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化学兵器

執筆者:

James M. Madsen

, MD, MPH, U.S. Army Medical Research Institute of Chemical Defense (USAMRICD)

最終査読/改訂年月 2017年 10月
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化学兵器は、戦時のために政府が開発し、以下のものが含まれます。

  • 有害物質(重篤な損傷または死亡を引き起こすことを意図する)

  • 無能力化剤(一時的で生命を脅かさない作用のみを引き起こすことを意図する)

  • 焼夷剤(光と炎を放つことを意図する)

工業用などに製造される有害工業化学物質にも、多数の被害者を発生させる能力があります。一部の化学物質(塩素、ホスゲン、シアン化物など)は工業用にも化学兵器にも使用されます。

有害物質は、大きく分けて以下の4つに分類されます。

  • 窒息剤

  • 全身窒息剤(血液剤)

  • びらん剤

  • 神経剤

無能力化剤は、以下のように分類されます。

  • 抗コリン剤

  • エアロゾルまたは溶液として散布される暴徒鎮圧剤(しばしば誤って催涙ガスと呼ばれる)

オピオイド(特に効力のあるフェンタニル誘導体[2002年にロシアがチェチェンテロリストに対して使用したとされるものなど])は無能力化剤とみなすことができます。深刻な損傷を引き起こしたり、死に至らしめたりすることを目的として使用されることは通常ないものの、集団殺傷兵器として用いられた場合には、呼吸を止めることでたやすく死に至らしめることができます。多数の被害者を出すことを目的とする場合には、エアロゾル化されたオピオイドが使用される可能性が最も高くなります。フェンタニル誘導体の作用を打ち消すために、オピオイドのレスキュー薬であるナロキソンを通常よりも多い用量で投与する必要があるかもしれません。

無能力化剤は、大量の場合は重篤な損傷または死亡を引き起こす可能性があります。

焼夷剤(光と炎を放つように設計されている)も、多数の被害者に熱傷を引き起こすことがあります。

窒息剤

窒息剤は、肺と気道に作用します。 窒息剤には、塩素、ホスゲン、ジホスゲン、クロルピクリンなど従来の「窒息」剤、サルファマスタード、ルイサイト、ホスゲンオキシムなどのびらん剤(皮膚にも作用する)、ならびに軍事用の発煙剤、燃焼生成物、および多くの有害工業化学物質が含まれます。これらの化合物のほとんどは、気体か揮発性の高い液体です。

窒息剤は、気道のどの部分が主に影響を受けるかによって以下の2種類に分けられます。

  • タイプ1:太い気道に作用するもの

  • タイプ2:細い気道や肺の小さな袋(肺胞)に作用するもの

混合作用物質は、太い気道、細い気道、肺胞に作用します。

タイプ1には、アンモニア、塩化水素、フッ化水素、暴徒鎮圧剤、大半の煙、二酸化硫黄、サルファマスタードなどがあります。

タイプ2には、クロルピクリン、イソシアン酸メチル、ホスゲン、四塩化炭素などがあります。

混合作用物質は、少量から中程度の量で太い気道と肺胞の両方に作用します。 これには塩素、HC(ヘキサクロロエタン + 酸化亜鉛)煙、ルイサイトなどがあります。

症状

タイプ1への最初の曝露時には、くしゃみ、せき、気管のれん縮(気道をふさぐことがある)が起こります 眼の刺激も起こることがあります。気管のれん縮がある患者では、声がれや呼気性喘鳴がみられ、息を吸うときにあえぐような音がします。この音は吸気性喘鳴と呼ばれます。ただし、大量のタイプ1に曝露した場合には、胸の圧迫感や息切れ(タイプ2の作用)も起こることがあります。

タイプ2に曝露すると、最初に多少のせきと刺激感が生じるものの(これは後で消失します)、それを除けば通常は特に問題を感じません。しかし、数時間後には肺に液体がたまることによる胸の圧迫感や息切れが生じます(肺水腫)。曝露から4時間以内に息切れが生じた場合は、患者が致死的な量に曝露した可能性があることを示す徴候です。

