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高山病

執筆者:

Andrew M. Luks

, MD, University of Washington

最終査読/改訂年月 2018年 5月
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高山病は、高地で酸素が欠乏することによって引き起こされる病気です。

  • 症状には、頭痛、疲労、吐き気や食欲不振、怒りっぽさなどがあり、より重症になると、息切れ、錯乱、そして昏睡などが現れます。

  • 高山病の診断は、主に症状に基づいて下されます。

  • 治療として、休息や高度を下げるなどの対応があり、薬や酸素が用いられる場合もあります。

  • ゆっくり高度を上げるようにすれば、高山病は予防できます。ときには薬を服用します。

高度が上昇するにつれて大気圧が下がり、空気が薄くなって使える酸素は少なくなります。例えば、海抜0メートルの空気と比較すると、標高5800メートルでは空気中の酸素の量は半分になります。標高約1615メートルに位置しているデンバー(米国コロラド州の州都)では、空気中の酸素量は20%少なくなります。

ほとんどの人は、1500~2000メートルであれば1日で問題なく登ることができますが、2500メートル登るとなると約20%、3000メートル登ると約40%の人に何らかの高山病の症状が現れます。登高の速度、到達した最高高度、睡眠をとる高度のすべてが高山病発症の可能性に影響を及ぼします。

高山病の影響を最も受けやすい器官は以下の通りです。

危険因子

高山病を発症するリスクには非常に個人差があります。一般的には以下の要因でリスクが上昇します。

  • 高山病の既往

  • 海抜もしくは非常に低い高度で居住(標高900メートル以下)

  • 急速に高度を上げる

  • 過度の運動

  • 高すぎる標高での睡眠

糖尿病冠動脈疾患、軽度の慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの病気にかかっている人の場合、特に高山病のリスクが高まるわけではありませんが、高地では血液中の酸素レベルが低くなるため(低酸素血症)、このような慢性疾患にかかっていると、何らかの困難に直面する可能性があります。体力は高山病の予防には関係ありません。一般的に喘息は高地でも悪化しません。妊婦や胎児は標高約3000メートルを超えなければ、高地で数週間過ごしても、特に危険はありません。

順化

人間の体は、呼吸数や心拍数を増やしたり、赤血球の産生を増やして組織に酸素を多く供給したり、他の調整を行うことで、やがて高地に適応(順化)します。標高3000メートルまでなら、大部分の人は数日で順応できます。さらなる高地に順応するには日数を要し、数週間かかることもあります。最終的には標高5300メートルを超える高地でもほぼ通常の活動ができるようになる人もいます。しかし、これ以上の高度に長期間居住できるような完全な順化は不可能です。

知っていますか?

  • 急性高山病の症状は、二日酔いや極度の疲労、片頭痛、ウイルス感染の症状と間違われることがあります。

症状

急性高山病(AMS)

急性高山病は、軽症型の高山病で、最もよくみられます。通常、標高2440メートル以下の標高で発症することはありませんが、高山病にかかるリスクが非常に高い人では、より低い高度で発症する可能性があります。通常、高度を上げてから6~10時間以内に症状が現れ、多くの場合、頭痛のほかに、ふらつき感、食欲不振、吐き気と嘔吐、疲労、脱力、怒りっぽさなどがみられます。急性高山病の症状を二日酔いのよう、と表現する人もいます。症状は通常、24~48時間続きます。まれに急性高山病は、高地脳浮腫という、より重症の高山病に進行します。

高地脳浮腫(HACE)

高地脳浮腫はまれですが、脳が水分によって浮腫を起こす病態で、死に至る可能性があります。高地脳浮腫を発症すると、頭痛、錯乱、歩行時にフラフラするなどの体の不調和(運動失調)がみられます。高地脳浮腫に気づかず、初期の段階で治療を施さずにいると、昏睡に至ることがあります。軽い症状から生命を脅かす状態まで数時間以内に急速に進行します。

高地肺水腫(HAPE)

