中手骨の骨折は、硬いもの(壁や人の顎など)を殴ったときに起こるため、よくボクサー骨折と呼ばれます。人を殴ってこの骨折が生じたときに、殴った手が相手の口に入り、皮膚が傷つくことがあります。こうしたケースでは、相手の口内の細菌が傷口から侵入して感染症を引き起こすことがあり、すぐに治療しなければ、手の動作に永続的な障害が生じるおそれがあります。
症状
診断
治療
負傷した関節付近に傷がある場合は、人を殴ったときにこぶしが相手の口に入った可能性があります。その場合は、傷口を洗浄し、感染症予防のために抗菌薬を投与する場合があります。
中手骨頸部骨折の治療では、副子(尺骨側の溝状スプリント)を用い、その後ギプスを数週間装着します。副子をあてる前に骨片を元の位置に戻す(整復する)必要があるかどうかは、骨折の種類によって異なります。
骨片のずれや回転がひどい場合は、医師が手術なしで骨の位置を整えます(非観血的整復)。
骨を元の位置に戻す前に、患者に痛みを感じさせないように以下のいずれかの処置を施すことがあります。
血腫ブロックでは、皮膚から骨折部の血液が集まっている位置に針を刺します(血腫とは血液が貯留した状態のことです)。その後、リドカイン(麻酔薬)を注入して折れた骨の周囲に麻酔を施します。
尺骨神経ブロックでは、麻酔薬を患部の神経に注射します。この処置によって、神経から脳へ送られる痛みの信号を阻害します。尺骨神経は、肘から小指と薬指へ通っています。
副子を外した後、手と指を可動域いっぱいに動かす運動を徐々に開始します。通常は、手を完全に動かすことができるようになります。