診断

  • 医師による評価

  • 胸部X線検査

  • 悪化していないかを確認するための頻回の評価

  • ときに気管支鏡検査

化学兵器への曝露は、患者の症状に基づいて診断されます。医師や最初の対応者は、患者の呼吸音を聴きます。初期に胸部雑音と顕著な症状がある患者は、タイプ1に曝露した可能性が高いと考えられます。胸部が比較的静かで息切れが遅れて発生する場合は、おそらくタイプ2に曝露しています。

胸部X線検査では、初期には正常のように見えても後に特徴的な異常が生じることがあります。ときに医師が、気道の損傷の程度を観察するために、カメラが付いた柔軟なチューブを気道に入れることがあります(気管支鏡検査)。気管支鏡検査によって、タイプ1による損傷を確定することができますが、タイプ2による早期の損傷は見落とされることがあります。

臨床検査は初期の診断の際には役に立ちませんが、患者の状態が悪化しているかどうかの判断に役立てるために、通常は血液の酸素レベルをモニタリングします。

治療

  • 具体的な症状に対する治療

  • 酸素(フェイスマスクや呼吸用のチューブを介して投与)

  • しばしば、集中治療室への収容

  • タイプ1に対しては、気管支拡張薬、ときに吸入コルチコステロイド

  • タイプ2に対しては、経口コルチコステロイド、肺から液体を除去するための治療

混合作用が一般的なため、医師は具体的な物質ではなく患者の症状に基づいて治療を行います。蒸気または気体に曝露した患者には通常は除染が必要で、それらに対する特定の解毒剤はありません。

症状が主に太い気道に生じる患者(タイプ1の作用)に対しては、フェイスマスクで加温加湿した100%酸素が投与されます。気管支鏡を使って太い気道から壊死組織片などを除去しなければならないことがあります。患者の気管に呼吸用のチューブを挿入する必要があったり、患者に気道を広げる種類の吸入薬である気管支拡張薬(喘息に対して用いられるものと同様の薬)が投与されたりすることがあります。しばしば肺の損傷を伴う炎症の軽減を助けるために、吸入コルチコステロイドが投与されることがあります。

タイプ2に曝露した可能性のある患者は、集中治療室に入院し酸素が投与されます。酸素は、密着させた特殊なフェイスマスクや気管に留置した呼吸用のチューブを介して圧力をかけて投与されることがあります。肺から液体を除去するための薬が投与されるほか、疑われる損傷の種類に応じて、経口コルチコステロイドが投与されることもあります。

全身窒息剤

全身窒息剤には、以下のものがあります。

  • シアン化物

  • 硫化水素

全身窒息剤は、血液を介して全身に分布するため、血液剤とも呼ばれています。しかし、血球だけではなく全身の細胞が損傷を受けます。

シアン化水素または塩化シアンは、室温では非常に揮発性の高い液体か気体になります。家庭や工業でみられる多くの化学物質の燃焼によりシアン化物が生成され、産業火災や一般家庭での火災による煙を吸入した患者でもシアン中毒がみられることがあります。シアン化物には特徴的な苦扁桃(くへんとう)臭がありますが、約半数の人にはそれを感じ取る能力がありません。

硫化水素は室温では常に気体であるため、通常は吸入することで曝露します。硫化水素は、硫黄を含有する家庭用の化学製品と酸を混ぜると発生します。残留ガスが救助者に作用して、多数の被害者が増えることがあります。硫化水素は、堆肥が分解される際にも生成されます。大きな農場の堆肥だめには、しばしば致死量の硫化水素ガスが含まれています。硫化水素には特徴的な腐った卵臭がありますが、高濃度では患者がその臭いを感じ取る能力が損なわれます。

症状

シアン化物は最初にあえぎ、心拍数上昇、および高血圧を引き起こします。わずか30秒でけいれん発作と意識消失が生じることがあります。開口障害、しかめ面、首の弯曲など、破傷風に類似した徴候を呈することもあります。皮膚が紅潮しているように見えることがありますが、患者の約半数では皮膚が青みがかります。

大量の硫化水素に曝露した場合は、けいれん発作と意識消失もみられることがあります。心臓に損傷が生じることがあります。少量の硫化水素に持続的に曝露すると、眼や鼻とのどの粘膜が刺激され、頭痛、筋力低下、協調障害、吐き気、嘔吐、胸部圧迫感、過換気が生じることがあります。