高地肺水腫は肺に水がたまる病態で、通常は標高2500メートル以上の高さまで急に登った場合、その24~96時間後に発症します。急性高山病の症状がみられない人でも発症する可能性があります。高山病による死亡のほとんどが、高地肺水腫が原因です。高地居住者が、低所に短期間滞在して戻ったときに高地肺水腫を発症することもあります(リエントリー性肺水腫と呼ばれる現象)。呼吸器感染症は、たとえ軽症でもリスクを高める可能性があります。夜間に横になると症状が悪化し、高地肺水腫に気づかずに速やかな治療を行わずにいると、急速に重症化する可能性があります。軽い症状では、乾いたせきや軽い動作の後に息切れがみられます。中程度の症状には、安静時での息切れ、皮膚・唇・爪が青くなる(チアノーゼ)などがあります。重度の症状には、あえぎや、たんがピンク色になったり血が混じる、重度のチアノーゼ、呼吸時にゴボゴボという音が聞こえることがあります。高地肺水腫は急速に悪化することがあり、数時間のうちに、呼吸不全、昏睡、そして死に至る可能性があります。

その他の症状

手や足の腫れや、起床時の顔のむくみが一般的にみられます。腫れのために軽い不快感が生じますが、通常は数日もしくは標高を下げることで治ります。

頭痛のみがみられ、急性高山病の他の症状が現れないことも一般的です。

標高2700メートル以上に登ると、網膜出血(眼の後部にある網膜の小領域の出血)が起きる場合があります。この出血は、標高5000メートルを超えると多くなります。出血が、中心視力を担う部分(黄斑)で発生しない限り、通常は症状が出ることはありません。網膜中央部で出血がおきると、小さな盲点があるのに気づく場合があります。網膜出血は数週間で消失し、長期の問題を引き起こすことはありません。高地での登山やトレッキング中に、視野に盲点が生じた場合は、標高を下げるほかにさらなる評価が必要です。出血がいったん消失すれば、再度高度を上げても構いません。

診断

  • 医師による診察

  • 高地肺水腫では、胸部X線検査と血液中の酸素レベルの測定(可能な場合)

高山病の診断は、主に症状に基づいて下されます。高地肺水腫の場合、通常は聴診器をあてると肺の中の液体の音が聞こえます。 胸部X線検査と血液中の酸素レベルを測定すると、診断の確定に役立ちます。

慢性高山病とは

高山病はほとんどの場合、急激に高度を上げることによっておこる病気です。しかし、高地で長期間生活をした後にのみ発症する高山病もあります。

慢性高山病(モンゲ病)は標高3600メートルを超える高地に数カ月から数年もの間、居住している人にみられる病気です。 疲労、息切れ、痛み、唇や皮膚が青みがかる(チアノーゼ)などの症状がみられます。慢性高山病の人では、酸素不足を補うために身体が赤血球を過剰に産生します。過剰に産生された赤血球によって血液が濃くなり、心臓から全身の臓器に十分な血液を送り出すことが困難になる場合があります。

定期的に血液を抜き取ること(瀉血[しゃけつ])で一時的に症状は緩和されますが、最も効果的な治療は高度を下げることです。アセタゾラミドの投与によって症状が緩和することもあります。完全に回復するには数カ月を要します。その間、低地に滞在し続ける必要があります。

モンゲ病はアンデス山脈の地域でよくみられます。その他の地域(例えばチベットなど)では、肺高血圧や右心の機能低下を特徴とする異なるタイプの慢性高山病(赤血球の過剰産生を伴わない)がみられることもあります。

予防

高度を上げる速度

高山病の最善の予防策はゆっくりと登ることです。その日に到達した最高高度よりも、睡眠をとる地点の標高の方が重要です。2500メートルを超える標高での活動には、登高速度のコントロール(段階的な登高と呼ばれます)が欠かせません。3000メートルを超える標高では、睡眠をとる高度は1日当たり300~500メートルを超えて上げるべきではなく、睡眠の高度を上げる前には3~4日毎に1日は前日と同じ高度で睡眠をとるようにします(休息日)。もし1日当たりの登高を500メートル未満に制限できない場合には、全登高の平均が1日当たり500メートル未満にするように制限すべきです。休息日には、睡眠時に低い所へ戻れるならば、日中はそれより高い地点に登ってもかまいません。

