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スポーツ関連脳しんとう

執筆者:

James E. Wilberger

, MD, Drexel University College of Medicine;


Gordon Mao

, MD, Allegheny Health Network

最終査読/改訂年月 2017年 11月
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スポーツ中に脳しんとうを起こした人は、脳しんとうの再発や恒久的な脳損傷といった深刻な転帰を迎えるリスクが高くなります。

脳しんとうとは、頭部に外傷を負った後に脳機能に一時的な変化がみられるにもかかわらず、CTやMRIなどの画像検査では脳損傷の徴候が認められないことを指します。

高速での衝突が生じるスポーツ(例えば、アメリカンフットボール、ラグビー、アイスホッケー、ラクロス)では、脳しんとうを起こすリスクが非常に高くなりますが、チアリーディングを含め、どのようなスポーツもある程度のリスクを伴います。体の接触をともなうスポーツの選手の約20%が、1シーズンに1度は脳しんとうを経験しています。スポーツ関連脳しんとうの年間推定件数は、20万件から380万件と幅があります。このように幅があるのは、運動選手が病院で評価を受けない場合、正確な数を把握することが難しいためです。

脳しんとうの実際の件数は以前に比べて増えているわけではないと考えられますが、認識される機会は増えています。脳しんとうを繰り返すと、深刻な転帰を迎える可能性があるということが周知され始めたためです。

脳しんとうの再発

自動車事故や転倒・転落といった他の原因とは異なり、スポーツ選手は常に脳しんとうのリスクにさらされています。そのため、再発する可能性も高くなります。選手が以前に起こした脳しんとうから完全に回復する前に別の頭部外傷を負った場合は、特に脳しんとうが起こりやすくなります。脳しんとうが回復してから競技を再開した場合でも、1度も脳しんとうを起こしたことのない選手に比べると、再度脳しんとうを起こすリスクが2~4倍になります。また、2回目以降は、1回目に脳しんとうになったときに受けた衝撃より弱い衝撃でも脳しんとうが起こります。

個々の脳しんとうは最終的には完全に回復するものの、脳しんとうを(一見軽いものでも)数回起こしたことのある人の約3%に、長期的な脳損傷が残ります。この損傷は慢性外傷性脳症と呼ばれ、始めにボクサーの間で報告されました(当時、パンチドランカーと呼ばれていました)。しかし、慢性外傷性脳症は、脳しんとうを数回起こしたことのある人であれば誰にでも起こりえます。慢性外傷性脳症の人では、CTまたはMRI検査で脳損傷の徴候が認められ、認知症のような症状がみられます。具体的には以下のような症状がみられます。

  • 記憶障害

  • 判断力や意思決定能力の低下

  • 人格の変化(怒りっぽくなる、暴力的になりやすくなるなど)

脳しんとうを複数回起こした著名なスポーツ選手の中には、引退後に自殺した人もおり、その原因には可能性として慢性外傷性脳症が関わっていると考えられています。

セカンドインパクト症候群

セカンドインパクト症候群は、まれではありますが深刻な脳しんとうの合併症です。この症候群では、運動選手が前の脳しんとうから完全に回復する前に2回目の脳しんとうを起こした後、脳が急速に膨張します。この症候群になった運動選手のほぼ半数が死亡します。

症状

脳しんとうを起こすと、意識を失うこともあれば失わないこともありますが、脳機能障害の症状が現れます。具体的には以下のような症状がみられます。

  • 錯乱:放心したようになり、敵味方の区別やスコアが分からなくなり、返答が遅くなる

  • 記憶障害:プレイやポジションを覚えておらず、けがの直前または直後の出来事を思い出せない

  • 視覚障害:複視

  • 光に対する過敏性

  • めまい、動きのぎこちなさ、平衡感覚障害

  • 頭痛

  • 吐き気と嘔吐

  • 嗅覚または味覚の消失

脳しんとう後症候群

脳しんとうの後、特定の症状が数週間から1年間続くことがあります。以下のような症状がみられます。

  • 頭痛

  • 短期記憶の問題

  • 集中力の低下

  • 疲労

  • 睡眠障害

  • 人格の変化(易怒性、気分変動など)