診断

  • 医師による評価

重症患者は直ちに治療が必要なため、医師は患者の症状と病歴に基づいて診断します。硫化水素に曝露すると、患者のもっている硬貨に緑色の変色か黒ずみがみられることがあり、それにより医師が硫化水素への曝露の疑いを強めることがあります。一般的に指示される血液検査から、シアン化水素または硫化水素への曝露が疑われることがありますが、特別な検査でしか確定できません。

治療

  • 患者の呼吸の確保

  • 皮膚の除染

  • 入手可能であれば解毒剤の投与

  • 100%酸素の投与

医師はまず、患者の気道、呼吸、血液循環に注意を払います。皮膚は、石けんの使用にかかわらず水で除染できます。

シアン化物解毒剤(亜硝酸アミル、亜硝酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、ヒドロキソコバラミンなど)が入手可能です。解毒剤が入手できない場合は、100%酸素が投与されます。無防備な口対口(マウスツーマウス法)による蘇生では、救助者が患者の息に含まれるシアン化物に曝露する可能性があります。

硫化水素に曝露した患者には通常、100%酸素が投与されます。グルコースおよび重炭酸塩の静脈内投与が有用である可能性があります。

びらん剤

びらん剤には、以下のものがあります。

  • マスタード類、サルファマスタードやナイトロジェンマスタードなど

  • ルイサイト

  • ホスゲンオキシム

びらん剤は皮膚に水疱を生じさせ、肺や気道にも損傷を与えます。マスタード類は、骨髄が感染に抵抗する細胞(白血球)を産生する能力にも影響を与え、ときには長期にわたって皮膚または気道のがんを生じさせます。

サルファマスタードは、カラシ、ニンニク、セイヨウワサビ、アスファルト様の匂いなど、様々に表現されています。ルイサイトにはゼラニウム様の匂いがあることがあり、ホスゲンオキシムは単に刺激性と表現されています。このような匂いの知覚は非常に主観的であるため、これらの化合物の存在について信頼できる指標とはなりません。

症状

マスタード類は、強い皮膚の痛みと赤みを引き起こします。曝露から数時間後(ときに36時間かかることもある)に、水疱ができます。サルファマスタードによってできた水疱は、損傷を受けていない領域の周囲に連なる真珠に似ていることがあります。ナイトロジェンマスタードによってできた水疱では、このパターンを示す可能性は低くなります。水疱は大きくなり液体で満たされることがあります。眼に痛みを伴う炎症が生じることがあり、角膜が混濁することがあります。患者には、せき、声がれ、喘鳴、あえぎ、気管のけいれんがみられます。胸部圧迫感や息切れがみられることがあります。吐き気が生じることもあります。

ルイサイトは、曝露した皮膚に約1分以内に痛みを生じます。皮膚の発赤は15~30分以内に顕著なものになることが多く、数時間後に水疱ができます。水疱は通常、赤くなった領域の中心に形成され、外側へと広がっていきます。水疱が形成されると痛みがおさまり始めます。吸入すると直後に気道が刺激され、それによってせき、くしゃみ、喘鳴のほか、小型血管から肺胞(肺にある小さな空気の袋)内に液体成分が漏れだすことによる息切れが生じます。数時間後に、胸部圧迫感や息切れが生じることがあります。

ホスゲンオキシムの皮膚接触は、5~20秒以内に刺されるような(「チクチクする」)強い痛みと白化を引き起こします。患部の皮膚はその後灰色に変化し、境目は赤くなります。曝露から30分以内に、膨疹と呼ばれる青白いわずかに隆起した腫れ(じんま疹と類似)が生じます。次の7日間に患部の皮膚が暗褐色になり、その後皮膚とその下にある組織が壊死すると黒色になります。手術で切除しなければ、膨疹は6カ月以上持続することがあります。

診断

  • 医師による評価

  • ときに特殊な臨床検査

曝露直後に起こる痛みがある場合、関与した化学物質はルイサイトまたはホスゲンオキシムであることが疑われます。痛みが遅れて(ときに曝露から1日後)発症すれば、サルファマスタードへの曝露が疑われます。特別な検査室でしかできない検査によって、診断を確定できます。

