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胸部損傷に関する序

執筆者:

Thomas G. Weiser

, MD, MPH, Stanford University School of Medicine

最終査読/改訂年月 2018年 11月
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多くの胸部損傷では、肋骨、上腹部、肺、血管、心臓、筋肉、軟部組織、胸骨などに損傷が起こります。ときに食道、鎖骨、または肩甲骨に損傷が及ぶこともあります。

米国では、重度損傷による死亡の約25%を胸部損傷が占めます。受傷後数分から数時間で死に至りうる損傷でも、多くは大手術を行わずに救急外来で治療または安定させることができます。

原因

胸部損傷は、鈍力(自動車衝突、転落、スポーツにおける事故など)によって起こることもあれば、穿通する物体(銃弾、ナイフなど)によって起こることもあります。

胸部損傷は、呼吸や循環を阻害するため、しばしば重篤化し、直ちに生命を脅かすこともあります。肋骨や胸部の筋肉(胸壁)がひどく損傷し、肺が正常に膨らまなくなることもあります。 肺そのものに損傷が及ぶと、酸素を取り込み二酸化炭素を吐き出すという肺の主要な機能( ガス交換 酸素と二酸化炭素の交換 呼吸器系の最も基本的な機能は、酸素と二酸化炭素を交換することです。吸い込まれた酸素は肺へ入り、肺胞に達します。肺胞の内面を覆う細胞の層とそれを取り巻く毛細血管は、それぞれ細胞1個分の厚みしかなく、互いに密接しています。空気と血液を隔てるこの距離は、平均すると約1マイクロメートル(1センチメートルの1/10... さらに読む )が損なわれます。胸部損傷により大量に出血すると、循環に影響が現れることもあります。出血はしばしば胸壁内部に生じるため、これによって呼吸が妨げられることもあります。また、心臓に損傷が及ぶと、血液を体中に送り出す心臓の機能が妨げられ、これによっても循環が阻害されます。

一般的な胸部損傷または重症化しうる胸部損傷には、以下のようなものがあります。

知っていますか?

  • 特定の胸部損傷の患者では、胸部に針やチューブを挿入するといった簡単な治療を施すだけで、命が助かることがあります。

症状

けがをした部位には痛みまたは圧痛があるのが普通です。息を吸うと痛みがひどくなります。胸部に皮下出血がみられることもあります。一部の患者には息切れがみられ、重症であれば、息切れが激しいか、うとうとしているか錯乱状態に陥っていることがあり、皮膚は冷たい、汗ばんでいる、または青くなっていることがあります。このような症状は、肺が重度の機能不全( 呼吸不全 呼吸不全 呼吸不全は、血液中の酸素レベルが危険なほど低くなったり、血液中の二酸化炭素濃度が危険なほど高くなる病気です。 呼吸不全の原因としては、気道をふさぐ病気、肺組織を損傷する病気、呼吸を制御する筋肉を衰えさせる病気、呼吸を促す仕組みが抑制される病気などがあります。 激しい息切れ、皮膚の青みがかった変色、錯乱または眠気などの症状がみられることがあ... さらに読む )に陥っているときや患者が ショック ショック ショックとは、臓器への酸素の供給量が低下し、生命を脅かす状態で、臓器不全やときには死亡につながります。通常、血圧は低下しています。 (低血圧も参照のこと。) ショックの原因には血液量の減少、心臓のポンプ機能の障害、血管の過度の拡張などがあります。 血液量の減少または心臓のポンプ機能の障害によってショックが起きると、脱力感、眠気、錯乱が生じ... さらに読む 状態になっているときにみられます。典型的なショック状態では、血圧が危険なレベルまで低下しており、患者は激しい動悸を感じます。

その他の症状は損傷の種類によって異なります。例えば、気胸になると、皮膚の下に空気がたまることがあります。その場合、皮膚を触ると雪を握るような感覚や、プチプチという音がします。また、心臓を包んでいる膜の中に血液などの体液がたまり、血液を送り出す心臓の機能が妨げられたり( 心タンポナーデ 症状 )、 緊張性気胸 緊張性気胸 緊張性気胸とは、胸壁と肺との間に空気がたまることで胸部への圧力が高まり、心臓に戻る血液が減少することです。 症状には、胸痛、息切れ、速い呼吸、心拍数の増加などがあり、ショックに至ることがあります。 緊張性気胸は通常、病歴、症状、診察結果に基づいて診断されます。 医師は一刻も早く太い針を胸部に刺して、空気を除去します。... さらに読む になったりすると、首の静脈が膨らみます。

診断

  • 医師による評価

  • 画像検査

通常、胸部損傷は見た目に明らかです。しかし、胸部損傷の重症度を判定するには、医師による評価が必要です。

医師は最初に、聴診器で肺のすべての部分に空気が取り込まれているかを確認し、首や胸部のけがを念入りに診察します。呼吸困難がみられる患者には、指に取り付けるセンサー(パルスオキシメトリー)を用い、血液中の酸素レベルを測定します。血液検査により、血液中の酸素や二酸化炭素の濃度を測定することもあります(動脈血ガス測定)。

