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脊椎および脊髄の損傷

執筆者:

James E. Wilberger

, MD, Drexel University College of Medicine;


Gordon Mao

, MD, Allegheny Health Network

最終査読/改訂年月 2017年 11月
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本ページのリソース
  • 脊髄損傷のほとんどは自動車事故、転倒や転落、暴行、スポーツ外傷が原因です。

  • 症状は感覚の消失、筋力の消失や、腸、膀胱、性機能の喪失などで、これらの症状は一時的なことも永久的なこともあります。

  • 損傷を特定するには、MRI検査(軟部組織、脊髄、靱帯の損傷を評価するため)、CT検査(骨の損傷を評価するため)、またはその両方を用いるのが最善の方法です。

  • 治療には、脊椎の固定、症状を緩和する薬剤、ときに手術があり、また普通はリハビリテーションが行われます。

脊椎は24個の椎骨(脊柱の骨)と尾骨(仙骨)で構成されます。 椎骨は体重のほとんどを支えているため、大きな負担がかかっています。それぞれの椎骨の間には軟骨の椎間板が挟まっていて、衝撃を和らげ、骨を保護する役割を果たしています。脊髄は傷つきやすい長い管状の構造物で、脳幹の下端から脊椎(脊柱)の一番下近くまで続いています。脊髄にある神経は、脳と他の部位との間でやり取りされるメッセージを伝達します。(脊髄も参照のこと。)

けがにより、脊髄や、椎骨の間から出ている脊髄神経根(脊髄神経の短い枝)に影響が及ぶことがあります。脊髄から下方に伸びている神経根の束(馬尾)も、損傷を受けることがあります。脊髄が損傷すると、以下のいずれかのメカニズムにより、神経が傷ついたり機能障害に陥ったりします。

  • 打撲(転倒・転落や衝突など)により揺さぶられる

  • 骨折、腫れ、血腫(血液の貯留)により圧迫される

  • 部分的または完全に断裂する

脊髄は脊椎によって囲まれ、守られているため、脊椎やその結合組織(椎間板や靱帯など― 椎間板ヘルニア)が損傷すると、脊髄も傷つくことがあります。そのような損傷には次のようなものがあります。

  • 骨折

  • 隣り合う椎骨の完全な分離(脱臼)

  • 隣り合う椎骨の部分的なずれ(亜脱臼)

  • 隣り合う椎骨をつないでいる靱帯(結合組織で構成される)の緩み

椎骨が自由に動くようになるほどに靱帯が緩むこともあります。このような状態は、不安定な損傷と呼ばれます。椎骨が動くと、脊髄や血流を圧迫したり、脊髄神経根を損傷したりすることがあります。脊椎に不安定な損傷が起こっても、すぐには脊髄の損傷が起こらない場合もあります。例えば、脊椎の損傷によって筋肉のれん縮が起こり、脊椎の動きが制限されることがありますが、数時間から数日経過すると、筋肉のれん縮が治まり、脊椎が自由に動くようになって脊髄を損傷することがあります。

脊髄損傷がある人では、ほぼ必ず脊椎にも損傷があります。しかし、小児ではこれが当てはまらないことがあります(小児における脊髄損傷を参照)。

脊髄損傷の最も一般的な原因は自動車事故で、全体のほぼ半数を占めます。それ以外の原因としては、転倒・転落、スポーツ、労災、暴力(ナイフによる傷や銃創)などがあります。

高齢者で最も多い原因は転倒です。また高齢者では、骨粗しょう症変形性関節症(変性性関節疾患)などの病気が多くみられるため、重篤な脊椎損傷のリスクも高くなっています。

症状

脊椎に損傷が起きると、通常、首や背中の損傷部位に痛みを感じます。損傷部位の上から触れると痛むことがあり、骨折がある場合は特によくみられます。脊髄が損傷すると、損傷部位とそれより下の神経が機能不全に陥り、筋肉の調整機能や感覚が消失します。しかし、小児の脊髄損傷では、神経の機能不全が一時的なものにとどまり、短時間で回復することがあります。腕や脚に走り抜ける稲妻のような痛みを感じる小児もいます。