マスタード類に曝露した患者は、白血球の変化をモニタリングするために、2週間定期的に血液検査を受ける必要があります。

治療

  • 眼と皮膚の除染

  • 水疱の治療

  • ときに酸素吸入

最初の対応者が、患者の眼と皮膚の除染を速やかに行うよう試みます。特別に調製された市販の外用の皮膚除染製品(Reactive Skin Decontamination Lotion、RSDL®)が用いられます。石けんと水では、サルファマスタードを除去するよりもむしろ塗りつけてしまう傾向がありますが、多数の被害者の除染を速やかに行うための選択肢が他に存在しない場合には、石けんと水が用いられる場合もあります。高流量で低圧の水(例えば水やり用のホースからの水)も、眼や皮膚の除染に使用できます。

医師は水疱を熱や火による通常の熱傷と同じように治療し、静脈から輸液を投与し、滅菌包帯で熱傷を覆います。感染症を予防するために、綿密な衛生管理が重要です。まぶたが癒着するのを防ぐために、抗菌薬の軟膏がまぶたの縁に塗布されます。

呼吸困難のある患者には、酸素補給が必要です。吐き気はアトロピンなどの薬で治療できます。

神経剤

神経剤には以下の2種類があります。

  • Gシリーズ剤

  • Vシリーズ剤

Gシリーズ剤またはG剤には、GA(タブン)、GB(サリン)、GD(ソマン)、GF(シクロサリン)などがあり、第二次世界大戦前および戦中にナチスドイツにより開発されました。Vシリーズ剤にはVXなどがあります。Vシリーズ剤は、第二次世界大戦後に合成されました。神経剤は有機リン系殺虫剤と同様のものですが、はるかに強力です。

室温では、G剤は蒸発しやすい水っぽい液体です。G剤は、皮膚接触した場合も吸入した場合も危険です。VXはモーターオイル程度の粘度の液体で、比較的ゆっくりと蒸発します。これらはいずれも目立った匂いがなく、皮膚を刺激することもありません。

神経剤は、神経細胞が別の神経細胞や神経に信号を送るために利用している化学物質(神経伝達物質)の一種を分解する酵素の働きを阻害することで作用します。信号を伝える化学物質のアセチルコリンが正常に分解されないため、アセチルコリンが蓄積して全身の神経、筋肉、分泌腺(涙腺、唾液腺、汗腺など)を過剰に刺激します。刺激された筋肉は、最初ピクピクと動き不随意に収縮しますが、後になると疲労し筋力が低下します。

神経剤への曝露によって、不安、抑うつ、易怒性、記憶障害などの、長期にわたる神経学的および神経行動学的問題が生じます。

症状

神経剤に曝露すると、物質、曝露の経路、および量に応じて様々な症状が生じます。

蒸気は速やかに作用します。蒸気を顔面に曝露すると、数秒以内に瞳孔収縮、鼻水、胸部圧迫感が現れます。蒸気を吸入した場合、患者が数秒以内に倒れることがあります。

液体の神経剤はよりゆっくりと作用します。皮膚が曝露すると、まず曝露した部位がピクピクと動き発汗が生じます。全身に及ぶ作用が遅れて現れ、この遅れは非常に小さな飛沫に曝露してから18時間に及ぶこともあります。致死量でさえ通常は症状や徴候が現れるのに最大で20~30分かかり、症状や徴候としては、前兆なしに突然倒れることや、けいれん発作が起こることなどがあります。

神経剤は脳の神経細胞を刺激するため、患者は興奮状態や錯乱状態になり、けいれん発作が起こったり意識を失ったりすることがあります。脳以外の神経細胞が刺激されることで、吐き気や嘔吐が生じ、涙、鼻の分泌物、よだれ、肺の分泌物、喘鳴、消化分泌液(下痢や嘔吐など)、発汗が過剰になります。筋肉細胞が刺激されることで、けいれんとその後の筋力低下および麻痺が生じます。通常は、呼吸筋の筋力低下と脳内の呼吸中枢の破壊が死亡の原因です。

診断

  • 医師による評価

神経剤への曝露は、患者の症状と曝露歴に基づいて診断されます。特別な臨床検査によって曝露を確定できます。

治療

  • アトロピンおよびプラリドキシムの注射

神経剤への曝露に対しては、アトロピンとプラリドキシムという2つの薬が投与されることがあります。アトロピンは、曝露の結果として蓄積する過剰な量の神経伝達物質(アセチルコリン)の作用を阻害します。そのため、アトロピンは抗コリン薬と呼ばれます。プラリドキシムは、アセチルコリンを分解する酵素の再活性化を助けます。

