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熱傷(やけど)

執筆者:

Steven E. Wolf

, MD, University of Texas - Southwestern Medical Center

最終査読/改訂年月 2018年 11月
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熱傷(やけど)とは、熱、電気、放射線、化学物質によって生じる組織の損傷のことです。

  • 熱傷では痛み、水疱、腫れ、皮膚の剥離が様々な程度で起こります。

  • 小さな浅い熱傷は、清潔を保ちつつ抗菌薬のクリームを塗るだけでよい場合もあります。

  • 広範囲に及ぶ深い熱傷は、ショックや重度の感染症などの重篤な合併症を引き起こすことがあります。

  • 熱傷が深い場合や、広範囲に及ぶ場合は、しばしば熱傷治療の専門施設において、輸液、手術、リハビリテーションが必要になることがあります。

眼の熱傷も参照のこと。)

熱傷は通常、火、蒸気、タール、熱い液体などの熱によって生じます(通常の熱傷)。 化学物質による熱傷は通常の熱傷と似ていますが、放射線日光電気による熱傷は、かなり性質が異なります。炎上中のビルから飛び降りたり、飛んできた物体に当たったり、自動車事故に巻き込まれたりした場合には、熱傷に加えてそれ以外のけがも負うことがあります。また、火事で熱傷を負った人は、しばしば火事による煙を吸い込んでいます(煙の吸引)。煙を吸い込むと窒息する可能性がありますが、煙には燃焼している物質から発生する様々な化学物質も含まれています。それらの化学物質の中には、一酸化炭素シアン化物など有害なものもあります。

熱による熱傷(通常の熱傷)と化学物質による熱傷(化学熱傷)は、それぞれ熱や化学物質が体表面の一部(ほとんどは皮膚)に接触することで起こります。このため、通常は大半の損傷が皮膚に生じます。しかし、重症の場合には熱傷が体表面だけでなく、脂肪や筋肉、骨などの体の深部の構造にまで達することがあります。

熱傷によって組織が傷つくと、その部分の血管から体液が漏れ出し、腫れが起こります。さらに、損傷した皮膚などの体表面は微生物の侵入を阻止するバリアとして機能しないため、感染が起きやすくなります。

米国では年間200万人以上が熱傷の治療を必要とし、3000~4000人が重度の熱傷のために死亡しています。高齢者や幼児は特に熱傷に脆弱です。小児や高齢者が熱傷を負っている場合は、医師はその患者が虐待を受けている可能性も検討します(小児に対するネグレクトと虐待および高齢者虐待を参照)。

分類

医師は広く受け入れられた定義に従って熱傷を細かく分類します。その分類は、熱傷の深さと組織の損傷の広さに基づきます。

熱傷の深さ

熱傷による損傷の深さはI度、II度、III度に分けられます。

  • I度熱傷は、表面的な浅い熱傷です。その損傷は皮膚の一番上の層(表皮)だけにとどまっています。

  • II度熱傷(または部分層熱傷)は、皮膚の中間層(真皮)まで損傷が及んでいるものです。II度熱傷は、さらに浅達性(真皮の浅い部分にとどまるもの)と深達性(真皮の浅い部分から深い部分まで達するもの)に分類されることがあります。

  • III度熱傷(または全層熱傷)では、表皮、真皮、皮下脂肪層の3層すべてに損傷が及んでいます。通常、汗腺、毛包、神経の末端部も破壊されます。

熱傷の範囲を推定する

熱傷の重症度を判定する際には、II度またはIII度の熱傷が体表面積のどの程度の割合に及んでいるかを推定します。成人の場合、「9の法則」が利用できます。これは体全体を9%またはその2倍(18%)の部分に区分する方法です。小児については、その割合を年齢に応じて換算する表(ルンド-ブラウダー表)を使います。体の成長速度は部位によって異なるため、さらに補正が必要になります。

熱傷の範囲を推定する

熱傷の重症度

熱傷の重症度は軽度、中等度、重度に分類されます。この分類は、一般の人の理解とは一致しないこともあります。例えば、相当の痛みがあり、通常の活動に支障が出ている場合でも、軽度の熱傷に分類されることがあります。重症度により、治癒の見通しと合併症の起こりやすさが定まります。 医師は熱傷の重症度を、熱傷の深さとII度またはIII度熱傷の領域の体表面積に対する割合によって判定します。全身の各部位の面積が体表面積の何パーセントに相当するかをまとめた図表を用います。例えば成人では、片腕は体表面積の約9%にあたります。小児は体表面積の構成比が成人と異なるため、別の図表を使用します。