  • 光や音への過敏性

10代の患者では、脳しんとう後症候群の多くの症状、特に易怒性、疲労、集中力の低下などは青年期特有の問題として片付けられてしまうことがあります。

診断

  • 医師による評価

脳しんとうの症状があるスポーツ選手は、この種のけがの評価と治療に長けた医師の評価を受けるべきです。レベルの高い競技大会には、そのような医師が待機していることもありますが、そうでない場合は、他のスタッフが訓練を受けて、脳しんとうの見分け方、患者の評価の仕方、専門的な評価を受けさせるべきか否かを判断する方法を習っておくべきです。

SCAT2(スポーツ関連脳しんとう評価ツール2[Sports Concussion Assessment Tool 2])、SCAT3、SCAT5などの評価尺度は、コーチ、トレーナー、その他のスタッフが選手を評価する上で役立ちます。SCAT2SCAT3はインターネット上で無料で公開されていて、携帯機器へのダウンロードも可能です。SCAT5が最新版で、これもインターネット上で無料で公開されています。米国疾病予防管理センター(CDC)からは、競技スタッフが利用できるツールと訓練情報も提供されています(CDC「Heads UP」プログラム[CDC "Heads Up" programs])。

医師やその他のスタッフは、選手が競技を続けたいがために、脳しんとうによって生じた症状を否定したり控え目に言ったりすることがあるという事実を覚えておくべきです。

脳内または脳と頭蓋骨の間への血液の貯留(頭蓋内血腫)または打撲(脳挫傷)などの深刻な損傷が疑われる場合、CT検査などの画像検査が行われます。

一部のプログラムでは、競技に参加する前に、すべての選手への神経心理学的検査(特定の脳機能の検査)の実施を義務づけているものもあります。そうしておくことで、脳しんとうが疑われる場合、医師は選手を再度評価し、競技開始前に比べて脳機能が悪化しているかどうかを判定することができます。

治療

  • 安静

  • 頭痛に対してアセトアミノフェン

  • 症状がなくなるまでプレイへの復帰を控える

スポーツ関連脳しんとうの治療は、普通の人の脳しんとうの治療と同様です。安静にし、頭痛があれば必要に応じてアセトアミノフェンを服用します。学校および職場での活動、運転、飲酒、脳に対する過度の刺激(例えば、コンピュータの使用、テレビ鑑賞、コンピュータゲーム)は避けるべきです。

症状が悪化すれば、家族は選手を病院に連れて行くべきです。

知っていますか?

  • 選手は競技を続けたいがために、脳しんとうによって生じた症状を否定したり控え目に言ったりすることがあります。

競技への復帰

競技へ復帰するには、いくつかのステップを経る必要があります。 いったん脳しんとうの症状が消失すれば、軽い有酸素運動から開始して、各スポーツ特有のトレーニング、接触のないトレーニング、フルコンタクトのトレーニングと徐々にレベルを上げていき、最後に競技に出るという形で復帰するのが望まれます。まったく症状を伴わずにあるステップをやり遂げられるまで、次のステップに進むべきではありません。

どれだけ改善が速やかでも、無症状の状態が1週間続くまでは完全な競技に復帰するべきではありません。

重度の脳しんとうを起こした選手(例えば、5分以上の意識消失、受傷前または受傷後24時間以上の記憶がない)は、完全な競技に復帰するまで少なくとも1カ月は待つべきです。

1シーズンに複数回の脳しんとうを起こした選手は、競技参加を続けることのリスクを知っておく必要があります。患者(または幼い子どもであれば親)は、脳損傷の治療に長けた医師と、これらのリスクについてよく話し合っておくべきです。

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