病院に到着する前に、救急隊員はこれら両方の薬剤が入った自己注射器を用いることで、例えば太ももなどの大きな筋肉に薬剤を注射することができます。その後は静脈内に投与されます。

皮膚の除染はできるだけ早く、特別に調製された市販の外用の皮膚除染製品(Reactive Skin Decontamination Lotion、RSDL®)、家庭用の漂白剤の希釈液、または石けんと水を用いて行います。最初の対応者は汚染されている可能性のある傷をすべて観察し、破片や壊死組織片などをすべて除去し、傷を真水か食塩水で洗浄します。それでも、すでに皮膚を浸透し始めた神経剤が除染によって完全に除去されないことがあるため、重度の症状が発生したり死亡したりすることがあります。

抗コリン剤

抗コリン薬は神経剤による中毒の治療に用いられますが、無能力化剤としても使用できます。無能力化剤は、重篤な損傷や死亡ではなく、むしろ軍人に見当識障害を引き起こし、その任務を遂行できないようにすることを意図しています。そうしたものの1つに、BZと呼ばれるものがあります。

BZは、環境中に3~4週間残留できる固体です。エアロゾル化したBZが吸入されると大量の死傷者が生じる可能性が高くなりますが、この化合物は溶けて環境中のいろいろな物の表面にとどまり、そこから皮膚を浸透して吸収されることもあります。

症状

BZに曝露した患者では、口腔乾燥、皮膚の乾燥、散瞳(視野のかすみを引き起こす)がみられるほか、通常は心拍が速くなります。体温が危険なほど高くなることもあります(高体温)。嗜眠状態になり幻覚(何かが見えたり聞こえたりする)が生じることがあります。典型的には、幻覚は明確で容易に表現できるものです(知り合いの声、架空のテレビ番組、タバコの分け合いの想像、奇妙な形の幻など)。話し方が不明瞭になることがあるほか、しばしば自分の皮膚や衣服をつまむようになります。昏迷や昏睡が数時間から数日間続くことがありますが、徐々に回復します。

診断

  • 医師による評価

BZへの曝露は、臨床検査では検出できません。抗コリン作用の副作用がある薬( 抗コリン作用:どんな作用か?を参照)を使用したことがなく、症状が生じた患者で、医師は曝露を疑います。

治療

  • 上昇した体温を下げる

  • 興奮や幻覚に対して、フィゾスチグミンの投与

BZなどの抗コリン剤に曝露した患者は通常は静かですが、破壊的になり拘束が必要になることがあります。体温が上昇している患者には、冷却を行う必要があります( 熱射病 : 治療を参照)。破壊的な患者または幻覚による顕著な同様がみられる患者には、フィゾスチグミンが投与されます。

焼夷剤およびフッ化水素(HF)

軍事用の焼夷剤は、戦場を照らすこと、出火させること、地形および人員を見えなくするために煙を出すことを意図して設計されています。物質には、ゲル化ガソリン(ナパーム)、テルミット、白リン、マグネシウムなどがあります。これらの化合物にはどれも、多数の被害者を発生させる能力があります。

ナパームはゼリー状の粘度の物質です。他の焼夷剤は通常、粉末状の固体として兵器にされます。多くの焼夷剤が、爆発する発射物や爆弾に用いられます。白リンは空気にさらされている限り皮膚や衣服上で燃え続ける可能性があります。マグネシウムは水中でも燃焼できるため、組織内でも燃え続けます。

フッ化水素酸は、工業などの商業目的で利用されますが、しばしば塩酸(水泳プールで使用される酸)と混同されます。そのため、フッ化水素酸はHFと呼ばれます。HFは、室温では液体または蒸気として存在できます。最も多い曝露経路は、皮膚、眼、肺を通るものです。HFは皮膚に深く浸透します。HFによって、重度の熱傷のほか、体の化学物質(電解質)に深刻な不均衡がもたらされ、これによってときに不整脈が生じたり、死に至ることもあります。

