カチノン系化合物は、 アンフェタミン アンフェタミン アンフェタミンは、特定の病状の治療に使用される刺激薬ですが、乱用されることもあります。 アンフェタミンには覚醒作用があり、身体機能を高め、高揚感や幸福感をもたらします。 アンフェタミンには食欲を抑える作用があるため、体重を減らす目的で不適切にアンフェタミンを使用する人もいます。 過剰摂取により異常な興奮、せん妄、生命を脅かすほどの体温上昇、 心臓発作や 脳卒中が起こることがあります。... さらに読む に似た刺激物質で、植物のアラビアチャノキ Catha edulis(カート)に由来します。カートは東アフリカおよびアラビア半島で栽培されている灌木です。何世紀にもわたって、その地域の人々は軽度の刺激作用のために葉を噛んでいます。その地域では、カートを噛むことはしばしば社会的な活動であり、他の社会のコーヒーを飲むことと似ています。
最近、カートの使用は他の国々へと広がり、より強力な人工(合成)カチノン系化合物が「バスソルト」として市販され、乱用薬物となっています。
(薬物使用と薬物乱用 物質関連障害の概要 薬物は、それが合法的な医療用の薬剤であるか、娯楽目的で使用される薬物(レクリエーショナルドラッグ)であるかにかかわらず、現在では多くの人々にとって、日々の生活になくてはならないものになっています(表「 医療用途と娯楽用途がある薬物」を参照)。 物質関連障害は、脳の報酬系を直接活性化する物質(薬物など)を、それがもたらす快感を求めて使用する... さらに読む も参照のこと。)
症状
合成カチノン系化合物には、アンフェタミンと似た作用があり、頭痛、心拍数の上昇(頻脈 心室頻拍 心室頻拍は、心室(心臓の下側にある2つの部屋)を発生源とする不整脈の一種で、心拍数が毎分120回以上になるものです(正常な心拍数は毎分60~100回です)。 ほぼ常に動悸と 心不全の他の症状がみられます(息切れ、胸の不快感、失神など)。 診断は心電図検査によって下されます。 薬の投与と心室の異常な部分を破壊する処置を行うこともありますが、通常は自動式の植込み型除細動器が必要になります。... さらに読む )、動悸、幻覚、興奮、痛みへの耐性増加などがみられます。暴力的になる人もいます。
合併症
カチノン系化合物は、危険なほどの体温上昇(高体温 熱中症の概要 恒温動物である人間の体温は、外気温の変動にかかわらず、口腔温では37℃前後、直腸温では38℃前後に保たれています。体が正常に機能するためには、この体温を保つ必要があります。体温が上昇しすぎたり、逆に下がりすぎると、臓器に深刻な損傷が生じたり、死に至ることがあります。 体は熱を産生したり放散したりして、体温を調整します。... さらに読む )を引き起こすことがあります。重篤な臓器障害を引き起こすこともありますが、原因はよく分かっていません。以下のような臓器障害が起きることがあります。
筋肉の崩壊(横紋筋融解症)
診断
医師による評価
血液と尿の検査
合成カチノン系化合物は通常の尿検査や血液検査では検出されないため、医師は通常、薬物の使用が判明している人の症状に基づいて診断を下します。カチノン系化合物の重度の急性中毒の徴候がみられる人には、医師は一般的に、以下のような特定の検査を指示します。
治療
静注鎮静薬
輸液
通常、静注鎮静薬、輸液、支持療法などの一般的な治療で十分です。危険なほどの体温上昇(高体温 セロトニン症候群 セロトニン症候群とは、高体温、筋肉のけいれん、不安またはせん妄を引き起こす傾向のある、生命を脅かす可能性のある薬物反応です。 ( 熱中症の概要を参照のこと。) セロトニンとは、神経細胞から神経細胞へとインパルスを伝える化学物質です。セロトニン症候群は、通常は薬によって脳のセロトニン受容体への刺激が増加することで起こります。セロトニン症候群は、治療目的での薬物使用、一部の薬の過剰摂取、または最も一般的にはセロトニン受容体を刺激する薬を2つ... さらに読む )、持続的な心拍数の上昇または興奮、腎疾患を示唆する血液検査結果がみられる人は入院させ、筋肉の崩壊および心臓と腎臓の損傷についてモニタリングする必要があります。
さらなる情報
米国国立薬物乱用研究所:合成カチノン系化合物(National Institute on Drug Abuse (NIDA): Synthetic cathinones)
米国薬物乱用・精神衛生サービス局(Substance Abuse and Mental Health Services Administration [SAMHSA]