症状なしで登ることのできる能力には個人差があります。したがって登山グループの場合は、高度への順化が最も遅いメンバーのペースに合わせるべきです。

順化は急速に元に戻ります。順化後に標高を下げた状態が数日間続いた場合、再登高の際には、段階的に高度を上げるステップをもう一度繰り返さなければなりません。

アセタゾラミドを用いると(登高開始前夜に服用を開始できます)高山病のリスクを減らすことができます。高山病発症後であっても、アセタゾラミドは症状の軽減に役立ちます。高度を下げ始めるか、最高到達地点で数日が経過した後には、アセタゾラミドの服用をやめるべきです。デキサメタゾンもまた、アセタゾラミドの代わりとして急性高山病のリスクを低下させ、症状を和らげます。

非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)などの鎮痛薬も高山病による頭痛の予防に役立つ可能性があります。

高地肺水腫の既往がある場合は症状の再発に注意し、再発の症状がみられたらすぐに高度を下げるようにします。高地肺水腫の再発予防のために、ニフェジピンまたはタダラフィルの服用を勧める医師もいます。

一般的な対策

到達後1日~2日間は激しい運動を避けることで高山病を防ぐ助けになる可能性があります。大量の飲酒やオピオイド、鎮静薬の使用も避けるべきです(特に睡眠をとる直前)。カフェインを習慣的に摂取している場合は、登山に際しカフェインの摂取をやめることで、カフェイン離脱による頭痛が生じる可能性があります。

体力があれば高所での運動量を増やすことができますが、高山病の予防には役に立ちません。高地で多くの人が経験する睡眠の問題に対しては、アセタゾラミドが睡眠の質の改善に役立つ可能性があります。

治療

標高を下げることが、急性高山病のすべての型に対する最善の治療です。

  • 症状が軽度であれば、登高をストップし、水分補給や場合によっては薬で治療

  • 重度の急性高山病の場合には、標高を下げ、水分補給と薬で治療

  • 高地脳浮腫および高地肺水腫には、速やかに標高の低い場所に戻り、直ちに薬で治療(下山が不可能であれば、薬と酸素補給または携帯用の高圧バッグを用いて治療)

手や足、顔の腫れは治療の必要はありません。腫れは数日後または下山すれば自然に治まります。高地では、健康な人であっても、睡眠の質の低下がよくみられますが、それ自体は標高を下げる理由にはなりません。

軽度の急性高山病を起こした人は、それ以上高度を上げずに、休む必要があります。症状がなくなるまで、それ以上高い所に登るべきではありません。その他の治療としては、水分補給とアセトアミノフェンまたは非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)の服用があり、頭痛の緩和に役立ちます。水分補給では急性高山病の治療にはなりませんが、水分補給により脱水状態(症状が急性高山病に類似)が解消します。急性高山病の多くは1~2日で治ります。症状緩和のため、ときにアセタゾラミドやデキサメタゾンが用いられます。

急性高山病の症状がより重度である場合や治療を行っても症状が改善されない場合は、望ましくは標高500~1000メートルまで高度を下げるようにします。標高を下げることで、しばしば症状が急速に緩和されます。水分補給のほか、アセトアミノフェンまたはNSAID、アセタゾラミドまたはデキサメタゾンを用いて治療します。

高地肺水腫を発症した場合は、速やかに標高の低い場所に戻るべきです。可能であれば酸素吸入を行います。ニフェジピンという薬は、肺動脈の血圧を一時的に下げるのに役立ちます。

高地脳浮腫を発症した場合は、速やかに標高の低い場所に戻り、かつ可能な限り高度を下げるようにします。酸素とデキサメタゾンを投与する必要があります。アセタゾラミドが追加される場合もあります。

高度をすぐに下げることができず、患者が重篤な状態の場合には、時間を稼ぐために高圧バッグを使用します。高圧バッグは携帯用の軽量かつ布製のバッグで、人が1人入れるだけの十分な大きさがあり、手動のポンプを備えています。患者を中に入れてきっちりと口をふさぎ、ポンプを使ってバッグ内部の気圧を上げます。気圧を上げることで、高度が下がったかのような状況をつくりだします。症状が消失するまで患者はこの中で過ごします。高圧バッグは酸素吸入と同様に有益ですが、登山の際には使用できないこと多く、また実際に高度を下げることの代替手段になるわけではありません。

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