVID-19に感染すると重症化するリスクが高い高齢者や持病のある人)は自宅での自己隔離を続けるべきです。若者や健康な人は集まりに参加して感染してもおそらく大丈夫でしょうが、ほかの人にウイルスをうつしてしまう可能性があります。具体的な推奨事項については、CDCのコロナウイルス情報ページをご覧ください。https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/community/index.html

 

背景:疫学

201912月に中国中部の湖北省武漢で始まったCOVID-19(新型コロナウイルス[正式名称SARSコロナウイルス2]を原因とする病気)の集団発生(アウトブレイク)を受けて、世界保健機関(WHO)は2020311日にパンデミック(世界的大流行)を宣言しました。世界的規模の多くの国々において、複数の世代にわたり、人から人への持続的な感染が認められたためです。2020123日に中国政府はCOVID-19の感染が広がった湖北省の諸地域への出入りを制限する措置を講じましたが、春節(中国の旧正月)が近づく中、この「防疫線」が敷かれる前に数百万もの人々が家族や友人に会いに帰省していました。その後、中国本土のあちこちの省で感染者が急増し、その後間もなく中国本土の外に波及しました。

20202月第2週までに、約45,000例が湖北省を中心する中国本土で報告されましたが、報告される感染者数が約7万人に達してからは、中国本土の感染者数は横ばいになり始めました。ただ、検査キットが不足したことで最重症の入院患者しか報告対象とされなかった可能性が高く、中国の実際の感染者数はおそらく、これよりはるかに多かったはずです。症状の軽い市中の感染者の大多数を、診断せず隔離もしないままにしたことで、今回の感染拡大を抑える取り組みが制限された可能性があります。

パンデミックがどこまで拡大するか、感染者数やその割合、全体で何人が亡くなるかは依然として不明です。人口の40%以上がSARSコロナウイルス2に感染する可能性があると推定されています。このコロナウイルスに感染した人の大多数は重症化しませんが、米国の成人人口の大部分を占める1500万人は、年齢や基礎疾患を背景として、感染した場合の重症化や死亡のリスクが高いとされています。カイザーファミリー財団(Kaiser Family Foundation)の研究によると、この集団は60歳以上の高齢者約7,500万人と基礎疾患(心疾患、がん、慢性閉塞性肺疾患[COPD]、糖尿病など)を抱える1859歳の成人3,000万人で構成されています(https://www.kff.org/global-health-policy/issue-brief/how-many-adults-are-at-risk-of-serious-illness-if-infected-with-coronavirus/)。

防疫線を敷いたことに加えて、「集団免疫」が中国での人から人への感染拡大の鈍化に寄与している可能性があります。SARSコロナウイルス2への感染後に免疫を獲得した人々の割合が十分に多くなると集団免疫が形成され、感染しやすい人々を感染から守るようバリアのように働くのです。感染力の強い病気ほど、このバリアができるのに必要となる免疫を獲得した人々の割合が高くなります。麻疹(はしか)のように非常に伝染性の高い病気では、集団免疫の形成には人口の95%が免疫を獲得する必要があります。現時点では、COVID-19に必要な割合は不明です。ワクチンがあれば予防接種で集団免疫を形成できますが、COVID-19に対するワクチンはまだありません。

 

背景:臨床

COVID-19は重症化する可能性があります。武漢では、入院患者のうち5%が極めて重篤な状態になって集中治療室(ICU)での治療が必要になり、2.3%が人工呼吸器を必要としました。シンガポールでは11%でICU治療が必要になり、イタリアでは現在、入院患者の16%がICUでの治療を必要としています(https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/2763188)。COVID-19の致死率は、これまでのところ重症急性呼吸器症候群(SARS)や中東呼吸器症候群(MERS)よりも低いようですが、流行性のインフルエンザよりはるかに高いとみられています。インフルエンザで死亡する人の割合は全体では0.1%未満ですが、高齢者での致死率ははるかに高くなります。同様に、湖北省では症状がみられたCOVID-19患者全体の約3%が死亡しましたが、80歳以上に限定すると30%以上の人が死亡しました(https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2020.03.04.20031104v1.full.pdf)。

 

検査

コロナウイルスの検査は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法に基づいていますが、これは臨床検体(たん、鼻咽頭スワブ、口腔咽頭スワブ、便など)からウイルス固有の遺伝子ーの一部を増幅させて検出する検査方法です。陽性の判定は活動性の感染症があることを意味します。ただし、検体からウイルスの遺伝物質が検出されたとしても、その患者がほかの人に感染する可能性がある生きたウイルスを排出しているということにはなりません。その判断には、生きたウイルスを培養する検査が必要になります。また、PCR検査で陰性と判定されても、感染の可能性が否定されるわけではなく、患者の病歴、臨床所見、疫学情報と合わせて診断する必要があります。現行の指針では、症状が消えてから、24時間以上の間隔を開けて採取した最低2回連続の呼吸器検体でPCR検査を行ってから患者の隔離を解除するに推奨されています。

 

人の体内にSARSウイルス2の遺伝物質が存在するかどうかを検査で調べることは、ほかにも多くの理由から重要です。検査対象を拡大することで、軽症者が占める割合やこのウイルスのより正確な致死率を測ることもでき、症状がある場合とない場合での子どもの感染率や、症状が現れる前にウイルスがどれほど拡散されているかを明らかにすることができます。

 

封じ込めと被害軽減

封じ込めは、アウトブレイクの発生直後に用いられる戦略で、感染の拡大を防ぐために感染者と接触者を特定して隔離します。しかし、今では市中感染が拡大しているため、いわゆる被害軽減(mitigation)と呼ばれる追加策が必要とされています。

 

被害軽減の対策としては以下のものが挙げられます。

  • 体調が悪いときは外出しない
  • 手洗い
  • せきエチケット
  • よく触れるものの表面を毎日消毒する
  • 大規模な集まり、飛行機やクルーズ船での旅行など、ウイルスにさらされる可能性のある状況を避ける
  • 遠隔学習、在宅勤務、ビデオ会議、電話会議などでソーシャルディスタンシングを行い、参加者が少ない場合を除いてコンサート、集会、劇場、スポーツイベント、礼拝、大学や学校での授業など、公のイベントは取り止める。

 

目標は、ワクチンや治療薬が広く利用できるようになるまで、医療を必要とする感染者の数を減らすことにあります。つまり、感染者数が指数関数的に増えないようにし、時間をかけて感染者数の曲線を平坦にすることです(https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(20)30567-5/fulltext)。最終的な感染者数が同じでも、より長い期間をかけて増加すれば、特に集中治療室のベッドや人工呼吸器といった医療資源が圧倒的に不足する事態が発生する可能性は低くなります。