頭蓋骨骨折では、脳の損傷が起こる場合と起こらない場合があります。
痛みや脳損傷の症状が出ます。場合によっては、鼻や耳から液体が漏出したり、耳の後ろや眼の周囲にあざが出たりすることもあります。
頭蓋骨骨折の診断にはCT検査が用いられます。
頭蓋骨骨折の多くは治療の必要がありません。
頭蓋骨骨折は、皮膚を貫通する損傷(開放性損傷と呼ばれます)または皮膚を貫通しない損傷(閉鎖性損傷と呼ばれます)に起因します。
頭蓋骨骨折が起こると、頭蓋骨骨折のない頭部外傷よりも脳に与えるダメージは大きくなります。頭蓋骨骨折の重症度は、 骨折 脱臼の概要 脱臼とは、関節を形成している骨が完全に離れることです。亜脱臼では、関節の骨が部分的にずれています。多くの場合、脱臼した関節は、医師が元の位置に戻す(整復する)まで脱臼したままですが、ときに自然に元の位置に戻ることがあります。 関節に起こる損傷は、ほとんどが外傷や酷使によるものです。... さらに読む の種類と部位に左右されるところがあります。多くの場合、頭蓋骨が折れても元の位置にとどまっていれば、脳は損傷を受けません。
頭蓋骨骨折によって動脈や静脈が傷つき、脳組織周囲の空間に血液が漏れ出すこともあります。血液が脳と頭蓋骨の間に蓄積し、 頭蓋内血腫 頭蓋内血腫 頭蓋内血腫は、脳の内部、または脳と頭蓋骨の間に血液がたまった状態を指します。 頭部外傷によって脳の内部、または脳と頭蓋骨の間に血液がたまって生じます。 脳のどの領域が損傷を受けているかに応じて、しつこい頭痛、眠気、錯乱、記憶障害、脳の損傷部位と反対側の体の麻痺、発話や言語能力の障害などの症状が現れます。 頭蓋内血腫はCT検査やMRI検査によって発見されます。 血腫から血液を抜き取る手術が必要になる場合もあります。 さらに読む の原因となることがあります。
一部の骨折、特に頭蓋骨の後部や底部の骨折により、脳を覆っている髄膜が破れることがあります。頭蓋底は非常に厚いため、これが折れていれば、強い衝撃が加わった可能性があり、脳損傷の可能性が高いことを意味します。
折れた骨が皮膚を貫通している場合、そこから細菌が頭蓋内へ侵入して感染症を起こし、脳に重大な損傷を与えることがあります。
場合によっては、折れた頭蓋骨の断片が脳を圧迫して傷つけることもあります。このような骨折を陥没骨折といいます。頭蓋骨の陥没骨折では、脳が外気に露出して異物に触れることで、脳内に感染症が生じたり、膿瘍(内部に膿がたまった空洞)ができたりすることがあります。
乳児の頭蓋骨骨折
乳児に頭蓋骨骨折が生じると、脳を覆う髄膜が骨折部位から突出して袋状になって、その中に髄液がたまることがあり、これを進行性頭蓋骨骨折または軟膜嚢胞(leptomeningeal cyst)といいます。この袋は3~6週間かけて生じますが、この袋が頭蓋骨が骨折した最初の証拠になることもあります。
症状
次のような症状がみられるときは、頭蓋底の骨折が疑われます。
脳の表面を覆う髄膜の間を流れている透明の髄液が、鼻(鼻漏)や耳(耳漏)から漏れ出してくる。
鼓膜の奥に血がたまる。鼓膜が破れていれば耳から血が出る。
耳たぶの後ろ(バトル徴候)や眼の回り(パンダの目徴候[raccoon eyes])にあざ(皮下出血)が生じる。
血液が副鼻腔にたまっていれば、副鼻腔も骨折している可能性があります。
骨折により脳を損傷した場合、以下のような症状がみられることがあります。
持続または悪化する眠気と錯乱
繰り返す嘔吐
重度の頭痛
腕もしくは脚が動かない、または感覚がない
人または周囲の状況の認識が困難である
平衡感覚の消失
発話または視力の問題
協調運動の消失
診断
治療
ほとんどの骨折に対し、入院による観察
ときに異物を除去したり、頭蓋骨の破片を元に戻したりする手術
頭蓋骨が骨折していても脳に損傷がなければ、ほとんどの場合、入院による経過観察を行います。 けいれん発作が起こると、抗てんかん薬の投与が必要になります 抗てんかん薬 けいれん性疾患では、脳の電気的活動に周期的な異常が生じることで、一時的に脳の機能障害が引き起こされます。 多くの人では、けいれん発作が始まる直前に感覚の異常がみられます。 コントロールできないふるえや意識消失が起こる場合もありますが、単に動きが止まったり、何が起こっているか分からなくなったりするだけにとどまる場合もあります。... さらに読む 。頭蓋底の骨折や頭蓋骨陥没骨折を除き、ほとんどの頭蓋骨骨折では特別な治療は必要ありません。
頭蓋底骨折
頭蓋骨の底部に骨折があれば、入院します。髄液の漏出が止まるまでは安静にし、頭を高くしておく必要があります。鼻の近くにある副鼻腔も損傷していることが多いため、鼻をかむのは避けるべきです。副鼻腔が損傷している場合、鼻をかむと、鼻の空気が顔面や頭部の別の部位に広がることがあります。
髄膜の裂傷は、ほとんどの場合、発生から48時間以内、あるいは長くとも1週間以内に自然にふさがります。
髄液の漏出が持続する場合は、腰に細い注射針を挿入し、髄液を抜き取ることがあります。こうした処置を行っても漏出が続く場合は、手術によって漏れている部分をふさぎます。
頭蓋骨陥没骨折
頭蓋骨陥没骨折は、脳を外部にさらす可能性があるため、感染のリスクを高めます。そのため、医師は外から入り込んだ異物や壊死組織を取り除き、損傷した部位にできる限りの修復を施して、感染症や膿瘍形成を防ぎます。医師は頭蓋骨の断片は元の位置に戻し、傷口を縫い合わせます。
小児の頭蓋骨骨折
頭蓋骨骨折を起こし、以下に該当する小児は入院する必要があります。
症状が脳損傷を示唆する場合
短時間でも意識を失った場合
症状やCT検査の結果から、頭蓋底部の骨折が疑われる場合
乳児が骨折した場合
軟膜嚢胞は自然に治ることがあるため、特に治療せず、経過観察のみを行います。脳の圧迫や感染症などの問題が起こったり、こうした問題が発生するリスクが生じたりした場合には、医師は嚢胞にカテーテルを挿入し、外科的に液を排出します。その後、嚢胞を形成した髄膜を修復します。