両眼を開けているときにみられる複視の主な原因

原因

一般的な特徴*

診断のアプローチ†

神経系による眼の筋肉の制御を妨げる病気‡

一部の脳卒中または一過性脳虚血発作

しばしば、高齢者やこれらの病気の危険因子(高血圧、動脈硬化、糖尿病)がある人にみられる

ときに、話し方が不明瞭になる、筋力低下、歩行困難

医師の診察

脳のMRIまたはCT検査

動脈のこぶ(動脈瘤)や腫瘍などの腫瘤による神経の圧迫

しばしば痛み(動脈瘤によるものであれば突然の痛み)やその他の神経系の機能障害の症状(筋力低下、協調運動障害、皮膚の感覚異常)

脳のMRIまたはCT検査

眼または眼の周りの構造物の炎症または感染症(例えば、膿瘍[のうよう]、副鼻腔炎、まれに頭蓋骨底部の海綿静脈洞の血栓を伴う)

常に痛みがある

ときに発熱、悪寒、疲労、顔面の感覚消失や、眼球の突出

眼窩に加え、ときに脳のCTまたはMRI検査

多発性硬化症

通常、健康状態が比較的良好な期間と症状が悪化する期間が交互にみられる

筋力低下が日毎に現れたり消えたりする

ピリピリ感、しびれ、痛み、灼熱感、かゆみなどの異常感覚

動きのぎこちなさ

片脚または片手の筋力が落ちる、または器用な動きができなくなる(そのとき片脚または片手がこわばることもある)

病気が進行するにつれ、ふるえ、部分的または完全な麻痺、筋肉の不随意な収縮(けい縮―ときに痛みを伴うけいれんを引き起こす)

話し方が遅く、不明瞭になる

排尿や排便に伴う問題

脳および脊髄のMRI検査

重症筋無力症

複視が現れたり消えたりする

発話困難または嚥下困難

筋力低下

筋肉を繰り返し使うと筋力が低下する

医師の診察

抗体検査、筋電図検査、またはその両方

ウェルニッケ症候群

長期にわたるアルコール乱用歴

動きのぎこちなさ、協調運動障害、錯乱

医師の診察のみ

眼の動きを阻害する病気

バセドウ病(眼の周りの筋肉と組織が厚くなる病気[浸潤性眼症(infiltrative ophthalmopathy)と呼ばれる]であり、甲状腺の機能が亢進している人に最もよくみられ、甲状腺の機能が正常な人ではまれな病気)

眼球の突出、しばしば眼の痛みまたは刺激感、涙目、光への過敏、甲状腺の腫大(甲状腺腫)、すねの皮膚の肥厚

血液検査による甲状腺機能の評価

けがによる眼窩の骨折や血液の貯留(血腫)など

痛み

最近眼にけがをした人にみられる

眼窩のCTまたはMRI検査

腫瘍(頭蓋骨の底部付近、副鼻腔、または眼窩[眼窩腫瘍と呼ばれます])

しばしば、眼の動きとは無関係な痛み、片眼の突出、ときに他の神経系の機能障害の症状

眼窩に加え、ときに脳のMRIまたはCT検査

*特徴としては症状や診察結果を示しています。示されている特徴は典型的なものですが、常に認められるわけではありません。

†医師の診察は必ず行われるものであり、これがこの列に記載されるのは、検査を一切することなく医師の診察だけで診断ができることがある場合だけです。

‡痛みがあるかどうかは、原因によって異なります。

CT = コンピュータ断層撮影、ECG = 心電図検査、MRI = 磁気共鳴画像。