胸部X線 胸部X線検査 心疾患が疑われる場合は、必ず正面と側面から胸部X線画像を撮影します。X線画像では心臓の形と大きさ、肺や胸部を流れる太い血管の輪郭が分かります。心臓の形や大きさの異常、血管内へのカルシウムの沈着といった異常は容易に確認できます。また、胸部X線検査では肺の病態についての情報も得られ、特に肺の中の血管に異常があるかどうか、肺の内部や周囲に体液が... さらに読む 胸部X線検査 検査はほぼ常に行われます。胸部X線検査では、ほとんどの 気胸 外傷性気胸 外傷性気胸は、損傷によって胸壁と肺との間に空気がたまることで起こります。その結果、肺が部分的または完全に虚脱します。 胸痛を伴い、息切れを感じる場合もあります。 通常は、胸部X線検査が行われます。 空気を抜き取り肺が再び膨らむようにするため、通常は胸部にチューブ(胸腔ドレーン)が挿入されます。... さらに読む 血胸 血胸 血胸とは、肺と胸壁との間に血液がたまることです。 ふらつきや息切れ、胸痛を感じたり、皮膚が汗ばみ、青く冷たくなったりします。 血胸は、胸部X線検査に基づいて診断されます。 静脈から輸液または輸血が行われ、胸部に挿入されたチューブから血液が排出されます。 (胸部損傷に関する序も参照のこと。) さらに読む 鎖骨骨折 鎖骨の骨折 鎖骨の骨折は、胸骨の上部から肩甲骨の上部に水平に延びている長管骨の骨折です。 鎖骨の骨折は、多くの場合、転倒した際に腕を伸ばしてついたり、肩から転倒したり、直接的な打撃を受けたりすることによって起こります。 この骨折は痛みや腫れを引き起こすほか、ときに骨が折れた場所が隆起することがあります。... さらに読む と、一部の 肋骨骨折 肋骨骨折 肋骨骨折とは、胸部を取り囲む骨にひびが入ったり骨が折れたりすることです。 肋骨骨折は重度の痛みを引き起こし、特に深呼吸したときに痛みがひどくなります。 通常は胸部X線検査が行われます。 痛み止めを投与され、肺の病気を予防するために約1時間に1回、せきまたは深呼吸をするように言われます。... さらに読む 肋骨骨折 を検出できます。しかし、 心臓の損傷 心臓の鈍的損傷 心臓の鈍的損傷とは、胸部への打撃によって、心筋の断裂や壊死、心臓の壁の破裂(裂けること)、または心臓弁の損傷が起こることです。 激しい動悸や息切れを感じたり、危険なレベルの血圧低下が起こったりすることがあります。 心電図検査と心臓超音波検査(心エコー)が行われます。 不整脈(心拍リズムが速すぎる、遅すぎる、不規則)がある患者は、入院して心... さらに読む を確かめるには通常、超音波検査が必要です。大動脈の損傷が疑われる場合には、 CT検査、超音波検査、または大動脈造影検査(大動脈の血管造影) 画像検査の概要 画像検査は、体の全体または一部の「内側」を画像化する検査です。画像検査は、病気の診断、重症度の判定、診断後のモニタリングを行う上で役に立ちます。大半の画像検査は痛みを伴わず、比較的安全で、体に負担をかけません(すなわち、皮膚を切開したり、器具を体内に挿入したりする必要がありません)。... さらに読む が行われます。

治療

  • 呼吸と循環の補助

  • 個々のけがの治療

直ちに生命を脅かしうるけがは、できる限り早く治療します。治療はけがの種類によって異なります。

けがの種類にかかわらず、必要であれば呼吸と循環を補助する処置がとられます。酸素投与(例えば、鼻カニューレ、フェイスマスク、呼吸用のチューブによる)や静脈内輸液ほか、ときに輸血が行われることもあります。重度の胸部損傷の患者は、入院します。

痛みを緩和するため、痛み止め(鎮痛薬)が投与されることもあります。

胸部にチューブを挿入し( 胸腔ドレーン 胸腔ドレナージ 胸腔ドレナージ(胸腔ドレーンの留置)とは、肺と胸壁の間の空間(胸腔)に胸腔ドレーンと呼ばれるチューブを挿入することです。この処置は、肺が虚脱しているとき(気胸という病態)に、胸腔から空気を抜くために行われます。ときに、胸腔から液体(胸水)を抜くためにこの処置が行われることもあります。胸腔に液体がたまり続けているために、1回で抜ききれないと... さらに読む )、胸腔から血液( 血胸 血胸 血胸とは、肺と胸壁との間に血液がたまることです。 ふらつきや息切れ、胸痛を感じたり、皮膚が汗ばみ、青く冷たくなったりします。 血胸は、胸部X線検査に基づいて診断されます。 静脈から輸液または輸血が行われ、胸部に挿入されたチューブから血液が排出されます。 (胸部損傷に関する序も参照のこと。) さらに読む )または空気( 気胸 気胸 気胸とは、2層の胸膜(肺の外側と胸壁の内側を覆っている薄くて透明な膜)の間に空気が入り込むことによって、肺が部分的または完全につぶれてしまう病気です。 症状には、呼吸困難や胸痛などがあります。 胸部X線検査によって診断が下されます。 治療は通常、ドレーンやときに合成樹脂製のカテーテルを胸部に挿入して空気を抜くことです。... さらに読む 気胸 )を抜き取らなければならないこともあります。この手技がうまくいけば、虚脱した肺が再度膨らむようになります。チューブの挿入時は、局所麻酔だけを使います。

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