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兵器としての毒素

執筆者:

James M. Madsen

, MD, MPH, U.S. Army Medical Research Institute of Chemical Defense (USAMRICD)

最終査読/改訂年月 2017年 10月
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「毒素」は、しばしばあらゆる毒を指して漠然と使用されますが、厳密には生物によって作り出される有毒な化学物質のことだけを指します(ただし、現在では一部の毒素は人工的に合成することできます)。集団殺傷兵器として使用される毒素には、その毒素を作り出した生物が感染する力をもっていたとしても、感染する力は引き継がれないため、人間から人間に感染することはありません。したがって、毒素は生物剤というよりも化学物質であり、感染ではなく中毒を引き起こします。

数百種類の毒素が知られています。しかし、ほとんどの毒素は大量に生成することが難しく、多数の人に影響を与えられるほど十分に広く散布するのは困難です。そのため、ほとんどの毒素は大量の被害者を出すよりも暗殺に適しています。米国疾病予防管理センター(CDC)は、以下の4つの毒素のみを脅威が大きい物質とみなしています。

  • ボツリヌス毒素

  • ウェルシュ菌 Clostridium perfringensのイプシロン毒素

  • リシン毒素

  • ブドウ球菌エンテロトキシンB

これらのうち、ボツリヌス毒素のみが最も優先度の高い物質に分類されています。ウェルシュ菌 C. perfringensのイプシロン毒素は、1980年代にイラクで開発されたとされる物質として主に歴史的な関心を集めています。

ボツリヌス毒素

ボツリヌス毒素またはボツリヌス神経毒素は、ボツリヌス菌 Clostridium botulinumが産生する既知の7種の神経毒素のいずれかを指します。食餌性ボツリヌス症創傷性ボツリヌス症、および乳児ボツリヌス症については別の箇所に記載されています。ボツリヌス神経毒素は、食品または水の広範な汚染やエアロゾルの吸入によって多数の被害者が出る可能性があります。

ボツリヌス神経毒素は、神経細胞が別の神経細胞や神経に信号を送るために利用している化学物質(神経伝達物質)の一種の働きを阻害します。この特定の化学物質であるアセチルコリンが適切に機能しないため、患者には筋力低下や麻痺が生じます。麻痺は一般的に、ボツリヌス神経毒素に曝露してから約12~36時間後(範囲は2時間から8日)に始まり、身体の一番上から下へと広がっていきます。毒素は脳には入らないため、思考には影響がありません。

医師は静脈から抗毒素を投与します。抗毒素は症状と徴候が現れるにつれて次第に有効性が低くなります。

リシンおよびアブリン

リシンはトウゴマの実に由来し、アブリンはトウアズキに由来します( トウゴマとトウアズキの実)。リシンは暗殺を試みて注射されたことがありますが、多数の被害者が出た場合はおそらくエアロゾル化した毒素の吸入によります。

リシン中毒およびアブリン中毒の症状は、曝露の経路によって異なります。吸入曝露から4~8時間以内に、せき、呼吸窮迫、発熱が生じます。次の12~24時間にわたって多くの臓器が進行性に影響を受け、呼吸不全に至り、しばしば死に至ります。特異的な解毒剤または抗毒素はなく、治療の焦点は患者の呼吸を補助することに置かれます。

ブドウ球菌エンテロトキシンB

ブドウ球菌エンテロトキシンBは、黄色ブドウ球菌 Staphylococcus aureusという細菌が産生する7つのエンテロトキシン(腸で作用する毒素)の1つです。 ブドウ球菌エンテロトキシンBは、経口摂取するとブドウ球菌食中毒の原因になります。多数の被害者は故意による食品への混入によって生じる可能性がありますが、エアロゾル化した毒素の吸入でも生じます。

症状は一般的に、経口摂取の1~12時間後、吸入の2~12時間後(範囲は1.5~24時間)に起こります。発熱、悪寒、頭痛、筋肉痛という初期のインフルエンザ様症状の後、続いて起こる症状は曝露の経路によって決まります。経口摂取の場合は吐き気、嘔吐、下痢が1~2日生じます。吸入の場合はせき、胸の痛み、しばしば鼻の刺激と鼻づまりが生じます。エアロゾルが眼に触れることで眼の炎症(結膜炎)が生じることがあります。吸入によってまれに死に至る可能性があります。生存者では、発熱が最長で5日間、せきが4週間持続することがあります。診断の確定には特別な臨床検査が役立つことがあります。医師は患者の症状緩和を治療の目的とします。

本稿で述べられている見解は著者の見解であり、米国陸軍省、米国防総省、または米国の公式の方針を反映したものではありません。

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