顔面のけがは、しばしばいくつかのものが同時に起こります。例えば、1回の受傷によって、眼と鼻または口と首を同時にけがすることがあります。
下あごを骨折すると、痛みと腫れが生じ、歯の噛み合わせが変わり、口を完全に開けられなくなります。
顔の中央を骨折すると、腫れ、複視、顔面のしびれ、眼球の陥没、歯の噛み合わせの変化、口を完全に開けられないなどの症状が現れます。
医師は通常、診察時にあごと顔の骨折に気づきますが、普通は X線検査 単純X線検査 X線は高エネルギーの放射線で、程度の差こそあれ、ほとんどの物質を通過します。医療では、極めて低線量のX線を用いて画像を撮影し、病気の診断に役立てる一方、高線量のX線を用いてがんを治療します(放射線療法)。 X線は単純X線検査のように単独で使用することもありますが、 コンピュータ断層撮影(CT)などの他の手法と組み合わせて使用することもあります。( 画像検査の概要も参照のこと。)... さらに読む または CT検査 CT(コンピュータ断層撮影)検査 CT検査(以前はCAT検査とよばれていました)では、X線源とX線検出器が患者の周りを回転します。最近の装置では、X線検出器は4~64列あるいはそれ以上配置されていて、それらが体を通過したX線を記録します。検出器によって記録されたデータは、患者の全周の様々な角度からX線により計測されたものであり、直接見ることはできませんが、検出器からコンピュータに送信され、コンピュータが体の2次元の断面のような画像(スライス画像)に変換します。(CTとは... さらに読む
も行われます。
下顎骨(かがくこつ)骨折の治療には、あごを安静にする、手術、または骨折が治るまであごをワイヤーで閉じたまま固定するといった方法があります。
顔の中央の骨折は手術で治すことができますが、手術が行われるのは通常、痛みと腫れ以外の問題(顔面の変形など)がある場合に限られます。
顎骨(がっこつ/がくこつ)骨折という用語は通常、下あご(下顎骨)の骨折を意味します。上あご(上顎骨[じょうがくこつ]と呼ばれる骨の一部)の骨折は、顎骨骨折と呼ばれることもありますが、通常は顔の骨折とみなされます。
下顎骨の骨折の原因で最も多いのは、殴られるまたは野球バットなどで打たれるといった鈍的外傷です。
上顎骨の骨折は、顔の前面を動かない物体にぶつけたとき(高所からの転落や自動車衝突事故など)に起こります。こぶしや武器などの鈍器で殴られて起こることもあります。歯槽骨(しそうこつ)だけが折れるあごの骨折もあります。
顔面中央部の骨折
顔の骨折の多く(通常は自動車事故などの大きな力によって生じたもの)は、以下のいずれかに当てはまります(ルフォー分類)。
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症状
下顎骨を骨折すると、あごに痛みと腫れが生じ、患者はしばしば歯がうまく噛み合っていないように感じることがあります。また、口が大きく開かなくなったり、口を開閉するとあごが左右どちらかへずれたりすることもよくあります。
上顎骨を骨折すると、しばしば顔の腫れと変形が起こります。腫れがひどいとまれに気道がふさがれ呼吸が妨げられることがあります。また、上顎骨が折れるほど強い力による外傷は、首の脊椎損傷(脊椎および脊髄の損傷 脊椎および脊髄の損傷 脊髄損傷のほとんどは自動車事故、転倒や転落、暴行、スポーツ外傷が原因です。 症状は感覚の消失、筋力の消失や、腸、膀胱、性機能の喪失などで、これらの症状は一時的なことも永久的なこともあります。 損傷を特定するには、MRI検査(軟部組織、脊髄、靱帯の損傷を評価するため)、CT検査(骨の損傷を評価するため)、またはその両方を用いるのが最善の方法... さらに読む )または 脳損傷 頭部外傷 を引き起こすおそれがあります。
その他の症状は、骨折の位置によって異なります。
眼窩の底部の骨折は、複視(眼の筋肉が骨折部位の近くにはさまるため)、眼の下方の皮膚のしびれ(神経の損傷のため)、または眼球の陥没などの症状を引き起こします。
頬骨(頬骨弓[きょうこつきゅう])を骨折すると、あごを完全に開けられない、歯の噛み合わせの変化、頬骨を指でなぞるとデコボコしている、などの症状がみられます。