症状

焼夷剤による熱傷は、熱や火によって生じる熱傷と同様です。

HFに曝露しても、痛みや目に見える熱傷がすぐには生じないことがあります。痛みは1時間以内に現れることもありますが、一般的には2~3時間経過しないと起こりません。しかし、痛みが起これば、深く強烈な痛みであることがよくあります。患部の皮膚が徐々に赤くなりますが、強い痛みから推測されるほど重度には見えません。

診断

  • 医師による評価

焼夷剤による熱傷は、最初の対応者にも容易に分かります。しかし、HF(特に低濃度のもの)による熱傷は症状が出るまでに時間がかかるため、医療従事者は患者の深部組織や臓器の損傷がないか注意を払い続けます。白リンによる熱傷は、空気に触れると光や煙を発することがあります。

治療

  • 皮膚の除染

最初の対応者は、白リンにさらされた患部の皮膚を水で洗い流すか、または空気に触れないように覆います。白リンの粒子を除去し(皮膚にしっかりと固着していることが多い)、水の中に入れます。煙のすじが小さな粒子の位置を示す優れた指標となることがあります。皮膚で燃焼または発煙しているマグネシウムの粒子は、できるだけ迅速に除去します。粒子が除去できるようになるまで、油で傷を覆っておくことができます。

HFに曝露した場合、速やかな除染が必要です。熱傷を大量の水で洗浄します。しかし、HFは速やかに皮膚に浸透するため、徹底的な除染を行った後でさえ重大な問題が起こる可能性があります。医師は通常、曝露部位にカルシウムを含むペーストを塗布するか、カルシウムを注射します。大量に曝露した患者は入院し、心臓モニタリングと追加の治療を受けます。

暴徒鎮圧剤

暴徒鎮圧剤は、最初は群衆の制御のために開発された化合物ですが、軍事衝突でも使用されています。催涙ガスという言葉がときに使われますが、暴徒鎮圧剤は気体ではないためこの言葉は正しくありません。暴徒鎮圧剤は気体ではなく、溶かして液体またはエアロゾルとして散布することができます(小さな粒子が爆発的に、または煙として放出される)。重篤な損傷または死亡ではなく無能力化が意図されていますが、死亡が発生しています。これらの物質の軍事用の種類として、クロロアセトフェノン(CN、Mace®としても販売されている)、クロロベンジリデンマロノニトリル(CS)、ジベンゾオキサゼピン(CR)、ジフェニルアミンクロロアルシン(アダムサイトまたはDM、いわゆる嘔吐剤)などがあります。オレオレジンカプシカム(OC、唐辛子スプレー)は、より最近開発された暴徒鎮圧剤で、主に警察用および個人の護身用に使用されています。

症状

ほとんどの暴徒鎮圧剤は、ほぼ即座に眼、粘膜、皮膚に刺激と痛みを引き起こします。物質を吸入した場合、せき、くしゃみ、喘鳴、ときに息切れが生じます。

一般的には30分以内にその作用から回復しますが、皮膚に残存する物質によって水疱が生じることがあります。反応性気道機能不全症候群(reactive airways dysfunction syndrome)という永久的な肺の合併症が生じることがあり、これは喘息で生じるものと同様の息切れと喘鳴の発作を引き起こします。

診断

  • 医師による評価

  • ときに胸部X線検査

患者の症状と曝露歴に基づいて診断されます。息切れのある患者には胸部X線検査が必要である場合がありますが、その他の検査は必要ありません。

治療

  • 曝露を避ける

  • 侵された部位の除染

曝露の最初の徴候またはその可能性がある徴候がみられた時点で、可能であればマスクを着用します。可能であれば、影響を受けた区域から人を退去させます。

最初の対応者は、患部をブラシで払ったり、洗浄したり、すすいだりして物質を除去します。水は、特定の暴徒鎮圧剤(唐辛子スプレーなど)で生じた痛みを悪化させることがありますが、依然として効果的です。唐辛子スプレーに対しては、おそらく石けんを含んだ液体や油の方がより効果的です。眼の除染は、無菌の真水か食塩水で大量に洗浄することで行われます。

暴徒鎮圧剤によるほとんどの作用は短時間のもので、ほとんどの患者は病院に行く必要はありません。症状がより重度の患者でさえ、ほとんどの場合必要となるのは病院でのほんの数時間の経過観察です。

本稿で述べられている見解は著者の見解であり、米国陸軍省、米国防総省、または米国の公式の方針を反映したものではありません。

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