  • 軽度の熱傷:すべてのI度熱傷と体表面積の10%未満のII度熱傷は、通常は軽度の熱傷に分類されます。

  • 中等度と重度の熱傷:手、足、顔面、性器が範囲に含まれる熱傷、体表面積の10%を超えるII度熱傷、ならびに体表面積の1%を超えるすべてのIII度熱傷は中等度以上に分類され、その多くは重度の熱傷に分類されます。

症状

熱傷の症状は損傷の深さによって異なります。

  • I度熱傷では、皮膚が赤くなって腫れ、痛みを伴います。患部は軽く触れると白っぽく(青白く)なりますが、水疱は生じません。

  • II度熱傷では、皮膚がピンクか赤色になり、腫れと強い痛みが生じます。24時間以内(しばしば熱傷の直後)に水疱が生じて、透明な体液がにじみ出てくることがあります。患部に触れると白くなることがあります。

  • III度熱傷では、神経が破壊されるため、通常は痛みを感じません。皮膚は革のような質感になり、色は白、黒、または明るい赤色になります。患部に触れても白くはならず、痛みを伴うことなく体毛を容易に毛根から引き抜くことができます。

深い熱傷の患部の外観や症状は、熱傷を受けた後の数時間、ときには数日間にわたって悪化していきます。

知っていますか?

  • 最も深い熱傷では、痛みを感じる神経が破壊されるため、ほとんど痛みが起こらないことがあります。

診断

  • 損傷の深さと範囲の評価

  • ときに血液検査と尿検査

医師は患者を入院させて頻繁に診察を行い、合併症が起きていないか調べ、熱傷の傷の深さと範囲を評価します。大きな熱傷が起きた場合は、脱水ショックの程度や点滴の必要性の評価に役立てるために、血圧、心拍数、尿量を頻繁に測定します。また血液検査を行い、電解質濃度や血球数をモニタリングします。心電図検査と胸部X線検査も必要です。血液検査と尿検査を行って、III度熱傷に合併することがある横紋筋融解症(筋肉組織が崩壊する病気)により生じたタンパクを検出します。

合併症

軽度の熱傷は、通常は表面的なもので、合併症は起こりません。しかし、深いII度熱傷やIII度熱傷では、患部が腫れて治癒に時間がかかります。さらに、深い熱傷では瘢痕(はんこん)組織ができることがあります。瘢痕組織は治癒するにつれて収縮し、ひきつれ(拘縮)を起こします。腕や脚、指に瘢痕ができると、拘縮が起こって付近の関節の動きが制限されることがあります。

重度の熱傷と一部の中等度の熱傷は、大量の体液の喪失や広範囲の組織の損傷により、重篤な合併症を引き起こします。このような合併症は数時間から数日かけて起こります。熱傷がより深く、広範囲に及ぶほど、引き起こされる問題は重症になる傾向があります。幼児や高齢者は、他の年齢の患者と比べて合併症が重篤化しやすい傾向があります。重度の熱傷と一部の中等度の熱傷による合併症を以下に挙げます。

  • 広範囲に熱傷を負った人は、熱傷を起こした組織の血管から体液がにじみ出ていき、また熱傷が深く広ければ全身の血管から体液が失われるため、最終的に脱水状態に陥ります。

  • 脱水がひどい場合はショックが起こります。

  • 熱傷が広範囲に及ぶと、体内の化学物質のバランスが崩れることがあります。

  • 深いIII度熱傷では、筋肉組織の崩壊(横紋筋融解症)が起こることがあります。すると、筋肉組織からタンパクの一種であるミオグロビンが血液中に流出します。そして血液中の濃度が高くなると、ミオグロビンは腎臓に害を及ぼします。

  • 合併症として熱傷の傷に感染が起きることもあります。ときに、感染が血流に乗って全身に広がることで、重度の病気や死亡につながることがあります。

  • III度熱傷では、皮膚の表面が厚く硬くなって、焼痂(しょうか)と呼ばれる状態になります。焼痂により皮膚が張りつめると、正常な組織への血液供給が遮断されたり、呼吸が妨げられたりする可能性があります。

  • 脱水を是正するために冷たい水分を与えると、体温が危険な水準まで低下することがあり(低体温症)、これは特に、涼しい救急治療室で重度の熱傷患者の評価や治療が行われる場合に生じやすくなります。

治療

  • 軽度の熱傷では、常温の水で熱傷部位を数分間冷却した後、患部のケアとドレッシング材による処置

  • 重度の熱傷には、入院した上で熱傷と合併症の治療

熱傷の治療を行う際には、まず原因になっているものを取り除き、損傷がそれ以上広がるのを阻止する必要があります。例えば、火がついていれば消火します。衣服はすぐに脱ぎ、特に火がくすぶっているもの(合成繊維のシャツが溶けている場合など)、タールなどの高温の物質が付着しているもの、化学物質がしみこんでいるものは、すぐさま体から離します。