腕や脚について具体的にどのような機能がどの程度失われるかは、脊髄損傷の発生部位によって異なります。例えば、頸部の脊髄が損傷している場合、腕と脚の運動機能と感覚機能の両方が失われる可能性がある一方、脊髄のより下の部分に損傷がある場合は、脚にのみ機能障害が起きます。排尿または排便のコントロールや性的な機能は、脊髄損傷の位置に関係なく失われる可能性があります。

神経の損傷による筋肉の調整機能や感覚の消失は、損傷の程度によって、一時的なことも永久的なことも、部分的なことも完全なこともあります。外傷によって脊髄が断裂したり脊髄の神経路が破壊されたりすれば、永久的な麻痺が生じますが、打撲により脊髄が揺さぶられただけの場合は、数日から数週間あるいは数カ月の一時的な筋力低下が起きます。腫れが起きた場合は、実際より重度の損傷を疑わせる症状が起こることがありますが、通常、腫れが引くと症状も軽減します。

筋肉の調整機能が部分的に失われると、筋力が低下します。麻痺とは、通常、筋肉の調節機能が完全に失われた状態を指します。筋肉が麻痺すると、通常、筋肉がだらりとして(弛緩)、緊張が失われます。診察用のハンマー(打腱器)で筋肉の反射を確認すると、反射は減弱または消失しています。しかし、脊髄に損傷が起きた場合は、数週間かけて麻痺が進行し、不随意な、遷延性の筋れん縮(けい性麻痺)が起こることがあります。この場合、筋肉の反射は正常より強くなります。

脊髄の損傷領域とその影響

脊髄を守っている脊椎(脊柱)は、頸椎(首)、胸椎(胸)、腰椎(腰)、仙椎(骨盤)の4つの領域に分けられます。各領域は頭文字のアルファベット(それぞれC、T、L、S)で表記されます。

脊椎の各領域の椎骨には上から番号が付けられています。例えば頸椎の1番上の椎骨はC1、2番目の椎骨はC2、胸椎の2番目の椎骨はT2、腰椎の4番目の椎骨はL4と呼ばれます。これらの番号は、脊髄の特定の位置(レベル[高さ])を指し示すのにも使われます。

それぞれの神経は、あるレベルで脊髄から出た後、対応する体の部位へ向かいます。 そのため医師は、筋力低下、麻痺、感覚消失などの機能喪失がどこに起こったかに着目することで、脊髄のどこに損傷が生じたかを特定できます。

脊髄の損傷領域とその影響

脊髄損傷の合併症

筋力低下や麻痺のある人は、動作が限られるか、動くことができません。したがって、血栓、床ずれ、永久的な筋肉の短縮(拘縮)、尿路感染症、肺炎などが起こるリスクがあります。

診断

  • 画像検査

脊椎・脊髄損傷の症状(首や背中の骨のひどい痛みなど)がある人や、神経の損傷を示唆する症状が短時間でもある小児、腕や脚に走り抜ける痛みを感じる小児は、救急外来で評価を受ける必要があります。

脊椎の損傷(骨の損傷)と脊髄の損傷は、画像検査で診断されます。

  • X線検査:けがをしたときは、しばしばX線検査が行われます。X線検査は直ちに(通常は、救急外来にいる間に)行われます。X線検査では脊椎に生じた骨の損傷は明らかになりますが、脊髄の損傷は分かりません。

  • CT(コンピュータ断層撮影)検査:X線検査を行っても行わなくても、けがをしたときはCT検査が行われます。CT検査は、脊椎の損傷を最も正確に検出できる検査で、骨損傷のほとんどが明らかになります。

  • MRI検査:MRI検査は、脊髄の損傷と脊椎の靱帯の損傷を最も正確に検出できる検査です。しかし、MRI装置はCT装置に比べてすぐに利用できないことが多く、骨の損傷に関してはCT検査ほど詳細に分かるわけではないため、一般にMRI検査はCT検査の後に行われます。

