外耳に起こるけがには、いくつかのものがあります。
カリフラワー耳(軟骨膜下の血腫)
外耳を強打すると、軟骨と周囲の結合組織層(軟骨膜)との間に皮下出血が起こることがあります。この部位に血液がたまると外耳が腫れて紫色になります。たまった血液(血腫)が軟骨への血液供給を遮ると、その部分の軟骨が壊死して耳が変形してしまいます。この変形はカリフラワー耳と呼ばれ、レスリング、ボクシング、ラグビーの選手などによくみられます。
医師は血腫を切開して中の血液を除去します。血液を除去したら圧迫包帯をあて、3~7日間そのままにして血腫の再発を予防します。このドレッシング材によって皮膚と軟骨膜が正しい位置に保たれるため、血液は再び軟骨に届くようになります。このけがは感染しやすいため、通常は抗菌薬を投与して感染症を予防します。
切り傷(裂傷)
切り傷(裂傷)が耳を貫通した場合には、十分に洗浄してから皮膚を縫い合わせ、包帯をあてて患部を保護し、軟骨の治りを促します。軟骨を覆う皮膚が剥がれてなくなっていない限り、軟骨も縫い合わせます。ときに、感染を予防するため抗菌薬が必要になります(特に噛まれた傷の場合)。傷が治った後、美容整形手術が必要になることもあります。
耳を ヒトに咬まれた場合 人間による咬み傷 人間の歯はそれほど鋭くないため、人間による咬み傷の多くは、あざや浅い裂け目( 裂傷)程度です。例外は耳や鼻、陰茎などの突き出た部分を咬まれた場合で、切断されることがあります。 けんかで咬まれた場合や、誰かを殴ったときに握りこぶしが相手の歯に当たって傷が生じた場合は、 感染が起こる可能性が高くなります。握りこぶしの裂傷は、指のつけ根を通る指... さらに読む 、感染するリスクが高く、特に軟骨に重度の感染が生じる可能性があります。医師は損傷している組織や壊死した組織を入念に取り除き、予防的抗菌薬投与を行い、ときに抗ウイルス薬投与を行います。
剥離
ときに、耳が頭部から剥がれる(剥離[はくり]する)ことがあります。完全に剥がれることもあれば、一部のみが剥がれていることもあります。耳は、体の他の構造物に比べてあまり保護されていないため、剥がれる可能性が高くなります。外科医(通常は形成外科手術または耳の病気を専門にしている外科医)に剥がれた耳を元通りくっつけてもらうこともできますが、手術が成功するとは限りません。ときに、体の他の部位から採取した軟骨と皮膚、または人工的な皮膚を使って、新しい耳をつくることもあります。
骨折
あごを強打すると、外耳道の周囲の骨が折れる(骨折する)ことにより、外耳道の形がゆがみ、狭くなってしまうことがよくあります(あごと顔面中央部の骨折 あごと顔面中央部の骨折 顔面のけがは、しばしばいくつかのものが同時に起こります。例えば、1回の受傷によって、眼と鼻または口と首を同時にけがすることがあります。 下あごを骨折すると、痛みと腫れが生じ、歯の噛み合わせが変わり、口を完全に開けられなくなります。 顔の中央を骨折すると、腫れ、複視、顔面のしびれ、眼球の陥没、歯の噛み合わせの変化、口を完全に開けられないなど... さらに読む )。このような変形は手術で治すことができます。