ときに、適切な治療を受けるために入院が必要になる場合もあります。例えば、重度の熱傷では腕や脚を心臓の位置より高くもち上げて腫れを予防する対策が必要ですが、こうした対応は入院した方がやりやすくなります。加えて、熱傷によって歩行や食事などの日常生活に支障をきたしている場合や、重度の痛みがある場合にも、入院が必要になります。 重度の熱傷、深いII度熱傷、III度熱傷、乳幼児や高齢者の熱傷、手、足、顔面、性器の熱傷については、熱傷センターで治療を受けるのが最善です。熱傷センターは、熱傷患者を治療するための専門的な設備を備え、そうした治療を専門とするスタッフが勤務する病院です。

軽度の浅い熱傷

軽度の浅い熱傷は、可能であれば直ちに常温の水で数分間冷やします。感染を予防するために患部をていねいに洗浄します。土などが深く入り込んでいる場合は、医師が鎮痛薬を投与するか、局所麻酔をかけてから、ブラシを使って患部をよく洗浄します。

多くの場合、治療はスルファジアジン銀など抗菌薬のクリームを塗るだけで済みます。抗菌薬クリームは感染を予防するとともに、傷口をふさいで、さらに細菌が侵入するのを防ぎます。滅菌包帯を巻いて、患部が不衛生になったり、それ以上傷ついたりすることがないように保護します。 必要であれば破傷風ワクチンを接種します。

自宅で手当する場合は、感染を予防するために患部を清潔に保ちます。さらに、多くの人が鎮痛薬(痛み止め)のほか、ときにオピオイドを、少なくとも2~3日にわたって使用しています。患部は非粘着性の包帯や滅菌ガーゼで保護します。ガーゼ交換の際は、まず水に浸すことで、ガーゼが剥がしやすくなります。

狭い範囲の浅い熱傷

狭い範囲に熱傷を負った場合、たいていの人は医師を受診することなく自宅で治療を試みます。実際、狭い範囲の浅い熱傷で清潔なものであれば、治療は簡単な応急手当だけで十分です。一般に、熱傷が清潔な皮膚に起こり、ほこりの粒子や食べものなどが付着していなければ、清潔とみなすことができます。常温の流水を患部にかければ、痛みが和らぎます。市販の抗菌薬の軟膏を塗って、非粘着性の滅菌包帯で患部を覆えば、感染を予防することができます。

破傷風ワクチンの接種が必要な場合は、医師による診察と治療が推奨されます。同様に、以下の特徴のいずれかに該当する熱傷では、医師の診察を受ける必要があります。

  • 患部が患者の開いた手より大きい

  • 水疱ができている

  • 皮膚に黒ずみや亀裂がある

  • 熱傷が顔面、手、足、性器、または間擦部(皮膚がこすれ合う部分)に起きている

  • 完全に清潔にならない

  • 痛みがあり、アセトアミノフェンで緩和されない

  • 熱傷を負ってから1日経っても痛みが軽くならない

軽度の深い熱傷

浅い熱傷と同じように、軽度の深い熱傷も通常は抗菌薬クリームで治療します。ときに、抗菌薬のクリームではなく、滅菌された特別なドレッシング材(傷を覆う製品)を患部に当て、数日から1週間ほどそのままにしておきます。これらのドレッシング材には、殺菌作用のある銀が含まれていることがあります。また、微小な多孔性のドレッシング材(つまり熱傷部分から体液を排出できるが細菌は通過できない小さな穴が開いたドレッシング材)を用いることもあります。抗菌薬クリームを塗ったりドレッシング材を当てたりする前に、医療従事者が壊死した皮膚やつぶれた水疱などを取り除きます。腕や脚の熱傷が深くまで達している場合は、最初の数日間は心臓より高い位置で保つことで、腫れや痛みが軽減されます。深い熱傷の場合は入院するか、病院や診療所で頻繁に診察を受ける必要があり、最初の数日間は毎日通院することになるかもしれません。

熱傷で治癒が望めなくなった部分の皮膚を代用の皮膚(移植片)で置き換える皮膚移植が必要になることもあります。また患者自身の皮膚が再生するまで、一時的に表面を覆って保護するために皮膚移植を行う場合もあります。皮膚移植では、以下のような健康な皮膚を採取して使用します。

  • 患者自身の熱傷を受けていない部分の皮膚(自家移植片)