脊髄や脊椎の靱帯を評価する上ではMRI検査が最善の方法ですが、この検査はときに、ペースメーカーなどの機器が体内に埋め込まれていることが理由で実施できない場合があります。そのような場合、CT脊髄造影検査が行われることがあります。CT脊髄造影検査は、医師がX線を通さない造影剤を脊髄の周りの空間に注入してから行うCT検査です。CT脊髄造影検査では、正常な位置から逸脱して脊髄に当たっている構造物が明らかになります。

予後(経過の見通し)

麻痺が部分的で、外傷から1週間以内に運動機能と感覚機能の回復が始まった場合は、良好な回復が見込めます。6カ月以内に機能が回復しない場合は、恒久的に機能が失われる可能性が高くなります。一方で、損傷発生後最長1年間は回復の可能性があることが、いくつかの研究で示されています。

治療

  • 固定

  • 適切な状況では、脊椎を固定する手術

  • リハビリテーション

脊髄損傷の可能性がある人を移動させるのは、救急隊員以外は行うべきでありません。最初の目標は、息ができるようにし、損傷の拡大を予防することです。したがって、脊髄損傷の可能性がある人を動かすとき、首が動かないように、救急隊員は最大の注意を払います。通常は、負傷者を硬い板にベルトで固定し、体が動かないように慎重にパッドをあてます。首が動かないようにするために硬性カラーを使用することもあります。脊髄の損傷がひどい場合は、椎骨が正常な位置になかったり砕けていたりして、脊椎がぐらついていることもあります。したがって、負傷者を少し動かすだけでも脊椎がずれて、脊髄が圧迫される可能性があります。脊髄が圧迫されると、永久的な麻痺が起きるリスクが高まります。

血液や骨片が脊髄周辺に貯まって脊髄を圧迫している場合は、それらを取り除く手術が必要です。脊椎がぐらついている場合は、骨やその他の組織が治るまで、体が動かないように固定します。脊髄が動いてさらに損傷が起こることを防ぐため、脊椎を安定させるための金属の棒を埋め込む手術が行われることもあります。けがによる機能の喪失が部分的である場合は、けがの後すぐに手術を行うと、多くの機能が回復し、早く動けるようになることがあります。しかし、いつ手術をするのが最善かについては、議論があります。脊椎の手術は、脳神経外科医や整形外科医が行います。

薬剤が有用なこともあります。

  • 痛み止め(鎮痛薬):けがによって痛みが生じている場合は、鎮痛薬が投与されます。はじめの数時間から数日間は、通常、オピオイドが使用されます。その後は、アセトアミノフェンやイブプロフェンなど、作用のより穏やかな鎮痛薬が使用されます。

  • 筋弛緩薬:けい性麻痺がある場合は、バクロフェンやチザニジンなどの筋弛緩薬が用いられることがあります。

ていねいな看護を施すことで、床ずれ、尿路感染症、脚の血栓、肺炎といった合併症を予防できます。

脊髄神経の成長を促す試験的な治療法が研究されています。例えば、負傷者の血液から特定の種類の白血球(マクロファージ)を取り出して、注射で再び体内に戻すという方法があります。この注射されたマクロファージが、けがへの反応によって生じた老廃物を除去するスピードを高め、神経の再生を促すとされる物質を放出します。この試験薬は、脊髄周囲の空間(硬膜外)へ注射するか経口で投与します。別の可能性として幹細胞(ある機能に特化した細胞の元になる、特定の機能に特化していない細胞)の利用がありますが、この治療法にはさらに多くの研究が必要です。

理学療法や作業療法などのリハビリテーションは、回復をより早く、あるいはより完全なものにするのに役立ちます。けがによって身体障害が生じた場合、人は通常抑うつ状態に陥るため、患者には精神的な支援が必要であり、カウンセリングや抗うつ薬を要することもよくあります。

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