その他の上顎骨骨折で、あごにまで伸びるものでも、あごを完全に開けられない、歯の噛み合わせの変化などの症状が現れます。
歯または歯槽に達する骨折があると、口の中に至る通路ができるため、口の中の細菌が下顎骨または上顎骨に感染することがあります。
診断
X線検査やCT検査
眼の診察
あごの骨が折れている場合、通常、医師は診察だけで診断を確定できます。一般に、下顎骨が折れているのか、歯槽骨だけが折れているのかを診断するため、 X線検査 単純X線検査 X線は高エネルギーの放射線で、程度の差こそあれ、ほとんどの物質を通過します。医療では、極めて低線量のX線を用いて画像を撮影し、病気の診断に役立てる一方、高線量のX線を用いてがんを治療します(放射線療法)。 X線は単純X線検査のように単独で使用することもありますが、 コンピュータ断層撮影(CT)などの他の手法と組み合わせて使用することもあります。( 画像検査の概要も参照のこと。)... さらに読む が行われます。上顎骨の骨折を診断する際は、 CT(コンピュータ断層撮影)検査 CT(コンピュータ断層撮影)検査 CT検査(以前はCAT検査とよばれていました)では、X線源とX線検出器が患者の周りを回転します。最近の装置では、X線検出器は4~64列あるいはそれ以上配置されていて、それらが体を通過したX線を記録します。検出器によって記録されたデータは、患者の全周の様々な角度からX線により計測されたものであり、直接見ることはできませんが、検出器からコンピュータに送信され、コンピュータが体の2次元の断面のような画像(スライス画像)に変換します。(CTとは... さらに読む が行われます。また、脊髄損傷がないことを確認するために、しばしば首のX線検査が行われます。脳損傷の症状があれば、脳のCT検査が行われます。視覚障害または眼の近くのけががあれば、 眼の診察 眼の検査 眼に何らかの症状が出た場合は、医師の診察を受けるべきです。 しかし、眼の病気の中には、初期段階では症状がほとんどまたはまったくないものもあります。したがって、症状がなくても、眼科医やオプトメトリストによる定期的な検査を1~2年に1回程度(眼の状態によってはもう少し頻繁に)受けるべきです。眼科医とは、眼の病気の評価と(手術を含む)治療を専門... さらに読む が行われます。
治療
それぞれの骨折に対する治療(手術が行われる場合もあります)
あごの骨折が疑われる場合は、直ちに救急外来を受診するべきです。
腫れまたは出血により呼吸の通路がふさがり始めている場合、呼吸を助けるためにチューブ(気管内チューブ)を挿入しなければならないことがあります。
下顎骨骨折の治療
下顎骨骨折の治療では、折れた骨がくっつくようにあごを固定します。軽い骨折であれば、噛まないようにするだけで治るため、医師は液体の栄養剤または柔らかい食事を処方します。より重度の骨折(骨折部位が複数あるもの、骨折端がずれているもの[転位骨折]など)では、あごの修復を必要とします。
医師は、骨に金属プレートをあてがい骨折部位の両端をスクリューで固定するか、上あごと下あごをまとめてワイヤーで固定し、数週間待ちます。ワイヤーであごが閉じられている場合、食事はできず、ストローを使って液体だけを飲むことになります。その間、歯の表面の一部しか磨くことができないので、1日2回使用する洗口液が処方されます。あごをワイヤーで閉じて数週間したら、通常は訓練によりあごを強化しなければなりません。
小児では、耳に近い下顎骨骨折は固定しない場合もあります。その代わり、5~10日間あごの動きをゆるく制限する器具を使うだけで十分です。
上顎骨骨折の治療
上顎骨の骨折では、視覚の異常、歯の噛み合わせの変化、あごが完全に開かない、眼球の陥没、顔面のしびれ、受け入れがたい容貌の変化などがあれば、手術を行います。手術が必要かどうかを判断するのに、けがの後数日間(腫れがひくのを)待ちます。典型的な手術は、ねじとプレートであごを固定することです。術後はあごを動かさないようにする必要がありますが、多くの場合は数日で十分であり、その後数週間は柔らかいものを食べるようにします。
歯槽骨骨折の治療
歯槽骨の骨折では抗菌薬が投与されます。