通常は、膝が大きな力で押されたり正常な可動域を越えて曲がったりしたときに、膝関節が脱臼します。
膝の位置が明らかにずれていて、必ず痛みと腫れを伴い、患者は歩くことができません。
通常、医師は関節の診察により膝の脱臼を診断することができますが、診断を確定するために、複数の角度からX線検査を行います。
血流が阻害されている場合はすぐに手術を行う必要があるため、膝の脱臼に伴うことがある動脈の損傷がないか確認しなければなりません。
患者が処置に耐えられるよう薬を投与した後、医師が整復によって関節の位置を元に戻し副子で固定しますが、通常は後で手術により膝を修復する必要があります。
(脱臼の概要 脱臼の概要 脱臼とは、関節を形成している骨が完全に離れることです。亜脱臼では、関節の骨が部分的にずれています。多くの場合、脱臼した関節は、医師が元の位置に戻す(整復する)まで脱臼したままですが、ときに自然に元の位置に戻ることがあります。 関節に起こる損傷は、ほとんどが外傷や酷使によるものです。... さらに読む も参照のこと。)
膝の脱臼(膝関節脱臼)は 膝の皿(膝蓋骨)の脱臼 膝の皿の脱臼 膝の皿(膝蓋骨[しつがいこつ])の脱臼は、膝の皿とそれを本来の位置に保持する靱帯が横方向にずれ、膝の外側に動いたときに発生します。 人が突然方向を変えようとすると、膝蓋骨が本来の位置から外れることがあり、その多くは膝の異常を抱える青年期の女子に起こります。 膝蓋骨が本来の位置からずれて見え、膝蓋骨の下に痛みが生じて膝を伸ばすことができなくなります。 医師は膝を診察して、膝蓋骨の脱臼を診断することができます。... さらに読む とは異なり、それよりもはるかに重篤なけがです。
膝の脱臼は、脚の膝より下の部分(下腿)が膝関節の可動域を越えて前方に押されたときに発生することがあります(膝の過伸展)。このような場合には、すねの骨が太ももの骨の前に押し出されます。すねの骨が、太ももの骨の後ろや左右に押し出されることもあります。
膝の脱臼はほとんどが大きな力が加わって生じ、スピードを出した車の事故などで起こります。しかし、穴に足をとられるなどの少しの衝撃でも、同時に膝関節をひねっていると、膝が脱臼することがあります。また、患者が肥満である場合、地面に倒れただけで膝の脱臼が起こることがあります。
膝の脱臼は、必ず膝関節を支持する構造(靱帯や腱など)に損傷を与えて関節を不安定にし、ときにその状態が永続します。
動脈と神経もよく損傷します。動脈が損傷すると、下腿への血液供給が遮断され、組織が壊死することがあります。この問題の特定と治療を行わずにいると、脚の切断が必要な事態に陥ることがあります。
症状
通常は、膝の位置が明らかにずれています。膝に痛みと腫れがあり、患者は歩くことができません。
医師の診察を受ける前に、膝が自然に元の位置に戻ることがありますが、それでも膝は腫れて不安定なままです。
下腿がしびれ、青白く見えることがあります。これらの症状がみられるときは、動脈が損傷して血液供給が途絶えているか、神経が損傷している可能性があります。
診断
X線検査
身体診察
動脈と神経の評価、通常はCT血管造影検査による
膝が脱臼したのではないかと感じたら、すぐに救急外来を受診してください。
通常、医師は膝関節を診察して、膝の脱臼を特定することができます。しかし、複数の角度からX線検査を行います。膝が自然に元の位置に戻った場合を除いて、X線検査で診断を確定することができます。X線検査では骨折も特定できます。
動脈が損傷しているかどうかを判定するために、医師は下腿の脈を確認します。通常、この確認は一定期間に数回行います。さらに、脱臼がある脚の血圧と腕の血圧を比較することもあります。しかし、膝の脱臼後に動脈の損傷を確認する最良の方法は CT血管造影検査 CT血管造影 CT検査(以前はCAT検査とよばれていました)では、X線源とX線検出器が患者の周りを回転します。最近の装置では、X線検出器は4~64列あるいはそれ以上配置されていて、それらが体を通過したX線を記録します。検出器によって記録されたデータは、患者の全周の様々な角度からX線により計測されたものであり、直接見ることはできませんが、検出器からコンピュータに送信され、コンピュータが体の2次元の断面のような画像(スライス画像)に変換します。(CTとは... さらに読む です。
組織に十分な血液が供給されていないことを疑わせる症状や所見がある場合、医師は損傷した動脈の修復について外科医に相談します。下腿の組織に酸素が届かない状態が8時間を超えて続けば、切断が必要になる可能性が大きく高まるため、損傷した動脈をすぐに特定することは極めて重要です。
動脈が損傷していなければ、医師が膝関節をやさしく動かして、靱帯のけがの重症度を判定します。
さらに神経の損傷の有無も確認します。例えば、患者に足を上げ下げし、内側と外側に回してみるよう指示したり、しびれがないか検査を行ったりします。
治療
関節を元に戻す処置
副子
ときに手術
医師は関節を元に戻すためにすぐに整復を行います(非観血的整復)。整復を行う前に、患者に鎮静薬と鎮痛薬を投与しますが、患者の意識は保たれます。整復後、副子で膝を固定します。
動脈が損傷している場合、医師は血管の修復を専門とする外科医に相談し、すぐに動脈を外科的に修復します。動脈に損傷がない場合、通常は腫れが引いてから膝の損傷した靱帯を修復する手術を行います。
膝が非常に不安定な場合は、創外固定器を用いることがあります。この器具は脚の外部に取り付ける支柱のフレームで、ステンレス製のピン(釘)を皮膚から骨に挿入して固定します。
関節が元の位置に戻ったことを確認するために、通常はX線検査を行います。