  • 亡くなった人の皮膚(同種移植片)

  • 動物の皮膚(異種移植片)

自家移植では、切れ目のない皮膚片や切れ目を入れてメッシュ状にした皮膚片を使用します。メッシュ状の移植片を準備する場合は、医師が器具を使って、皮膚片に複数の小さな切れ目を等間隔に入れます。切れ目を入れると、ドナーから採取した皮膚片を伸ばすことで、はるかに広い領域(しばしば元の皮膚片の数倍)を覆うことができます。メッシュ状の移植片は、熱傷の広さが体表面積の20%以上で、ドナーから提供された皮膚片が不足している場合に、外観があまり気にならない部位に用いられます。メッシュ状の移植片を使用すると、治癒後の外観が不均等な格子状になり、かなりの瘢痕が残ることもあります。壊死した組織を残らず取り除き、傷を清潔にした上で、外科医が移植片を熱傷の部位にかぶせ、糸やステープラーで縫合します。人工皮膚片を使用することもあります。自家移植は恒久的な治療になりますが、

同種移植異種移植では10~21日後に免疫系による拒絶反応が生じ、人工皮膚は剥がれ落ちます。同種移植と異種移植では、治癒途中の皮膚を一時的に保護することができますが、熱傷が皮膚の全層に及んでいて、自然な治癒は望めないほど範囲が広い場合には、最終的に自家移植が必要になります。皮膚移植は、熱傷を負ってから数日以内であれば、いつでも行うことができます。

関節周辺の瘢痕化によって関節が動かなくなるのを予防し、また関節運動が制限されている患者の活動を支援するために、通常は理学療法と作業療法が必要になります。ストレッチ運動は、熱傷を負ってから数日以内に開始します。副子(副木)を当てて、動かなくなりやすい関節を拘縮が起こりにくい姿勢で固定します。関節を動かすとき以外は、副子を当てたままにしておきます。皮膚移植を行った場合は、移植から3日が経過して移植皮膚片の定着が妨げられない時期になってから、理学療法と作業療法を開始します。ドレッシング材を厚くして患部を圧迫することで、瘢痕が大きくなるのを防ぐことができます。

重度の熱傷

生命を脅かす重度の熱傷には緊急の治療が必要です。脱水の結果としてショックに陥った場合は、フェイスマスクから酸素の投与を行います。

脱水症状ショック状態に陥った場合や、熱傷が体の広範囲に及んでいる場合は、すぐに大量の輸液を開始します。筋肉組織の破壊が起きている人にも輸液を行います。これは、ミオグロビンの血中濃度を低下させることで、腎臓に多大な損傷が起こるのを防ぐためです。ときには、炭酸水素ナトリウムの静脈内投与によってミオグロビンを溶解させ、さらなる腎臓の損傷を防ぐこともあります。

腕や脚への血液供給を遮ったり、呼吸を妨げたりしている焼痂を切開して開放する外科的処置が必要になることがあります。この手術は焼痂切開術と呼ばれます。焼痂切開術は通常出血を伴いますが、焼痂ができるような熱傷では皮膚内部の神経の末端部が破壊されているため、痛みはほとんど感じられません。

スキンケアが極めて重要です。損傷した皮膚は感染を起こしやすいため、清潔に保つことが不可欠です。これは、患部を弱い水流で定期的に洗うことで達成できます。傷の洗浄と包帯の交換は、ドレッシング材の種類によって様々な頻度で行います(通常は1日1回以下)。軽度の深い熱傷と同様に、熱傷が治癒しない場合は、皮膚移植が必要になります。

適切な食事によりカロリー、タンパク質、栄養素を十分に摂取することも治癒のために重要です。食事で十分なカロリー摂取を確保できない場合は、液体のサプリメント(栄養補助食品)を飲んだり、鼻から胃に管(経鼻胃管)を挿入したりして栄養を補給するほか、あまり多くはありませんが静脈から栄養を入れることもあります。通常はビタミンやミネラルの補充も行います。

理学療法と作業療法が必要です。

うつ病があれば治療します。重度の熱傷を負った人は、治癒までに時間がかかり、外見が損なわれることもあるため、うつ病になることがあります。うつ病は多くの場合、薬物療法、精神療法、またはその併用で軽減できます。

予後(経過の見通し)

I度熱傷や一部のII度熱傷は数日から数週間で治癒し、瘢痕は残りません。深いII度熱傷と範囲の狭いIII度熱傷では、治癒に数週間かかり、通常は瘢痕が残ります。多くの場合、皮膚移植が必要になります。体表面積の90%(高齢者の場合は60%)を超える熱傷は、しばしば死に至ります。

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