脊髄は傷つきやすい長い管状の構造物で、脳幹の下端から脊椎の下部まで続いています。脊髄は、脳と他の部位との間でやり取りされるメッセージを伝達する神経で構成されています。(脊髄 脊髄 脊髄は傷つきやすい長い管状の構造物で、脳幹の下端から脊椎の一番下近くまで続いています。脊髄にある神経は、 脳と他の部位との間でやり取りされるメッセージを伝達します。脊髄はまた、膝蓋腱反射(しつがいけんはんしゃ)などの反射の中枢でもあります( 反射弓:脳を介さない経路)。 脊椎は身体の軸の骨格を形成する骨の柱であり、この骨組みが、体幹を強く柔軟に支え、中に収まっている傷つきやすい脊髄を保護しています。脊椎は互いに垂直に積み重なった33個の... さらに読む も参照のこと。)
10歳未満の小児は脊髄損傷の発生率が最も低い年齢層ですが、脊髄損傷はまれではありません。小児の脊椎・脊髄損傷は、大半が頸部で発生します。
8歳未満の小児では、頸部の脊椎・脊髄損傷の大半が自動車事故、転倒・転落、小児虐待によって発生しています。8歳以上の小児では、自動車事故とスポーツでの負傷(特に体操、ダイビング、乗馬、アメリカンフットボール、レスリングによる負傷)が脊椎損傷の一般的な原因となっています。小児では、解剖学的な特徴(全身の大きさに対する頭部の大きさの比率や脊椎の靱帯の弾力性など)が成人とは大きく異なり、脊髄を保護している構造物(椎骨も該当します)がより柔軟に動くようになっています。それらの構造物が柔軟であるため、頸部を負傷した際に生じる伸展、断裂、圧迫、その他の損傷に対する脊髄の保護が弱くなっています。そのため、たとえ脊椎に損傷がなくても、脊髄に損傷が起きる可能性が高くなっています。
脊髄損傷のある小児は、チクチク感や筋力低下などの症状を短時間訴えることがあります。背骨や腕または脚を下に流れるような痛みを感じる小児もいます。約25%の患児では、症状(筋力低下、しびれ、その他の神経の異常、ときに完全な麻痺など)の出現が受傷後30分から4日間ほど遅れてみられ、このことが、医師が脊髄損傷と診断するのを難しくしています。
画像検査で映らない脊髄損傷は、脊髄の牽引または伸展、神経または脊髄の圧迫(脊髄のインピンジメント)、脊髄しんとう(脳しんとう 脳しんとう 脳しんとうとは、外傷による精神機能または意識レベルの変化をいいます。脳しんとうでは、意識が消失する場合もありますが、脳の構造に明らかな損傷はみられず、6時間以内に治まります。 ( スポーツ関連脳しんとうも参照のこと。) 脳しんとうでは、CT検査やMRI検査などの画像検査で脳の損傷が検出されないにもかかわらず、脳細胞が一時的に傷ついたり機能障害に陥ったります。患者には一時的に脳機能障害の症状がみられます。... さらに読む に似た現象)、血管の損傷などが関連しています。画像検査で映らない脊髄損傷は「X線異常所見のない脊髄損傷」(SCIWORA)と呼ばれています。このタイプの損傷は、ほぼ小児だけに発生し、しばしば頸部に発生します。X線異常所見のない脊髄損傷では、脊髄損傷を示唆する症状がみられるものの、脊柱はまっすぐで、画像検査では骨の異常が認められません。
(脊椎および脊髄の損傷 脊椎および脊髄の損傷 脊髄損傷のほとんどは自動車事故、転倒や転落、暴行、スポーツ外傷が原因です。 症状は感覚の消失、筋力の消失や、腸、膀胱、性機能の喪失などで、これらの症状は一時的なことも永久的なこともあります。 損傷を特定するには、MRI検査(軟部組織、脊髄、靱帯の損傷を評価するため)、CT検査(骨の損傷を評価するため)、またはその両方を用いるのが最善の方法... さらに読む も参照のこと。)
脊髄の損傷領域とその影響
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診断
X線検査
通常はCT検査とMRI検査
小児が自動車事故に遭ったとき、3メートル以上の高さから転落したとき、あるいは水中でけが(ダイビングなど)をしたことがあるときに、医師は脊髄損傷を警戒します。チクチク感、筋力低下、突然の鋭い痛みなど、神経損傷を示唆する症状がみられる小児では、疑いが増します。
通常、画像検査はX線撮影から始めます。X線所見や負傷の経緯から骨折、脱臼、部分脱臼が疑われる場合は、通常はCT検査を行います。通常はMRI検査も行います。
ときに脊髄損傷は画像検査で映らないこともあります。
治療
固定
支持療法
リハビリテーション
ときに手術および術後のリハビリテーション
脊髄損傷のある小児は、小児外傷センターに移送されるべきです。
治療は 成人における脊髄損傷の治療 治療 脊髄損傷のほとんどは自動車事故、転倒や転落、暴行、スポーツ外傷が原因です。 症状は感覚の消失、筋力の消失や、腸、膀胱、性機能の喪失などで、これらの症状は一時的なことも永久的なこともあります。 損傷を特定するには、MRI検査(軟部組織、脊髄、靱帯の損傷を評価するため)、CT検査(骨の損傷を評価するため)、またはその両方を用いるのが最善の方法... さらに読む と同様で、患部の固定と必要に応じて呼吸および循環の補助などを行います。小児では、成人の脊髄損傷の場合よりも手術が行われる頻度は下がります。